とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ) 作:さくらぎ おきの
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「失礼します。今回の作戦の結果報告にあがりました。と、ミサカはマナーに従って行動します。」
「そうか、入りたまえ。」
たいして日にちは空いていないのに、なんだか懐かしい。
そんな気持ちを心内に秘めながらミサカは長机を挟んで城戸と対面した。
その場には城戸だけではなく、根付、唐沢、そして先ほどまで彼女が寝ていたトリオン技術開発室にいたはずの鬼怒田までもいる。
だが、忍田と林道はどうやらこの場にいないようだ。
それは当然と言えば当然。
今回の作戦は玉狛&忍田派VS本部派の側面を持つ。わざわざ相手側の人間を招くほど本部側の人間も馬鹿ではない。
「何故あなたがこの場にいるのでしょう。ミサカの方が先にあそこを出たと認識していましたが。と、ミサカはふと気にしていたことを呟きます。」
「むしろワシの方が驚いたわい。ここに来た時にお前がいなかったからのう。」
「まぁまぁいいじゃないですか。逆にここに来たばかりでボーダーの内部構造を熟知してたらそれこそ問題でしょう。それよりも、報告を聞きましょうか。」
認識に齟齬のあった鬼怒田とミサカで会話している中に唐沢が仲裁に入った。
彼にとってはミサカのボーダーに関する熟知度ははっきり言ってどうでも良い。それよりも気にしているのは今回の作戦の詳細。
結果自体はこの場にいる誰もが知っている。
失敗。
ただの失敗であればまだやり直せたが、今回の失敗は作戦の再決行がもうできないことを示している。
ただ、それでも彼らは知りたいのだ。何故今回の作戦が失敗したのかを。
作戦はなにも戦闘だけを指す言葉ではない。あくまで作戦の最終目的は
今回の失敗は何か他の交渉に利用できるかもしれない。上層部はそれを考えていた。
「確かにそれもそうです。それでは今回の作戦の経過を話していきましょう。」
誰かが唾を飲み込んだ音がした。
三輪隊の報告を参考にする限り、彼女は間違いなく戦闘に関して言えばエキスパート。加えて狙撃手という特性を活かし戦況に動きがあるまで俯瞰視点でいられた数少ない視点。
そんな彼女からみた今回の作戦。気にならないわけがない。
「まず遠征チームと迅が接敵。接敵時は迅1人だったものの、すぐに嵐山隊の参戦により数の有利はかなり軽減されてしまいました。」
「ハァ………嵐山隊がいなかったら高い確率で玉狛支部まで攻め入れただろうねぇ……」
「そうとも限りません。と、ミサカは根付さんの考え方に一部異議を唱えます。」
根付は眉間を押さえながら一つ目の想定外にふとため息を漏らした。
だが、それに対抗するようにミサカは異論を唱えた。
「何を言う!嵐山隊がいなかったら10対1で10倍だよ!?流石にそんな差があったらいくら迅と言えども厳しかったと思うがねぇ!」
「確かに迅は間違いなく落とせていたでしょう。いくら彼に未来が見えようとも、対応力を超えるほどの数の攻撃を与えれば良いだけですから。ですが、玉狛を落とせるか、と言われれば話は別です。」
迅の未来視は強力。それ自体は疑う余地もない事実。
だが、強力であることと無敵であることには絶対的な壁がある。
迅は相手の行動を事前に知ることができる。攻撃を全て対応できると考えれば一瞬無敵にも思える。だが、攻撃を防げるのは
波状攻撃なりを活用することは人数差で大きく優っている遠征チームならば造作もないことだ。
相手が迅だけであれば、の話ではあるが。
「結果論ではありますが、今回は玉狛第一も潜伏していたようです。と、ミサカは後出しジャンケンを決め込みます。」
「それは………」
ミサカのカウンターに渋い顔をする根付。
彼もそう言われると納得するしかなかった。
おそらく迅なら嵐山隊が例え加勢に来なかったとしても木崎ら玉狛第一を用意していることだろう。
ボーダーには存在しない改造トリガーを扱う玉狛第一。黒トリガー風刃と彼らが共闘している姿など想像もしたくない。
「話を戻します。嵐山隊の参戦によって分断を余儀なくされた遠征チームは迅に風間隊と太刀川、嵐山隊に三輪隊と出水、そして当真を割り振りました。そして真っ先に菊池原が
ミサカは菊地原の
菊地原の
(五感から得られる情報はかなり有用ですからね。ただ、聴力に偏る分相応の訓練が必要ではありますが。)
「彼がいたのならより優位に戦闘を進められたでしょう。迅もそれをわかっているから優先して狙ったと思われます。と、ミサカは迅の判断能力に一目置きます。」
「なるほど……次回は菊地原を守りながら戦うことも視野か……」
鬼怒田は深く考えるようにして顎に手を当てた。
「そこから一気に戦況が変化します。菊地原が落とされたことにより歌川の攻めにも焦りが生まれて
「そこか……君が初めて参戦したのは。」
「はい。木虎によって米屋はトリオン供給器官を破壊されますが同時に木虎を空中に投げ出し、狙撃手たちが浮いた彼女を狙います。予想外の時枝によるカバーのせいで仕留めきれませんでしたが、着地して油断していたところをミサカが狙撃に成功します。」
これが彼女にとってのの
そしてこれは三輪隊サイドにとってかなり大きなアドバンテージを生んだと共に手痛い一手でもあった。
「その後、何故か当真がこちら側に接触を図ってきました。ミサカは戦いたくなかったのですが、任務の邪魔でしたので仕方がなく応戦することにしました。」
「ははッ………城戸司令、紹介しなかったことが裏目に出ちゃいましたね。」
「問題ない。むしろ想定していた範疇だったがな。」
「想定……裏目……そうです、城戸司令はミサカと彼らを合わせなかったことに何か意図を持っていたのでしょうか。と、ミサカは何度も気になったことを聞いておきます。」
「……後で答えることにしよう。それよりも報告を続けたまえ。」
唐沢は少し笑いながら城戸に話しかけていた。
その中で気になったのは裏目になったということ。
裏目と言えるならまず間違いなくその可能性は考慮していたはず。
つまり、当真との交戦は決してイレギュラーではなく想定内の出来事だということになる。
「結果はミサカの勝利で終わりました。同時にミサカは両足を失い、瀕死状態に陥ります。ですが、偶然降り立った、いや降り寝ったところが偶然迅らが交戦しているところが一望できる場所でした。」
「……ッ!」
「まさか……」
ミサカの発言に目を見開く上層部一同。
三輪隊オペレーターの月見から臨時報告で聞いていた情報では太刀川と風間の
だが、それが誰の攻撃によるものなのかははっきりしていなかった。
おそらく太刀川か風間によるものだろう。それならばありうると考えていた矢先、ミサカの発言を聞けば否が応でもわかってしまう。
「何せトリオンがギリギリだったものではっきりとは覚えていませんが、迅を落としたのはミサカでしょう。」
「そッ……それは本当なのかね!まさか嘘を言っているのではないだろうねぇ……」
迅が倒されたのは本来であれば喜ばしいことである。黒トリガーの奪取に立ちはだかる最も大きな壁が彼なのだから。
ただ、ミサカに倒されたのであれば話は違う。
彼女は
そんな彼女にボーダーの最高戦力の1人が落とされたとあれば彼女の危険度はより一層上がることになるのだ。
それを危惧した根付は彼女を糾弾した。
「どッ…どうなってるんです!た、確か鬼怒田開発室長が彼女のオペレーターを務めていましたねぇ……どうです?彼女の言っていることは嘘ですよねぇ!?」
よほど認めたくないのか、元々彼女と取引をすることに反対の意を示していた根付。ミサカが嘘をついていると考えてオペレーターを務めていた鬼怒田の答弁を求めた。
だが、根付が見たのはばつが悪そうな顔をしている鬼怒田だった。
「それは……確かだ……ワシはこの目で見た。そこの彼女が迅を撃ち抜いたところを……」
「何ですと!?それはただごとじゃないねぇ!城戸司令!彼女は危険です!」
「なるほど……大体理解した。」
城戸は少し納得したような顔で前を向き直る。そこに根付の忠告を聞くようなそぶりはない。
「そして……」
「もう大丈夫だ。報告は以上で終了で問題ない。」
「……いいんですか?まだ最後まで報告をし終えてないのですが。と、ミサカは若干の消化不良な気持ちを抱えながら質問してみます。」
ミサカは続けて報告を開始しようとしたが、それは城戸の一言によって遮られる。
一瞬それで問題ないのかと不審に思うも城戸の目を見たらそんな考えなど霧散して消えた。
それほどまでに決まった目をしていたからだ。
「先ほど君は遠征組と顔合わせさせなかったことに何か意図はあるのか。そう言っていたな?」
城戸の重い口が開く。
彼の言葉には一言ごとにプレッシャーが乗りかかっていた。
ミサカは本能的に感じ取った。ここでの発言に間違いは許されないと。
「はい。事前に顔合わせをしておけば当真との交戦のような無駄はなかったと考えます。」
「……そうだな。だが、今回の作戦での目的は何も玉狛の黒トリガーを手に入れることだけではない。」
「ふむ………となると、他に考えられることとしては……」
ミサカは城戸の発言に頭を悩ませた。
(事前の指令では黒トリガーの奪取及びその作戦を遂行する遠征組の補助だったはず。それ以外にも狙いがあるのに隠していた。つまりは隠さなければ意味がないということ……)
できるはずなのにしない。すなわちしないことに何か意義がある。
そう考えたミサカはある考えが浮かんだ。
(先ほど城戸司令は当真との交戦を想定内と言っていました。普通であれば仲間の同士討ちなど最も愚の行為。だというのにそれを見逃したということは……)
「純粋な戦闘力の確認、と言ったところでしょうか。確かにそれであれば裏目の行動である同士討ちが起こっても最低限の成果は回収できますからね。」
「なるほど……洞察力も申し分ありません。これは
「何?聞いとらんぞ!そんな話!」
「私も聞いてませんよ、城戸司令!」
ミサカがたどり着いた結論は自身の能力の確認というものだった。
ボーダーからしてみれば生身での戦闘はまだしもトリオン体での実力の不確かな彼女をわざわざ連れて行くメリットはない。普通なら時間をかけて確認するところだが、その様子が見られなかったのも判断材料になる。
しかし、こうして作戦に同行させたということは何かを試したかったということではないだろうか。
その結論を聞いた唐沢は城戸にあることを促していた。
「ああ……君の考えている通り、君の戦闘能力とボーダーへの忠誠を確かめるのが目的の一つだ。遠征組への面会を行わなかったのも君1人の力を測るためでもある。」
「加えて、迅への恩があるから攻撃できないのでは、そう考えての行動でもあると。と、ミサカは一定の納得をします。」
「だが、君は躊躇なく迅へ攻撃していた。その点は評価せざるを得ない。とはいえ、本来であれば同士討ちはマイナスと考えるべきだがな。」
ミサカがこうして安定してトリオンを享受できているのは迅の役割が大きかった。
それゆえに恩を感じて彼を狙う手が鈍ってしまう。そんなことはあってはならない。
ただ、ミサカはそんなことをしなかった。
人間としては多少歪だとしても、
「それを差し引いても迅の撃破はかなり
「大きい………」
ふと、唐沢の発言にミサカは引っかかった。
迅の撃破が大きい。
そんな迅の撃破が決め手になったと言わんばかりの言葉。
ミサカの頭を巡るのは迅に狙撃が着弾した時のこと。彼は間違いなく
(まさか………こうなることを見越してッ……)
あの時の不自然な笑み。
迅に狙撃は効果がない。狙撃に成功した瞬間は『どんな話にも例外がある』と結論づけていた。
だが、そんな結論など間違いにも甚だしい。ミサカは自分の思慮の浅さを責めることしかできない。
だって彼は…………
「失礼しま〜す!どうもみなさんお揃いで〜。会議中にすみませんね〜。おや?ミサカちゃん、どうしたの?
未来が視えているのだから。
今話はこの章の振り返りみたいな側面が強いです。
お気づきの方もいますでしょうが、ミサカの喋り方が少し変わりました。
以前はことあるごとにミサカ構文(〜とミサカは・・・します。)とつけていましたが、原作を再確認したところそれなりに頻度は多いものの全文につけている訳でもなかったので変更した次第です。