とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ)   作:さくらぎ おきの

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学園都市からの来訪者編
1、イレギュラー①


 

 

 

 

 

「イコさん!右から追加で来てます!」

「右から接近、了解!」

 

 

 水上はレーダーの反応を元に生駒の右手側から接近する影を捉えた。

 

 自チームの得点源である隊長、生駒を落とすわけにいかない以上、念のためシールドを展開。

 

 だが、

 

 

「隙あり。と、ミサカは超至近距離で王手を宣言します」

「なッ!?」

 

【トリオン供給機関破損 緊急脱出(ベイルアウト)

 

「.....あれま、こりゃあ無理っすわ。イコさん、先待ってます」

「水上ィィィィ!なに年下のカワイコにやられとんねん!」

 

 

 

 部隊の隊長である生駒が囲まれ、防戦一方だと判断した水上が補助のためにシールドを出した瞬間のことだった。

 彼の背後から銃声が聞こえ、振り返る間も無く光の筋へと変わっていく。

 

 先程まで水上がいた場所の少し後方に『彼女』はいた。

 両手に構えられている突撃銃型トリガーからは撃って間もないことを示す硝煙が上がり続けている。

 

 

『おおーっと、御坂隊員!鮮やかな銃捌きで水上隊員を奇襲!これには流石の水上隊員でも苦しかったか!?』

『生駒隊長の援護のためにシールドとアステロイドで両手が埋まっていたのが響きましたね。隙ができるのを待ち続けていた御坂(みさか)隊員の忍耐力には素直に脱帽です』

 

 

 実況の武富と解説の東は、表面上はいつも通りに振る舞っていた。だが、内心はたった今水上を葬った隊員に少々驚愕の念を抱いていた。

 

 はたしてランク戦初参加の隊員が初戦からチーム戦ならではの撃墜をすることができるのだろうか。

 

 

『えーっと、ただいま水上隊員を落とした御坂隊員は今回がランク戦初参加のようですね。ポジションは銃手(ガンナー)。と、あまりデータがありませんねぇ。先程水上隊員を落としたのはおそらくアステロイド弾でしょうか?』

『そうとも言い切れません。例えば追尾機能を切ったハウンド、という可能性もあります。なにしろ、ノーガードの水上隊員を狙った奇襲でしたからね……まあ、そこら辺はおいおいわかっていくことでしょう』

『これはこれは失礼いたしました。さて、ランク戦もまだまだ中盤戦!データの出揃っていない御坂隊員はアドバンテージを生かしていけるのか!今後とも注目していきたいところ!』

 

 

 否、普通はできない。

 

 大概は自分が活躍したい、自分が敵を倒すという念に駆られ、焦り、そして返り討ちに会う場合が多い。

 

 それも、銃手という自力で点をとりにいきにくいポジションであれば尚更のこと。

 だというのに彼女は完璧なタイミングまで待ち続け、相手が全てのカードを切った瞬間に奇襲に成功したのだ。

 

 

「水上隊員を落としました、()()。と、ミサカは自分の成果をひけらかすかのように誇示してみます。」

「「・・・・・・・」」

 

 

 彼女の特徴的な喋り方に他の隊員はあらためて絶句していた。

 

 

「なぜ黙っているのかわかりませんが、まぁいいでしょう。と、ミサカは納得できないながらも許す大人の対応をしてみます」

 

 

 彼女は無表情なのにどこか誇らしげ。

 難なく最初の獲物を討ち取った彼女は戦果報告ののち、次の獲物へと狙いを定める。

 

 

(早めに試合にケリをつけたいですね……いつトリオンが切れるのか……)

 

 

 ボーダーに入隊後、速攻でB級に昇進した彼女は早速ランク戦の舞台に足を運んでいた。

 

 新進気鋭の銃手、それがこの隊員につけられたあだ名。

 

 だが、そんな彼女には一つ、誰にも言えない秘密があった。

 上層部には知られてしまっているが、万が一他の隊員に知られてしまったらボーダーにはきっといられなくなってしまうだろう。

 ボーダーの協力なくして彼女の生活は成り立たない。

 だからこそ彼女は二重の圧に挟まれながらも、今日も戦い続ける。

 

 ()()()()から程遠い、未知の生命エネルギーが存在するこの世界で。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ……」

 

 

 

 

 

 眩しいくらいの光が都市中を照らす中、誰も見向きもしない路地では辺りに人が走る音と息遣いが響いていた。

 日も傾き始め、往来では帰宅する人で溢れている。そんな光景も裏腹に、刻一刻と辺りは暗くなっていく。

 

 一瞬、暗い路地へ光が差し込んだ。

 

 

「.............」

 

 

 短めに切り揃えられた茶髪、清楚な制服少々短めなスカート。そして、それらがまとわせる印象を無に帰すかのような軍事用暗視ゴーグル。

 

 その荒い息の主の正体は1人の少女だった。

 

 少し大人びてはいるもののどこか幼さを感じさせるその風貌。それでいて頭には暗視ゴーグル、両手には全く似合わないアサルトライフルが握られていた。

 

 なぜそんな年端もいかない少女が物騒な装備をしているのか。

 その答えは火を見るよりも明らか。

 

 突如、少女は後方を振り返った。

 

 来る。

 

 そう考える暇もなく、数メートル離れた先に追跡者はいた。

 

 

「くッ!!」

 

 

 持ち合わせていたアサルトライフルで応戦するも、追跡者にはまるで応戦する価値もないかのごとく通用しない。

 むしろ撃った弾丸はこちらに()()()()()()()

 

 返り討ちを喰らったせいか、それとももう逃げられないのを悟ったのか。

 少女は急に立ち止まり、背を翻して正面から向き合った。

 

 

「こんなことで逃げれきれるわけがありませんよね。とミサカは自分の無意味な行動にいささか嫌気を感じます」

「…………」

 

 

 背後には壁、両脇は高い建物の壁がせり立っており袋の鼠状態。

 

 目の前の白い悪魔(一方通行)はしゃべらない。

 ただ彼女に向けたのは人を人とも思わない、まるで害虫でもなく益虫でもない単なる虫を見るかのような目だけだった。

 

 この悪魔には()()()()()()()()()()()()()。否、特殊な武器でもほとんど役に立たないだろう。

 それほどまでに両者には力量差があるのだ。

 

 

(逃げても無駄だとわかっていたのに……体が勝手に動いてしまいました…それもきっと、あの青年のせい…でしょうね…)

 

 

 少女の脳裏に浮かぶのはつい先程まで話していたツンツン頭が印象的な青年。

 

 たまたま捨て猫を介して知り合った、たいして深くもない仲だった。だが、彼とまた会うという約束。その軽い口約束がなぜか少女の記憶に深く刻まれていた。

 

 

「最期に思い出すのが"コレ"ですか…なんていじわるなのでしょう。とミサカは神とかいう非科学的な存在に悪態をついてみます」

 

 

 彼と結んだ約束は果たせそうにない。そんなことは少女がよくわかっている。

 

 今から行われるのは実験という名の一方的虐殺(ワンサイドゲーム)。彼女にはそれを止められるような手段はない。

 

 第一、少女の存在は特殊だった。

 

 

(私は単価18万のボタンを押すだけでできるクローン。こうなることは最初からわかっていました)

 

 

 とある原点(オリジナル)から得たDNAをもとに作られた実験用のクローン。いくら死んでも代わりは文字通りごまんといる上に、追加で別個体を作ることも可能。だからこそ彼女、いや、彼女たちの命の価値は低い。

 

 そして、今、彼女たちはこの白い悪魔のために()()()()することが求められている。

 

 これは高度な演算装置で出された確定したはずの未来であり、覆すことはできない。

 

 それも彼女たちはわかっている。だからこそ、彼女たちには「逃げる」ことはせず「戦う」のだ。普通であれば。

 

 だが、彼女は逃げた。生き残るために。それが無駄なことだとしても。

 

 

(なんなのでしょう、この気持ちは……初めての感覚です)

 

 

 少しだけ、ほんの少しだけ彼との交流は少女の行動パターンにイレギュラーを生んだ。

 

 もし、今日の実験の相手が私ではなく他の個体だったのなら、またはこんな実験なんてなかったとしたら、彼との約束も果たせたのだろうか。

 

 

「すみません。約束は守れそうにありません。とミサカはあの青年に伝わるはずのない謝罪をしてみます。」

「あァ?そォか」

 

 

 たった一言、そう告げたのちに悪魔は彼女の右肩に左手を乗せた。

 

 突如として膨らみ出す彼女の体。

 血液が逆流しているのだ。

 

 人間の肉体には血液が逆流しないようにさまざまな生体機能がある。血管内の弁が逆流を防ぐようにしているのが良い例だ。

 その反応に逆らうようにして莫大な圧力をかけ続けたら?

 

 A、圧力に耐えられなくなった肉体は内部から爆散する。

 

 

(ああ、私はここで死んでしまうのですね。あの猫はだいじょ__________

 

 

 無惨にも最後の思考も儚く砕け散ってしまう。

 ここで彼女のちっぽけな実験のモルモットにすらなれない生命は終わりを迎える

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん‥……」

 

 

 

 二度と迎えるはずのない光に少し目が眩む。

 

 体の節々から伝わる痛みは自分が生きているということを示していた。

 

 

(損傷率1%...普通ではあり得ない....)

 

 

 まず間違いなくあの時、彼女の体は砕け散ったはず。それこそ文字通り、一つの破片も残さず。

 

 だが、こうして五体満足とは言わずとも四肢の欠損はおろか、目立った外傷もない。

 

 あるのは少しの筋肉痛程度のもの。

 

 

「何が起きたのでしょう。と、ミサカは冷静に目の前の珍奇な状況を分析してみます」

 

 

 と一言漏らすと同時に、辺りを見回してみる。

 

 服は血の染みなんてものはなく多少のすすがついているくらい。

 頭にあるずっしりとした重みは暗視ゴーグルの存在を示していた。

 

 ただ、一方通行(アクセラレータ)との戦闘に用いたアサルトライフルだけは手元に無かった。

 

 

(周りは日本様式の家ばかり。暫定日本というところ……)

 

 

 彼女が今いるのは住宅街の道路のど真ん中。

 あたりに見える家の配置と建築様式をみる限り、ここは日本と見て間違いないだろう。

 加えて太陽の昇り方と人気のなさから、きっと今は昼の時間帯。

 

 

「もしかしたらここは()()()()の外側なのかもしれませんね。と、ミサカは未知の新天地に戦慄します」

 

 

 彼女がかつて活動していた都市、『学園都市』は他の都市と隔離されていた。

 

 出入りにはそれ相応の理由と許可証が必要となる。

 

 そもそもクローンという前代未聞の先端技術の結晶が堂々と学園都市の管轄外に出られるわけもなく……

 

 彼女は今の今まで学園都市外に出たことなんて無かった。

 

 彼女自身、出ようと思うこともなかったが。

 

 

「ただ…………」

 

 

 一つ、ただ一つだけ、自分の知っている日本とは違うものがあった。

 

 学園都市ではない日本の都市であのような建物は見たことがない。

 

 つまり、ここは日本のようで()()()()()

 

 

「あの四角い豆腐の建物はなんなのでしょう。と、ミサカは率直な疑問を浮かべてみます」

 

 

 少し離れているくらいでは見えなくはならない。

 

 それくらい大きく、白く、四角い建物が彼女の目に映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






※一応概略


御坂(妹)

『とある魔術の禁書目録』では妹達(シスターズ)編より、『とある科学の超電磁砲』では欠陥電気(レディオノイズ)編より登場。

御坂美琴の量産型クローン「妹達(シスターズ)」の一人。

10031回の一方通行との戦闘経験をミサカネットワークを介して共有しているため、体術は素人程度なら寄せつけないレベルで強い。

流石に電撃はシスターズの一員のため能力は落ちているものの、ハッキングをしたり一般的な服装の相手であれば倒せる。そこら辺の不良学生程度なら容易に撃退してしまうことができる。

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