とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ) 作:さくらぎ おきの
独自解釈を先に誤っておきますね。
むかしむかし、あるところに1人の少女と彼女のたくさんの妹がいました
たくさん、と言っても常軌を逸した数
姉妹と形容するにはありにも異質で、極端で、そして脆い
そもそも彼女達が生まれてしまったのは、1人の姉の幼きゆえの判断のせい
妹達は気にしていませんでしたが、姉にとってはその事実が楔となって永劫に心に留まっていました
少女には電気を発生させ操る力がありました
力、と言ってもその当時は微弱なものでしかありませんでしたがそれでも力は力です
あるとき、1人の科学者が少女の元を訪れます
科学者は言いました
その力は医療に活用できる。筋ジストロフィーのような難病も電気治療で治すことができるようになるかもしれない、と
少女は内心喜びました
こんな自分の非力な力でも誰かのために役に立てるのだ、と
しかし、そんな淡い期待も泡沫の夢に消えていきます
医療用として提供したDNAマップをもとに妹達は生まれたのです
単価18万円の使い勝手の良いクローンとして
姉はその事実を受けてこのように思いました
私のせいで彼女達が生まれて、そして死ぬ
そう、彼女達は実験のためのモルモット以下の存在として造られたのです
ある1人の、たった1人の男のために彼女達は死んでゆく
実験と称してその男と戦い、2万体の妹達が死ぬことで目的は達成されます
少女は自分自身を責め、たった1人で数万体もいる私たちを救おうとしました
ですが、その男と周りを取り巻く様々な策略が止まることはありませんでした
いかにその少女が力を持っていたとしても上には上がいるというものです
ある時、少女は件の男に一騎討ちを挑みます
結果はなすすべもなく惨敗
妹達の弁明により少女は命を繋ぎます
生き残った少女は問いました
何故死ぬとわかっていて実験に従い続けているのか、妹達は皆"生きている"のに、と
しかし、妹達にとってはそれが"当たり前のこと"なのですから何故その質問をされたかが分かりませんでした
実験を通して死ぬことが妹達にとっての生まれた意味である、そう妹達は告げました
妹達と
ただ、ひとつだけ
それは、「死」が人に与える影響には計り知れない何かが存在するということです
ちなみにその後の彼女ことはわかりません
果たしてあの男の実験を止めることができたのでしょうか
それとも、誰かが止めてくれたりしているのでしょうか
非常に楽観的で、希望的で、あまりにもお姉様にとって都合の良いハッピーエンドではありますが、あり得る未来のような気がします
何やら裏でコソコソしているのはある程度把握していましたが、その意図と目的を把握する前にミサカは.....
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「いえ、わかりますよ。ミサカも何人も家族を失っていますから。と、ミサカはあくまで事象として淡々と述べてみます。」
ただ淡々と結果を伝えるように身内の訃報を告げるミサカ。その姿はあまりにも無機質だった。
見透かしたような双眸は焦る三輪を勢いよく貫いていく。
「........お前が?」
「ええ、今でも鮮明に覚えていますよ。なんでしたら今ここで話してみましょうか?」
「.............いや.......いい。」
一瞬の疑いののち、三輪は彼女の申し出を断った。流石に聞くことが憚られたようで、息を払うように拒否の意思を示す。
申し出を断った理由は良心だけではない。
割り切っているのか、それともすでに立ち直っているのか。
あまりにも淡白に話す様に彼女の話していることの真実性を見出したからだ。
そして同時に気づく。
「..........そうか、やはり
「何がやはりなのでしょうか。と、ミサカは発言の意図を求めます。」
「先ほどの言葉は訂正しよう。お前は俺の痛みをわかっているのかもしれない。だが、わかっている『だけ』だ。うわべだけ、表面上だけだ。」
あまりにも身内が死んだにしては軽かったこと。そして彼女の淡々とした興味が全くないスタンス。
今まで同情の目を、哀れみの視線を向けられる機会の多かった身であるためか、三輪はそういった行為に敏感だった。皮肉にも相手がそれらの感情を持っているかどうかは容易にわかる。
「ずっとお前からは同情はおろか共感すらも感じられない。」
『わかる』と『理解する』は似ているが明確な違いがいある。
『わかる』ということは、存在や概念を知識として知覚すること。
一方で『理解する』ということは『わかる』を前提とし、その知識を応用できるように自分の中で噛み砕くことを示す。
ただ『わかる』だけでは当然その知識を活かすことができない。
他人との関わりを積極的に断たれていたミサカにとって知識を活かす経験は存在しない。
ミサカにとっては『身内が死ぬ辛さ』を知ってはいても、その気持ちからどう行動に移すべきかわからないのだ。
死を悼むことも自分を呪うことも復讐心を持つことも彼女には無い。
「そんなお前に何を言っても時間の無駄だということだ。わかったか、
三輪は言い切った。拒絶の意味を込めてそう言い放ったのだ。
これ以上踏み込んでくるなというラインをはっきりと示すように。
目の前の
数秒間の静寂。
冷たい少女は喋らない。ただ、青年の猛き思いを聞き取るだけだった。
そして徐に彼女は口を開く。
「なるほど、貴方は共感してもらって、慰めてもらって、そして楽になりたかったんですね。と、ミサカははっきりと相手に見えるように頷きをしつつ自分なりの解釈を述べてみます。」
「なッ…………」
「違いますか?ミサカの目にはそのようにしか見えません。と、ミサカは追い打ちをかけるように語りかけてみます。」
たったひとつ。
たったひとつの吐き捨てた言葉。
だが、その少女の感想は三輪の心を大きく揺さぶった。
「違う………違う……違う違う違う!……そんなはずがないッ!」
「そうですか。では、
青年は言った。
自分と同じくお前も誰かを殺したいほど憎んだ経験はあるか、と。
青年は言った。
「どちらも自分と重ね合わせようとしていませんか?どのくらい自分は可哀想でどれほど自分は無力であったか。それらを共有したいだけのように見えましたが?」
ミサカは一切の躊躇なくそう言い放った。
そこに同情なんかの生やさしい薄っぺらい感情もなければ、慮る広い器があるのでもない
ただ、つらつらと根拠を述べて逃げ道を塞いでいく。
そんな彼女の姿がそこにはあった。
「違う……違うはずなんだッ……」
「いいえ、違いません。今確信に変わりました。」
「な、何をする!放せ
突然、素早い動きで三輪の元に近づき右腕を掴んだミサカ。
そう、彼女には生体電気を感じ取り、計測する手段と知識がある。
「正常な脈拍より数段早い拍動。加えて汗腺に神経から過剰に分泌されたホルモン物質が伝達しているのを観測しました。これでも否定しますか?」
人間の体は人間自身が想定しているよりも単純である。
刺激を感じれば体は戦闘状態に突入し心拍数を上げるように、三輪もまた動揺をきっかけに拭いきれないほどの汗が出かかっていた。
それを見逃すようなミサカであるはずもなく
「いいですか。もう一度言います。貴方は共感に、同情に、そして慰めに飢えています。と、ミサカは念を押すように貴方にもう一度投げかけます。」
「………………」
三輪にはもう言い返す力はなかった。
自分の抱えていた感情と隠れていた欲望を開かれた状態にされたのだから無理はない。
何も彼女は三輪の
その裏にはどこか『頑張ったね』だとか『大変だったな』等の言葉を投げかけて欲しかった。そんな欲望があった。ただそれだけの話。
だが三輪は自覚してしまった。
自分のある意味一途であった怒りの裏にはそんなものがあったのだ、と。
自分の思いの根幹には醜い欲望が渦巻いていたのだ、と。
少女の放った言葉は三輪の心に楔を深く打ち込んだ。
そうなってしまった三輪は俯くことしかできなかった。
もはや少女に、ましてや憎んでいたはずの
今まで頼りにしてきた、歩むべき道筋を照らしていた精神の柱を否定された。そんな気分だった。
(俺には………そんなカスみたいな…………)
もう話す気力すらもない。ただうずくまって無駄な時間を過ごすだけ。
そう思われた瞬間のことだった。
「…………ジェームズ・ランゲ説、というものを知っていますか?」
少女は言葉を淡々と紡ぐ
「人間は『悲しいから泣くのだ』なのではなく『泣くから悲しいのだ』、と定説であれば"感情から身体的行動へ"となるはずの流れが実は"身体的行動から感情の変化へ"という流れであると提唱したものです。」
青年は黙ってそれを聞くだけだった
「まず決して貴方の思いを愚弄するつもりはない、とだけ先に言っておきます。その上でなぜこの説を今持ち上げたかについて説明させてください。」
青年の下を向く姿は変わる様子を見せない
「
だが青年は、
と思ったのも束の間。彼はハッとしたように表情を一瞬だけ変え、すぐさま元の顔に戻ってしまった。
「この説は確かに心理学界に大きな波紋を起こしました。ですが、一般市民には広く馴染まなかったようです。なぜなら、順番なんて市民にとっては
結局のところ、そういう欲望があったからなんだ。それがどうしたというのだ。
「むしろ純粋な恨みだけ、というのもいささか生物として不自然であると言わざるを得ません。」
人間は様々な感情で渦巻かれている。
冷静さも感謝も幸福感ももちろん怒りも。
だからこそ一つだけの感情に囚われているだけの人間など存在しない、と彼女は言う。
「迅、先ほどからそこにいるのはわかっています。盗み聞きなんて古典的な手口を使っていないで出てきなさい。と、ミサカは薄っぺらい男に釘を刺します。」
「…………あちゃー、いつからバレてたの?いやーごめんごめん。」
「むしろ呼んでくださいと言わんばかりの胡散臭さでしたが?ほら、早くこっちにきてください。」
突然、ミサカはドアの方に振り返り、ある男を呼ぶ。
三輪の過去を三輪自身を除く誰よりも知っているその男はミサカに呼び出されるまま、言われるがままに。
そのままその男の服の襟を結構な強さで引っ張って顔を寄せた。2人の顔が三輪の視界にきっちりと収まるように。その行為が最も大事であると言わんばかりに。
そして彼女は三輪の方を向いた。
「貴方の抱えているものは本質だけ見ればいたって普通の人間と変わりません」
「確かにきっかけは残酷だったものかもしれませんが、他の単純な欲望がそれにまとわりついているだけ」
「辛い時は辛い。それでいいと思います。ミサカも最近、その言葉をもらいました。いわば受け売りです。」
「その時は、
「この男にも、それにミサカにも、他には鬼怒田さんや根付さんにも。共感する、同情する、協力する、理解し合う。それくらいのことならきっとミサカ達にもできるはずです。と、ミサカは無責任と自覚はしていますがそれでも言うべきと感じたことをそのまま伝えてみます」
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「今日は本当にありがとな。おかげで未来は大分良い方に向かってる。」
「なんですか、突然。」
「いーや。なんでもない。とりあえず感謝だけでもな。」
「礼には及びませんよ、とミサカは自分の功績を噛み締めつつあくまで謙遜を貫き通します。もし恩義を感じているなら開発室への差し入れをお願いします。」
「また差し入れかよ……」
「嫌なんですか?普段からお世話になっているはずなのでは?」
「いや………やたらお前が買うのは高いものばっかだから心臓に悪いんだよ………」
「ふむ、心拍に問題ありだったとは私ともあろうものがなんたる失態。と、ミサカは過去の自分に落胆の意を示します。」
「そういうことじゃなくてだなぁ……」
「ジョークです。冗談を真に受けないでください。」
「…………ぷっw」
「む。何がおかしいというのですか。」
少女はどこか不満げな様相で隣にいる男を見つめた。
「やっぱり変わったよ。ここにきた時は『無』って感じだったし。」
「………???」
もはやここにいる彼女はかつての彼女とは違うのかもしれない。
この世界とは違う、別の世界で生まれ続けている彼女の同一存在達とは。
「俺から言わせれば、今のお前のほうがよっぽど人間みがあるよ。」
「そうですか。と、ミサカはいまいち理解はしていないながらもとりあえず相槌だけは打っておきます。」
「あはは………お前らしいよ。今は、それでいいか、な。」
迅はふと浮かんだ疑問を飲み込んで無かったことにした。
「カッコつけなくていいですよ、迅。今回美味しいところは私が持っていきましたから。」
「ったく。最後くらいカッコつけさせろよな………」
お前はここに来る前に一体何があった________?
お久しぶりです。投稿が遅れてしまい誠に申し訳ございません。
構想自体はねれていたのですが諸々の事情で書くことのできない日が多くこのような形になってしまいました。
一応生存はしているということでどうにかお許しをいただけますか?いただけますかねぇ……
とまぁ、謝罪はここまでにしておいて。
一旦、これにて入隊前の色々については終わりとなります。もっと書きたいところもありましたが、その辺はいつかまたIFやサイドストーリーとして出していければいいなぁと考えています。
いよいよボーダー正式入隊に向けて動き出すミサカ。もちろん動き出すのは彼女だけではなく上層部の面々やあのメンバー達も!
次回、ボーダー正式入隊および個人ランク戦に向けて、トリガー・オン!