とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ) 作:さくらぎ おきの
「結局ミサカはこうなってしまうのですね。と、ミサカはほとほとため息をついてみます。はぁ.......」
「なーにがため息だ。あんだけの腕見せといて銃手はねぇだろ。」
「そもそも貴方がッ....
「ほーれ着いたぞ。ほら、オマエの居場所はあそこだ。C級隊員がいっぱいいんだろ?」
心なしか彼女の顔には呆れた、そして諦めたような顔が見える。
絶賛新米隊員であるミサカが今訪れているのは狙撃手用訓練室。
当然と言えば当然。
一方でスナイパーは接敵する前に『戦闘を終える』
その点の違いを考えれば、場所を分けて違う内容の指導をするのは理にかなっていると言える。
ふと、ミサカは当真に指し示された場所を見た。
そこには7人のC級隊員がすでに全員並んでおり、A級の当真と遅れてやってきた彼女の方を呆れた目で見ている。
他にはロン毛の大人やキャップを被った青年もいたが、当真が一緒だということもあってか特に気にした様子はない。
「貴方のせいで変な注目を浴びてしまったではないですか、とミサカは貴方に余計なことをするなと釘をさしてみます」
「いやいや、勝手に俺のせいにすんなっつーの。何よりお前の妙に落ち着いてる態度がわりぃんだよ」
「そんなはずは………」
それこそ難癖である当真の指摘が正しいはずがない。そう考えたミサカは他の隊員たちの様子を少し観察する。
緊張のせいかそわそわしている者。
先ほどの忍田本部長の宣言にあてられ、妙に張り切っている者。
これから実際にトリガーに触れるということもあってか抑えきれずにうずうずしている者。
みな多様な態度をとっていたが、その中で彼女ほど落ち着いている様子の隊員はいなかった。
ただ、1人を除いて。
「さぁ〜
先ほどの嵐山の説明で紹介されていた佐鳥が
もちろん、その中にミサカもきちんと含まれている。
だが、その人数は適切ではなかった。
「横から失礼します。その人数は誤りです。と、ミサカは話を遮ってしまったことに謝罪をしつつ、人数の訂正を進言します」
「ん?え〜と……ひぃ、ふぅ、みぃ……8人であってると思うけど」
「あ、あの〜……9人です……」
すると、1人の小柄な少女が他の隊員の陰から身を乗り出した。
佐鳥が数え間違えてしまうのも無理はない。
その小さな体躯ゆえか、完全に他の隊員の陰に覆われてしまっていたからだ。
一方ミサカは横からその姿を捉えていたため、彼女のこともしっかりと把握できていたのだ。
「おぉっと!女の子を見逃すとはごめん!9人ね!そこの彼女もサンキューね!」
「いえ。貴方も大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます……」
佐鳥の勘違いもあってか場の雰囲気が少々怪しくなってしまったが、ミサカにとってはそんなことはどうでも良かった。
先ほど、ミサカを除いて1人だけ落ち着いている隊員がいた。それがその小さな少女だった。
場慣れしている、と言って仕舞えばそれまでなのだが、それにしては訓練そのものに慣れている、そんなことまで考えさせられる。
普通の人間からしてみればトリガーを扱うのは初めてのことであり、多少の期待や羨望は当たり前。
それなのに平然でいられると言うことはミサカ同様、訓練を経験したことのある者だ。
(私が言えたことではありませんがあんな小さな子がトリガーを前にして冷静でいられるなんて信じられませんね)
ミサカは素直に感嘆した。
他のC級隊員を見る限り、訓練をこれから受けるにあたってあまりにも気の抜けている隊員が多かったからだ。
だが、落ち着いているからといって他の隊員たちから注目を集めてしまったのは事実。
一応、ミサカはいない子認定されてしまった少女にも気を配っておくことにした。
その行動は彼女の気まぐれだったのかもしれない。
これから一時的にボーダー隊員の仲間としてやっていく少女なのだから、ある程度のコミュニケーションくらいはとっておくのもやぶさかではなかった。
そんな気まぐれ。
だが、そんなミサカの気配りも虚しく少女はミサカの顔を見るや否や顔色を悪くし、一言だけ礼を言ってその場を離れてしまった。
礼の言葉も尻すぼみになってしまい、早く会話を切り上げたい、そんな気持ちも感じ取れる。
「あーあー、怖がらせちまって。入隊早々オマエに目ぇつけられるなんておぉカワイソ〜」
「冷やかさないでください、とミサカは彼女の化け物でもみるような対応にショックを受けていることに対して愚痴をこぼしてみます。というか、いつまでここにいるんですか」
「別にいいだろ?むしろ友達ができない可哀想な後輩に目ぇかけてやってんだぜ?礼くらい言ってほしいもんだ」
一連の会話を見ていた当真は揶揄うようにミサカに横から声をかけた。
すでにミサカの案内という役目は果たしたはず。それなのに依然としてこの場を離れようとしない彼の行動にミサカは不満とうざったい気持ちを吐露した。
もしかしたら、先ほどの憂さ晴らしの側面もあったかもしれない。
「余計なお世話です。それにこれから訓練兼指導もあるのですから離してください」
「はいはい、邪魔者はこっそりと陰でみてますよ〜っと」
「それを言ってしまってはこっそりの意味がないのでは……」
ミサカのツッコミも虚しく、当真は言われた通りにその場をあっさりと離れていった。
その際に『訓練とかそんなもんオマエには必要なくね?』というような顔をしていた様な気がしたが、きっとそれは気のせいなのだろう。
気を取り直してミサカは他のC級隊員達と一緒に主に佐鳥から
そして彼女は佐鳥の話を片耳に入れつつ、1人の隊員から決して目を離さなかった。
自分を見て顔色を悪くし、それでいて場慣れしている不思議な少女から。
△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼
「はいオッケー。ってことでライトニングとイーグレットの性能は今見てもらった感じ。最後に紹介するのはこれ!」
訓練、とは言ってもまだC級隊員は素人も素人。
まずは
今行われているのはそのトリガーの紹介と実際に体験させて身をもって覚えてもらう。そういった指導だった。
射程、威力、弾速ともに優れるイーグレット
威力を削る代わりに弾速が増した速射型のライトニング
「そして弾速が遅くなる代わりに威力と射程が優秀な対大型
C級隊員達の視線が佐鳥の持っている黒い大型の狙撃銃に吸い込まれていく。
大きなフォルムに長い銃身。いかにもな狙撃銃に一同は心を奪われている様だった。
そんな注目を取り払うように佐鳥は先ほどと同じく、1人隊員を適当に選んで試し撃ちをさせることに。
「え〜っと、じゃあ……君に試してもらおっか!」
「ひ、ひゃいっ!」
選ばれたのはなんと先ほどの小柄な少女だった。
まさか選ばれると思っていなかったのか、彼女は素っ頓狂な声をあげて佐鳥の誘いに反応していた。
まるでアイビスよりも小さいのではないかと思わせる慌てっぷりにミサカは先ほどの評価を改めた。
(より彼女のことがわからなくなりました。肝が据わっているのかと思えば意外と小心者。一体どうなっているのでしょうか)
少女のチグハグな行動にミサカは振り回されるままにあった。
武器トリガーに対して平然としていたかと思えば、自分と面と向かった時には怯えていたり、しまいにはアイビスに振り回される始末。
なんやかんやあってこちらの世界に来て時間がたっているのだ。自分の感覚も多少鈍っているのかもしれない。
ミサカはそう考えて自分を納得させた。
だが、そんな思考も払拭されるにはそれほど時間はかからなかった。
「あの、」
「ん?どうした?」
「撃った後、走らなくてもいいんですか?」
「「「!?」」」
彼女の質問は聞く人によってはふざけていると思われるかもしれない。
現に他のC級隊員は笑っていたり、狙撃手の役割は狙撃することであって走ることではないと言ったりと、何かおかしな者でも見ているかの様な反応だ。
しかし、その場のB級以上の
ロン毛の大人こと
ミサカも彼らと同じく確信した。
あの少女は明らかに誰かから狙撃を教わっている、と。
(間違いありません。たった今確信にかわりました。彼女は、彼女だけはC級隊員の身ですでに狙撃手用トリガーの訓練を履修していますね)
相手を仕留め損なうこと
否
ターゲットを見失うこと
否
(狙撃手の最も恐れること、それは
狙撃手は何も相手を撃ち抜くことだけが仕事とは限らない。
例えば狙撃銃には大抵、遠視用のスコープがついている。
つまり、狙撃手は部隊の中で唯一大局を見極める視覚という情報を得られるのだ。
最悪敵を撃ち抜くことができなくとも、盤面全体の情報を集めるというだけでもかなり大きな役目を果たせる。
だが、それも位置を見破られなければの話。
もし狙撃手の位置がバレれば接近戦に弱いという性質上真っ先に狙われる。
優秀な駒だということは相手にとっては厄介な存在だということに他ならない。
数発ごとに狙撃手は狙撃ポイントを変えなければならない。
だから、走るのだ。
(それを狙撃の素人が知っているということは、普通は事前に誰かが彼女に教えた以外には考えられません)
ミサカの少女を見る目が変わる。
こちらの世界の普通に見える少女が実は狙撃の基礎を叩き込まれていた。
そんな彼女の狙撃がどれほどのものなのか。
そんな期待を胸に、アイビスを構える少女を無機質な目でじっと見つめていた
「よし、じゃあ君にはあの大型
「はい!」
佐鳥の合図を皮切りに、少女はアイビスのスコープを覗き狙いを絞る。
お手なみ拝見と言わんばかりのミサカの視線。
「3!」
佐鳥のカウントが始まる
「2!」
少女の狙いは寸分の違いもない
「1!」
引き金に指が触れる
「
……………
「は?」
辺りが閃光で包まれ、その場にいた隊員達は目を見開く。
そして目の間に広がる光景に口を開けたまま何も言えずにいた。
その場にあったのは顔面を真っ青にして振り返っている少女の姿。
「ご、ごめんなさい………」
彼女がそうなってしまうのも仕方がない。
地面は抉れ、ボーダー本部の分厚い対