とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ)   作:さくらぎ おきの

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度重なる誤字報告、本当にありがとうございます……


3、イレギュラー③

 

 

 

 

 槍使いの青年、米屋陽介(よねやようすけ)は一抹の違和感を感じていた。

 

 現に相対している少女は果たして近界民(ネイバー)なのか。

 自分たちは彼女が確かに近界民(ネイバー)の出現口となるゲートから出てきたのを見た。なぜか仰向けの状態で出現していたが。

 

 先ほどから熾烈な戦いを繰り広げているが、こちらは一度も攻撃を喰らっていない。

 それは決して被弾していないわけではないのだ。言うなれば()()()()()()()()()というところか。

 

 彼女は回し蹴りや当て身投げなどで体勢を崩し、おそらく電撃と思われるもので攻撃をしてくる。

 

 だが、米屋が換装しているトリオン体はトリオン以外の攻撃を通さない。もし、換装していなかったら初動の何回かで敗北していただろう。

 

 そこから導かれる結論は、

 

 

(コイツ、()()で戦ってんのか!?トリオン体に追いつく身体能力とかなんつー身体能力だよ!)

 

 

 トリオン体のもつ特徴はトリオン攻撃以外を通さない機能だけではない。その一つとして身体能力の向上が挙げられる。

 

 換装者が子供であろうと、成人男性を持ち上げられるほどの力を得られると考えればその強力さが窺える。

 

 ただ、その力も彼女は利用する。

 

 

(それだけじゃねぇ…()()()()()()()()!)

 

 

 まるで自分よりも強大な力を持つ敵との戦闘に慣れているかのような。

 決して一朝一夕には身につかないであろう巧さがそこにあった。

 

 そして、もう一つ。もし彼女が近界民で無いのならこの身のこなしは一体なんなのか。

 

 

(おいおい、マジかよ!さっきから決定打が一回も当たらねぇ!)

 

 

 先ほどから米屋の攻撃が完全に見切られているのだ。

 

 薙ぎ、振り下ろし、フェイント。

 

 それだけでなく、槍の柄を利用した攻撃も織り交ぜながら攻め込んでいる。

 

 致命傷だけは避けて、直接致命打に関係しなそうな攻撃は"受けて"いなす。

 戦場における判断能力がずば抜けて高いのは火を見るよりも明らかだった。

 

 

章平(しょうへい)奈良坂(ならさか)!打てるタイミングになったら打て!』

『ダメだ。こちらの射線がわかっているのか、ソイツはお前に隠れる形で立ち回っている』

『こちらも同じです。通信でタイミングを言うたびに米屋先輩の陰に入って狙えません!』

 

 

 仲間に通信をとってみるも、芳しい答えはえられない。

 

 米屋の仲間は何も銃使いの青年、三輪秀次(みわしゅうじ)だけではない。

 彼の所属する部隊にはスナイパーもおり、それが古寺章平(こでらしょうへい)奈良坂透(ならさかとおる)

 

 どちらも性格無比なスナイプで敵を撃ち落とすのだが、()()()()撃たせてもらえていないのだ。

 

 

『相手は生身だ!一発掠ったらそれでOKなんだよな!?奈良坂の狙撃なら俺の体を掻い潜って狙撃できるんじゃねえのか……よッ!』

『その通りだが、完全に陰に隠れられていると無理だな』

『米屋先輩……僕は……?』

 

 

 彼らの所属するボーダーで作られた武器は対トリオン体用に設計されているため、生身の人間にあてることをメインに考えているわけではない。

 

 一応セーフティー機能が施されており、攻撃を生身で喰らった場合激痛を伴う代わりに気絶ですむ。

 

 だからこそ、一発でいい。一発、掠りさえすれば気絶させられる。

 ただ、その一発を当てる隙がない。

 

 攻撃されないが、攻めきれない。そんなもどかしい時間が続いていた。

 

 

『もういい!コイツには鉛弾(レッドバレット)が効かない。俺が直接行く!』

『へいへい。お楽しみはもう終わりだな』

 

 

 それに痺れを切らした三輪が参戦。

 彼のよく使う鉛弾はトリオン体に直接(おもり)をつける。すなわち生身である彼女には全く作用しないのだ。

 

 先ほどから銃撃で中距離から相手の行動を制限していたが、例に漏れず米屋を利用されてろくな牽制になっていなかった。

 

 三輪は中距離も近距離もこなせる万能種(オールラウンダー)

 

 ここからは少女にとって実質1対2の絶望的な状況。だが、彼女の顔は依然として変わらない無表情のまま。

 その曇りしかない黒い双眸は常に戦況を見越している。

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

(どうやらこちらの攻撃が一切通っていないようですね。だと言うのにあちらの攻撃は気にしないといけません。)

 

 

 一方、少女は少女で攻めあぐねていた。

 こちらの虎の子である超能力の電撃も効いている様子がないし、物理攻撃でも多少怯むくらいで手応えがまるでない。

 

 そして、一番厄介なのは狙撃手の存在。

 目の前にいる彼らはどこかにいる仲間に通信を用いて狙撃のタイミングを狙っている。

 

 他にも中距離で定期的に牽制をしてくる奴もいるから尚更鬱陶しい。

 

 それ自体は相手側の通信に電子介入して盗み聞きできているため問題ないが、その()()がめんどくさいのだ。

 

 撃ってはこない。だが、狙われていると言うだけで意識の何割かがそれに割かれてしまう。

 

 

「………ッッ!!」

 

 

 躱わす、受ける、流す、カウンター。

 

 その一連の行動を続けて反撃の隙を窺おう。

 そう考えていた時だった。

 

 

「俺を忘れていないか!近界民(ネイバー)!」

「忘れてなんかいませんよ。構って欲しいのですか?と、ミサカは見え見えの挑発を仕掛けます」

「黙れ……黙れ黙れェ!」

 

 

 腰の剣を抜いた三輪が彼女を切りにかかった。

 

 先ほどまで牽制に努めていたはずの彼が急に接近戦に参加してきて多少驚きはしたものの、依然彼女の顔はうんともすんとも言わない。

 

 

(まぁ、その方が遮蔽物が増えて助かります)

 

 

 先ほどから彼女は近くにいる敵によって。身を狙撃から守っていた。

 その壁が単純に2倍になったのだから、狙撃についてほんの少し警戒を解いても問題はない。

 

 

(しかし、防御面はよくても攻撃面をどうにかしないとキリがありません……)

 

 

 狙撃は通信を傍受すれば今のところなんとかはなる。接近戦も無論。

 むしろ狙撃に注意を割かれていた分を攻撃に回せると考えれば次はこちらのターンなのだが……

 

 

「"コレ"が効かないのは少々誤算でしたね。と、ミサカは想定外を口にだしてみます」

「こっちも相手が電気を使うなんて想定外だっつーの!ま、運がなかったってことで!」

 

 

 彼女の御坂美琴(オリジナル)から劣化継承した武器である電撃。

 いくら劣化とはいえ人間1人を圧倒できないほど弱くはない。いつも通りであればくらったら即KOなはずなのに。

 

 

(相手の反応を見る限り、耐えている……というよりもそもそも効いていないですね……)

 

 

 先ほどから電撃の攻撃を仕掛けているものの、体の外側に薄い壁があるかのように受け流されているように見える。

 打撃攻撃もそうだ。だいぶ重い攻撃を仕掛けているが何かに阻まれている感覚がある。

 

 であれば相手達は何かしらの壁を纏っていると考えるのが妥当だろう。

 

 

「おいおい、どうした近界民(ネイバー)!手も足も出ないか!」

「うるさいですよ。と、ミサカは冷静に忠告してあげます。」

 

 

 少女は得物をもっていない。彼らのように剣や槍を持っているわけでもなければ、転移してくる前に持っていたアサルトライフルもない。

 

 今、持っている武器は電気を操る能力とその身に宿る身体能力だけ。

 電撃が封じられてしまえば彼女はなすすべなく負けてしまうのか。

 

 否。

 

 彼女が敬愛する意味上の姉、御坂美琴が学園都市にてなぜトップレベルの超能力者として扱われるのか。

 

 答えは簡単、その()()()にある。

 

 彼女の能力の真髄は電撃ではなく電気を操ること。攻撃以外にももちろん利用できる。

 

 例えば、抵抗熱。

 

 もし彼らを覆っているであろう壁の電気抵抗力が高ければ電気の強さ次第では莫大な量の熱を発生させられる。

 ただ、その方法は御坂美琴はまだしも彼女にはできない。電力依存なため劣化コピーなのがどうしても痛手になってしまう。

 

 ならば、他に取れる方法は……

 

 

(人のいない街、今いる場所は……使われていない駅の構内!!)

 

 

 一瞬、ほんの一瞬だけ彼女の口角が上がった。ただ、口角だけが上がったため少々不自然な顔つきになってしまったが。

 

 

(お姉様、少しだけ借ります)

「戦闘中に考え事だなんて余裕だな!」

「ええ、あなた達を完封する方法を考えていました。と、ミサカは勝者の余裕を突きつけてみます」

「何!?そう言うなら見せてもらおうじゃん!」

 

 

 三輪は怪訝な顔をした。単刀直入に勝利を宣言されたから。

 米屋は期待で胸を昂らせた。先程まで防御に徹していた彼女が攻勢に移ろうとしているのだから。

 

 だが、その期待が叶えられることはない。

 

 

「まずは逃げの一手。と、ミサカは宣戦布告したのにも関わらず敵前逃亡します。」

「は?おい!ちょっと待てっつーの!」

「何!?逃げるな!近界民(ネイバー)!」

 

 

 彼女は一目散に逃げ出した。先程戦っていた彼らを放っておいて。

 急な頓珍漢な行動に彼らは目をまるくするものの、すぐに気を取り直して追跡。

 

 だが、この状況は三輪達側にとって有利。

 

 なぜなら、米屋もまた()()()()()()()()()()()から。

 

 

「ようやく槍を振る余裕ができたぜ!"旋空弧月"!!」

 

 

 突如として、米屋の槍が振り下ろされた瞬間に斬撃が飛び出してきた。

 

 まさか斬撃が飛んでくると思っていなかったのだろうか。まともにくらってしまったかのように見える。

 

 それは周りの遮蔽物ごと切り裂きながら彼女を襲う_____!!

 

 粉塵を巻き上げながら崩れていく駅。

 これで、スナイパー達が全方向から射撃をできるようになり、完全に射線を切ることができなくなってしまった。

 言うなれば後戻りの状態。彼女はまた防戦一方な展開に持ち込まれるか………と、思われた。

 

 

「米屋、畳み掛けるぞ。ここで確実にアイツを殺す。」

「りょーかい。んじゃあまあ、くだばれ……よッと!」

 

 

 先ほどの斬撃をまともにくらって仕舞えば、そう簡単に動けまい。今のうちに方をつけてしまおう。たとえ反撃に移れたとしても、こちらには通らないのだから問題ない。そう、2人は考えていた。

 

 その思考こそが彼女の罠だと言うことに気付かずに。

 

 

「それを()()()()()()()。と、ミサカはここに勝利を宣言してみます。」

「「何ッ!!」」

 

 

 気づいてももう遅い。

 

 ここは今はもう使われていない廃駅。建物の至る所には金属、主に鉄が使われている。

 普段通りであれば鉄同士は硬い固定技術で固められている。だが、今は度重なる攻撃の余波と先ほどの斬撃で大破している。

 

 バラバラになった鉄に電気を流すことでそれらは互いを惹きつけ合う磁力を手に入れる__!!

 

 

「がッッ……」

「お、おのれ、近界民(ネイバー)ァァ!!」

 

 

 電磁力を手に入れた鉄たちは彼女の電気の力によって作られた道に従い、彼らにまとわりついた。

 

 三輪は()()()同じやられ方をしたのが気に食わなかったのか苦肉の表情を浮かべた。

 

 1立方メートルにおける鉄の平均的な重さは7・78トン。流石にそこまでは操れなかったがトリオン体によって強化された彼らの体の動きを制限するのには十分だった。

 

 もちろん変な動きはできないように、手首周辺には入念に鉄をくっつけておく。

 これで彼らは誰かの手助けなく解放される術をなくしたことになる。

 

 いつもの彼らならこのような安易な突撃はしなかったかもしれない。

 

 だが、相手が生身で自分はトリオン体であるというアドバンテージと想定外な能力による焦りが彼女に勝利をもたらした。

 

 かくして、ここに少女と青年達の勝敗は決したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘終了。直接倒せない敵には身動きを取れないようにする。これは私に刻まれたお姉様の技の応用です。と、ミサカは技の開示を行います。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

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