とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ)   作:さくらぎ おきの

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誤字訂正ありがとうございます。


4、何をしに此処へ①

 

 

 泡沫に浮かぶような感覚。

 謎の刺客との勝負をしていたはずの少女には到底似合わない。

 

 

「…………むにゃ。」

 

 

 そして、少女は突然目を覚ました。そして気づく。

 自分はまた気絶してしまったのだと。

 

 見知らぬ部屋、見たこともない天井、そして得体の知れない数々の機械。

 

 真っ白で埋め尽くされたその部屋は天井の光を反射して、目を覚ました彼女の体を目立たせていた。

 

 

「……む、なんですか此処は。と、ミサカはついさっきまでとの状況の変化に戸惑いを隠せません。」

 

 

 そうなってしまうのも無理はない。

 いつの間にか気を失っていて、いつの間にかこの部屋に運び込まれていたのだから。

 

 

(白い壁のせいで少し埃は目立ちますが……清潔感を感じれるあたりどこかの研究施設といったところでしょうか……)

 

 

 そう考えてパッと思いつくのは初めに目覚めた時に見たあの光景。

 とても大きくそびえたつ白い建物には得体の知れない威圧感があった。

 

 

(さしずめ検証用モルモットですね.........)

 

 

 彼女の脳裏にはある既視感が響いている。

 

 それは自分が生み出された直後のこと。今と同じように部屋に閉じ込められて、まるでモノを扱うかのように無機質な目で観察された。

 また同じようになってしまうのだろうか。そんな懸念が辺りを駆け巡った。

 

 いや、この考えはやめよう。考えるだけ無駄なことだ。

 

 

「お、起きたな、お嬢さん。さぁていろいろ聞きましょうかね。あ、ぼんち揚げ、食べる?」

「…………誰ですかあなたは。と、ミサカは見知らぬミラーグラス男に正体を尋ねてみます。」

「なはは…ミラーグラス男って……他になんかないの?()()()()()()()()()()()

「む、そういえば見た覚えが…とミサカはちょっとさっきまでのことを思い出してみます。」

 

 

 彼女が目覚めたと知るや否やガラス越しに話しかけてくるいかにも軽薄そうな男。その片手に持っているぼんち揚げの袋には何故か見覚えがあった。

 

 『ついさっき』

 

 その一言が表すのは眼中にいる男との接敵。

 

 そう、少女はつい先程彼に初めて会い、交戦した。

 

 時は数時間前へと遡る________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ。それではこれよりごうも……質問タイムを始めようと思います。と、ミサカはようやく本来の目的を開始することができます。よしっ」

「おい、なんかやばいんじゃねーの?俺、もしかしてピンチじゃん?なんか拷問って聞こえたし!」

「誰が近界民(ネイバー)なんかの質問に答えるか!」

 

 

 少女の本来の目的はむやみやたらに戦闘を行うことではない。むしろ、彼女としては隠密行動の方が得意なのだが。

 

 まずは現状把握。彼らはなぜ自分に襲いかかったのか。そしてその理由の先にある彼らの目的とは何なのだろうか。

 

 それを知らなければおちおち生活もしてられない。

 

 

「安心してください。少しびりっとするだけです。と、ミサカは自分の胸の前で電撃を出してみます。」

 

 

 彼女は両手の人差し指を向かい合わせて電気を流した。

 一瞬の放電を見せれば、鉄片で体を覆われた2人も流石に察しがつく。

 

 海外の映画で良く見る拷問シーンが2人の脳裏に流れた。

 

 

「で、でもさぁ。俺らには効かないっしょ?ほら、無駄だな〜なんて……」

 

 

 米屋はまずいと思ったのか少女の考え方を変えようとした。

 

 だが、彼女が歩んでくる足を止めることはない。

 

 トリオン体はトリオン以外の攻撃を通さない。それは彼らにとっての共通認識。だがそれは彼女にも薄々わかっている。

 だからこそ、()()()()()()()()()()()

 

 

「では、試してみましょう。と、ミサカは自分でも惨いと思う提案をしてみます」

 

 

 Q、現状、拷問の効かない相手にどうにかして情報を吐かせるにはどうするか?

 

 A、効かないのであれば()()()()()()()()()()

 

 いかに感電しないとわかっていても、いつかは感電してしまうかもしれないという恐怖心は拭えない。

 先ほどの物理攻撃を鑑みるに、痛覚は軽減できても衝撃自体は軽減しきれていないのはわかる。

 

 であれば電気を流し続けていけば衝撃だけを継続して与えられるのでは?と彼女は考えた。

 

 あとは謎の壁が壊れるまでひたすら電気を流し続けるだけ。

 

 

「おい、おいおい、おいおいおい!流石にやべぇって!」

「うびびび。これでも話す気になりませんか。と、ミサカは最後の勧告をします」

「………なんてな!」

「………ッッ!!」

 

 

 米屋がふと一瞬口角を上げた。その目はまだ完全には諦めていない。彼ら本人はもう動けないはずだが、このフィールドにはまだ使えるコマがある。

 

 

ーガキィィィン!!ー

 

 

『『防がれた!!』』

 

 

「ふぅ、紙一重です。とミサカはスナイパーの存在を思い出します」

 

 

 戦闘時から聞こえてきた通信に存在が仄めかされていたスナイパー。だが、彼らの攻撃も彼女には通用しない。

 

 額に現れた一筋の汗を拭った彼女の周りには鉄片が浮いていた。

 それは先程米屋と三輪を捕らえるために使った電磁石の応用。言うなれば鉄の衛星(アイアン・サテライト)

 

 分厚い鉄片は彼女の意識を狙った二つの光線を防ぎ切ったのだった。

 

 

「あれまぁ、これも通じなかったか……それじゃあ逃げましょうかねっと!緊急脱出(ベイルアウト)!」

「……クソッ!!これで終わると思うなよ!緊急脱出(ベイルアウト)!!」

『『緊急脱出(ベイルアウト)!!』』

 

 

 突如として光り出す刺客達。誰がみてもここから逃げ出そうとしてるのは明白。

 

 スナイパーともども光になっていくのが確認できる。

 

 彼女としては決して逃したくない。今ここで情報を持っているのは彼らしかいないのだから。

 

 

「逃しません!!と、ミサカは……っと、逃げられてしまいましたか」

 

 

 突き出す手。効かないとわかっていても放つ電撃。どうにかして逃さまいと張り巡らす思考。

 

 その全てを持ってしても彼らには届かない。

 

 完全に逃げられてしまった。彼らが先程までいた場所には音を立てて鉄片が虚しく落ちた。

 それはそこに誰もいなくなってしまったことを暗に示していた。

 

 状況は一転逆戻り。またしても何もわからない五里霧中の状態。行動を何か起こそうとしても、未知によるプレッシャーが常に付き纏ってしまうのは確定事項のようだ。

 

 だが、ここで彼女に一筋の光明が差した。

 

 

「お、やるじゃ〜ん。米屋と秀治を生身で撃退とかただもんじゃないでしょ、キミ」

 

 

「……今度は驚きませんよ。と、ミサカはさっきと同じシチュエーションにデジャヴを感じます」

 

 

 後ろから声をかけられる行為は先ほどもあった。

 その時と違うのは相手が敵意を持って接していないのがわかるからだろうか。

 

 だが、先ほどよりも何か不気味な感じがする。自分の奥深くまで見透かされているかのような、そんな感覚が。

 

 

「先ほどからモテモテで困っちゃいますねー。と、ミサカは決して嬉しくもない結果報告をします。」

「それはそれはご苦労なこって。で、キミ、()()?」

「人に名前を聞くときは先に名乗るのが常識です。と、ミサカは社会の常識を教えます。」

「ま、そうだな。俺は実力派エリート、迅悠一(じんゆういち)。どうぞお見知りおきを〜。」

 

 

 

 どうやら、急に現れた男は迅悠一というらしい。

 

 補足として自称実力派エリートらしい。一応警戒しておくに越したことはない。

 

 何故なら

 

 

「あなたは先ほどからさっきの2人と同じ()を貼っていますね。と、ミサカは一瞬ほどきかけた警戒をもう一度張り巡らします。」

「……何故気付いた。……ッ!」

 

 

 一瞬にして迅の声色が変わった。軽薄なものから一転、ふざけた態度なんて一ミリも存在しない真剣なものへと。

 そして、迅もまた気づいた。

 

 

「微弱な電気の反応か………」

「大正解です。と、ミサカは短時間でその結論に辿り着いたことを純粋に褒めてみます」

 

 

 迅の周りには微弱であるが電気の片鱗が舞っているのが見える。

 

 先ほどから三輪達との戦闘を見ていた迅はその状態が何を示しているのかにすぐに辿り着いた。

 

 先ほどから彼女は普通の人間では見えないくらいの電気を周囲に放っていた。それも、相手がどこにいたとしても届くくらいには。

 

 電気が体の周辺に舞っているのにも関わらず、迅の服には毛羽立ち一つない。

 

 それすなわち、外界との接触をなんらかの形でシャットダウンしているということでもある。

 

 

「今更ながら……私の名前はミサカです。ただのミサカ。それだけです。と、ミサカはあなたの自己紹介に親切に答えてあげます」

「そうかい。急で悪いけど、君にはここで眠ってもらう。そうしないとヤバいことになるらしいからな。俺の()()()()()()()()がそう言っている」

 

 

 彼の言うサイドエフェクトとは何なのかミサカにはわからない。

 

 だが、その言葉は何故か彼女の胸の中にすんなりと刻まれていった_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、ここにいると言うことは……」

「そ。ミサカちゃんは俺に負けて眠らされたってワケ。どう?思い出せた?」

 

 

 迅はおちゃらけてミサカの敗北を告げた。

 

 迅は戦闘が開始される前に「眠らせる」と発言していた。そして、この通り彼女はここに囚われてしまっている。

 

 状況証拠を鑑みる限りは彼女は迅に敗北してしまったとみて良いだろう。

 

 

「で、こうして軟禁させてもらってるワケだが……まぁ何が言いたいかわかるよな」

「なんとなく察しはついています。と、ミサカは利口なふりをしてみます」

「ふりって言っちゃったよ……」

 

 

 敗者、ましてや生かされて相手のもとで捕虜となってしまったのならば、取らされる行動は限られてくる。

 

 あえて何を漏らすべきか。そして絶対に言ってはいけないことは何か。

 

 いや、何も話すべきじゃないだろう。

 

 自分という例外があるのだから、この世界に元の世界の人間がいたとしてもおかしくはない。

 

 ミサカは脳内ネットワークを駆使して最適解を映し出す。

 

 彼女の高性能な脳みそが叩き出したこの場における最も有効な一手は、

 

 

「くっ、ころせー(棒読み)」

『ちょっと迅くん!?女の子に何やらせてるの!?』

「ちょッ!違いますって、沢村さん!ミサカちゃんも何やっちゃってくれてんの?ねェ!』

 

 

(ふむ、通信を傍受してみた感じ的には有効っぽいですね、これ。)

 

 

 ミサカは間違った知識を覚えてしまったがまあ良しとした。

 

 迅には効果がてきめんなようで虚空に向かってあたふたしているのが見て取れる。

 

 これで何割かはこちらのペースに持って来れたはず。

 

 

「……それでっとまぁ、ミサカちゃんの考える通りいくつか聞きたいことはあったんだけどな」

「あった、とはどう言うことでしょうか。と、ミサカはその意味深なもの言いに不信感を抱きます」

「でも、拷問して何かを漏らす未来が見えないんだよなぁ」

 

 

 迅は首を傾げながらそう言い放った。

 

 そして続けて話し出した。

 

 

「だから、上の人たちはミサカちゃんのことを最悪消そうって考えてるわけ」

「………」

「ウチのA級を生身で撃退した時点でボーダーにとってはかなり危険な人物なんだよ」

「あなたはミサカに死んで欲しいと、そう言うのですね。と、ミサカは自分なりの見解を述べてみます」

 

 

 ミサカにはわかったことではないが、迅の所属するボーダーにとっての最高戦力である彼らをトリオン体ならまだしも生身で打ち負かしてしまった。

 

 その事実が何よりも彼女の首を締め付けていた。

 

 

「いやいや、()はそうじゃない。むしろ生きて欲しいかな?」

「何故……」

「キミが生きていた方がこれから先の未来がより良いものになる。そう、俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

 

 また、聞いた。

 

 その言葉を。

 

 その言葉はミサカを震わせた。

 

 

「それに、寝ているうちに死刑が決まって弁明の機会がないってなんか不公平じゃないか?」

「確かに。と、ミサカはさっきから感じていたモヤモヤを口に出してみます」

「だからさ。()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





感想、改善点、高評価もいただければ執筆のモチベーションにつながります。

わりと低評価は心にきます

迅との戦闘は、おいおいってことで
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