とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ)   作:さくらぎ おきの

6 / 29
誤字報告ありがとうございます。ほんとに助かります。




5、何をしに此処へ②

 

 

 

 

「失礼します。どうも〜みなさんお揃いで〜。件の彼女を連れてきましたよ〜。」

「ご苦労だったな、迅。入りたまえ。」

「ほう、彼女が例の2()()()の人型近界民(ネイバー)か。」

 

 

 迅によって連れられてきた部屋からは物々しい雰囲気が伝わってくる。

 

 大きなテーブルを囲むように座る6人たち。彼らはおそらく相当な官職についていると見るべきだろう。

 

 そして彼女は気づく。彼らの視線が全て自分に向けてプレッシャーを放っているということを。

 

 それもそのはず。ここは近界民(ネイバー)とやらの対策本部である上に、当の彼女本人は紛れもない近界民(ネイバー)なのだから。

 

 一方、ミサカはふととあることが気になった。

 

 

「迅、『人型』とはどういうことなのでしょう。近界民(ネイバー)とやらには人外もいるのでしょうか。と、ミサカは知的探究心にしたがってみます。」

「いきなり呼び捨てなのね……ま、答えはYESだ。むしろ一般的なイメージは人外の方が強い。それだけ人型は少ないってことだな。」

 

 

 近界民(ネイバー)にも種類はたくさんあり、基本的には人外の形態のものが多い。だが、それをミサカは知らない。

 

 彼女は米屋や三輪との対決で、彼らがかなりの頻度で近界民(ネイバー)と戦っているのはなんとなく理解できた。それも対人間用の戦闘を。

 

 だからこそ、人外の方が少ないと聞いて正直彼女は信じられなかった。

 

 

「それにしては、ミサカが戦っていた人達は人型との戦闘にだいぶ慣れているような感じがしました。と、ミサカは自分なりに発見した違和感を指摘してみます。」

「ま、それには単純なカラクリがあるんだが、その答えを知りたかったらまずこの場を切り抜けなくちゃな。」

「さっきから何を2人でコソコソと喋っておる!近界民(ネイバー)!貴様は特に今の状況をわかっておるのか!?」

 

 

 ミサカが迅に対して質問を浴びせていると、急に横から怒号が飛んできた。

 

 その声の持ち主の方に目を動かすと、そこにはいかにも小言うるさそうな小太りな男性の姿があった。

 

 

「全く、何故近界民(ネイバー)は皆揃いも揃ってこんなにも緊張感が無い!」

「迅、あの口うるさいたぬきさんは誰なのですか。と、ミサカは怒号の主の詳細を求めます。」

「あ〜、あの人は本部開発室長の鬼怒田(きぬた)さん。あと、あまり大きな声でソレ言うと鬼怒田(きぬた)さん、怒るぞ〜。」

「聞こえとるわ!迅!仮にもお前が捕えたのなら手綱くらい握っとれ!」

 

 

 指摘はごもっともだった。

 

 

「そうだ、ミサカちゃん。この際だから覚えておくといい。」

「何をですか?と、ミサカは迅の急な提案に疑問を呈します。」

「ここ、近界民(ネイバー)対策本部、つまりはボーダーの様々な機能を担っている人達のことをだ。」

 

 

 どうやら迅は彼女を生き残らせることに本当に協力するようだ。

 

 彼のその言葉を聞いた大人達の面々は各々違う反応を示した。

 

 何を勝手に教えようとしているんだと顔を顰めている者。

 

 それもまた面白いと気楽そうに振る舞っている者。

 

 そして、眉ひとつ動かさずに彼女を品定めするようにひたすらに睨んでいる者。

 

 ボーダーの上層部の中でも人によって考え方が違うのかもしれない。

 

 

「ふむ、それではお願いします。と、ミサカは素直にお願いしてみます。」

「おっけー。その代わり、ちゃんと『さん』はつけろよ?じゃあ……」

「迅、()()は我々自身でしよう。」

「城戸司令!?」

 

 

 迅からの紹介が行われようかとした瞬間、一番奥に座っている強く圧を放っていた男が口を開いた。

 

 そして、まさか彼がそのように言うのを想定していなかったのか、鬼怒田の隣に座っていた男もまた、声をあげてしまった。

 

 

「何故です、城戸司令!相手は近界民(ネイバー)なんですよ!?万が一のことを考慮すれば……」

「根付君、私にも考えがあってしたことだ。」

「城戸司令………」

 

 

 根付、と言う男は一応納得してしまったのか、それ以上追求することはなかった。だが、その顔には不満の意図が見て取れる。

 

 鬼怒田も同じ考えだったようだが、大人しく行く末を見守っている。

 

 

「それでは私から自己紹介をしよう。本部長の忍田真史(しのだまさふみ)だ。」

「次は俺か。玉狛支部長の林道匠(りんどうたくみ)だ。よろしく〜。」

「本部開発室長、鬼怒田本吉(きぬたもときち)だ。」

「……メディア対策室長、根付英蔵(ねつきえいぞう)。」

「外部・営業部長、唐沢克己(からさわかつみ)。よろしく。」

(さっぱりとしたのが忍田、陽気なオジサンっぽいのが林道、たぬきが鬼怒田、嫌味そうなのが根付、頭が良さそうなのが唐沢……)

 

 

 彼らは忍田を皮切りに続々と自己紹介を始めた。

 

 中には言い渋っていた人間もいたが、その彼も釣られるようにして自己紹介をする。

 

 それを聞いたミサカは心の中でそれそれの印象を刻み込んでいった。

 

 

「本部最高司令官、城戸正宗(きどまさむね)だ。」

 

 

 最後の1人もまた、自己紹介を終えた。

 

 自己紹介を終えた、と言うことは本題に移ると言うことと同義である。

 

 だが、その前にミサカは自分も自己紹介をするべきと考えた。

 

 

「ミサカは……「別にいらないよ、キミ。ここで決めるのはキミの処遇なんだからねぇ。」

「そうだ。もとはといえば君に何かさせるつもりはない!」

 

 

 鬼怒田と根付が彼女の発言に被せるようにして言葉を発した。

 

 彼らの中ではもうすでに彼女の行く末は決まっていたはずだったのだ。

 

 きっと、終わった話を蒸し返されて気分が悪いのだろう。

 

 

「根付室長。その考えはあまりにも早計ではないのか?現に彼女に敵対意思はない。それに三輪隊員との戦闘も生身だったというではないか。」

「だからこそなんじゃないのかねぇ!生身でA級を倒せるような敵が本部にいるっていうだけでも悍ましいって言うのに!」

「そうだ、忍田本部長!今は迅が押さえているから問題ないかもしれんが、放っておくにはあまりにも危険すぎる!」

 

 

 忍田はあまり上層部全体の判断に納得していないのか、疑念を呈したが、彼らには聞き入れられない。

 

 ミサカは彼らにとって()()()()()()()()

 

 知らない、ということは恐ろしく、思考の何割かを保守的な動きに傾けてしまう。

 

 奇しくも、彼女の行動は上層部の判断を彼女にとって不利な方向へと進めていた。

 

 

「それに報告では、彼女は電気を操ると聞いている!ウチの開発技術を何かしらの方法で遮断なりハッキングなりされたら敵わん!」

「そうだねぇ!鬼怒田室長!彼女を生かすというのは百害あって一利なし!」

「我々の仕事は近界民(ネイバー)の殲滅ではなく、民衆の安全を守ることだ!」

「彼女を処分、ないしは閉じ込めておくことがゆくゆくは民衆の安全につながるのではないのか!?忍田本部長!」

 

 

 彼ら現代人にとって電気とはなくてはならないもの。

 

 仮に解き放ったとして、彼女が与える損害は計り知れないものとなるだろう。

 

 いくら彼女に敵意がないように見えたとしても、万が一のリスクを背負うのには危険すぎる。

 

 

「これがアウェーというものなのですね。と、ミサカは自分の身が全く潔白じゃないことに少し苛立ちを感じます。」

近界民(ネイバー)っていうのはそういうもんなのさ。特に集団にとって脅威度が高ければより信用はされない。そうだろ?」

「む、これは思わぬ唐沢さんからの返答。と、ミサカは独り言に付き合ってもらえて少し嬉しさを感じてみます。」

 

 

 鬼怒田と根付が思い思いのことを忍田に説明している合間、彼女の放った独り言に、先ほどから静観していた唐沢が反応した。

 

 この盤面を見る限り、全体の判断に賛成しているのは根付、鬼怒田、そしておそらく最終決定を下した城戸。

 

 一方、反対派は忍田。そして不明なのが林道、唐沢。

 

(アウェーといっても一方的ではないのがまだ救いですね……)

 

 中立派とも取れる唐沢は続けて言葉を紡いだ。

 

 

「一度決まった集団における判断はそう簡単には覆らない。だが、君がここに現れたということは、それを覆すくらいのメリットを提示しなければならない。」

「メリット、とは……」

「君は何故城戸司令がこんな機会を設けたと思う?これは、裁判じゃない。()()()。」

 

 

 取引。

 

 それは一度決まった決断を覆すために、提示されたデメリットを上回るメリットを提示し、ある意味()()()()()

 

 

「さあ、聞かせてほしい。君が提供できる、この盤面をひっくり返すメリットを。」

「そこまで言われてしまってはミサカも腹をくくるべきでしょう。と、ミサカは柄にもなくワクワクします。」

「「「……………」」」

 

 

 いつの間にか、言い争っていた3人の応酬も止み、彼女の動向にその場の全ての視線が集まっている。

 

 ミサカは自分が提示できるメリットを探すために脳をフル回転させる。

 

 

(電気……は、むしろ使わないほうが喜ばれる。情報なんてもってのほか。他には単純な戦力……戦力?)

 

 

 すこし、脳裏に先ほどの光景が浮かんだ。

 

 

 

 

 

『む、それではお願いします。と、ミサカは素直にお願いしてみます。』

『おっけー。その代わり、ちゃんと『さん』はつけろよ?じゃあ……』

『迅、()()は我々自身でしよう。』

『城戸司令!?』

 

 

 

『何故です、城戸司令!相手は近界民(ネイバー)なんですよ!?万が一のことを考慮すれば……』

『根付君、私にも考えがあってしたことだ。』

『城戸司令………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故わざわざ敵である彼女に名前を教えるという行動をしたのか。

 

 そして、そもそもこのような機会を設けたのは城戸の判断によるもの。

 

 

(つまりは、彼は何か私に『求めている』。そしておそらく彼が私について知っていることはあの戦闘時のことくらいのものだろうと考えて良さそうですね。)

 

「………ミサカがあなた達に提供できるのは、()()()()()()()()()です。」

 

 

 彼女が提示したのは、ただの戦力でも、ただの兵隊でもない。

 

 都合の良い駒。

 

 それすなわち、ボーダー、ひいては城戸の指令を絶対に遵守するということ。

 

 実際に彼女はボーダー内のトップクラスの隊員達を退けた。その実績を処罰の根拠にするのなら、こちらもそれを活用させてもらおう。という魂胆だった。

 

 

「……ふむ。それは随分と魅力的だ。だが……」

「『必ず従うという根拠がない』ですね。と、ミサカはみなさんの考えていることを推察してみます。」

「その通り、冗談じゃないねぇ!そもそも……「ミサカ君、続けたまえ。」

「城戸指令………」

 

 

 今、根付と鬼怒田が望んでいることはむしろ彼女が何もしないということ。

 

 だが、それは城戸の意向とは反しているようだった。

 

 

「それについては俺の方から一つ見せたいものがあります。」

「「「迅!!」」」

「みなさん、今から配る資料をみてほしい。」

 

 

 先ほどから会話の中に入ってこなかった迅が急にドアを開けながら参戦してきた。

 

 いつの間にこの場を離れていたのだろうか。

 

 意気揚々な顔ぶりを見るに、何か秘策があるのは間違いないだろう。

 

 迅によって配られた資料を吟味するように彼らは見ている。そして、一同は驚愕の顔を見せた。

 

 特に驚愕していたのはボーダーで技術開発を担当している鬼怒田だ。

 

 上記を逸しているだろうその数値に、彼らは目を見張った。

 

 

 

 

 

「な、な、なんだとぉ!?ト、トリオン量がゼ、()()!?ほとんど死んでいるではないか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






高評価ありがとうございます。

ワートリ、もしくは御坂妹(ミサカ)について質問がございましたら是非感想欄にてお聞きください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。