とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ)   作:さくらぎ おきの

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誤字報告毎度感謝です。


2、暗躍②

 

 

 

 

 

 集団戦における勝敗を分けるポイントとは何か。

 

 攻撃のタイミングを合わせること

 

 敵にプレッシャーをかけつづけること

 

 個々の戦闘力や特性、陣形や地形の利用

 

 そして戦いの優劣を8割方決めてしまうとされる、人数差

 

 様々な視点から客観的に考察しても、盤面を掌握しているのは遠征部隊と三輪隊の合同チームと言える。

 

 だが、

 

 

「マージかよ!全く当たんねーなオイ。イヤラシーくらいに射線切りやがるぜ。」

 

 

 冬島隊の狙撃手、当真勇は射撃トリガー、イーグレットのライフルスコープを覗き込みながら、自慢の狙撃が避けられたことに改めて驚嘆する。

 

 自身の狙撃に絶対の自信を持つ当真は避けられる、または狙撃すらさせてもらえない状態。

 

 当真達のチームは迅達に比べて優れているのは圧倒的な人数差。

 

 敵が6人、一方味方の人数は11人。ほぼ倍に近い人数差があり、普通であれば防戦一方は避けられず、当真の狙撃をあてる隙は多くなる。

 

 だが、全てが視えている迅には通用せず、狙撃のタイミングで必ず対応。

 

 

「こんなんじゃやる気無くしちまうぜ。おい奈良坂、先に当てたヤツ勝ちな。」

『ふざけてる場合ですか。いい加減にして次の狙撃ポイントに早く移動してください。』

「へいへい。そんなだから俺にいつまで経っても勝てないんだよ。」

 

 

 と当真はやる気のない返事を返した。

 

 狙撃手の天敵、カウンタースナイプ。

 

 狙撃手は一度撃った後無防備になる。そこで距離関係なく当たれば即死の狙撃を最も警戒しなければならない。

 

 嵐山隊には攻撃力だけで言えばトップの狙撃手、佐鳥賢(さとりけん)がいる。彼のツインスナイプの前では防御も紙切れ同然だ。

 

 もっとも、狙撃手が3人いる当真側の方が依然として有利なのだが、1対1の交換で一位スナイパーを失うのはあまりにも勿体無い。

 

 しかもこの障害物の多さではまともな援護狙撃はできない。

 

 攻撃手組が切った張ったしているのは住宅地。一個一個が高さで以て狙撃を邪魔しており、狙撃に必要な高さと角度を確保するには目立つ高い建物に行く必要がある。

 

 だが、それこそ狙撃手の格好の餌食。それがわかっているから、狙撃手連中はみな最適なポジションに着くまで安心はできないのだ。

 

 当真、奈良坂、古寺の3人が狙撃ポイントを確保するまで、3人分のアドバンテージが殺される。

 

 そううまく、"事"を運ばせる気はない。当真はやや距離が離れたマンションに向けて走り出した。

 

 

「迅さん相手はやめだやめだ。狙撃手(スナイパー)連中もとい三輪隊と俺と出水で嵐山隊を落とすぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「"旋空弧月"………チッ」

「流石に当たらないよ、太刀川さん!」

 

 

 弧月専用オプショントリガー、旋空によって拡張された弧月のブレードが、周囲の民家の塀を薙ぎ払った。迅と嵐山隊は横に飛び退いてそれをかわした。

 

 大振り、されど強力な斬撃は本気で敵を屠りにかかる。

 

 避けられたというのにも関わらず、太刀川の目は未だギラついたまま。

 

 

「俺で風間隊と太刀川を相手するから三輪隊と当真と出水を抑えれるか、嵐山?」

「了解。いいな、充、木虎?」

「了解です、嵐山さん。」

「了解しました。」

 

 

 迅の黒トリガー、風刃は良くも悪くも広範囲に攻撃が当たる。

 

 いかに迅が未来予知のサイドエフェクトを持っていようと、嵐山隊の実力がトップレベルだろうと戦闘に割ける脳内のリソースには限界がある。

 

 無駄な同士撃ちを防ぐためにもここは二手に分かれて各部隊を撃破していく作戦に迅は切り替えた。

 

 奇しくも同じ考えに至った両陣営。

 

 

「さあ、いくぞ! 太刀川さん!」

「俺と風間隊をお前1人で受け持つつもりか?舐められたもんだ……なッ!!」

 

 

 火花を散らす2人の刀。

 

 時を同じくして鎬を削りあった2人は今ここで再戦の時を迎えた。

 

 

「僕らも忘れないでもらっていいですか?」

「風間さん!」

「わかっている。」

 

 

 ただし、それが一対一とは限らない。

 

 菊地原を筆頭に風間隊の面々が太刀川の斬り合いの隙間を縫うように連撃を仕掛ける。

 

 少し目を見開いた迅は太刀川との斬り合いを一旦中断しバックステップで一度距離を取った。

 

 

(風間さん達は透明化のトリガー、カメレオンを得意とするステルス戦専門部隊……太刀川さんと一緒だとやっぱり厄介だな……でも、)

 

 

「菊地原、あまり突っ込みすぎるな。作戦の主軸は太刀川だ。」

「……了解。でも、ムカつくんですよ。なんかウチらの隊が舐められてるみたいで………ガッ!?」

「菊地原!?」

 

 

 風間に周囲を促された瞬間、謎の物体の投擲に菊地原はのけぞった。

 

 トリオン体で身を包んでいる彼らはトリオン攻撃以外によるダメージは受けない。衝撃こそ残るものの、戦闘に全く支障はない。よって今の攻撃もなんの問題もないはずだった。

 

 

「はい、予測確定〜。」

「菊地原!避けろ!」

 

 

 だが、相手はボーダー、そして玉狛支部の誇る自称実力派エリートの黒トリガー使い。

 

 そもそも迅が瓦礫を思いっきり蹴飛ばしたのだ。その隙を作った本人が見逃すわけがない。

 

 一瞬よろけた菊地原に向けて虚空に剣を振る迅。

 

 刹那、菊地原の足元から伸びてきた青い閃光がそのまま彼を貫いた。

 

 

【トリオン供給器官破損 緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

「菊地原のやつ、油断したな?」

「あまり菊地原のことを責めないでやってください。あれでも風間隊を馬鹿にされて怒ってるんですよ。」

「それとこれは別問題だ。馬鹿め。」

「ふぅん。ま、これで風刃の残弾数は七本。菊地原と風刃一本の交換か。まあまあ痛手だな。」

 

 

 風間隊のステルス戦の強さの半分は菊地原による索敵の面が占めている。

 

 初めから迅は菊地原を削る、ないし決め切ってしまうことを狙っていたのだ。

 

 これで戦闘におけるリソースを攻撃に割く余裕ができた。

 

 

 

 

「さあ、第2ラウンドだ。かかってきなよ、風間隊、太刀川さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"追尾弾(ハウンド)"!!」

 

 

 出水は敢えて音声認識でトリガーを起動し、青白く光るトリオンキューブを展開。

 

 無数に分割された光弾が、弧を描くような軌道で嵐山隊の時枝、嵐山の二人に向かって襲い掛かった。

 

 射手トリガー、追尾弾。

 

 威力特化の通常弾、アステロイドとは違い対象を指定して追尾する性能を持つ。

 

 追尾性能がある分、威力が抑えめなのだが本人のトリオン量が高いためまともに食らえば一撃必殺は免れない。

 

「…………!充!」

 

 嵐山は、眼を見開きながら時枝へ簡潔な指示を出した。

 

 山なりに弧を描いていた筈の出水の弾道が、まるでレールを切り替えたかのように直線的に一気に流星のように降り落ちた。

 

 追尾弾は発射の際、誘導設定の強・弱を調整出来る。

 

 誘導設定が強ければ最短距離で標的へと跳んでいくし、弱ければ山なりに近い弾道を描く。

 

 これを使用時に使い分ける事で、このような変則的な弾道が実現出来る。

 

 最初の山なりの弾道でそのまま撃たなかったのは何故か。

 

 本来であれば誘導設定を強める事により、最短距離に近いショートカットを行う事が出来た。だがそうしなかった。

 

 思っていた速度と違った速度で振り注いだ追尾弾は嵐山達の想定した弾速をゆうに超え、隙を晒す事になった。

 

 

「大丈夫か!充!」

「問題ありません。とはいえ嵐山さんが気づかなかったら少し危なかったですけど。」

 

 

 だが、攻撃に転じているのは出水だけではない。サイドから回り込んだ三輪は2人へ向かって拳銃トリガーを放つ。

 

 無論、そのくらいは嵐山とて承知の上だ。

 

 攻撃を凌いだ嵐山は間髪入れずにアサルトライフル型トリガーを使って応戦。

 

 出水は三輪と共にサイドステップで跳躍し、嵐山の攻撃を回避した。

 

 

「…………っ!」

 

 

 されど、攻撃はまだ終わらない。

 

 敢えて時間差でアサルトライフルを掃射した時枝の弾幕が、二人へ襲い掛かる。

 

 

「舐めるな」

 

 

 このまま、攻守が反転し、銃手お得意の中距離戦からの制圧パターンに入ってしまうのか。そしてなす術なく削り取られてしまうのか。

 

 否。

 

 それを許す程、三輪秀次もといA級は甘くない。

 

 三輪は遠隔でシールドを展開し、襲い来る弾丸を防御。

 

 更に自身は低い姿勢で滑るように地を駆け、接近戦にも対応できる万能種(オールラウンダー)の強みを活かす。

 

 そして、無造作に弧月を抜刀し、嵐山に斬りかかった。

 

 

「く…………ッッ!」

「そこまでして玉狛の近界民(ネイバー)を守りたいか!」

「迅が俺達を呼んでまで戦うと言うことはそれなりの理由があるのだろう。」

「何?」

「それに、()()には、返しきれないほどの恩が有る!!」

 

 

 嵐山はそれを受けるのではなく、バックステップで回避。

 

 一旦距離を置いて、即座にアサルトライフルの引き金を引いた。

 

 踏み込みすぎた三輪は若干の体勢の崩れに判断が遅れた。このままであれば被弾は避けられない。

 

 

「おっと」

「…………!」

 

 

 だが、その銃撃は出水が遠隔起動したシールドによって止められる。先ほど三輪にしてもらったことをそのまま返した形となった。

 

 シールドに着弾し、弾け飛ぶ弾丸。

 

 敢えて遠隔起動したのは、そのまま固められる事を防ぐ為だ。

 

 防御用のトリガーであるシールドは性能が高く、そう簡単には壊れない。ブレードトリガーであれば一撃で壊せる場合もあるが、銃手トリガーでは壊すには至らない。

 

 しかし、足を止めてその場で盾を張り続けていれば、当然いつかは限界が来る。

 

 射手が何故中距離の制圧性能が高いのか。

 

 それはシールドをあえて貼らせ続けることで崩壊を招くことが容易だからだ。

 

 そうした事態を回避する為に、出水は遠隔でシールドを張りこちらに弾丸が到達する前に対処したのだ。

 

 無論、相手の弾道を読み切っていなければ不可能な芸当であり、その隙を第三者に突かれる可能性もある。

 

 だが、それこそ望むところだ。

 

 出水の側としてはもう一人の狙撃手の位置さえ判明すれば、そこから一気に盤面を動かす事が可能となるのだ。

 

 ただ、それも嵐山に見切られていた。

 

 シールドに嵐山隊2人の弾が着弾した途端、先程までとは違い大きな爆発を生んだ。

 

 

「く……ッ!炸裂弾(メテオラ)か!!」

「嵐山さん……まったく、面白い手を使いやがる!」

 

 

 爆発、といってもそれ自体にダメージはない。

 

 ただ、それによって生まれた爆風が周りの瓦礫を飲み込んで大きな目眩しとなった。

 

 炸裂弾は広範囲のオブジェクト破壊に富んだトリガーであり、威力こそハウンドとそう大差ないものの効果範囲は膨大。

 

 今回は嵐山隊の姿を隠すための目眩しとして使われた。単純だが効果的。完全に姿、影を隠し三輪達の追撃を許さない。

 

 

「チッ……そっちはどうだ、陽介。」

『問題ねぇよ。木虎はこっちで抑えるから狙撃班は佐鳥を抑えて、イイ感じのタイミングで木虎も狙ってくれ。』

『あんまりムリ言うんじゃねーよ。俺は確実に当たるって思った時にしか撃たねーぞ。』

 

 

 通信でも当真のマイペースさは変わらないようだった。

 

 あちらはあちらで戦闘を行なっている。幾分かは成果も見込めそうで何よりだ。

 

 木虎は米屋と狙撃班に狙われている状態であり、佐鳥も迂闊に狙撃に移れない。

 

 この状態が続くのであればこのまま嵐山達を抑えつつ、機動力のある木虎を封殺し数の力で殲滅できる。三輪はそう考えた。

 

 だが、彼らは知らない。

 

 もう1人の存在が虎視眈々と木虎に狙いを定めていることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






早くミサカを出したい……うずうず。

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