第一高校生の日常   作:ジャスティスⅡ

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疑問

 

 

全国魔法科高校親善魔法競技大会ーー通称・九校戦。

 

 

 

全国の魔法を学ぶ熱き高校生達が鎬を削り合って、時に笑い、時に涙し、そして栄光を掴む為に死力を賭して臨む青春の1ページである。

 

そして九校戦には、普段はあまり顔を合わせる機会がない魔法科高校の生徒達の為に、交流を深める為のイベントを幾つか行っている。

 

 

 

その一つこそが、大会前の懇親会である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メインホールでは、今年の九校戦の主役と言ってもいい代表選手達がそれぞれ交流を深めている。

 

いや、まだ競技が始まっていないのだから他校と話すのは些かハードルが高いかもしれないが、それでも交流を深めているのは間違いない。

 

そしてそんな選手達とは全く関係のない奴らが、同じホテルのロビーで顔を合わせていた。

 

 

 

「いや、まぁ他校との交流が大事だってのは分かってるんだぜ?」

 

「じゃあ、何が不満だってのよ?」

 

 

 

パンフレットを片手に何やら思案顔の少年ーー西城レオンハルトに対し、赤毛の美少女ーー千葉エリカは訝しげな表情でレオンハルトに尋ねた。

 

 

 

「幾ら競い合う敵だっつっても、卒業すれば大体魔法科高校の生徒は魔法大学行くか防衛大行くか魔法技能ありきの公務員になるかが殆どだろ? 近い将来、みんな必ず同僚になるじゃん! だから、こういうパーティーみたいなもんも大事だってのは分かるんだ・・・」

 

 

 

この西城レオンハルトという男は、見た目に反してその頭脳は中々のものである。

 

というのも、そんなのは当たり前である。

 

魔法と言っても呪文を唱えて不思議な事を現実に行うファンタジー要素は一切なく、全ての魔法はデータに基づいた純然たる“科学”なのである。

魔法科高校の生徒は、入学時点で旧時代における日本国内トップクラスの理系大学卒業生クラスの知識を最低限保持していなければ、二科生になることすら夢のまた夢であるのだ。

普段一科生に雑草雑草呼ばれて馬鹿にされてる彼らだが、もし彼らが普通の高校に進学していた場合、国内トップクラスの進学校であろうと割と余裕でトップになれる頭脳を有しているのだ。

 

忘れてはいけない、魔法科高校の生徒というのは世間一般における『スーパーエリート』の称号なのだ。

 

 

 

「だから、一体何がそんなに疑問なのよ?」

 

 

 

しかし、スーパーエリートも人間である。

 

あくまで彼らは『頭の性能がいい』のであって『頭がいい』かどうかは別問題である。

 

 

 

「だから、何で九校戦の選手に集団で富士山のゴミ拾いさせるってイベントがあるんだ?」

 

「さぁ?」

 

 

 

とどのつまり、馬鹿はどうしょうもなく馬鹿である。

 

 

 

「九校戦の選手になれば課題免除で無条件でオール評価A貰えるしね。まぁ、変なイベントあってもそうそう文句も言えないでしょ?」

 

「でもよぅ、他にも試合前日に選手一同で10時間耐久マラソンとか、どう考えてもおかしいだろ? もう交流じゃなくて、ただの訓練だろ」

 

「・・・伝統とか、そんなんじゃないの? 偉い人の考えることが、私たち学生如きに分かるわけないでしょ」

 

 

 

流石のエリカもこれはおかしいと思っていたのだろう。

幾ら何でも、これから競技をする選手達にこんな拷問染みたイベントを課すのはどう考えても変である。

 

 

 

「伝統・・・偉い人・・・つまり、偉い人に聞けばこの疑問は解決するってことか?」

 

「そういう・・・事、なのかな?」

 

 

 

レオンハルトの言っている意味が分からなかったエリカは言葉を濁す。

しかしそれを肯定と受け取ったレオンハルトは、エリカに背を向けて歩き出した。

 

 

 

「えっ、ちょっと何処行くの!?」

 

「偉い人に聞きに行くんだよ」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・成る程。それで、私のところに来たと?」

 

「はい、お願いします」

 

 

 

レオンハルトの目の前にいる老人は、魔法を知る者ならば誰もが知っている今だ世界最強の一人と言っても過言ではない超大物である魔法師ーー九島烈である。

 

老師と呼ばれ敬われる彼は、先程懇親会で挨拶をしたばかりで、控室に戻ってきてすぐにやって来た少年の疑問に耳を傾け、そして・・・

 

 

 

(九校戦はちょっと挨拶に来てて殆どノータッチの儂に、そんなの分かる訳ねーだろ)

 

 

 

老師と言っても、人間である。

 

分からない事は分からない・・・

 

 

 

(じゃが、わざわざ疑問を解決しにやってきた未来ある若者を無碍に帰す訳にもいかん)

 

 

 

それは、この日本の魔法師社会を長年に渡ってリードしてきた九島烈のプライド故か、それとも老人特有の見栄に寄るものなのかそれを知る者はいない・・・

 

しかしそれでも、烈は真摯にレオンハルトの疑問に応えようとしてくれているのだ。

 

 

 

「25年・・・そう、25年前の話だ。当時、第三次世界大戦が終わってまだ間も無くだった・・・。インドシナ半島では大亜細亜連合が南下を目論んで散発的な戦闘行動を行っていて、我が日本も今だ危機に瀕していた。そのため、当時の九校戦は今のように万全な警備体制というわけにもいかず、純粋に己の技を競っていた学生達は常に危険と隣り合わせと言ってもよかった・・・」

 

 

 

九島烈は、当時を思い出すように両目を細めた。

 

 

 

「そんな時、最悪の事態は起こってしまった。当時の九校戦の会場を、大亜細亜連合の奴らに占拠され選手を人質に取られてしまった。情報が混乱していて正確な状況把握は困難を極めた・・・。しかし、その状況を打破した若者がいたのだ。彼は魔法師ではない一般人で、ただの九校戦の観客の一人だった・・・。だが彼は、己の危険も顧みずに情報を収集し、九校戦の会場から旧東京の国防軍本部まで走って情報を届け、そして息絶えた・・・。その情報によって、儂等は人質にされていた選手達を救う事が出来、日本は救われたのだ。我等は彼の偉業を讃え、彼が走り続けた10時間を忘れぬ為、こうして恒例行事として九校戦に取り込む事にしたのだよ」

 

「そんな事が・・・」

 

 

 

レオンハルトは涙していた。

それほどの偉業を元にした行事とは知れず、レオンハルトはさっきまでの自分を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。

 

 

 

「別に必ず走って欲しいという訳ではないのだよ? ただ、この国を守るのは何も魔法師だけではない・・・それを、皆にも知ってもらいたいのだ」

 

「はい、老師・・・!」

 

 

 

室内は、感動に包まれていた。

 

そしてそんな偉大な男によって守られたこの九校戦というイベントを、レオンハルトは己の身命を賭して盛り上げようと決意を新たにする。

 

 

 

「あ、あのぅ〜・・・」

 

 

 

しかしそこに、不粋な乱入者が現れる。

西城レオンハルトは思わず乱入者ーー千葉エリカを睨んでしまう。

そして、失望を感じるのだった。

 

 

 

所詮女には、この感動を理解出来ないのだ・・・

 

 

 

「九校戦って、10年くらい前に定例行事化したんじゃないんですか?」

 

 

 

遠慮がちに放たれた一言は、二人の男を凍らせるのには十分過ぎる威力を孕んでいた。

深雪のコキュートスなど目ではない、途轍もない力を秘めた精神干渉魔法を放つことがエリカには可能だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の男が再起動するまで、10時間の時を必要とした。

 

 




ほのか「達也さん・・・マラソン、どうします?」

達也「参加する。エンジニアは競技に出ないから強制参加だからな」

雫「なかなか出来ることじゃないよ」

深雪「お兄様、お供します」
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