第一高校生の日常   作:ジャスティスⅡ

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万能

 

 

横浜中華街の若き顔役・周公瑾は出来る男である。

 

 

 

中華街の人気中華料理店のオーナーを務める傍ら、大亜連合からの脱走者を匿って第三国に密入国させ、更にそこで反大亜連合活動を行う為の資金を融通したり、逆に大亜連合の指示を受けて日本に対してスパイ活動をしていたりして過ごしている。

 

仕事は多岐に渡り、尚且つその性質上表沙汰に出来ないものが多い為、必然的にこれらの仕事は彼自身が行わなければならない訳で、彼も人間である以上、疲労を感じる事も当たり前である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・という事で、明日の早朝にも大亜連合軍の工作部隊が日本に侵入してくる。当初の予定通りに、その際の支援を頼んだぞ?』

 

「お任せを、大師ヘイグ」

 

 

 

不気味な骨の目の輝きが消え、周公瑾は部屋から退室していく。

その際に、骨から一度も視線を外さずに退室するあたり、彼の骨への警戒心が伺える。

 

 

 

(さて、明日にもやってくるというのならば、隠れ家や物資の調達に移動車輌も必要ですかね? おっと、明日の店の仕込みに食材の買い付け状況の確認も早急に行わねば・・・。後、今月の脱亜者の保護や京都への連絡、彼らの当面の生活保護に第三国への出国手続きに・・・)

 

 

 

歩きながら頭の中で予定をまとめていると、部下の黒服が近付いてきて周公瑾の耳元で囁いた。

 

 

 

「明日の工作部隊の迎え入れの件ですが、どうやら警察が嗅ぎつけているようで・・・」

 

「そうですか。流石に鼻が効きますね・・・」

 

 

 

そう言ってクツクツと笑う周公瑾。

笑いながら、黒服から渡された書類を受け取ってザッと中身を確認する。

そして一頻り笑った後、周公瑾は黒服に指示を出した。

 

 

 

「秘匿回線で向こうに連絡を入れて下さい。後、地下の水路を時間になったら解放を! 私はお客様のお出迎えの準備をしています」

 

「はっ、周大哥!」

 

 

 

部下の黒服が去って行く姿を横目で確認しながら、周公瑾は自分の執務室へと入って行く。

扉を閉めて鍵を確認し、部屋を隅々まで眺めて異常がないかを確かめてから、周公瑾は己の机の前まで歩き出す。

 

そして立ち止まり、何やら優しげな表情をしながらフッと笑った周公瑾は、持っていた書類の束を思い切り床に叩きつけた。

 

 

 

「やってられるか、クソがあぁぁぁーーーーっ!!!」

 

 

 

普段の二枚目が台無しになるほど、周公瑾の顔は歪みに歪んでいた。

これはストレスからくる歪み方だ。

 

 

 

「何が『頼んだぞ』だ、あの骨! 自分は何もやらないで指示だけ出して、全部こっちに放り投げやがって!! 諸々の手続きにどんだけ苦労したと思ってんだ!! 脳みそあんのか!! いや、骨だからねぇか! くたばれや、死に損ないの骨が!!!」

 

 

 

机を蹴り、周公瑾は部屋のソファーへと乱暴に座り込んで、テーブルに設置されていたブランデーをロックでゴクゴクと飲み干した。

 

 

 

「かぁぁ〜っ、効くわぁぁーー!! 工作員を侵入させて、学生の論文コンペの資料狙うとか、どんだけ遅れてんだよ大亜連合!! 完全に落ち目じゃねぇーか!!!」

 

 

 

もう一杯ブランデーを飲み干し、周公瑾は立ち上がって机の上から新たな資料を手に取った。

それには、今回の大亜連合の作戦の概要が記されていた。

 

 

 

「・・・あぁ〜あ、こりゃ無理だ。どうシュミレートしても、成功するイメージが浮かばねぇ〜や! ま、精々こっちに被害が及ばないように適当に恩売って、適当にあしらっておくかぁ・・・」

 

 

 

機密書類をぞんざいに投げ捨て、周公瑾の荒ぶるプライベートは更にエスカレートしていく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました、皆様。朝食の準備が出来ておりますので、まずはお寛ぎを・・・」

 

「周先生、御協力に感謝します」

 

 

 

気のない感謝をしながら、日本に侵入してきた大亜連合の工作部隊の面々は、周公瑾の部下の黒服に誘われて建物に入って行く。

そしてその最後尾に、周公瑾本人が続いた。

 

 

 

(なぁ〜にが“周先生”だ! お前達に言われると、鳥肌が立つわ!! 気持ち悪い!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中華街にあるビルの高級レストランの一室で、周公瑾は日本に侵入した工作部隊の長と対面していた。

 

 

 

「例の少女がしくじったそうで?」

 

「ご安心を、陳閣下。彼女にはこちらの素性は一切明かしていませんので、情報が漏れる事はないでしょう」

 

「そうですか。周先生がそう言うのなら、大丈夫なのでしょうね・・・」

 

「御配慮、感謝します」

 

 

 

そう言って頭を軽く下げた周公瑾は、自分のことを呂剛虎に鋭い眼差しでじっと見つめられている事に気付いていた。

 

 

 

(ちょ、私にそういった趣味はないんだよ! 全く、このアホ隊長といい、大亜連合の軍人には碌な奴はいないな。あの骨しかり、本当に考え無しの馬鹿ばっかだな? このくらいの牽制ごときに、わざわざこんな査問会みたいな会談開きやがって・・・。そんなに他人の吊るし上げが好きかよ馬鹿軍人共!)

 

 

 

そんな思考をおくびにも出さず、周公瑾はチラリと呂剛虎を見据えた。

 

 

 

(後、自分の部下くらいキチンと管理しろやダボが!! さっきから、こっち睨んできてウザいんですけど!? 御宅の軍人教育はどうなってんですかぁ〜!!)

 

「どうかしましたか、先生?」

 

「いえ、別に大した事は・・・」

 

「はぁ、そうですか」

 

(・・っぶねぇーーっ!! やばいやばい、気付かれたかと思った・・・。本当、この虎なんとかしろよ! 人喰い虎なら檻に入れて管理しとけよ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、同じレストランで・・・

 

 

 

「・・・という訳で部下が敵の手に落ちてしまいましてね? 失態を犯したとはいえ、彼は我が軍に必要な武人ですので何とか・・・」

 

「ご安心を。実は明日、呂先生が横須賀の外国人刑務所に移送される事になっておりまして・・・」

 

「本当ですか!」

 

(まぁ、このくらいの恩は売っておいても罰は当たらないでしょう・・・。とりあえず、これで義理は果たしたということでいいですかね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件末頃・・・

 

 

 

「周大哥、大亜連合軍が横浜中華街に逃げ延びてきました。代表者が保護を求めています」

 

「そうですか・・・(巫山戯んな、ボケがぁ!! 最後の最後まで手を煩わせやがってクソ共め! ここで迎え入れたら、国防軍や日本魔法協会に介入を許すどころか中華街潰す大義名分を与えちまうだろうが!! そんな事になったら、日本へのスパイ活動の拠点を一気に失っちまうぞ、アホ共が!!!)」

 

「周大哥、どうしますか?」

 

「・・・全員捕らえて、突き出しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周公瑾の執務室・・・

 

 

 

「やれやれ、今回もかなりヘビィな内容でしたが、何とか終わりましたか・・・」

 

 

 

疲れをほぐすように肩を回しながら、周公瑾は何気無く時計を見やった。

 

 

 

「おっと、死に損ないへの報告の時間でした。さて、今日の予定はこれで終了ですか・・・」

 

 

 

そう呟きながら、周公瑾は地下へと歩を進める。

 

彼の色んな偉い人達に振り回される受難は、まだまだ続く・・・

 

 




幹比古「達也、何してるんだい?」

達也「チャットだ」

レオ「へぇ〜、お前がそういうのをやる何て意外だな?」

達也「あぁ。今、チャット仲間の一人の“三国軍師”の愚痴を皆で聞いてたんだ。クソみたいな上司に振り回されて、過労死しそうだと言っている・・・」

レオ「社会って大変だな・・・」
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