第一高校生の日常   作:ジャスティスⅡ

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進路

 

 

魔法科高校と言っても、一日中魔法を学んでいる訳ではなく、高等学校としての通常のカリキュラムに食い込ませる形で魔法の理論学習や実技演習の教科を設けている。

 

この辺は、工業高校のカリキュラムが近いかもしれない。

 

しかし、それでも魔法科高校が一般高校とは一線を画しているという事実は消えない。

魔法という、今だ民生より軍事利用が主な目的のこの技術は個人の資質に依存する面が強く、それを個人の意思で割と簡単に扱えるというのが社会問題の一つとして取り上げられている。

 

例えるなら、小学生が常にピストルを持っていて、いつもヘラヘラしながら気楽に街中で銃を撃ったりしている……と言っても大袈裟ではない。

 

そのため第一高校では、魔法という個人に依存する力を正しく運用してもらう為に、青少年の健全な精神性を育む為に常駐のカウンセラーを十六名抱えている。

 

 

 

小野遥は、その十六名の一人である……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小野遥は優秀なカウンセラーであり、その可愛らしい容姿に一部の身体的特徴も合間ってか「遥ちゃん」などと呼ばれて、生徒達に愛されている。(舐められているともいう)

 

しかし、そんな優秀な彼女の歩んできた道は苦難の連続であった。

 

 

 

BS魔法師として生を受け、特に隠形に長けた特性をもっていたのだが、魔法科高校の受験に失敗した為に止む無く普通科高校の優等生として高校時代を過ごす。

 

何とか国立魔法大学への受験資格を得られないかと、彼女は特別試験に挑戦するも不合格。

 

仕方なしに医大に進学して精神科を専攻して医師資格も取得し、一般的な常識ではかなりのエリートコースを進み、なかなかに順風満帆な人生の入り口へと足を踏み入れようとしていた。

 

しかし魔法への未練を捨てる事は出来なかったのか、小野遥は自身のBS魔法を活かす道を探る為に九重八雲を師事して、それを活かす技術を身につけた。

 

その経験が彼女の人生を助け、そして転落させたと言ってもいい。

 

精神科医としてのキャリアを積む為にカウンセラーとなるも、折角身に付けた技術と魔法を使ってみたいという欲求には逆らえなかったのか、ちょっとした悪戯ーー所謂“覗き”を行った。

人の秘密を覗くというのは得てして楽しいもので、これが適度にスリルがあった事もあり、小野遥はこの行為にどっぷりハマってしまった。

そしてこういった行為は徐々に過熱するもので、次第にちょっとした悪戯程度から完全な犯罪レベルにエスカレートしてしまい、敢え無く彼女は公安に御用となり彼女のエリート人生は終わりを告げた。

 

しかし彼女は色々と優秀で、しかも公安の業務上都合がいいスキルを幾つか所有していた事もあり、公安のスパイになれば罪を揉み消してやるという取引を持ちかけられた。

 

元より選択肢は無いし、少しだけ美人女スパイというものに憧れがあったこともあり、彼女は公安のスパイになる事を了承して第一高校のカウンセラーに就任した。

 

余計な肩書きは付いたが、漸く元の路線に戻ることが出来た彼女に更なる苦難が襲う。

自身が担当するクラスに、かつて師事した九重一門の兄弟子が在籍していたのだ。

 

その兄弟子がまた性悪で、何時も何時もいいように使われて最終的に泣きを見る事が多々あり、しかも彼に関わるとかなりヤバい情報を知ってしまう機会が多くて、最近は就寝前に「寝ている間に消されたらどうしよう」という不安感に苛まれ、既に安眠出来た記憶は遠い彼方のものである。

 

日々、スパイ業務が多くなって自分が一体なにをしているのか疑問に思う程カウンセラー業務をする割合が減ってきているものの、それでも彼女は生徒達の精神を育むカウンセラーなのである。

 

彼等の将来の不安を解消するのも、彼女の仕事なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1-Eの教卓で、小野遥は集められたプリントの束をジッと見つめていた。

 

そしてプリントから視線を上げて、今度はクラス中をザッと眺めた。

 

 

 

「一応聞くけど、ちゃんと真面目に書いたんだよね?」

 

 

 

返事はない……

 

そんなクラスの状況を見て、小野遥は再び持っていた『進路希望調査書』の束を眺めながら口を開く。

 

 

 

「もう、この場でチェックするわよ? 今更抗議は受け付けないから!」

 

 

 

そう言って小野遥は進路希望調査書の束の中から一枚のプリントを取り出した。

 

 

 

『西城レオンハルト 希望:中学生』

 

「ほら見なさい!! 真面目に書いてって言ったでしょう!? 今回の希望次第で二年次の選択魔法授業の方針を決めるから、みんな真面目に書いてねって私言ったよね!!?」

 

 

 

バンバンと教卓を叩きながら、小野遥は涙目で生徒たちに訴えるが、みんな俯いたまま沈黙を保っていた。

 

全然反応がない生徒たちに軽く殺意を覚えながら、もう一枚のプリントを取り出した。

 

 

 

『千葉エリカ 希望:お嫁さん(笑)』

 

「喧嘩売ってんのかしら!?『私はなろうと思えばなれますよ~』っていう嫌味かしら!! 二十代後半になっても結婚のアテもない私に対する挑戦なの!!!?」

 

 

 

肩で息をしながら小野遥はイライラを隠さずに叫ぶも、先生としての最後の一線だけは守り通した。

 

既に彼女の精神は限界に近づいていたが、それでも彼女は自身のカウンセラーとしての矜持があるのか、更に一枚のプリントを取り出した。

 

 

 

『吉田幹比古 希望:先生のお婿さん』

 

「気持ち悪いよ!! なにこれ、告白のつもり!? 蛆でも湧いてんじゃないの!! 私の知る限り、今までで一番頭の悪い告白の仕方だよ!!」

 

 

 

小野遥はもはや我慢ならないのか、握り拳を作って教卓をガンガン叩きだした

女性とはいえ、仮にも高名な忍術使い・九重八雲の弟子であるだけはあり、教卓にはどんどん罅が入っていた。

 

ちなみに、吉田幹比古は地味に傷付いていた。

 

 

 

「もう、疲れたからこれで最後にするよ・・・」

 

 

 

そう言って、彼女は最後の一枚を取り出す。

 

 

 

『司波達也 希望:魔法工学研究者』

 

「・・・・・」

 

 

 

暫く、小野遥はじっとプリントを見つめていた。

 

そして顔を上げると、このプリントを書いた本人に視線を向けて……

 

 

 

「フッ・・!」

 

 

 

鼻で笑った……

 

 

 

そして先程までとは違い、割と上機嫌で教室を出て行った。

 

廊下からは、なにやら鼻歌まで聞こえてくる。

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

それは、仮にも兄弟子としての矜恃なのかは分からない……

 

司波達也の胸中に過ぎったのは、何やら言いようもない敗北感と屈辱感であったという……

 

 




エイミィ「雫とほのかは進路、なんて書いた?」

雫「取りあえず、魔法大学進学って書いた」

ほのか「私も同じ、かな・・」

エイミィ「ほのかは司波君の“お嫁さん”じゃないのぉ?」

ほのか「えっ///」

森崎「フン! 僕は・・・」

エイミィ「アンタは一先ず劇団でも入って、そのモブ臭でも消してきな!」

深雪「言えてますね。ちなみに私もほのかと同じよ!」

雫「ちなみにどっち?」

深雪「フフ・・さぁ?」



森崎「・・・・・」
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