第一高校生の日常   作:ジャスティスⅡ

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肉と四葉と追憶編
主義


 

 

古来より人間とは、主義主張をぶつけ合うものである。

 

人が集まり派閥を形成して意見を統一し、それを他の派閥にぶつけて論争を重ねて、より良い結果を生み出す事を数千年も続けて来たのだ。

 

まぁ、時には悪い結果が生まれる事もあるのだが、それでも人類は失敗を糧に前へと歩き続けて来たのである。

 

22世紀を間近に控え、某ネコ型ロボットが生まれる日も近い2095年になった現在でも、人類は己の主義主張をぶつけ合っていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某県某所のホテルの一室には、日本の魔法師達の頂点たる十人の覇者達の姿があった。

 

北陸・一条家当主『一条剛毅』

阪神・二木家当主『二木舞衣』

関東・三矢家当主『三矢元』

中部・四葉家当主『四葉真夜』

四国・五輪家当主『五輪勇海』

東北・六塚勇当主『六塚温子』

関東・七草家当主『七草弘一』

九州・八代家当主『八代雷蔵』

関西・九島家当主『九島真言』

関東・十文字家当主『十文字和樹』

 

師族会議を形成する日本魔法師界の首脳陣である彼等は、先の横浜での大亜連合による侵略を重く受け止め、緊急の会議を行う事にしたのだ。

 

昨日から日をまたぎ二日目に突入し、既に会議は昼休憩を挟んで午後に差し掛かって漸く横浜の件は終了を迎えたが、会議は今だ終わりを見せておらず、日本が世界に冠する十師族の長たる彼等は皆が神妙な顔で円卓に着いていた。

 

口火を切ったのは、師族会議の不文律で進行役となっている九島真言だった。

 

 

「最近、人間主義の活動が活発になってきている」

 

「えぇ・・由々しき事態です」

 

 

同意したのは、十人の中で二番目の年齢である二木舞衣。

何とも「二」が好きな御仁である。

 

 

「背後にはブランシュの影があるのでは?」

 

「リーダーは捕まった筈では? 確か、十文字殿の御子息が関わっていたはず・・・」

 

 

会議の中でも若い部類に入る八代雷蔵、六塚温子の両名が言葉を交わす。

年長組に対抗するように意見を述べるその姿には、若いエネルギーが溢れていて年寄り達には眩しく映る。

 

 

「うむ。四月の第一高校の襲撃事件で、警察の介入をよしとしなかったのか、十師族の責務として克人が中心となってブランシュ日本支部のリーダーを含む主要構成員を捕縛したと報告を受けている」

 

 

厳かに答える十文字和樹を、四葉真夜は持っていた扇で口元を隠しながら両目を細めて見つめていた。

その姿は正に世界最強の「夜の女王」の名に相応しい姿であり、自他共に認める真夜フリークの六塚温子はうっとりとしており、四葉と対立する七草弘一は警戒するかのように身を震わせる。

 

謀略の中心に君臨する女王の頭の中には、一体どんな策略が巡っているのか・・・

 

 

(キィーーーッ!!! なぁ〜にが克人が中心よ! 中心になったのは “う・ち・の” 達也さんよ!! つまらない見栄なんか張っちゃって、これだらプライドだけは一丁前の男は駄目なのよ)

 

 

・・・その頭脳には、世にも恐ろしい謀略が巡られ、今この瞬間にも新たな不幸が作られていた。

 

 

 

「しかしそうなると、この人間主義の活動は当事者達の自発的な行動ということに?」

 

「国防軍でも活発になりつつあるそうだ。昔、一斉摘発したにも関わらず、最近また増えてきているからな・・・」

 

 

 

三矢元の疑問に、会議の進行役たる九島真言が苦々しい表情で答える。

その顔には、怨敵を前にしたかのような憎しみが感じられる。

そんな九島真言の複雑な心情を感じ取ったのか、一条剛毅が会議に一石を投じるべく発言した。

 

 

 

「北陸でも被害が拡がっている。やはり、武力をもって排除するしかないか・・・」

 

「性急過ぎる! 前回、それをやって世間やマスコミからどれだけ叩かれたか・・・」

 

「しかし、その世間にも被害が拡がっているのだぞ‼︎」

 

「そうねぇ・・・私達の所でも、被害を受けて警察に訴える人達が多いみたい。それにこのまま被害が拡がると、国防軍が出っ張ってくる可能性もあります。師族会議としては、それはかなり不味いのでは?」

 

 

 

一条剛毅の意見に立ち上がってまで反論した七草弘一だったが、一条剛毅と四葉真夜の言葉に思わず口を噤む。

確かに一条剛毅の言うとおり、ここ数年は相当の被害報告が上がっていて、世論も「排除も止む無し」という見解に傾きつつある。

特に地方は深刻で、一条剛毅や四葉真夜など地方を本拠地とする十師族当主は皆が頷いており、そこらで東京など都市部を本拠地とする七草・十文字とはかなり温度差が広がっていた。

 

形勢不利と見たのか、七草弘一は目を閉じて静かに席に座り直し、その様子を四葉真夜は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべて見つめる。

 

 

 

なんとも安い勝利である・・・

 

 

 

その後も会議は続いていき、粗方意見は出尽くしたと判断した九島真言は静かに立ち上がって全員を見渡す。

 

 

「やはり、このまま捨て置く事は出来ん。特に山の多い地方の被害は深刻で、被害総額は相当な金額まで跳ね上がっているとの報告もある。私の所の吉野や一条・四葉殿の飛騨、更に六塚殿の所の奥羽は迅速な対処が必要であろう。そこで我々師族会議は、この問題の解決の為に早急に十師族が一丸となりこの・・・」

 

 

 

九島真言が、その両目をこれでもかと見開く。

 

 

 

「農作物を狙い、近隣の町村に出没する『魔法猿』の根絶をここに決定する❗️❗️❗️」

 

 

 

かつて、とある魔法研究所で「人間以外の霊長類の魔法師化」というコンセプトの元に実験が行われ、その被験者となっていたのは農作物に悪さをする野生の猿であった。

多くの猿が実験に使われ、その結果、結構な数の猿が簡単な単一魔法の発動に成功したのだ。

そして実験の成功体となった猿は「魔法猿」という検体名を与えられ、第三次世界大戦の渦中に兵器として投入されたとか・・・

 

しかし戦争が終わると、猿と同列に思われる事を嫌った魔法師達が魔法猿の排斥を訴え出したのだ。

 

 

 

これが “魔法は人間が運用するべき技術” という訴えの元に誕生した「人間主義」の走りである。

 

 

 

各地で魔法師の多くが猿狩りを行うが、この行動が日本の動物愛護団体の顰蹙を買ってかなり叩かれてしまい、撲滅する前に猿狩りは中止されられてしまう。

しかし、生き残った魔法猿が密かに子孫を残して数を増やし、魔法猿の数は爆発的に増えて全国規模に拡がる。

そのせいで、各地で簡単な自己加速魔法やちょっとした移動魔法を駆使して、農作物を大量に盗む魔法猿が続出してしまったのだ。

 

吉野山を本拠地に持つ九島はかなり深刻で、既に一般市民に怪我人が出てる始末である。

そこらへんに、この九島真言の怒りの源があるのかもしれない・・・

 

 

 

「準備が整い次第、作戦を開始する! 皆の者、ゆめゆめ油断なされるなよ? 相手はしぶとくも第三次世界大戦から生き残った猛者共の子孫だからな‼︎‼︎」

 

 

 

九島真言のその言葉により、会議は終了する。

 

 

 

人間魔法師の代表たる十師族と魔法猿軍団の戦争の火蓋が、切って落とされようとしていた・・・

 

 




〜某山奥〜


魔法猿A「ウッキー! ウキウキ、ウッキッキー・・・(大変です! 十師族の奴らが、遂に我等を・・・)。」

魔法猿B「ウキーウッキッキ、ウキー(来るべき時が来た、か・・・)。」

魔法猿C「ウウキー、ウキキキノキーー・・・(我等「十氏族」も、覚悟を決めなければ・・・)」

魔法猿D「ウキキキー・・・ウッキッキー❗️(戦争の始まりじゃ・・・行くぞ、皆の者❗️)」

魔法猿達『ウキキキー❗️❗️❗️(オオォォォーーーッッ❗️❗️❗️)』
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