かつて、悲しい事件があった。
その家族は暖かかった・・・
一般的とはお世辞にも言えない事情を抱えてはいたものの、それでも確かな幸せがそこにはあったのだ。
父親は己の宝の成長を楽しみにし、またその宝は一族の愛を受けながらすくすくと育っていった・・・
あんな事件さえなければ、この幸せはずっと続くものだと誰もが思っていた・・・
その日、とある一族に激震が走った。
「何だと!!? 私の可愛い可愛い真夜ちゃんが誘拐されただと!!!」
四葉家現当主・四葉元造は荒ぶっていた。
ただでさえ、国際魔法協会アジア支部が主催した少年少女魔法師交流会とかいうのに参加させるのも渋っていたのに、開催中に参加者が誘拐されたとあってはこうなるのも仕方ないかもしれない。
「訴えてやるぞ、訴訟だ訴訟!! 葉山よ、今すぐに国際魔法協会アジア支部を告訴しろ!!!」
「旦那様、今はそれどころでは・・・」
「見ておれ、この私の怒りを存分に味あわせて「話を聞けやヴォケェェーーっ!!!」ブォホ!!?」
エキサイトする四葉元造を自身の鉄拳で止めた葉山は、何事もなっかたかのように顎を撫でながら倒れ伏す主を見つめる。
「調べたところ、真夜お嬢様を誘拐したのは大漢の崑崙方院が濃厚ですな。如何されますか?」
「殲滅だ! 虐殺だ!! 大爆発だああぁぁぁーーーっ!!!」
「・・・承りました。そのように手配します」
崑崙方院は誰一人残さずに壊滅した・・・
「これは由々しき事態だ・・・!」
四葉一族が集まる本邸の大会議室で行われている一族会議は、四葉元造のこの一言から始まった。
「崑崙方院は潰したが、真夜ちゃんは終ぞ見つからなかった・・・! 職員を一人残らず尋問したが、誰も居場所を吐かなかった!!」
「何という事だ! それでは真夜ちゃんは、何処にいるのだ!?」
元造の伯父が、怒りにまかせて立ち上がる。
一族の末席にいる若い者たちも憤怒の形相でああだこうだと議論し、場は騒然となった。
「喧しいぞ、天下の四葉が狼狽えるな!!」
この凛とした一言で、場は静寂に包まれた。
その人物は、元造の十個下の従妹であった。
「従兄殿、私にも娘がいます。今回の件は他人事ではありません! まだ小学校にも上がらない娘ですが、あの子の将来を考えれば、このような事態を野放しには出来ません!!」
「うむ、ならば次は他の研究所をあたろう。ついでに国際魔法協会アジア支部からも情報を探ってこい! もしかしたら、内部に内通者がいるかもしれん!」
「「「「「オオォォォーーーーッッ!!!!!」」」」」
大漢の魔法研究所の全てと、ついでに国際魔法協会アジア支部が壊滅した・・・
暗い部屋の中で、四葉元造とその一族は顔をつきあわせていた。
「諸君 私は戦争が好きだ。
諸君 私は戦争が好きだ。
諸君 私は戦争が大好きだ。
殲滅戦が好きだ
電撃戦が好きだ
打撃戦が好きだ
防衛戦が好きだ
包囲戦が好きだ
突破戦が好きだ
退却戦が好きだ
掃討戦が好きだ
撤退戦が好きだ
平原で 街道で
塹壕で 草原で
凍土で 砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で
この地上で行われる、ありとあらゆる戦争行動が大好きだ。
戦列をならべた砲撃魔法師達の砲撃魔法の一斉発射が、轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く放り上げられた敵兵が、空気弾でばらばらになった時など心がおどる。
我が四葉の魔法師の操る領域干渉魔法が、大漢の敵戦車を撃破するのが好きだ 。
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵を魔法射撃でなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだ・・・
魔法剣の先をそろえた四葉の横隊が、敵の戦列を蹂躙するのが好きだ。
恐慌状態の四葉魔法師の若手が既に息絶えた敵兵に、何度も何度も魔法を撃ち込む様など感動すら覚える。
哀れな大漢の糞共が、雑多な魔法で健気にも立ち上がってきたのを嬲り殺すのは快感だ。
四葉の魔法師達の広域破壊魔法が、都市区画ごと木端微塵に粉砕する時など絶頂すら覚える。
大漢の機甲師団に滅茶苦茶にされるのは嫌だ。
必死に守るはずだった娘が蹂躙され、四葉の女子供達が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ。
大漢の機動兵器に追いまわされ、害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ。
諸君 私は戦争を、地獄の様な戦争を望んでいる。
諸君 私に付き従う四葉の精鋭魔法師の戦友諸君。
君達は一体、何を望んでいる?
更なる戦争を望むか?
情け容赦のない、糞の様な戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし、三千世界の鴉を殺す 嵐の様な闘争を望むか?」
『戦争!! 戦争!! 戦争!! 」』
「よろしい、ならば戦争だ。
我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ。
だがこの暗い闇の底で堪え続けてきた我々に、ただの戦争ではもはや足りない!!
大戦争を!! 一心不乱の大戦争を!!
我らはわずかに数十名の一族単位の魔法師集団にすぎない。
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している。
ならば我らは、諸君と私で総兵力100万と1人の軍集団となる。
我々を舐めきり、眠りこけている連中を叩き起こそう!
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう !
連中に恐怖の味を思い出させてやる。
連中に我々の作り上げてきた魔法の力を思いしらせてやる。
天と地のはざまには、奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる。
四葉の深淵の魔法で大漢を燃やし尽くしてやる!!」
『元造殿! 四葉家当主殿!! 四葉魔法小隊指揮官殿!!』
元造は立ち上がり、右手を前に突き出して一族を扇動する。
「第三次大漢侵攻作戦、状況を開始せよ!! 征くぞ諸君、大漢に地獄を見せるぞ?」
盛り上がる会議室の中とは対照的に、扉から少しだけ顔を出して覗いていた四葉深夜と葉山は溜息を吐いた。
「当初の目的、完全に忘れているわね・・・」
「・・・みたい、ですな」
「真夜、何処にいるのかしら・・・?」
大漢は、地図から消滅した・・・
「・・・こうして四葉の魔法師は大漢を滅ぼして、世界からアンタッチャブルと呼ばれるようになり、その後は平和に暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
そう言って、司波深夜は日記張を閉じた。
それを聞いていた二人のうちの片割れは、途中から疑問に思っていたことを口にした。
「お母様、それで結局叔母様はどこにいたのですか?」
「あの後、普通に帰ってきたわよ」
「えっ!? 誘拐されたのではないのですか?」
「大漢の誘拐部隊が来たのは本当だけど、その時真夜はホテルの一室に閉じこもってたんですって? 何でも、当時婚約者だった七草の現当主にセクハラされて不貞腐れてたそうよ。あの後は大変だったわ、真夜の婚約破棄だとか色々あったから・・・。深雪、もう寝なさい」
「は~い」
母親に返事を返し、司波深雪は寝室に向かった。
「母さん」
「何、達也?」
「実際のところはどうなのですか? たかがセクハラで、十師族同士の婚約を破棄できるとは・・・」
「セクハラを超えて犯罪レベルの事をしようとしたのよ、あのロリコン男! 当時、十二歳だった真夜に!!」
「・・・いくら魔法師は早婚が推奨されているとはいえ、それは擁護できませんね?」
悲しい事件が、あったのだ・・・
ジード「解るか、周公瑾よ? “勘違い”で国一つ滅ぼしといて、間違いに気付くと『メンゴメンゴ d(>人<;)』の一言で済ますような集団だぞ!? この恨み、晴らさずしてなんとするか!!!」
公瑾「はい、大師ヘイグ。仰る通りでございます」
ジード「奴等は危険だ! 一刻も早く魔法をこの世界から無くし、大亜細亜連合による秩序の確立を持って平和を築かねばならんのだ!!」
公瑾「この周公瑾、微力ながら我が身命を賭して大師ヘイグの理想の為に尽力したいと思います (誰がやるかブァ〜カ! 適当な所で逃げるに決まってるだろ! さぁ〜て、その時は潜伏先、どうすっかなぁ〜)」