九校戦までは書きたいと思っています。
遭遇
国立大学付属第一高校・・・
この学校に通う二科生の少年・司波達也は今、人生最大の危機を迎えていた・・・
・・・気まずい
現在、司波達也の胸中を表す言葉はこれ以外に存在しない。
達也が眺めている携帯端末のスクリーンに向いている視線を横目にやれば、そこには数日前に第二小体育館で騒ぎを起こした片割れ・壬生紗耶香がチラチラとこちらを向いている。
学校内とは思えないほど広い間取りを持ち、尚且つ人が沢山いないこのカフェの中で何故わざわざ彼女の近くに座ってしまったのか、達也は十数分まえの己の迂闊さを呪う・・・
スクリーンに集中して周りがみえていなかった・・・
二科生が風紀委員をしているのがお気に召さない一科生な方々の襲撃が意外とストレスだった・・・
俺の妹が思春期・・・
上げればキリがないが、とりあえず達也は目の前の問題を片付けることに意識を向ける。
壬生紗耶香は、先程から達也をチラチラとだが注視している。
この場面での迂闊な行動は、即、死につながる。(社会的に)
あらぬ噂を立てられることだけは、何とか避けたい・・・
(さて、どうしたものか・・・)
壬生紗耶香は今、混乱の極みにあった。
(何で!? 席がいっぱい空いているのにどうして態々そこに!??)
数日前、第二小体育館で結果的に助けてくれた少年・司波達也は、このカフェに入るとずんずんとこっちに向かってきて、何を思ったのか壬生紗耶香の目の前の席に座ったのである。
(・・・もしかして、私に気がある?)
そう思ってもおかしくはない・・・
壬生紗耶香は、己の容姿が一般水準以上であることを自覚している。
別にこれは、彼女が特別自意識過剰だとかそういうものではない。
女・・・特に美人にカテゴライズされる女性は客観的以上に己を知っており、その容姿を生かす術を本人が好む好まざるを別に自然と身に着けているものなのである。
(どうしよう。挨拶した方がいいかな? こんにちは・・・はおかしいかな。私、先輩だし・・・)
(何故かチラチラ見られている。バレテないとでも思っているのか? しかし不味いな・・・こういう反応をする女性は決まって「コイツ、絶対に私に気がある」と考えていると深雪と叔母上は言っていた・・・)
(彼は、間違いなく私に気があるわね・・・)
かみ合って無いようでかみ合っている二人の思考・・・
これを深雪が知ったら憤慨ものだろう・・・
(だったら、問題ないじゃない。普通に話しかければいいのよ。司主将だって、彼を剣道部に勧誘しなさいって言ってたし・・・)
実は彼女、ただの高校生ではない。
第一高校二学年・壬生紗耶香とは世を忍ぶ仮の姿・・・
その正体は反魔法国際政治団体ブランシェ・日本支部のリーダーである司一の弟・司甲に見込まれて下部組織・エガリテに入った期待の美人スパイ(仮)という、やたらと長い肩書きと「仮」が多い役職を持つ美少女なのである。
そして、いまだにチラチラ見ている少女に対し、達也は更に思案する。
(ここで席を立つと彼女を傷つけるおそれがある・・・。女性には優しくしなければならないと叔母上は言っていたし、変な噂を立てられて深雪に迷惑をかけるわけにもいかない・・・ここは少し、様子を見よう)
しばし、静かな時間が流れる・・・
カフェ内にいる生徒たちの喧騒をBGMに、二人の間にはわずかな緊張感が駆け巡る。
まるで、この状態が自然なことであるかのような錯覚を壬生紗耶香は感じていたが、このままではいけないという強い信念が彼女の決意を呼び覚ます。
私はあの屈辱を忘れない・・・
変えるのだ、この学校を・・・私達の手で!
思い出した強い思いを胸に、彼女は意を決して顔を上げた。
まるでこれこそが、学校変革の第一歩だと言わんばかりに・・・
決意を胸に顔を上げ、壬生紗耶香は達也に振り向いた。
「あ、あの司波くっ・・!」
しかしそこに、司波達也はいなかった。
慌てて辺りを見渡すと、司波達也は既にカフェの出入口に向けて歩き出していた。
(え、ええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!???)
思わず立ち上がり、愕然とする壬生紗耶香を尻目に、達也はそのままカフェを立ち去る。
(元より、俺の好感度など無いも同然。彼女がどう傷つこうと俺には関係ない。深雪の機嫌は、頭を撫でとけば大概のことは問題ない)
もとより、超絶的な人気を誇る司波深雪の評判が、この程度で揺らぐことなどあり得る訳がないのだ。
達也は風紀委員の業務を再開すべく、喧騒ただめく校舎へと向かっていった。
一方、取り残された形となる壬生紗耶香は動けない・・・
立ち上がった姿のまま、司波達也が出て行った出入口を見つめていた。
(そんな・・・嘘ぅ~~)
壬生紗耶香の嘆きを聞く者は、今は誰もいない・・・
基本的に「男子高校生の日常」のキャラは出てきません。
ほんの一部は出てきますけど・・・