第一高校生の日常   作:ジャスティスⅡ

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仕事

 

 

風紀委員の仕事は、それほど多岐に渡ってはいない。

 

あくまで魔法の不正使用を取り締まる役職であり、実際に学内の風紀を正そうという組織ではない。

 

魔法という、一歩間違えば殺人に繋がりかねない力を抑制するという警察的業務が主な仕事なのだ。

 

風紀委員だからって何か成績に加味されるのかといえば全くなく、一体彼らはどんな気持ちでわざわざ自身の学習時間を削ってまで無駄な業務を一生懸命やるのか理解が及ばない・・・

 

 

 

そこには、何か世人には理解できない高尚な何かがあるのか・・・

 

 

 

悩める少年・司波達也は、そんな事を考えながら今日も風紀委員の業務である巡回に精を出す。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

そして司波達也は見てしまった。

 

学校内に蠢く、恐ろしき悪の瞬間を・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(畜生、見失っちまった!)

 

 

 

第一高校内にある、主にクロス・フィールド部が使用する森の中で、とある一科生の少年は思わず舌打ちをした。

 

キョロキョロと辺りを見渡しながら歩を進めるが、その歩みは酷く遅い・・・

 

まるで一歩でも歩をしくじると命を落としてしまうかのような、そんな慎重さが感じられる。

 

 

 

「くっ!?」

 

 

 

一科生の少年は、何かに反応して自身の右足を上げた。

すると右足があった場所には、何かが撃ち込まれたかのような不自然な穴が空いていた・・・

 

それは、加重系・単一工程の簡単な魔法・・・

 

しかしそれは、当たりどころを間違えば即死に繋がる死神の鎌でもある。

 

一科生の少年は思わず息を飲んだ。

そして注意深く辺りを見渡して、少年は突然走り出した。

 

 

 

「見つけたぞ!!」

 

 

 

一科生の少年は探し人の姿を補足すると、加速・加重・移動の三系統を使った移動魔法で相手との距離を詰める。

 

相手は二科生の少年だった。

 

一科生の少年が近付いてくる事を確認した二科生の少年は、一科生の少年の右ストレートを躱す。

そしてそのまま体を丸め、あり得ないスピードでそのまま後方に飛んで行って姿を消した。

 

 

 

移動・加速・加速・移動の四工程を瞬時に発動させる、見事な魔法・・・

 

 

 

本当に二科生なのか怪しい程の魔法発動速度に、一科生の少年は苦虫を噛み潰したかのように表情を歪めた。

まるで相手が、自身の親の仇であるかのように一科生の少年は森に向かって叫んだ。

 

 

 

「生意気な雑草(ウィード)め! 決着をつけてやる!!」

 

 

 

その叫びに呼応するように、二科生の少年は上着を脱ぎながら一科生の少年に向かって走り出す。

 

 

 

決着の時は、もうすぐそばまで近付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ以上は危険だ」

 

 

 

一部始終を胸ポケットのカメラで撮影しながら様子を伺っていた達也は、漸くその重い腰を上げた。

薄暗くて人物の特定には至っていないが、先程の叫び声から察するに、一科生と二科生が争っているのだろう・・・

 

二つの影は今まさに重なろうとしており、もはや一刻の猶予もないことを達也に伝える。

 

 

 

(ん?)

 

 

 

しかし、達也の足は途中で止まった。

雄叫びを上げながら重なった影は再び二つに別れ、一つの影がその場に留まり、もう一つの影は猛然とこちらに向けて走ってきて、そしてすぎ去った。

 

達也がすぎ去った方向に顔を向けると、そこには足を大きく上げて何かを蹴り飛ばした二科生の少年の姿を確認出来た。

 

その少年の顔は、実に晴れやかだ。

まるで定期考査が終わった直後の学生のように、二科生の少年は甲高い金属音を響き渡らせながら、それを思い切り蹴り飛ばしていた。

 

二科生の少年ーー西城レオンハルトは、設置されていた空き缶を思い切り蹴り飛ばし、勝利の雄叫びを上げていた。

 

 

 

「いやぁ、負けたよ西城君」

 

「いやいや、A(一科生の少年の名前)も凄かったぜ! 流石は一科生だな」

 

 

 

先程まで西城レオンハルトと争っていた一科生の少年は、まるで褒め称えるように笑顔でレオンハルトに近付く。

そしてレオンハルトもまた当然のようにその労いを受け取り、逆に一科生の少年を褒め称えた。

 

そこに、身分の差は全く無かった・・・

一科だ二科だと騒ぎ立てる事こそが悪であるかのように、そこにはお互いを認め合う美しい光景があったのだ。

 

 

 

「レオ」

 

「おっ、達也じゃねーか。どうしたんだ?」

 

「一体お前たちは何をしていたんだ?」

 

 

 

先程レオンハルトが使っていた二科生らしからぬ魔法とか、色々聞きたい事は山程あった達也だが、とりあえず風紀委員としての業務を優先した。

 

司波達也という少年は、職務に忠実なのだ。

 

 

 

「何って、缶蹴りだぜ?」

 

「僕らは山岳部でね? 今日は部活が休みで暇だったから、西城君と遊んでいたんだよ」

 

「そうか・・・」

 

 

 

そう呟いて、達也は微笑んだ。

二人の山岳部の少年達も、同様に笑う。

男同士の友情が芽生えたかのような、実に平和な光景が広がっていた。

 

そして達也は、この美しい友情を見せてくれた二人の少年に言葉をかけるべく、一歩前へと歩き出した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法の不正使用により、二人共拘束する」

 

 

 

司波達也という少年は、職務に忠実なのだ。

例え、親だろうと親友だろうと容赦無く警察につき出せるくらいの心構えを持っているのだ。

 

二人の少年の両手に輪っかが付けられた。

 

己の自由を奪う象徴をかけたのは、無慈悲にも己の親友であった・・・

 

たった一つの過ちが、親友に過酷な選択を選ばせてしまった事を、西城レオンハルトは生涯忘れないだろう・・・

 

 




達也「ついでに、空き缶のポイ捨ての現行犯も追加だ」

レオ「チクショォォォーーーーーッッ!!!!」
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