この第一高校の生徒会長とは、この校内において絶対的権力の象徴である。
阿呆みたいに豪勢な椅子を設置した某聖帝のバイクみたいな、豪華な席に座って移動していてもおかしくない程の権威を持った至高の頂きである。
特に今代の生徒会長は、かの十師族・七草家の最高傑作と誉れ高い美少女である七草真由美が務めている。
彼女がいる限り、ブランシェだかブランケットだか知らないが、そんな名前のテロリストの付け入る隙などないも同然だと誰もが信じているのだ。
「会長、本当に行くんですか?」
「当然よ! いつまでも一校の天下でいられない事をあの女に思い知らせてやるのよ!!」
心配そうに声をかける眼鏡の少女の言葉を否定し、自身満々にそう言った少女の名は不知火加奈子。
火のエレメンツの末裔で現・四校生徒会長という大層な血筋と肩書きを持つ、今回のお話の為だけに登場したちんちくりんのオリキャラである。
今後出番があるかは、今だ未定である。
「いい事? 私達は一校と合同でやる事になった五月のイベントの打ち合わせの為に、わざわざこっちまで出て来てやったのよ! ここはビシッと私達の素晴らしさを見せ付けて、奴ら一校の野蛮さを突き付けてやろうじゃない」
そう言いながら、不知火加奈子は部下の眼鏡を引き連れて第一高校に向けて歩を進める。
まるで己が法であると言わんばかりの堂々とした歩みは、成る程、王者の風格を感じない訳でもない。
「さぁ、やって来たわよ一校のニワカ共! この不知火加奈子の輝かんばかりの美しさに身悶えするがいいわ!!」
自身満々に胸を張る不知火加奈子が、意気揚々と第一高校の門を潜る。
その眼前に広がっていたのは、まるで世紀末のように乱闘に乱闘を重ねる一校生達と作業服っぽい格好をした男達の姿だった。
「ひぃぃ、一体なんなんですか!?」
「お、お落ち着きない、眼鏡! 四校生は狼狽えないわ!」
まるで某国の軍人のような言葉をかけてはいたが、この異常事態に冷静でいられるほどの胆力を不知火加奈子は持ち合わせていない。
しかし、彼女は魔法科高校の生徒会長。
今だ軍事利用が主な目的の現代魔法を学ぶ学生の中でも僅か九名しかいない、言わば学生魔法師の長の一人である。
なけなしの勇気を胸に、彼女はテロリストに襲撃されている第一高校に足を踏み入れた。
「ヒャッハー! 汚物は消毒だ!!」
「どうかね、テロリスト諸君? これが第一高校の雷だ」
「いいか、お前ら!! 逃げる奴はテロリストだ! 逃げない奴はよく訓練されたテロリストだ!! ホント、魔法科高校は地獄だぜ!!! イヤッハァァーーーッッ!!!」
一科生も二科生も関係なく、魔法や体術で作業服っぽい格好の男達ーーテロリストを撃破していく。
その表情はみんな狂っており、下品な笑いをしながらどんどん進撃を続けている。
「いつから第一高校は、こんな世紀末になっちゃったのよ・・・」
ビクビクと身体を震わせながら、不知火加奈子はお供の眼鏡と建物に向かって進んでいく。
正面はまさに地獄であり、テロリストと、もはやテロリスト一歩手前の一校生達に見つからないように、人が少ない道を選んで前へと進む。
不知火加奈子の魔法である、振動系の幻影魔法である【陽炎】を使い、周囲の目を誤魔化しながらなんとか校舎の出入口に辿り着いた。
とにかく安全そうな場所に辿り着いたという安心感が、彼女ーー不知火加奈子の危機察知能力に陰りを作る。
それが彼女の、運命を分けた・・・
「何者だ?」
自身の後頭部に冷たい金属の塊を突きつけられ、そしてその首には警棒のようなロッドがかけられた。
そこには、何やらカタギには見えない雰囲気の赤毛の女生徒の姿があり、その目はまるで血に飢えた野獣のようにギラギラと血走っている。
危険を感じた不知火は、自身が全幅の信頼を置く眼鏡に助けを乞うべく視線を向けると、そこには大和撫子を体現したかのような美少女の姿があった。
その姿はまさに女性の理想像であり、平和な時に出会っていたから、不知火加奈子も憧れを持って接していたかもしれない・・・
彼女が、眼鏡を締め落とす光景を目にする事がなければ・・・
最早、自身の右腕が役に立たない事を不知火は悟り、とにかく状況の分析に取り掛かる。
戦場で常に生き残る奴は、思考を止めない奴である。
何と無く雰囲気からして、自分の後頭部に突きつけられたのは銃っぽいやつだと当たりを付けた。
自身の命の危険を再確認した不知火は、とにかくこの飢えた野獣どもと言葉を交わす決意をする。
人とは、言葉を交わす生き物である。
幾ら飢えた野獣といえども、人間である以上、きっと真心を込めた言葉は必ず届くと信じて、不知火加奈子は口を開いた。
「わ、私は第四高校の生徒会で・・「そんな嘘が通用すると思っているのか?」
「第四高校の生徒が、何でテロリストの目標の図書館の前にいるのよ?」
「サーチ・アンド・デストロイです、お兄様!」
野獣は野獣だった・・・
言葉が通じないからこその野獣であり、野獣は己の直感と本能に従うからこその野獣なのだ。
そこに人間の理は通用しない・・・
というか、一番野獣っぽい奴が割と正論を言っているような気がするが、今の不知火加奈子にそれに気が付く余裕はない。
私は人間なのだ。
この飢えた野獣共には人間の心を理解できまい。
ならば私は、人として、この人の皮を被った獣達に、人間としての尊厳を見せつけなければならないだろう。
決意を固めた不知火加奈子は、その両手に力を込めて上へと動かし・・・
そのまま両腕を天に突き上げ、涙目でビクビクと震えながら口を開いた。
「投降します・・・」
人は命の危険にさらされた時、その尊厳をかなぐり捨てて生き延びようとする生物である。
素手で野獣を前にした人間とは、かくも無力な生き物なのか・・・
不知火加奈子は、心と身体で涙を浮かべた。
テロリスト壊滅後、誤解は何とか解けて帰してくれました。
ブランシェ壊滅後・・・
達也「解放許可が出た。もう、紛らわしい事をするなよ?」
眼鏡「す、すみません・・・」
深雪「お兄様の手を煩わせるなんて、なんて迷惑な人達なのでしょう!」
不知火(クッソォォーーッ‼︎ 九校戦、一校にだけは絶対負けねぇーーーッ‼︎‼︎‼︎)