第一高校生の日常   作:ジャスティスⅡ

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悪魔

 

 

『アークデーモン』・・・

 

 

 

それは、三校のシルバーデビルと並び立つ忌み名であり、二学年以上の魔法科高校生にとっては恐怖の象徴でもある・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かつて、この関東には二人の悪魔がいたわ・・・」

 

 

 

そう言って辺りを見渡す七草真由美は、全員が己の話を聞いている事を確認する。

悪魔を知らない純粋無垢な九校戦に出場する一年生達は、ゴクリと唾を呑み込んで続きを傾聴する。

 

 

 

「それが、北関東のシルバーデビルこと『佐久間翔子』と南関東のアークデーモンこと『羽原真央』。二人は小学生の頃から猛威を振るっていた不世出のいじめっ子・・・。もはや法律違反と言っても過言ではない程の残虐行為を繰り返すも、小学生だから警察も迂闊に手が出せず、そして今から三年前、二人が中学二年生の時に遂に二人は関東の支配権を巡って旧埼玉の地で激突したわ・・・」

 

 

 

小学生とは思えない武勇伝の数々に、一年生達の緊張はどんどん高まっている。

光井ほのかなどは既に泣いている。

 

それもそうだろう・・・

 

何せ、その恐ろしい悪魔の片割れが、この第一高校に先輩として存在しているのである。

怖くない訳がないだろう。

 

 

 

「二人の戦いは三日三晩続き、決闘場の周りにはもしもの事態の為に国防軍が待機していたそうです。そして、勝負はアークデーモンに軍配が上がり、シルバーデビルは東北へと追いやられました。これが『第一次悪魔大戦』の結果です」

 

 

 

七草真由美の言葉に、一年生は不信感を持った。

さっき彼女は“第一次”と言わなかったか?

そしてその疑問を感じ取った真由美は、更に続きを口にした。

 

 

 

「東北に追いやられたシルバーデビルでしたが、彼女はまだ再起を諦めていませんでした・・・」

 

 

 

真由美は、かつて起こった惨劇を思い出したのか、痛み出した頭を庇うかのように右手を当てた。

 

 

 

「二人の悪魔が中学三年生の時『第二次』は、この第一高校で発生しました。今の二年生達を圧倒的に上回る成績を納めた二人でしたが、如何に第一高校とはいえ悪魔を二人も受け入れる事は出来ませんでした。そこで学校は、決闘を行ってその勝者を迎え入れるというトチ狂った提案を悪魔達に出したのです・・・」

 

 

 

その決闘は、まさに地獄絵図だったという・・・

 

 

 

立会人として決闘を見守ったのは現在の三巨頭達であるので、真由美は当時の光景を鮮明に思い出せる。

 

 

 

「当時、武蔵野にあった第一高校所有の訓練施設は崩壊し、復旧には一年の時間を要しました。事態を重く見た第一高校上層部は、責任の隠蔽の為に徹底的な情報封鎖を行って悪魔が決闘した事実を揉み消しました。そして僅差ではありましたが再び決闘に勝利したアークデーモンは第一高校へ進学し、シルバーデビルは遠い金沢の地ーー第三高校に進学して一応の事態の鎮静は達成され、関東の地に平和が訪れたのです」

 

「あの爆撃事件って、決闘だったんだ・・・」

 

「ニュースとかでは大亜連合のテロとか言ってたよな?」

 

 

 

こんな下らない事で責任を押し付けられたら大亜連合もたまったものではないだろう。

実際この責任転嫁のツケは、来たる横浜の地で降りかかってくるのだが今は割愛する。

 

 

 

「もし、女子モノリス・コードで第三高校と当たるような事があれば、かつての惨劇を繰り返す事になるかもしれません。しかし、私達には敗北は許されません! 目には目を、外法には外法を・・・皆さんも、覚悟だけはしていて下さい」

 

 

 

緊張感が室内を支配する。

九校戦三連覇の偉業以上の責任が、一年生の肩にものしかかる・・・

 

ニュースで見た、あのテロと言われても思わず納得してしまう程の惨状がまさか二人の魔法師によって作り出されたという事実に、一年生達は恐怖で身体を震わせる。

 

 

 

「会長」

 

 

 

しかし、そんな緊張感を感じさせない声音に一年生達の震えは表面上は収まった。

いつも冷静沈着、頼れる我らがヒーロー・司波達也は、有無を言わせない声で七草真由美を制止する。

 

その後ろ姿に、ほのかを筆頭とした達也シンパの一年女子は頼もしさを感じて頬を赤く染め、彼の妹である司波深雪はまるで神に祈りを捧げるかのように両手を合わせた。

 

そして達也は、真由美に何かを訴えるように視線を強めた。

その視線を受けて、真由美もまた、何かを決意したかのように表情を引き締めて一年生達を見渡した。

 

 

 

「では、皆さん。本題に入ります・・・」

 

 

 

再び、緊張感が室内を支配する。

 

 

 

今度の緊張感は、先程までの恐怖などではない。

自分達の所属する学校の威信を賭けた名誉ある話し合いなのである。

自然と、一年生達の表情には何やら使命感のようなもので染まり出し、その様子を見て真由美と達也は意味ありげに視線を合わせながら頷き、その口を開いた。

 

 

 

「それでは、男子ミラージ・バットの追加人員は、1-Bの十三束鋼君に決定しますけど、異議のある方はいますか?」

 

「「「「「「異議なし!」」」」」」

 

「それでは、本人の説得は一年生の皆さんにお願いしますね? もう一人の代表は服部君にしますから、皆さん九校戦は優勝目指して頑張りましょう!」

 

「「「「「「オオォォーーーーッッ‼︎‼︎」」」」」」

 

 

 

雄叫びを上げる事で、一年生みんなの心は一つとなった。

 

 

 

ミラージ・バットは空を舞う妖精のような可憐さを売りにした競技であり、九校戦でも花形競技の一つである。

そのミラージ・バットで、何が悲しくて十文字克人や桐原武明のような厳つい男が空を舞う姿を見なければならないのか・・・

 

しかもこの男女平等政策は急遽決まったことも合間って、ミラージ・バットの男子用の衣装が間に合わないという事態が発生していた。

そのため、予備の女子用の衣装を着て競技を行う事を日本魔法協会から通達されていた為、せめて容姿と体格が中性的な男子を選ぶ事で、見た目の見苦しさをカバーしようという女たちの陰謀であった。

 

 

 

「とんでもない事になりましたね、会長?」

 

「いいのよ、達也君。どうせ何やったって見苦しいのは分かり切ってる事なんだから、苦情殺到で来年は元に戻るから・・・」

 

「はぁ・・」

 

 

 

その背中には、哀愁があった。

肩は震え、これから地獄を見るであろう二人を憐れんでいるかのようで、達也にはそれが聖母のように見えた。

第一高校の長という立場は、時に残酷な決定をしなければならない修羅の道である。

 

そんな真由美を、達也は痛ましげな視線で黙礼していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也からは見えない真由美の表情は、大爆笑一歩手前で踏みとどまっていた・・・

 




佐久間 → 悪魔
真央 → 魔王

悪魔とは、二つの意味がある。



一年以上前の第一高校・入試にて・・・


羽原「シイィィネェェェーーーーッッ‼︎‼︎‼︎‼︎」


アークデーモンーー羽原真央の光波振動魔法が光の屈折率を変化させ、辺りに局所的な闇を発生させて相手の視界を潰す。
そして羽原はすかさず銃系の特化型CADを引き抜き、見事なパラレル・キャストで『フォノン・メーザー』を放つ。

間違いなく殺す気である。


佐久間「キィエェェェーーーーッッ‼︎‼︎‼︎」


しかし、対戦相手であるシルバーデビルーー佐久間翔子は無系統魔法である『術式解体』で羽原のフォノン・メーザーを消し去り、すぐに汎用型CADを操作して移動系の魔法を使って周囲の巨大な瓦礫を五つ程浮かせ、それに放出・吸収系の複合魔法である『電磁界誘導』を発動して羽原に向けて電磁加速砲を発射する。

羽原は笑ながら迫る電磁加速砲の弾を振動系の『音振動増幅魔法』で破壊し、細かくなった瓦礫を干渉装甲で弾いていく。
全てを弾いた後、羽原は更に笑みを深くして汎用型CADを取り出して操作した。

すると、いきなり地面が揺れ出す。
突然の事に、立会人である三巨頭にも動揺が走る。


羽原「終ワリダ、死ネ‼︎‼︎‼︎」


振動系の領域魔法『地殻震動《ガイア・クウェイク》』

訓練施設の敷地内のみならず、旧東京周辺に地震を引き起こすトンデモ魔法・・・
しかしこの魔法は地震を引き起こすのは副産物でしかなく、本当の用途は大地そのものの振動による破壊と操作にある。
揺れる大地から、佐久間に向けて巨大な石柱が幾つも飛び出してくる。
これでも手加減してるらしいが、本気で使えば間違いなく戦略級に数えられる魔法である。


佐久間「死ヌノハ、オ前ダァァァーーーッ‼︎‼︎‼︎」


揺れる大地の上をしっかりと二本の足で立ち、佐久間もまた汎用型CADを操作する。
すると突然、佐久間と羽原のちょうど中心の空間が歪み出した。

吸収系の領域魔法『空間爆発《オメガ・バースト》』

分離魔法で強制的に真空状態を作り上げ、それが元に戻る現象を気流操作魔法で加速させる事で、爆発的な衝撃を辺りに巻き起こす破壊魔法。
訓練施設の敷地内なら三回は吹き飛ばせる威力を持つこの魔法もまだ手加減してるらしく、本気ならばやはり戦略級の威力があるのだろう・・・


二つの超魔法は辺りに甚大な被害を与えたが、二人の戦いはこの後数時間続いたという・・・

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