ドキプリ世界で蒐集家 作:大きいお友達
覚悟を決めた真琴たちはトランプ王国からの脱出の為に魔法の鏡がある王宮へと足を進めていた。不思議な事にジコチュー達の襲撃は一切なく、王宮の手前までつく頃には彼女たちのこれが罠だという事は理解できていた。
「確実に罠ですわね」
「でも向かわないと脱出も難しいわ」
王宮までは橋を通ればすぐなのだがそれを躊躇する理由の一つにジコチューが襲い掛かってこない事があった。現在、マナ達は変身するのに必須な妖精と離れ離れになっており、プリキュアの力を使う事が出来ないでいた。つまり、ジコチューに襲われれば一溜りもないのだがそれがなかったという事はジコチューよりも確実な方法で自分たちを倒せる罠が存在するという事に他ならなかった。
「下手にジコチューでをけしかけて予想外の事態を引き起こしたくはない。そういう考えでしょうね」
この中では最も分析能力が高い六花が簡潔に説明した。それは同時に自分たちにとって状況は良くないという事に他ならなかった。だが、何時までもこうしているわけにはいかないのも事実。現状において王宮にある魔法の鏡を使用する以外に人間界に帰還する方法はないのだから。
「……行こう。このままここにいても良いことはないし、ならば罠でも進むしかない」
「そうね。でも用心はしていきましょう。ラケル達とも合流しないといけないんだから」
さすがに自分たちだけで帰還することは出来ない。ラケル達妖精も一緒でなければ今後の戦闘すら行えないのだから。
4人は意を決して王宮へ通じる橋を走っていく。そして、それを見届けたかのように彼女たちが先ほどまでいたところをジコチューの大軍が封鎖した。これで戻る事は不可能になった上に上空や水中にもジコチューはおり、彼女たちは完全に包囲されている状態になっていた。それでも襲い掛かってこない事こそがこの先に待ち構えている罠の恐ろしさを強調させていた。
「……」
そして、罠ではないがジコチューよりも強大な力を持つ人物を真琴だけは知っていた。かつてトランプ王国の崩壊時に自分を拘束し、力を奪っていったジコチューの一人。これまでに見てきたイーラやマーモ、そしてベールすら足元にも及ばないとさえ思える程の実力者を。その可能性は高いと真琴は考えていた。トランプ王国襲撃時にはいたが人間界では活動している様子を見せていない。つまり、まだトランプ王国に留まっている可能性があり、それが魔法の鏡の番人として立ちはだかるのであれば……。
「っ!」
そこまで考えて真琴は嫌な考えを全力で振り払った。ここまで来た以上引き返すことは出来ない。たとえその通りであったとしても突破しなければいけないのだ。ネガティブな思考は行うべきではないと真琴は王宮の入り口をくぐり、件の魔法の鏡がある部屋まで一直線で向かい、そして悪い予感は的中した。
「意外と遅かったな。いや、想定通りか」
「っ!!」
それは、いた。魔法の鏡が立てかけられた壁の前で玉座のような豪華な椅子に座り、真琴たちを感情のこもらない瞳でのぞき込んでいた。いるだろうと思っていてもいてほしくなかった存在。自分が一切何もできずに負けた相手。それが立ちはだかっていた。
「俺の名前は……、どうでもいいか。どうせここで終わりなんだし」
「っ!」
男はゆっくりとした動作で立ち上がる。それは隙だらけに見えるが真琴には攻撃した所を返り討ちにするための罠にしか思えなかった。そもそも、変身も出来ないこの状況では万に一つの勝利の可能性すらない。
戦わずに鏡に向かって走るというのも不可能だ。何しろ相手はプリキュアの動きについてこれる人物であり、そんな相手を前に素の身体能力で逃げ切れるとは真琴は思えなかった。
「ん? どうした? 変身しないのか?」
「……」
「……ああ、成程。変身できないのか。大方、変身するために必要な妖精とはぐれたか」
相手は相変わらず感情のこもらない声量で話をするが察知能力は高いらしく真琴たちの現状を正確に理解してしまった。これで変身しない事には何か策があると思わせ、相手の動きを少しでも封じる事も出来なくなった。最早真琴たちにはただ敗北する事しかできないわけだが……。
「……ふむ、そちらもどうやら向かってきているようだし待っていてやるよ」
「え?」
まさかの事態にマナ達ですら困惑する。相手は再び座りなおすとつまらなそうに腕を組み、椅子に座りこんだ。その様子は言葉通りダビィ達を待っているようにも見えるが真琴にはジコチューであるはずの彼の行動は理解が出来なかった。
「何が目的なの? 貴方たちの目的は人間界に私たちを返さない事でしょう?」
「あ? 前にも言っただろう? 俺はジコチューではない。確かに組織としてはジコチューにいるが存在そのものがジコチューではない。全く、俺以外皆ジコチューだからと言って組織名もそれにするなんてやめて欲しいものだ」
真琴が問いかければ前の時のように長々と話を始める男。彼の態度からジコチューに対して忠誠心を持っているわけではなさそうだという事が伺える。
「おっと、話がずれたな。つまり、俺にとってはお前らをここに置いておくという目的などどうでもいいことだ。せっかく、暇つぶしに町を改造しているのにいても邪魔なだけだ」
「っ!!??」
瞬間、真琴は町の景色を思い出し、怒りで視界が真っ赤に染まった。美しく、大好きだったトランプ王国は破壊され、作り替えられた。それもまるで適当に、壁に落書きするかの如く何も考えられず、ただただ適当に作られた町はまさに凌辱の限りをつくされているといっても過言ではなかった。ここまで必死に押さえつけていた怒りの感情がついに爆発した瞬間だった。
「許さない! 私の街を! よくも……!」
「ま、まこぴー落ち着いて!」
相手との力量など関係ないと言わんばかりに今にも襲い掛かりそうな所をマナは必死に止めた。今はシャルルたちがいない為に変身する事は出来ず、相手にならない。そのためにも今は到着を待つしかない。
だが、そんなマナ達の状況も直ぐに終わりを告げた。突如として部屋の天井の通気口から4匹の要請が飛び出してきたのだ。
「マナー!」
「っ! 皆!」
それぞれのパートナーの下に飛び込んだ妖精たちと感動の再会を果たしたマナ達は改めて男の方を見た。相手は漸くと言わんばかりに笑みを浮かべ、戦闘の準備を整えている。人間界に戻るためには彼をどうにかしないといけないだろう。
「皆行くよ! あの人を倒して、人間界に戻るんだ!」
「ええ!」
必ず勝つ。その意思の下にマナ達は変身した。対して、男は何処からか本を取り出すと不敵なを笑みを浮かべてつぶやいた。
「さて、プリキュアの実力を見せてもらおうか」
その男の瞳には先ほどまではなかった得物を見定める猟犬の如き目へと変わっていたのだった。
もし続編を出すならどのプリキュアが良い?
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