旅して世界は救わない   作:堕賀史菓子

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12話

 

 

 

「ミュウツー……ほんとに何も持たないできてよかったのか? いや、確かにバリアーはあるけどさあ……」

 

 ミュウツーから張られたバリアーを纏いながら、俺はそう問いかける。

 

 辺りは見渡す限りの溶岩で埋まっており、数少ない足場を踏みしめながら慎重に進んでいるのだが、いまいち不安が拭いきれない。こんなところで、バリアーありとはいえほぼ生身なのだ、危険な状態に変わりはない。

 

 なんやかんやあってルネに到着した後、ルネシティのジムリーダーであるというミクリという人物からグラードンの位置を伝えられると、ミュウツーがすぐさまテレポートしてしまったのだ。

 

 一旦はダイゴさんやマグマ団たちを待ってから行くべきだったのだろうが、こうなって仕舞えばもはやどうにもならない。仕方ないと思って、さっさと終わらせよう。

 

「……っと、ようやくお出ましか。そっちはゆっくり溶岩浴ってか?」

 

 洞窟を進んだ先に、一際大きなマグマ溜まりにたどり着く。

 

 その中には、この現状を生み出している原因、伝説のポケモンのグラードンが佇んでいた。

グラードンは近づいてきた俺に気づくと、その目を開き、こちらを睨みつける。

 

 

グオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

 グラードンが叫ぶ、と同時にバリアー越しでも凄まじい熱気が伝わってくる。

そうして、グラードンの体は真紅の宝石に包まれたような輝きを放ち出す。

 

「これが……ゲンシカイキ……」

 

 グラードンの体の節々から、溢れんばかりの熱量が光となって輝き出す。放っていた熱気も数段階レベルアップしており、先ほどとは比べものにならないほどだった。

 

「ッ……暑い…‥けど。そういうのはガラルで慣れてるんでな! いけ、ミュウツー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直、勝ち目があるかは分からなかった。

 

 世界を終わらせるポケモンの実力がどんなものかなど、想像がつくはずもなかったからだ。

とはいえ、こっちだってミュウツーがいる。そう簡単に負けるはずもない。

 

「ミュウツー、サイコキネシス!」

 

 ミュウツーはモンスターボールから飛び出ると、すぐさま狙いを定める。

それはグラードンに向けて……ではなく、天井の岩石に向けてだった。

 

 サイコキネシスによって力を加えられた岩石は耐えきれなくなり、ガタガタと音を立てて地面へと落下を始める。その真下にいるグラードンへと向かって。

 

 かなりの体積を持つ岩石は、普通のポケモンであれば質量によってそのまま押し潰されてしまうくらいのものであった。

 

 しかし、目の前の怪物は――

 

ガアアアアア!!!

 

「……ッチ、これじゃダメージになってるかもわかんねえ」

 

 岩石が衝突したはずのグラードンは、岩石を全てを溶岩へと薙ぎ払うと、苦でもないように再び吠える。耳を突き破るような叫びは、それだけでもはや一種の攻撃みたいなものだった。

 

 そして、グラードンの反撃が放たれんとする。

 

 

「ッ!! ミュウツー、()()!!」

 

グアアアアアア!!!

 

 ミュウツーは俺の指示を聞くと、空中へとテレポートをする。

 

 その直後、地面からグラードンの体ほどの大きさの無数の槍が突き出される。直撃すれば、身がズタズタになっていたであろう、伝説のポケモンらしいえげつない攻撃だ。普通のポケモンとは規模感が違う。

 

「……どうしたもんか」

 

 さっきの岩石のような単純な質量攻撃ではダメだ。とはいえ、モタモタしているとさっきの一撃必殺レベルの攻撃が飛んでくる。さっきは上手く回避できたからよかったものの、当たれば文字通り一撃で終わりだ。

 

 ならば、現状考えつくのは、こうするしかない。

 

「ミュウツー、シャドーボールを足元に向けて撃て!」

 

 ミュウツーは両腕に紫の霊気を伴った球を生み出し、そして指示通りグラードンの足元へと向けて発射する。

 

!?

 

 足元に衝撃を喰らったグラードンは体勢を崩す。一度重心がずれてしまえば、あとは自身の体重を支えきることができずに、そのまま倒れ込む。

 

 その巨体では起き上がるのにも時間がかかるだろうと踏んだ俺は、その猶予から、こちらが持ちうる最高火力をぶつけなければならないと考える。

 溜めの時間は十分。相手は隙だらけ。であれば、この技を使わない理由はない。

 

「サイコブレイク」

 

 ミュウツーは、溶岩の中立ちあがろうとするグラードンの眼前へテレポートする。グラードンが突然現れたミュウツーに反応したのも束の間、ミュウツーは顔面にサイコブレイクを直撃させる。

 

グガアアアアアアアアア!?!?

 

 ようやくまともなダメージが入った……

 

 悶えるグラードンを見る限り、いくらグラードンといえどサイコブレイクはダメージを喰らうらしい。あとは適度に隙を見つけてサイコブレイクを撃ち込んで――――

 

『………………!?』

 

 そう、考えた。

 

 刹那、次にはミュウツーは光の速さで壁へと叩きつけられていた。

 

「ッ!? ミュウツー!?」

 

 何が起こったのか、それはあまりにも単純だった。

 

 ただ、グラードンがダメージを喰らった怒りに身に任せて右手を振るった、それだけのことだった。腕を振り回す。たったそれだけのことだが、それがグラードンともなればパワーは凄まじいことになる。それをミュウツーはバリアーを張る時間もなく、攻撃をもろに喰らってしまったのだ。

 

「大丈夫か……!? クソッ……アレが相手だってのに、一瞬でも油断しちまった……」

『…………………』

「こっからどうすれば………って、なんだ……?」

 

 壁から

 

 ミュウツーは砂埃を巻き上げながらゆっくりと起き上がる。相変わらず、無言のままだったが、伝えたいメッセージは自然と頭に流れ込んでくる。

 

「………はは。ああ、そうだな、やってやろうぜ」

 

 それは、俺がたった今考えていたものと全く同じものだった。

 

 あの野郎、絶対一発ブン殴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミュウツーはどうして、あそこまで強力なポケモンなのだと思うか?」

 

 サカキは、そばにいた一人の団員にそう話しかける。

 

 本来、ホウエン地方の潜入員として活動していた彼は、最近になって唐突にホウエンを訪れたボス、サカキの身の回りの護衛を任されている。しかし、もともとカントーにいたため目にする機会の少なかったサカキに、萎縮してしまっていた。

 

「え、ええ……? なんでしょう……」

 

 急な質問に思わず回答が遅れる団員。彼自身は、ミュウツーのことなど噂程度にしか聞いたことがないため、そう訊かれても大した解答ができないというのが本音だが、そういうわけにもいかない。

 

「……人工ポケモンだから、ですかね?」

 

 こんな答えでよかったのか、少々不安になりながらも答える。

 

「フフフ……それもそうだ。アレは、ミュウの遺伝子を組み込んで作られたからな、能力値だけでいえば、最高レベルのポケモンだ。しかし、それだけではまだ足りない」

 

 そう言われてもあまりピンとこない団員だったが、どうやらサカキはまだ説明したそうにしていたため、恐る恐る聞くことにするのだった。

 

「それ以外に何か……?」

 

「闘争心だ」

 

 サカキは端的にそう告げる。団員は闘争心、という言葉の意味は知っていても、この場においてそれがどのような効果を持つのかは分からなかった。

 

「はあ……?」

「ミュウツーは生まれつき凶暴なポケモンだった。自分を生み出した者への憎しみか……それとも単に暴れたいだけか、どちらにせよ、戦いを求めていたのだ」

 

 かつて、ミュウツーはミュウというポケモンを基にして生まれた。あらゆる可能性を持ち合わせた誕生の後に待っていたのは……兵器として利用される未来だった。

 

 そんな自身の運命を呪い、生み出した科学者、それを指示したサカキら、そして、間接的だが自分が生まれる原因となったミュウですらも恨んだ。

 

 そうして、全てを憎んで、憎んで、憎んだ先に、ミュウツーは戦闘衝動を抑えられなくなっていた。

 

「戦いを求めたミュウツーは、強くなることに躊躇いがない。その貪欲さこそ、ミュウツーの強さの根幹なのだよ」

 

 異常な闘争心は、異常な強さを生み出す。ミュウツーがあそこまでで強くなれたのは、自身のスペックもあるだろうが、当人のやる気が最も関係しているのだろう、そうサカキは推測する。

 

「では、もしもミュウツーがメガシンカすればそれこそ、手がつけられなくなるのでは?」

 

 ここまでの話を聞いた団員は、単純な疑問を投げかける。

 

 ミュウツーがそこまで強力なポケモンで、メガシンカまで出来るのなら、もはや人の手に収まるような存在ではないのではないかと疑う。

 

「そうとも言えるな。おそらく、チャンピオン程度の実力がなければ勝負にすらならないだろう。捕まえて言うことを聞かせるなんてもってのほかだ」

「……? では、サカキ様はどうやってミュウツーを手に入れるのですか?」

 

 ミュウツーを手に入れる実力、あのサカキがそれを持ち合わせていないはずはないとは思うが、何か作戦がなければ至難の業となるだろう。一体、何を持ってミュウツーを攻略するのだろうか。

 

「フッ、後々、手に入れるための手段は自然にやってくる。今はそれを待つだけだよ」

「はあ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 キツイ。正直言うと、ジリ貧だ。

 

 

グアアアアアアアアアアアア!!!

 

 

 

 ちょいちょいサイコブレイクなどでダメージは与えているものの、決定打となる攻撃が決められていない。対して、相手からの攻撃はこれ以上喰らうわけにはいかず、しかし、時間をかけすぎてもこっちが体力切れになるって……

 

 なんだこれ、無理ゲーか?

 

 

「ッ! サイコキネシス!!」

 

 そんなことを考えていると、すぐさま次の攻撃が飛んでくる。サイコキネシスで、大体の攻撃は受け流せるが……

 

 まずいな。そろそろ、ミュウツーの体力が限界に近づいてきた。消耗戦になれば、負けるのはこっちだ。

 

 ……どうする? 一度テレポートで逃げるというのも手だが……

 

『……………』

 

 そんなことを考えていると、ミュウツーが俺を睨む。どうやら、ミュウツーにとって逃げ帰るというのはあり得ないらしい。……全く、めんどくさいポケモンだ。

 

「……ミュウツー、これを――」

 

 ミュウツーの意思を受け取った俺は、サカキからもらったメガストーンのうちの一つをミュウツーに渡す。これが本当にミュウツーのメガストーンなのかは、使ってみなければ分からないが、使えなかったらその時点で終わりだ。

 

 だが、現状このメガシンカによるパワーアップしか勝負を決する方法が思いつかない。

 

「若干不安だけど仕方ねえ……ま、どうにかなるだろ」

 

 メガシンカに必要なのは、ポケモンにメガストーンに持たせて……それに俺がキーストーンを持って……後は、確かこう言うんだったけ。

 

 

ミュウツー、メガシンカ

 

 

 

 その告げると、ミュウツーが極彩色の光を放ち出す。

この光を見るのはハルカのバシャーモから二度目だが、思えば、これは先ほどグラードンがゲンシカイキしたものに似通うところがあるな。システム自体は同じようなものなのだろうか。

 

 それより……まずは成功……したのか? 

 

 一応、メガシンカの現象は起こっているようだが、ミュウツーの姿はどうなっているんだ……?

 

 

『……………………』

 

 

 光から解き放たれて、ミュウツーはメガシンカした姿を現す。

 

 一体どんな見た目をして……いる…………んだ…………って…………

 

 

「――――む、ムキムキじゃねーか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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