エンデヴァーはフォルゴレにオールマイトに似た嫌悪と、いつでもナンバー1ヒーローに成れることから嫉妬を抱いていました。
嫉妬を抱いていたけど、これからは別の苦手意識を持つことになります。
エンデヴァー事務所で職場体験が始まって早数日。毎日メールで小大さんと耳郎さんから今日は何をやったのかと連絡がきていたので、エンデヴァーに伝えて良い情報を確認してから返信する。
ヒーロー事務所で学んだこと、それがその事務所だけの秘匿情報や独自技術の可能性もあるからだ。
魔界の王を決める戦いでの戦友達とはそこまで頻繁に連絡を取り合うわけではないので(例外としてトガからはかなりくる)、一週間会えないからと毎日メールのやり取りをするのはかなり新鮮な体験だった。
ちなみにそれを見た轟君がなんか羨ましそうにしていたので君もやってみたらと勧めたら、その日から体育祭から親しくなったA組メンバーとメールのやり取りをするようになり、送信相手を驚かせたとか。そして何故か目の前にいる俺にも送信してきていた。
そしてそんなメールでクラスメイト達と情報共有を重ねるウチに、爆豪勝己がパルコ・フォルゴレのコンサートでバックダンサーデビューをしたことを知った。
羨ましいなあ。
俺もフォルゴレからダンスを習いはしたが所詮は素人芸の域を出ない。勝己さんのようにステージに立つレベルに達してはいないのだ。
勝己さんの習熟の早さに圧倒的才能差を思い知らされるのであった。
そんなアレコレ、俺ともメールをしろ焦凍ォォォ!、があったりしたエンデヴァー事務所。
本日は連携訓練と事務所業務説明ではなく市街パトロールを、エンデヴァーが引率して行っている。
実は職場体験の予定では『ヒーロー殺し・ステイン』逮捕の為に保須市に向かうつもりだったらしい。
だけど当のステインがフォルゴレに撃退から逮捕されてしまったので、エンデヴァーが保須市に向かうことはなかった。
ヴィラン逮捕で一番大変なことは倒すことではなく見つけること。
個性を用いたひったくりや強盗などが後を絶たないこのヒーロー社会ではあるが、そんな初犯の犯罪者はともかくとして、名の知れたネームドヴィランは逃亡及び潜伏能力が高い。
トガやトウヤさんなんかも実はそちら方面の技量が無茶苦茶高かったりする。
そんな中で前例として保須市に現れる可能性の高かったヒーロー殺しは発見する絶好の機会だったのだ。
フォルゴレに返り討ちにあって台無しになったわけなのだが。
とまあ予定で終わったことは置いとくとして、市内パトロールはヒーローの代表的な仕事の一つ。また個性練度が高くて個性使用が許されるヒーローは、交通事故を生身で止めることも可能。
事件ではないから報酬はそれほど高くはない、という事業主らしいことを教えてもらいつつ、けれどもこういった市内での事故防止、市民の手助け、トラブル解決がヒーローとしての名声・民衆からの支持に繋がり、警察からの応援要請のきっかけとなるそうだ。
だからこそ、俺と焦凍には関係ない話だが個人でヒーロー事務所を開く場合は先ずはパトロールから始めるのだと教わった。
まあヒーロー飽和社会とされるこの国ではパトロールに関しては上の世代とのナワバリ争いが激しく、それらを押しのけて目立つか(例、マウント・レディ)、サイドキックとしてヒーロー事務所に勤めてナワバリを徐々に譲ってもらう方式が一般的らしい。
古きジャパニーズ極道かな?
とこっそり思ったのは内緒だ。
そしてエンデヴァー事務所の跡取りである轟君はともかく、俺にはガッツリと関係ある話だ。
卒業後に俺がサイドキックとしてエンデヴァー事務所に務めるのはエンデヴァーの中では確定事項らしい。
そんなパトロールの途中、俺たちはヒーローコスチューム姿で必死に市内を走り回る勝己さんを発見した(ちなみに俺のヒーローコスチュームはサラリーマンのリクルートスーツが基本。防火製なので燃えない)。
「どうしたの勝己さん?」
そういえば勝己さんのヒーロー名ってなんだろ?メールでの情報共有時にA組メンバーが教えてくれなかったんだよな(かっちゃんセンスがアレで、まだ未決定が理由)。
「成二!?いやシエンだったか。
ってんなことはどうでもいい!!
テメェ、あの馬鹿を見なかったか!?」
「フォルゴレなら今日は見てないけど」
「「((あの馬鹿でなぜ個人名を特定できるのだろうか?))」」
勝己さん(ヒーロー名未決定)の話によるとフォルゴレが行方不明らしい。
その状況に何やらうっすらとデジャヴ的な感覚に陥る。というかなんか前にも複数回こんなことがあったような。
そしてエンデヴァーとショート、轟親子はあの馬鹿=フォルゴレという変換に首を傾げていた。
だってこの状況で勝己さんがあの馬鹿呼びするのはフォルゴレくらいだし。
「とりあえずスマホに連絡は?」
「事務所で充電器に挿しっぱなしだった」
だよね。
「予定とか」
「あと一時間でコンサートなのに居ねえから探してんだよ!!」
コンサートなのに本人不在。
そのアチラコチラに大変迷惑をかけるかどうかの瀬戸際なので、勝己さんは目撃情報と乳揉み証言を頼りに市内を必死に探し回っていたそうだ。
「なんか芸能事務所なのに、ヒーロー事務所の職場体験みたいな事をやるハメになってるね」
「元凶が何をほざく。
納得はしてるし結果として感謝はしてるが、諸々のアレコレ込めて爆◯すんぞテメェ、アァン」
うん、勝己さんはやっぱりフォルゴレとは良い関係を築けたようだ。フォルゴレならば誰とでも上手くやれるのは間違いないが、この短期間で尊敬対象までなるのはよほど相性が良くないと無理だからな。
あの清麿すら出会ってからしばらくの間は友人?関係なわけだったし。
「それでどんなことがわかっているんだ?」
ズイとエンデヴァーが話に割り込んできた。
現在は職場体験のパトロール中ではあるし、フォルゴレの立場はかなり複雑。
世界的大スターにしてヒーローという彼の身に何かあれば国際問題になりかねない。
来日初日で、ヒーロー殺し・ステイン襲撃という大騒動が起きているわけだし。
「ああ、俺が乳を揉まれた女性を辿ってヤツがいくつかの店で買い物をしたことがわかった」
「なんで性犯罪者として捕まらないんだソイツ」
「揉まれた側が悦んでいるからでしょ」
轟君(ヒーロー名ショート)が首を傾げながら疑問を口にするが、全世界規模でいつものことだと説明する。
フォルゴレが女性(ファン)の身体に触れても問題にならない。これは世界法則の一つだ。
と勝己さんの調べた情報だけど、
先ずはお菓子屋さん。日本だからお菓子が沢山売ってる個人店。
「うちのお菓子を沢山買って出ていったわ」
と綺麗な女性店員は教えてくれた。
さらに何処に行ったか訊ねるとそれは知らないが、
「帰りに私のムネを揉んでいったわ」
と頬を赤らめながら言われたとのこと。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
いつものだね。
次に花屋さん。
美人なマダムが開いてる趣味のお店らしい。
「そうね。たくさん花を買ってった後に」
「後に?」
「私のチチを揉んでいったわ」
豊満なチチを揺らして美人マダムな店主は満更でもなさそうに言ったそうな。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
やっぱり覚えあるなコレ。
最後に玩具屋さん。
最近の日本だとかなり珍しいよね、玩具は電気屋の一角に販売コーナーある感じ。
ちなみにフォルゴレは店から店への移動中もしっかり乳揉み行脚していたとか。
「この玩具(スケボーフォルゴレ)をいくつか買っていって帰る前に」
「帰る前に?」
「私のお尻を掴んでいったわ」
ギャルな店員さんは嬉しそうに笑っていたそうだ。
「「・・・・・・・・・・・・」」
となればフォルゴレが現在居る場所は、と。
「どうしたのさ三人共?」
勝己さんの情報説明が終わったら、何故かエンデヴァーとショートと勝己さんは頭を抱えて蹲っていた。
さながら意味不明な異世界に迷い込みカルチャーショックに耐えきれずに苦しんでいるかのように。
「なんなんだ、パルコ・フォルゴレ?
これがいつでもイタリアナンバー1ヒーローに成れるイタリアの英雄だと」
イタリアでの名声と支持は世界屈指でとんでもないからなあ。コンサートにはイタリアヒーローがオールスターで来るとか。
「ヒーローってこんなんだったのか?でも親父がナンバー2ヒーローやってるわけだし、不思議ではないのか?アリなのか?」
轟君、轟君、それはむしろフォルゴレではなくエンデヴァーをディスってる。
「なんでセクハラされてんのに悦んでんだ女共。倫理観は何処にいった、羞恥心、貞操観念はどうなってんだ」
フォルゴレ相手だと消えてなくなるよね。
勝己さんは女性の反応に苦しんでいるよ。
「とりあえずフォルゴレの場所はわかったよ、勝己さん」
ここまでの流れからフォルゴレが何をしに何処へ行ったのかは明白だ。
「ハァ!?マジッ!?」
「何故ヤツの居場所がわかる」
「もしや名探偵?」
叫ぶ勝己さんと疑問を抱くエンデヴァーと天然な反応のショート。
いや別に推理したわけでもアンサートーカーに目覚めたわけでもないから。
「前にも同じことがあった。
それだけだよ」
スマホで近場の病院いくつかに連絡して確認した。来院した人のことなんて普通は教えないけど、そこは雄英高校生という立場から答えてくれたんだ。
「うむ、ヤツが何をしているか気になるな。パトロールの途中だが俺達も同行しよう」
こうして皆で病院に向かうことになった。
コンサートという仕事を放りだしてまで何をしでかしているのか?そんな呆れの感情と疑問。
ただフォルゴレと直に話した勝己さんは、購入した品々と場所から何をしているのか薄っすらと察しつつあるようだった。
「なんだ・・・・・・・・・コレは」
愕然とした様子のエンデヴァー。
ナンバー2ヒーローはその光景が信じられないとばかりに目を見開き硬直していた。
病院に着いてから看護師さんに案内されたのは子供だけ集めた病室。
そこでフォルゴレは購入したプレゼントを子供達へと配っていた。
「さあ、今日は私に手紙をくれたお姫様の為の独占コンサートだ。
約束通り歌いにきたよ、お姫様」
「うん、ありがとう!」
恭しく頭を垂れる英雄(フォルゴレ)と嬉しそうに笑うお姫様(女の子)。
「たく、一言伝えろよあの馬鹿」
表情を隠すように右手で顔を隠す勝己さん、けどその口元は隠しきれないくらいの笑みが浮かんでいた。
「カッケェな」
呆気に取られていたショートも眩しいモノを見るように目を細めて見つめていた。
「さあ。私の歌を聞けば病気なんて吹っ飛ぶさ!」
「フォルゴレ!」
そして俺は、今迄は見ているだけのその場に飛び込んだ。だって今の俺はヒーローになるって決めて踏み出したのだから。
「俺も踊らせてくれ」
「いいよ、一緒に踊ろう!」
「チッ、練習したからな」
「俺も・・・・・・・・・いいですか?」
そんな俺に釣られてか勝己さんとショートも参加しだした。
「コレは凄い!!イタリアの美男子と日本の美少年達によるスペシャルコンサートだ!!」
とある市内の病院で開かれた、パルコ・フォルゴレによるスペシャルコンサート。
それは入院していた子供達に笑顔と希望と喜びを与えた。
そして、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
とあるナンバー2ヒーローの脳を焼くことになった。オールマイト以外には感じたことのない、眩しい輝きと世界を隔ててる崖のような己との違い。
その崖の先へとつい手を伸ばしそうになるも、積み重ねた過去と創り上げてきた自分(エンデヴァー)により目の前の扉の先のまるで別世界のような場所に混じることは・・・・・・、
「おや、ここにもヒーローが」
できないと手を下げようとした所で強引に掴まれて引っ張りこまれた。
「さぁ、皆!!
最後にヒーローのおじさんも皆と一緒に歌うよおっ!!」
「待て、俺は」
「大人だって、手を引かれないと踏み出せないものですよ」
パルコ・フォルゴレ。
彼はあの日キャンチョメの手を引いた。だが本当に手を引かれたのは多分、彼自身の方だったのだろう。
その有無を言わさぬ笑みに何かを感じたエンデヴァーは彼らしからぬことだが頷いてしまった。
「ふん、今日だけだぞ」
なんで頷いたのか自身でも理解できないにもかかわらず、それでもなぜか、そうしたいと彼は思ったのだ。それはきっとエンデヴァーの心が此処に混じりたいと叫んでいたからだろう。
エンデヴァーが、あのパルコ・フォルゴレと『乳をもげ♡』を歌う。
これは後に伝説のワンシーンとして語り継がれることになる。
補足・説明。
今話は、ガッシュと清麿のロンドンでのフォルゴレの一幕を爆豪君とエンデヴァー達でやる話です。
なお成二は似たようなことを何回も経験しています。
今回フォルゴレがコンサートを遅刻覚悟で病院まで向かったのは、手紙をくれた女の子の手術が次の日だからです。
希望をあげるために彼はお姫様の元へと向かいました(乳を揉みながら)。
その光景に脳を焼かれる一行。
エンデヴァーはオールマイト以来の敗北感と挫折に膝を折りそうになりましたが、フォルゴレが手を引きました。
オールマイトとフォルゴレの違いは、フォルゴレが一度道を踏み外したことにあるかもしれません。
だからこそ分かるものもあるのでしょう。
しかし、
かっちゃんだけではなく、エンデヴァーとショートにまで、『乳をもげ♡』を歌わせてしまったなあ(遠い目)。