緑谷出久君はグラントリノの指導のもとフルカウルを体得して渋谷で実戦経験を積みました。
飯田天哉君はマニュアルさんの元で個人事務所の苦労と普通のヒーローを学びました(インゲニウム事務所は普通ではない)。
死柄木弔はヒーロー殺しに傷を負わされただけで得るモノはありませんでした(脳無は温存)。ただ英雄回帰思想は一応広まり、ヴィランサイドは『現在のヒーローは紛い物だから殴ってよい』という都合良く解釈する輩が増えてます。また一般人も『ヒーローはこうあるべき』と正論を解く形で、ヒーローに無償な奉仕を要求する、サービス業の悪質な客のような存在も増えています。
「短い間でしたがお世話になりました」
「した」
広大なエンデヴァー事務所玄関前、轟君と並んで頭を下げる。
一週間という短い期間。
けれどとても濃い日々ではあった。
後半の濃い原因は間違いなくフォルゴレだけど、それはまあ仕方ない。
職場体験をしていた勝己さんは当然のことながら、轟君もフォルゴレに感銘を受け、そしてエンデヴァーすらもフォルゴレと会ってから考え込むことが増えた。
なお、フォルゴレとエンデヴァーによる『乳をもげ♡』はその場にいた観客達(医者や看護師含む)によりバッチリ流出し、世間をステイン逮捕以上に騒がせることになった。
その影響は様々で。ナンバー2ヒーローのイメージがある意味崩壊したことで、ヒーロー公安委員会の上層部が頭を抱えているとか。
ただ少なくとも俺の目には、フォルゴレとの出会いでエンデヴァーの心が軽くなってスッキリしたように見えた。轟君との関係も僅かではあるが軟化したようだ、まあ「一緒に歌を歌ったのはこれがはじめてだな」と、かなり笑えないことも呟いてもいたけど。
「雄英卒業後は、いや中退しても良いからウチに来い。貴様らに覇道を歩ませてやる」
「最終学歴中卒の歩む覇道とは?」
「まだ言ってんのかこの親父」
雇用契約書及びエンデヴァー事務所就職の利点をまとめた書類を渡されながらそう告げられる。
少なくとも俺は大学卒業してからヒーローデビューするつもりなんですけど(ヒーロー資格さえあればヒーロー活動は可能だが)。
しつこい勧誘に轟君共々げんなりとして俺達の職場体験は終わった。
雄英高校一年時にしかできない貴重な体験。
俺の場合はかなり毛色が違うけど、ヒーローという『職業』についてしっかりとその実態を知ることができたのだと思う。
ヒーローという存在は『人々を助ける』というイメージばかりで、具体的にどんな仕事、手続きをしているのかは知らなかった。けれどこの職場体験で、電話応対、書類記入、雇用形式などを間近で見ることができた。
ちなみに、この職場体験でヒーローを志すことを辞める学生も稀に存在するらしい。
そういった人は現実と理想のギャップに耐えきれなくなったからなのだとか。
俺なんかは逆にしっかりと職業なんだな、と安心したけれど。
まあいい。
次に俺が此処に来るとしたら『ヒーロー活動許可仮免許証』を得た後の『ヒーローインターン』の時か。
普通のヒーロー育成機関では一年時に取ろうとする資格ではないが、雄英高校は普通ではないからなあ。
翌日。
雄英高校にて。
A組では勝己さんのフォルゴレのコンサートでの『乳をもげ♡』ダンスデビューで盛り上がったとか。
しかし、からかいのネタにされ笑われた勝己さん本人は特に逆上して爆発することはなく平然としていたらしい。
『笑いたいヤツだけ笑え』。
フォルゴレと過ごした日々は、勝己さんにとって誇るものであって、恥じるものではない。
あとフォルゴレから得たバックダンサーのギャラでA組皆に食堂でご馳走したそうだ。
『あの馬鹿から貰った金を自分の為だけに使う気にはならない』という理由からだ。
暴言と爆発が減り何処か大人びた態度になった勝己さんにA組生徒達は、「「「「「「成長し過ぎだろ」」」」」」とツッコんだそうな。
フォルゴレと触れ合うことでヒーローについて色々学んで成長するのは当然だ。だが一週間あの自由奔放なフォルゴレの面倒を見たら苦労とカルチャーショックで達観してしまうのもまた当然だ。
周りで騒ぐ学友もフォルゴレに比べたら大分マシだろうからなあ。
そして、耳郎さんはメールでも伝えてもらっていたけどヴィラン退治の避難誘導とか後方支援を経験し、蛙吹さんは隣国からの密航者捕縛。
麗日さんはなんか目覚めて、峰田君は現実を知ったらしい。
さて、A組ばかりではなく自分のクラスであるB組についてだ。
とはいえコチラもさして特別なことはなかった。
職場体験先でのヒーロー事務所では基本的にお客様扱いで、中には雄英高校からのオファーだから仕方なく面倒を見てやってると露骨な態度の現場もあったらしい。
指名した学生が来たならば、今後の付き合いの為に師弟関係になるレベルで親身になってくれたりもするが、将来の商売敵が増えることを歓迎してないヒーローもいたのだとか。
存外にこのヒーロー業界は世知辛いのかもしれない。
そうそう大きな出来事と言えば、拳藤さんがA組の八百万さんと共にテレビCMデビューしてしまったらしい。してしまった、なのは本人達があまり喜んではいないからだ。ヒーロー活動を体験しに行ってヒーローの副業活動をしたのだから納得ではあるけど。
塩崎さんは似たタイプの個性であるシンリンカムイによりトレーニングを主に経験し、物間君は癖がある個性だが発動系個性の使用ロス時間を埋められると期待されて、骨抜君はヴィラン集団鎮圧にうってつけだと褒められたそうだ(まあ日本だとあまりないので外国だとさらに歓迎されるそうだが)。
次に繋がる、職場体験からの付き合いは望めないヒーローでも類似した個性の場合はトレーニングをきっちりとはつけてくれたそうだ。
職場体験。
本当にヒーロー次第で様々だったんだな。
某病院。
「冷」
「貴方、どうして?」
「そんな資格が己にはないと目を逸らしていた。見ないように避けていた。
だが、「大人でも手を引かれないと踏み出せない」らしい。
だからお前の手を引きにきた」
自分自身の為ではない。
彼女が、轟冷が一歩踏み出せることを願って。
許されたいのではない。
ただ彼女に幸せになって欲しいと、エンデヴァーではなく轟炎司として手を引きにきた。
遅すぎるのはわかっている。
でも家族としてやり直すには遅すぎても。
彼女が幸せになることに遅すぎるなんてことはないのだから。
「貴方も良い出会いがあったんですね」
焦凍のように。
と冷は末の息子の姿を思い出しながら呟いた。あの子もまた雄英高校に入学して出会いがあり前を向けたのだから。
「良い出会い。というには些か抵抗があるがな」
つい苦虫を噛み潰したような表情となってしまう。勢いでやってしまったが、あの時の自分はどうかしていたと思うから。
するとその表情を見た彼女は笑い、
「ねえ炎司さん。良い歌でしたよ」
自然とその手を取っていた。
万象焼き尽くす熱き炎を宿す手を。
「・・・・・・お前が望むなら歌ってやる。なにせあの馬鹿にCDを押し付けられたからな」
そしてその折れそうなか細い冷たい妻の手を、過ちを繰り返しまくった夫はしっかりと握りしめるのであった。
補足・説明。
職場体験終了後の学校でのやり取りです。
いわゆる繋ぎ回です。
むしろオマケがメイン。
しかし原作緑谷出久君の職場体験、半分くらいステインのアレコレと入院で潰れたのでは?それともトータル一週間なんでしょうか?(キニナル)。
かっちゃんは、めっちゃ成長しました。
フォルゴレとの触れ合いでヒーローとして大きく学びましたが、フォルゴレとの触れ合いで尋常じゃないくらい苦労したので。
だから「デク」に拘る余裕がかなりなくなってます。脳内がフォルゴレで締められてます。
なお後日イタリア政府からフォルゴレのマネージャーしないかと打診されるとか。
B組については職場体験先が不明なのばかりなんでこんな扱いです。
オリジナルでも良いけど、無難な優等生ばかりだから職場体験先からは歓迎されてません。
現在の日本ヒーロー業界は椅子取りゲーム末期な印象ですので。
轟夫妻のアレコレ。
フォルゴレの過去を知ってしまったエンデヴァーが勇気を振り絞りました(ついでにキャンチョメの件も誤解ありでバレた)。
冷さんも、エンデヴァー『乳をもげ♡』インパクトから恐怖より困惑が勝ってる感じです。
この夫妻がどうなるかは、
未定です。
なおエンデヴァー『乳をもげ♡』インパクトを見た長男はフォルゴレだから仕方ないか。という反応でした。
きっちり爆笑して地面をのたうち回りはしましたが。