小話。
「しかし成二はなんであのビッグなボインに反応しないんだよ」
「田舎で牛とか山羊の乳搾りしてたからかな」
「「「一緒にすんじゃねえよ!!」」」
「大体同じ感触だぞってお祖父ちゃんはガハハと笑いながら言ってたけど」
「・・・・・・成二、その後お祖父ちゃんはどうなったの?」
「あ、兄さん。うん、いつものように、
お祖母ちゃんに折檻されてから畑の案山子にされてたよ」
「お祖父ちゃ〜〜〜んっ!!」
「なんか通り過ぎるカラスも「ハイハイいつものプレイね」って呆れた目をしてたっスよね」
そんな話があったりなかったり。
「マジョスティック12!!
とある天才外科医に見出された12人のヒーロー達で一人一人が強い個性を持つ実力者でありながら何よりも連携を重んじたヒーローチームで全員揃えばいかなるミッションもこなすと言われている(ブツブツ)」
すでにプッシーキャッツの虎による我ーズブートキャンプでエクササイズで体力を消費してから組手という流れを繰り返していた兄さんが、マジョスティック12を見て目をキラキラしてヒーローオタクらしく語りだした。それぞれの来歴や個性まで事細かにブツブツと語りだしてマジョスティック12が恐怖に震えながら後退りだしたところで虎に回収された(なおA組は慣れていたがB組はドン引き)。
「発動型の個性はそれぞれ似た個性を持つヒーローの元に行くように、増強型は虎とダイナソーアームの所に行け」
「「「はい!!」」」
「貴重なこの機会、存分に自分の糧にしてみせろ!!」
ブラドキング先生の言葉にB組生徒は訓練を開始するのであった。
俺、緑谷成二の訓練だが、
重要なのは火を吹く上で重要な肺活量。同じ吹いた息を壁のように固める個性の円場君と共に巨大プッシーキャッツバルーンを自分の吹いた息のみで膨らませる訓練を行っていた。
時間制限ありで失敗したら走り込み。
その繰り返しで心肺機能を高めてゆく。
それが終われば、フライングビートの元で飛行訓練。ジャンボジェットと並んで飛べるレベルの彼の飛行能力はかなりのものだ。
それから格闘技と炎を組み合わせた実力者であるファイヤーエルボーと戦闘訓練に励む。
そのローテーションはかなりキツイが成長している実感が持てる。
他の生徒の場合は、A組の青山優雅君はツーライティングアイにレーザーについて習い、A組の飯田天哉君はロケットフットと共に走り込み、B組の柳レイ子さんはサイコジャングルと訓練をしている。
プッシーキャッツのラグドールによるサーチを活かした采配は見事としか言えないだろう。
そんな訓練をこなしていて、今は炎剣を造形して振り回していたところ、何やらじっとこちらを見る気配を感じた。
「?」
気になったので許可を取ってから視線の主の元へといけばそこには帽子をかぶった一人の少年がいた。
林間合宿の初日に兄さんの股間をスマッシュしたらしいガッツのある子供で、プッシーキャッツのマンダレイの従甥なんだとか。
「あっ」
接近された少年出水洸汰君は咄嗟に逃げようとするも、その目は俺が握る炎剣に釘付けだった。
「あ~、振るってみる?」
「いいのっ!?」
顰め面で俺達雄英高校生達をずっと睨みつけていた少年はパァッと顔を輝かせて寄ってきた。
やっぱり個性というか能力やら武器で、剣タイプのヤツはカッコいいから子供は大好きだよな。
小学生時代は木の枝やら長定規がエクスカリバーになったもんだ。
火傷しないように耐火布で手にしっかりと巻き付けてから炎剣を渡す。
渡された洸汰君は途端に嬉しそうにブンブンと振り回しだした。
「いいなあ、炎の個性」
周囲に火がつかぬように洸汰君を見ていた俺の耳にそんな呟きが聞こえてきた。どうやら炎剣よりも、炎の方に心惹かれていたようだ。
「炎が好きなの?」
ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえよ、と兄さんの股間にスマッシュしてから言い捨てたらしい洸汰君だが、少し一緒にいるだけでその素直な性格が顔をだしていた。
「・・・・・・うん。パパとママを助けてくれた力だから」
身内が助けられる。
それはヒーローや力に憧れる、極ありふれたきっかけだ。
どうやら洸汰君は炎の個性を持つ者に両親を救われたらしい。
「でも、ボクの個性はパパと同じ手から水を出す個性であの人とは違うんだ」
なるほど、だから俺を見ていたのか。
炎ならA組の轟君やマジョスティック12のファイヤーエルボーも出せるけど、物として貸せるのは俺ぐらいだからね。
しかし、炎の個性を持つ者に両親を救われたなら何故ヒーローを嫌うのか?気になるけどあまり突っ込んで訊くのもなんだよな。だから、
「個性は違っても同じでも、同じように誰かを助けることはできると思うよ」
誰かの為に力を使いたい。
そんな彼から見える想いを肯定しようと思ったんだ。
「うんっ!!
ボクは強くなってあの人みたいな存在に成るんだとっ!!ヒーローだって叶わないヴィランを倒す、すんごいヴィジランテに!!」
あーヴィジランテ志望なのかー。
なるほどそれならヒーローを嫌うよね。
というか、炎個性のヴィジランテって。
「あの蒼炎のヴィジランテ・火天みたいに!!」
「(やっぱりお前(トウヤ)かいっ!!)」
そういえば前に彼がヒーロー夫婦を凶悪なヴィランから助けたとか聞いたっけ。その夫婦の子がこの出水洸汰君、世間は思いの外狭いなー。
「ありがとうお兄ちゃん!!」
一頻り炎剣を楽しんだ洸汰君は返した後に礼儀正しくお礼を言ってきた。
「いいよこれくらい」
大した手間ではないし、ファンサービスの練習みたいなもんだしね。
「あ、それと。
お兄さんの股間をスマッシュしてごめんなさい」
さらには気にしていたのか謝罪をしてきた。うん、良い子だねこの子。
「それは本人にしな。多分気にしてないだろうけどさ」
「うん!!」
そう頷いてから洸汰君はトテトテと走り去っていった。
なんか気難しい子供が居るって聞いていたけど、見知らぬ連中が大挙してきたから気を張っていただけみたいだな。
まあ、峰田君や上鳴君や円場君と回原君が言ってたように、優しく綺麗なお姉さん達(三十代)に囲まれた素敵な夏休みに邪魔者が来たらそら不機嫌にもなるか。
「ありがとうあの子の相手をしてくれて」
「マンダレイ」
先ほどからこちらを窺っていたマンダレイが俺に話しかけてきた。
「あの子の両親って水系の個性だから夏は特に忙しくてね。よく預かっているの」
「それで・・・・・・」
「不思議に思わない?両親みたいなヒーローじゃなくてヴィジランテにあの子が憧れるの」
確かに気になるな。
別に悪いことではない(ヴィジランテが合法な外国も多い)ので尋ねるようなことはしなかったが。
マンダレイは誰かに話したかったのか、吐き出したかったのかその理由を語り出す。
「洸汰の父親「ウォーターホース」っていうんだけど、少し前に「血狂いマスキュラー」っていうネームドヴィランに殺されそうになったの」
ネームドヴィラン。
ヴィランはヒーロー同様に自身にヒーローネームならぬヴィランネームを付けて活動する者が多い(中には警察やヒーローが付ける場合がある)。
けれどその中で、ネームドヴィランと称されるヴィランは単に名称があるだけではなく、ヒーローや警察が取り逃した実力者であることを示している。
特にヴィラン名の前に何か文言が付いてる場合は特に警戒されてる存在となる。
「ヒーローを何人も返り討ちにしてきた凶悪なシリアルキラー。そんなヴィランに殺される瞬間にあのヴィジランテ・火天は助けてくれたの」
珍しいな。
トウヤさんは悪人でこそないが基本的には周囲に無関心寄りな性格。
目の前にいて不快ならヴィランを焼き払うぐらいはするけど、ヒーローを助けるなんて行為を普段ならしないのに。
「そうしてマスキュラーを火達磨にした火天はウォーターホースの胸ぐらを掴んで怒鳴ったそうよ。
「最後の瞬間にガキの名前を呟くくらいなら、その分だけ抱きしめてやりやがれっ!!」って」
だからかー。
体育祭で聞いた彼の過去。
トウヤこと、ナンバー2ヒーロー・エンデヴァーに育児放棄され強引に頼んだ約束も無視された長男・轟燈矢としては、子を想うけど遺して逝く親の姿が納得できなかったんだろうな。
理由を知った今ではその背景に顔が引き攣るわ。
「どうしたの?
それ以来、ウォーターホース夫婦はヒーローを引退はしてないけど、なるべく息子と過ごすようにしたわけ、今回はたまたま海難事故防止期間だから預かっているけどね」
夏場は海の事故やら事件が多いから仕方ないよな。プッシーキャッツも多忙ではあるけど、そこは都合をつけたんだろうな。
「けど、それならヴィジランテに憧れるのは納得できても、ヒーロー嫌いにはなんでなるんですか?」
両親が存命だし、両親を尊敬してもいそうなんだが。
「ニュースやネットで両親が叩かれたのよ。
ヴィジランテなんて犯罪者に救われた情けないヒーローだって」
嫌悪感を滲ませながらマンダレイは吐き捨てる。この日本という国はオールマイトの存在と銃刀法ベースな法律により世界的に治安が良い国だ。
だからこそヴィランを撃退したヴィジランテを悪しざまに罵り、助かったヒーローを馬鹿にするなんて余裕があるのだろう。
「マスコミってのは本当に」
なら自分でマスキュラーとやらを倒してみろって話だよな。
「私達もメディア受けを狙ってキャラ作りしてるけど、やっぱり悪口は盛り上がるのよね。それで洸汰は謝罪会見を開く両親より、世間にどう言われても我が道を行って人助けするヴィジランテを格好良いと思ったの」
アウトローが格好良いのは否定できない感情ではあるかな。
「ありがとうね、こんな話を聞いてくれて」
いやいや戦友のやらかしが原因ですし。
「洸汰は悪い子じゃないの。ただね、学校でもヴィジランテが格好良いとか言うと苛められるみたいで、より意固地になっちゃったの」
この国はフォルゴレを否定するようなヒーローファンもザラだからなあ(身内含む)。
「君はなんか懐いたみたいだし、よければ仲良くしてあげて」
「はい、俺で良ければ」
洸汰君はそのうちトウヤさんに会わせてあげるべきかな?そうすれば過剰にヴィジランテに憧れたりしなくなるだろうし。
そんな出水洸汰君との触れ合いを終えて俺は訓練に戻るのであった。
さて夕飯。
世話を焼くのは今日だけ!!
というプッシーキャッツの言葉通りに訓練でへとへとな状態で自炊である。
「じゃあちょっといってきます」
ならば先ずは食材集めから、熊か猪か鹿かウサギか川魚か。久方ぶりの狩りだ。
「そこまで(食材採取)面倒見ないとは言ってないわよ」
一狩りしにいこうとする俺の肩はマンダレイの肉球グローブを付けた手にガジリと掴まれた。
「本当に元気だね成二」
「根本的にスタミナが違うんスよアイツ」
これだからYAMA育ちは、イナサが呟く。
「狩りは良いから調理を頼む一人暮らし自炊組、俺は薪を割るしか出来ねえぞ」
「すでに割られてるね鉄哲君」
「火熾しなら任せろ!」
「回転で火熾しは個性の応用だけど、火なら吹けるから」
「ヒャハ、野菜の皮剥きと刻むなら任せろ」
「意外な特技だね鎌切君」
なんかどっかで見た流れだなコレ。
ま、余計なもんを混ぜないで市販のルーを使えば美味しくなるのがカレーだけど。
「ナニを入れようとした小大さん」
「ポッ(私の味に染めようかと)」
「カレーにアレンジは鍋じゃなく自分の皿でしなさい」
清麿の学校の悲劇を繰り返す気か。
たまたま合宿先が同じで知り合いだからとご相伴したカレー。
清麿の訂正できない見栄っ張りな性分がでたしんどい夕食だった(食材の無駄は許さないイナサのパートナーにより全部残さず食わされた、そして俺のパートナーであるエンマはとっくに逃げていた)。
「成二に自分の味を食べさせる(ゴクリ)」
「響香ちゃん、その調味料を下ろしなさい。慎重にゆっくりと、鍋から離れるのよ」
「そいつ(恋する乙女)をカレー鍋に近づけるなあっ!!」
「カレーには味噌やねえ」
「豆板醤だろ」
「麗日っ!!爆豪ーー!!」
なんかA組サイドで悲鳴が。
いるよねカレーにとりあえず色々ぶち込む人。
冷蔵庫にある残り野菜や、サバイバル食材で作るカレーも美味いけど。
俺は定番の食材(肉は豚こま)とバーモ◯トカレーが一番口に合うかな。
ちなみに味噌と豆板醤入りカレーは普通に美味かったそうです。
皆で作ったカレーを食べる夕食。
強引に洸汰君も連れてきて、カレーの食べ比べをしてもらった。
結局、マジョスティック12が作ったアメリカンドリームカレーが一番美味しかったけど、とても盛り上がり楽しい時間だった。
そして次の日、
その事件は、世界を揺るがす事件は幕を開ける。
補足・説明。
緑谷家祖父母はかなりパワフルではっちゃけてます。だから嫁である引子さんは若干苦手。
出水洸汰君の事情。
両親であるウォーターホース(チーム名?父がウォーターホースか?)は存命。
撃退したトウヤ君こと蒼炎のヴィジランテ・火天に憧れてます。
マスキュラーはウォーターホースとの戦いでの負傷もあり敗北。筋肉は焼かれ現在はタルタロスに収監されてます。
万全な状態なら、終末のワルキューレのシヴァ対雷電為右衛門戦みたいな激戦になったかも。
トウヤ 荼毘ではなく火天
仏教用語からヴィジランテネームは火天です。ミスターサーさんありがとうございます。ただ蒼炎のヴィジランテ呼びが一般的ではあります。気付け父親。
カレー作り。
金色のガッシュ!!ネタ。
たまたまその日居たので巻き込まれました。
お残しは許しません。
カレーに味噌や豆板醤。
元ネタはクッキングパパとテイルズのマーボカレー。入れすぎなければ問題ないかなと。
次回、襲撃。