金色のガッシュを終えた俺のヒーローアカデミア   作:規律式足

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 緑谷出久君の強化イベントスキップ問題。
 悲劇をなくすと強化イベントが無くなる主人公という悲しい存在。
 でも緑谷出久君はヒーローであり、雄英高校での授業できちんと地力はついてます。



第四十五話 林間合宿を終えて。

 

 翌日、雄英高校(夏休み中)。

 

「ヴィラン活性化の恐れ、という我々の認識が甘過ぎた。奴らは既に戦争を始めていた。ヒーロー社会を壊す戦争をさ」

 

「認識できていたとしても防げたかどうか。これ程執拗で矢継ぎ早な展開。オールマイト以降、組織立った犯罪はほぼ淘汰されてましたからね」

 

「要は知らず知らずの内に平和ボケしてたんだ俺ら。備える時間があるっつー、認識だった時点で」

 

「己の不甲斐なさに心底腹が立つ」

 

 雄英高校会議室、そこに教員にしてヒーローランキングトップランカーにも劣らぬプロヒーロー達が一同に集い会議を行っていた。  

 認識不足、ヴィランの周到さ。

 そもそもヴィラン連合の規模と組織力を侮っていた。如何にオールマイトを含んだトップヒーロー達が集おうと、その組織は一教育機関だけで対処すべき存在ではなかったのだ。

 本校舎にて行われている授業を大勢で襲撃、そのすぐ後にこの事件。

 雄英高校は教育機関としての信頼を完全になくす瀬戸際まできていた。

 

「信頼ってことでこの際言わせてもらうがよ」

 

 信頼という言葉に反応し、新たな議題を提示するプレゼントマイク。

 彼は雄英高校に存在すると思われる、授業内容及びカリキュラム情報をヴィラン連合へと流す存在、内通者について触れる。

 そのような存在がいなければ実行すらできない、そのように情報を秘匿した上で今回の林間合宿は実施されたのだ。

 生徒の一人緑谷出久がショッピングモールでヴィラン連合リーダーと遭遇した。

 そのため、林間合宿先は生徒の保護者にすら変更先を伝えてないのだから。

 そうなれば内通者は、雄英高校教師陣、合宿先の持ち主にして依頼されたプッシーキャッツ、林間合宿に参加した生徒、そして。

 

「それとも今回協力を申し出た、あのお医者様とその部下達がヴィラン共の仲間ってか?」

 

「マイク、彼を疑うことは許さないよ」

 

 プレゼントマイクの言葉にリカバリーガールが鋭い眼差しを向ける。

 ナゾナゾ博士ことハワード・フリードマンとその部下マジョスティック12。

 生徒の指導と護衛として雇われた完全に外様のヒーロー達。

 

「バアさん」

 

「あの人がこんなことに加担するなんざ、あるわけないのさ」

 

 個性を用いた治癒、外科手術による医療。分野は違えど共に人々の命を救ってきた医療従事者である2人は、半世紀近い付き合いがあった(あと若い頃色々あった、色々)。

 あの悲劇以降、完全に人との関わりを断ち隠棲していたハワードが再起したことに、リカバリーガールは誰よりも喜んだものだ。

 

「(なんか信頼以上の感情がありそう)」

 

「(ジジババのラブコメとか誰得)」

 

 そんな個人的な付き合いはさておいて、

 

「ま、彼らはないな。彼らの尽力あればこそ生徒達は戦闘をすることなく避難に専念できた」

 

 そう今回の事件で、生徒達はほぼ戦うことなく切り抜けることができた。

 緑谷成二のみ、あの凶悪な殺人鬼ムーンフィッシュと交戦しかけるも、ダイナソーアーム、ブリザードシンクの2人のヒーローに即座に助けられた。

 マグネ、スピナー、そして両者を回収しにきたコンプレスこそ逃したものの、脳無と呼ばれる改造人間を何体も無力化し回収に成功したのだ。

 

「まあ、そうだけどよ」

 

 その実績を前にはプレゼントマイクとて黙るしかない。そもそもマジョスティック12がヴィランであるならば雄英高校に真正面から攻め入ることとて可能である。

 個人個人が雄英教師に劣らぬ実力者である上、その連携はヒーロー業界屈指なのだから。

 

「尤も、だからこそ腑に落ちねえがな」

 

 あれだけの実力者集団にプッシーキャッツとイレイザーヘッドとブラドキングまでいて、なんで誘拐が成功してしまうのかと。

 脳無という厄介な戦力こそ存在したが、それはオールマイトがUSJで戦った個体ほどではなく数人がかりならば撃退できた。

 確かに透視能力も予知も、そしてラグドールのサーチも山中の生徒達に向けられてはいたが、青山優雅はマタタビ荘にしっかりと到着したことを生徒達は確認していたのだ。

 プロヒーローが数人がかりで防備を固める拠点に誰にも気づかれずに侵入し、抵抗する生徒を拐うなど果たしてできるのだろうか?

 

「例の黒霧とかいう転移個性持ちか?」

 

「マタタビ荘に転移できるなら肝試し中に襲わないだろ」

 

「それにマタタビ荘は女性ヒーローの拠点ですから警備や管理はきちんとされています」

 

 合宿所であるがゆえに常に誰か住んでいるわけではない。ゆえに空き巣や厄介なヒーローファンに備えて住所は公開しておらず、また滞在する前には徹底して隠しカメラや盗聴器を調査するほどなのだ。

 

「・・・・・・やはりおかしいな。

 なんで誘拐できたんだ?」

 

 青山優雅は肝試しで八百万百と組み、四番目に出発した。

 そこで複数腕の脳無に襲撃をうけるもB組の泡瀬溶雪と合流し切り抜け、駆けつけたロケットフットに救助されマタタビ荘に到着。

 ほんの少し、八百万百達とは逸れかけたが山中で合流はしたのだ。

 ロケットフットも生徒だけでは逃させずマタタビ荘まで同伴し、その際にヴィランとの交戦はない。

 マタタビ荘へのヴィランの襲撃もダメージを受けたら溶けてなくなる恐らくは分身か何かによるものだった。

 

「集団催眠とか、認識を操る個性かしら?」

 

「桁違いな個性の可能性は無駄だろ。それを言ったらオールマイト並の身体能力あったら、玄関を出た瞬間に拐ってひとっ飛びするだけで成功だろ」  

 

「HA HA HA、うん私ならできるね」

 

 そうあの状況での誘拐は、もはやとんでもない個性があるのではないか?と推測、妄想するレベルなのだ。

 確かにこの個性社会ならばあり得ることではあるのだが、それを考えだしたら何でも有りすぎて話し合いの意味がなくなる。

 だからこそ、政府は幼少期に個性診断を行いどんな個性があるのか必死に把握しようとするのだ。

 未知を既知とし、知っている個性として対策できるようにする為に。

 

「内通者に関しては私は部下である君達も大恩あるハワード博士も疑う気はないよ。まあ実験動物だった私こそ一番信頼のおけない存在だけどねHA HA HA。研究者とか滅ばねえかな(ボソッ)」

 

(((((((笑えねえ)))))))

 

「そして内通者の件だけど、ここまで不可解過ぎるとある可能性が浮かび上がってくるのさ」

 

 ハイスペック。

 人ならざるネズミの生まれであり、個性により人類以上の頭脳を誇る校長は、あらゆる可能性を模索してその考えに到った。

 

「ある可能性?」

 

「それはいったい?」

 

 校長の推測がわからないのは、この場にいるのが生徒を導く教師であり、人命救助に従事したヒーローだからこそ。

 その可能性そのものを、最初から無意識に除外していたのだ。

 

「ああ、それは・・・・・・」

 

 できれば言いたくもない推察。

 だが誰かは言わなければいけないこと。

 根津校長が腕(正確には前足)を組みながら、その立場ゆえに言おうとしたところで、

 

「すいません皆さん、面会を希望される方が」

 

「今会議中だろう」

 

「記者会見ならば後日だっての」

 

 警備員が慌てて会議室へと飛び込んできた。

 

「いえマスコミではなく」

 

 雄英バリアに張り付くように待機している報道陣達かと思いきや、そうではないそうだ。

 

「では、誰なんだい?」

 

「拐われた青山優雅君のご両親です」

 

「そら断れねえか」

 

「イレイザー達はまだ病院よね?なら学年主任の私がいきますね」

 

 雄英高校とてまだ事態を把握しようとしている段階、説明できることは少ないが被害者親族を無碍にするわけにはいかない。

 

「いいや」

 

 対応の為にミッドナイトが席を立とうとするが、根津校長はそれを静止する。

 

「彼らはここに連れてきてくれ」

 

「え?」

 

「校長?」

 

「は、はい!!」

 

 教師達が疑問の声をあげる中、呼びにきた警備員は急いで青山夫妻の元へと向かう、外にいてマスコミに声をかけられてしまえば夫妻がどんな目に合うかは明白だからだ。

 

「ハウンドドッグ、エクトプラズム」

 

「はっ!!」

 

「はい」

 

「すぐに雄英高校敷地内の警備を」

 

「「承知しました」」

 

 さらに根津校長は警備を強めるように指示をだした。その真剣な様子に2人はすぐさま動きだした。

 

「あー、どうしたんですか校長」

 

「青山ご夫妻に説明、というわけではないのですか?」

 

 残った教師がそう訊ねれば、

 

「そう、だったら良いのだけどね」

 

 根津校長はそのプリチーな顔を苦しげに歪め、できれば違ってくれと祈りつつも告げる。

 

「いいかい皆・・・・・・」

 

 

 

 同時刻、マタタビ荘近辺の病院。

 

「それで伝えたいことって?」

 

 入院するほどの重傷者こそいないが、傷を負った生徒達は一晩病院で過ごすことになった。

 完全に傷を負ってない補習組が見舞いという形でクラスメイトを訪ねる中、緑谷成二はとある人物から連絡を受けていた。

 

「ふむ、その前に謝罪をさせてくれ。何かがおこると予測して起きながらワシは防ぐことができなかったんじゃからな」

 

 その人物とはハワード・フリードマン。ナゾナゾ博士と名乗る成二の戦友である。

 

「護衛のマジョスティック12を派遣したから十分過ぎるよ、実際に助けられたし」

 

 彼ら12人が居なければどれだけ被害がでたことかと成二は言う。

 事実ムーンフィッシュというヴィランは、成二ならばなんとかできても学生がどうにかできる存在ではない。

 

「それでもじゃよ。 

 なにせ、誘拐された子もおる」

 

「青山優雅君か」

 

 別のクラスであり、関わりすらない生徒。その独特な性格ゆえ、多くの生徒からよくわからんやつ扱いされていた人物。

 

「彼のことは心配している」

 

 同じクラスであるA組の生徒達はとても取り乱していた。特に補習を受けていた者達などはより何もできなかったと後悔しているほどだ。

 その気持ちは付き合いのない成二も同様で、避難後に警備にあたっていればとなにかできたのではないかと悔いていた。  

 だが、

 

「なんか、ひっかかる」

 

 マジョスティック12の実力を知るがゆえに緑谷成二もまた青山優雅が拐われたことに違和感を抱いていた。

 緑谷成二がマタタビ荘に辿り着いた時には青山優雅は避難済みだった。

 しかし警備などはしていなくとも警戒はしていた。そうマタタビ荘に辿り着いてから警察がかけつけヴィラン連合が撤退するまでの間にヴィランの敷地内への侵入なんてなかったと断言できるほどに、

 それは成二だけではない。

 夜嵐イナサ、爆豪勝己の両名も同じく警戒していたがゆえにおかしいと感じているのだ。

 

「その情報、君達の感覚をもってこの推測は確定となったの」

 

「博士」

 

 電話の向こうでナゾナゾ博士は辛そうに切り出す。

 

「成二よ・・・・・・」

 

 

「「青山優雅は内通者だ」」

 

 

 奇しくも同時に、知恵者両名によりオール・フォー・ワンが仕組んだ使い捨てライターの存在は看破されたのであった。

 

 

 

 

 場所は変わりとあるバー。

 

「ようこそ・・・・・・じゃあねえな」

 

 つけっぱなしのテレビから流れる雄英高校の不祥事を取り上げる報道をBGMに、顔に手の形をした装飾品をつけた青年、ヴィラン連合リーダーである死柄木弔は両手を広げながら顔を青褪めて立ち尽くす少年に声をかける。

 

「おかえり、青山優雅。

 同じヴィランとして歓迎するぜ」

 

 まるで弾むように愉快げにそう言った。

 





 補足・説明。

 今話な襲撃後の会議とあれこれです。
 気づく人なら気づいちゃうって話。
 なお青山ご夫妻は、位置情報を流すことは聞いていても誘拐されることは知りませんでした(マジョスティック12の存在なオール・フォー・ワンも想定外だったため)。
 なので慌てて雄英高校に来てしまいました。


 ナゾナゾ博士とリカバリーガール。
 凄腕外科医と希少な治癒個性持ち、若い頃に色々ありました色々。

 ナゾナゾ博士と根津校長。
 凄腕外科医と元モルモット。その研究の依頼を受けるも篤志家の彼は拒否し根津校長の手助けをしました。

 死柄木弔のおかえり発言。
 当然青山君が来たのは初めて。からかうために言いました。

 
 繋ぎ回なのに予想外に長引いて作者は驚いております。
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