作中で描写を怠っていましたが、成二は定期的に母である引子さんに連絡はしてました。
ただ、挨拶と兄経由で渡されるお惣菜のお礼程度なので挿入する場面が思いつかなくて。
今話は閑話的な緑谷家ではない家庭訪問です。
雄英高校教師達は全寮制導入の為に家庭訪問を行う。それぞれのクラス担任が生徒の家族の元へ赴き、学校側の不手際からのお願いと説明と謝罪を行うのだ。
その家庭訪問先の一つ耳郎家にて。
「んーー、ロックじゃないよねえ」
耳郎響香の父は対面に座る雄英高校教師のイレイザーヘッドとオールマイトに対して、まるで難色を示すように構えていた(耳郎響香母はその隣で頬を染めドキドキしている可愛い)。
学校から生徒達が一斉に自主退学、あるいは保護者が転校させようとしてもおかしくない現状に担任であるイレイザーヘッドは誠意を込めて頭を下げていた。
「あー先生いいスよ。頭なんか下げなくて!プリント郵送されてきた時点でもう結論出てたんで」
そこへ飲み物を運んできた耳郎響香が気にする必要はないと声をかける。
「響香やめろ!折角、厳格な父親で通そうとしてんのに!!」
どうやら耳郎響香の父は一切不満はないが、見栄やら格好良さの為に一応反発してみせただけらしい。
これからも雄英高校に通うことも全寮制の導入に不満もない様子に非難を覚悟していたイレイザーヘッドは呆気に取られるのであった。
「あー、ただねえ。
一つだけ聞きたいことがありましてねえ」
家族でわちゃわちゃしていた耳郎響香の父は腕を両掌を合わせて真剣な表情となる。
「はい、何でしょうか?」
空気が変わったことにイレイザーヘッドのみならず一同がゴクリと息を呑むと、彼はスッと一枚の写真をテーブルに置く。
そこには一人の少年の姿が、マジックで落書きされまくって写っていた。
「この生徒のことなんだが」
「こんな両面宿儺みたいなヤツはウチの学校にはいませんね」
落書きされすぎて誰かわかんねえよ。
そう返すイレイザーヘッドと、
「って成二の写真ーーー!!
どうしたのこれ!!」
誰か理解して叫ぶ娘。
「雄英高校体育祭で売ってたから買っておいた」
「ウチが恥ずかしくて買えなかったのにこのオッさんは」
学校行事で取られた写真が売りにだされることは多い(注、作者学生時代の為現在は不明)。無論当人から許可はでているので合法なのだが、まさか落書きされるとは思いもしなかっただろう。
「それで、ウチの可愛い一人娘が夢中なこのアンチクショウがどんな輩なのか教師側の意見が欲しくてですね」
(ったく、このオッさんは)
自身の恋心が周囲にバレバレなことに耳郎響香は恥ずかしくなり頬を赤く染める。
母に相談したことから父にも伝わってしまったのだろう(手作り弁当を習うなどわかりやすかった)。
その父親の娘を心配する言葉に、イレイザーヘッドは寮生活なら色恋沙汰のトラブルもあり得るかと学校で議論ネタにしようと思考しながら、緑谷成二を見てきた素直な印象を告げる。
「天然二股野郎ですね」
「相澤君っ(ガハァッ)!!」
「先生ッ!!」
そんな率直であんまりな印象に、思わず同伴していたオールマイトが血を吐きながら叫び、耳郎響香も悲鳴のような声を上げた。
「あ、すいませんつい」
成績実力性格行動に問題は一切ないが、色恋沙汰に疎く同学年美少女二人に好かれていることは雄英高校では有名な話である(なお行動してないファンもかなりいる模様)。
ミッドナイトを筆頭に職員室でよく話のネタになるのでつい言ってしまったのだ。
「ほほう」
その情報に父はビキリと額に青筋を浮かべだすのであった。
愛娘の想い人が二股野郎(正確には三股)となれば父親として穏やかな気持ちではいられないのだろう。
「あ、あのですねお父さん。成二少年は確かに女子生徒に好かれてますが決して彼女達を弄んでいるわけではなく」
「成二にはそんな情緒とかまだ育ってないから今の内に既成事実を固めて置こうとしてるだけで」
「耳郎少女っ(ガハァッ)!?」
フォローしようとしたオールマイトは耳郎響香の自白にさらに吐血する。
彼女は緑谷成二が恋愛感情が生まれたその瞬間に一番近い距離に居るために日頃から絡んでいたのだ。
「あのー、それでウチの娘はクラスは違いますが彼と同じ寮に住めたりとか」
「奥さんっ(ガハァっ)!?」
「(面倒臭いな色恋沙汰)」
家庭訪問から脱線しまくった保護者面談はオールマイトの吐血で彩られながらしばらく続くのであった。
ただ、年頃の少年少女の共同生活となれば色恋沙汰などの男女間トラブルは注意しなければならない問題であり対策は必要だろう(ただでさえ生徒に覗きや下着ドロをやりかねない問題児もいるのだし)。
イレイザーヘッドとオールマイトが次に向かった家は爆豪家。
そう、神野にて学生の身でありながらヒーローとして参戦してしまった爆豪勝己の家だ。
A組生徒達による青山優雅救出計画、それにフォローする為に参加すると雄英高校側に事前連絡した爆豪勝己は、フォローどころかオールマイトに次ぐほどの大活躍をしてしまったのだ(背負ったベストジーニストとの即興合体技・爆殺ファイバー地獄龍はオール・フォー・ワンにかなりダメージを与えた)。
トラブルの末に得てしまったイタリアのヒーロー免許返納で今回のやらかしの罰則とする予定だったのだが、ここまで活躍してはそんなこともできない。
下手に罰則を与えたらイタリア政府がウチで引き取るよと言い出しかねない状況だからだ。
罰則を与えるとしても内輪で済む程度に落ち着くことだろう(反省文とか)。
雄英高校一年体育祭準優勝者。
イタリアの英雄パルコ・フォルゴレの相棒。
最年少ヒーロー資格認定者。
オール・フォー・ワン捕縛功労者。
爆豪勝己は本人にとっては不本意な成り行きの元、半端ない実績を重ねるのであった。
「は、はい。よろしくお願いします」
スパアンと横に座る息子の頭を叩きながら爆豪勝己の母は寮制度導入を了承した。
「・・・・・・なんで今叩いたオフクロ」
「アンタがやらかしまくって周囲に面倒をかけまくるからでしょうがっ!?」
「ココロカラハンセイシテオリマス」
叩かれたことを尋ねる爆豪勝己だが返ってきた言葉に反論できず謝罪。
彼とてやらかした自覚は多大にあるのだ。
「勝己も変わったなあ。昔なら「ババア叩くんじゃねえよぶっ飛ばすぞコラ!!」って叫んだのに」
爆豪勝己の父はそんな(すっかり変わった)息子の様子にしみじみと見ている。
「・・・・・・思うところがあったんだよ(パルコ・フォルゴレ両親の件)」
「フォルゴレさんの両親の件?
あっちにも理由はあんだろうけど、ウチらはアンタがどんな馬鹿やっても見放したりなんかしないよ、ショットガンを怯えながら構えたりもね」
((ショットガン?))
「・・・・・・・・・・・・あんがとよ」
爆豪勝己は母の言葉にそっぽを向きながら礼を言った。
「本当によろしいでしょうか?」
「もともと雄英高校が悪いわけではないでしょう?コイツの事だって、フォルゴレさんが原因ですし」
「トラブルメーカーっつうかブラックホールみたいに引き寄せんだよあの馬鹿」
「フォルゴレさんを馬鹿呼びすんな!!」
「実母の乳を揉もうとする野郎は馬鹿呼びで十分過ぎるわ!!」
「・・・・・・アレには殺意湧いたねえ(怒)」
「それくらいのこと気にする歳じゃないって」
「そんな事はないよ光己さん。貴女はいつまでも綺麗なままだよ」
「勝さん」
「教師の前でいちゃつかないでください、いや本当にやめてください、これを狙ったんじゃねえだろうなあの馬鹿」
「(何この愉快な家庭)」
爆ぜるように会話が弾む家族を見てオールマイトはそんな事を思うのだった。
そうなったのはパルコ・フォルゴレという存在が大きいのだが。
「というかこんな変わった状況の息子に対応できるのは多分雄英高校だけでしょうから、どうかよろしくお願いします」
「みっちりしごいて良いヒーローにしてやってください」
「はい、お引き受け致します」
雄英高校教師二人はそう深く頷くのであった。
イレイザーヘッドとオールマイトが爆豪家から出て次の生徒の元に行こうとしたところで、
「オールマイト」
「ん?」
爆豪勝己が自宅から出て声を掛けてきた。
彼はどうしても確認したいことがあったのだ。
「デクは、緑谷出久はアンタにとって何なんだよ?」
すでに推察は確信の域にある。
それでも迷惑だろうが確認したかったのだ。
「・・・・・・生徒だよ。君と同様に前途あるヒーローの卵だ」
さらせぬ秘密を抱える英雄を引退した男は絞り出すように答えるのであった。
「・・・・・・ならもう少し特別扱いを隠せ。
生徒の間でも噂になってるからな」
もっともその内容は、オールマイトが男子生徒と密会しているというスキャンダラスなネタではあるが。
「はい、ごめんなさい」
思い当たる節があるのか、オールマイトは冷や汗を掻きながらそう言った。
補足・説明。
今話は家庭訪問の話です。
なんか予定より盛り上がり楽しかったです。
耳郎家。
寮生活よりも娘の恋愛話が重要。原作での昏睡がないのも大きい。
天然二股野郎。
緑谷成二のこと。実はトガを含めたら三股。
教師を含めた雄英高校ではこの認識が定着している。本人に自覚なし。
爆豪家。
フォルゴレの影響で息子がかなり変わっている。その出会いのきっかけをくれた雄英高校に両親は感謝している。
爆殺ファイバー地獄龍。
爆豪勝己とベストジーニストの合体技。
爆破液を染み込ませた繊維を龍の形に編み込み、オール・フォー・ワンへと叩きつけた。
エンオウ・フレイガのパクリ呼びは禁句。
イタリア政府。
ウェルカム勝己!!
次話は緑谷家。
どうしようかー、と本当に悩んでおります。