前半に関してな前書きにしようかとしましたが、長くなったので本編に書きました。
雄英高校敷地内が夜の闇に包まれ、新たな生活に入ったヒーロー科生達が眠りについた時間。その場から去るよう並んで歩く男女二人がいた。
「用事は済んだかね?」
その二人に話しかける?マークのついたシルクハットをかぶる一人の紳士。
「ナゾナゾ博士」
「こんばんはです」
話しかけられた男女はその人物を認識すると親しげに手を上げ、ペコリと頭を下げた。
「ああ、成二もイナサも焦凍も急な環境変化であっても問題なく過ごせそうだ」
「私はセイ君以外どうでもよいですけど」
「イナサも戦友だろうがっ!?」
「暑苦しいからヤです」
その男女、妖怪セガ置いてくもといトウヤとトガヒミコは、どうやら戦友と実の弟の様子をこっそりと見に来たようだ。
「まったく、セキュリティパスは私が用意したのだからこんな侵入者みたいな真似をしなくとも堂々と会いに行けば良いだろうに」
そんな二人にシルクハットを傾けながら呆れ果てるナゾナゾ博士。
如何に魔界の王を決める戦いに参加した人間のパートナーの中でも随一の火力と隠形技量を誇る両者であろうと、今の雄英高校のセキュリティを生身で破ることは困難である(力技なら可能)。ゆえに雄英高校に多大な伝手のあるナゾナゾ博士が敷地内に入れるように手配したのだ。
「わかってねえな博士。こっそりと見守る行為にこそ趣ってもんがあんだろ」
「ですです。物陰、天井裏、床下、ベッドの下からじっと眺めるのが純愛なのです」
「忍者だろソレ」
堂々と会いに行かずにこっそりと見守る。それがこの二人の珍妙なこだわりらしい。
「・・・・・・そうか」
あのナゾナゾ博士すら追及を諦めさせるそのこだわり、きっとこの二人はこれから同じような奇行を繰り返すのだろう。
「しかし、その・・・・・・だね」
「どうした?」
「なんです?」
ナゾナゾ博士はトウヤとトガヒミコの頭部をチラチラ見ながら今までずっとツッコミたかったことを遂に口にした。
「頭・・・・・・大丈夫かね?」
「「まあ平気」」
両者の頭には成二の仕掛けたトラップによる矢がしっかりと突き刺さっていたのだ。
「(スポッ)成二も気を遣ってくれたみたいでな」
トウヤは頭から矢を引き抜くとその先端を見せ、
「ああ、流石の彼も加減くらいは」
ナゾナゾ博士がホッとしながら矢じりを見る。平気そうな様子から先端が吸盤かナニカだと予想したのだろう、だが。
「抜きやすいように矢じりに返しがついてない」
「しっかり刺さっているんじゃないかい!!」
ナゾナゾ博士は平然としている両者と加減をしない成二に対してツッコミの叫びを上げるのであった。
夜中の雄英高校敷地内。
1年A組の寮にて一人の少女が涙を流しながらクラスメイトへと自らの胸の内を語り終えた後、魔界の王を決める戦いを乗り越えたパートナー達はそんなやり取りをしていたそうな。
俺、緑谷成二の朝は早い。
起床し先ず意識をはっきりさせる為に洗顔し、それからベッドを整えてから(枕元にあったドリームキャストと写真は片付けた)運動用のジャージへと着替える。
それから日課であるジョギングだ。
早朝ジョギングについては昨日の内にブラドキング先生に許可をもらっているので問題はなく、俺はまだ日が昇る前のやや薄暗い時間帯に軽く準備運動してから雄英高校外周をぐるりと一周する。
ジョギングで身体がほぐれて汗もかいたところで、続いてハイツアライアンス付近の開けた場所でカンフーの型稽古。ウォンレイさんに習ったこの武術技に歪みがあることは許せない。
それが終わってからさらに別の動きに入ったところで、
「よう」
同じくジャージ姿の勝己さんが現れた。
「おはようございます」
挨拶する俺に勝己さんから軽く話したいが良いかと告げられる。
大丈夫ですと返す俺の横に勝己さんも並び、俺と同じ動きをしだす。どうやらその話はレッスンしながら話したいようだ。
「昨日の夜にあったことでな・・・・・・」
キレッキレな勝己さんの動きぶりに才能差を感じる中で、そんな俺に構わず勝己さん語りだす。
A組も俺達B組と同様に昨日は寮への引っ越し、部屋作りをしたらしい。
ただB組はその後は食事と入浴後に解散となったがA組はお部屋披露大会なるイベントを実行したそうだ。
「まあそれはどうでも良いんだが」
自室公開なんて内臓曝け出すのと大差ないだろと勝己さんは拒否したらしいが本題はそのイベントではないらしい。
「部屋王決めが終わった後に救出作戦に参加したメンバーが梅雨ちゃんに話があると呼ばれたんス」
「イナサは参加してないけど俺が呼んだ」
勝己さんとの話し中に混ざりだしたイナサと轟君がステップを踏み、両手を胸の前で振りながら説明を繋げる。
「勝己さんが気にしていた蛙吹さんが」
青山優雅救出作戦について病院で敢えて辛い言い方をした彼女。
ヒーローを志す同級生に対して、ヴィランと同じだと言う厳しい発言。
その言葉を嫌な相手に蔑みを込めてならば言える人物も存在するだろう。
しかし彼女は、大切な友人達を思いやり、なんとか止めさせる為に心を鬼にして、言いたくもないことを言ったのだ。
それはいったいどれだけ辛かったのだろう。
「・・・・・・泣かせちまった」
「ああ」
救出作戦を実行した勝己さんと轟君が顔を歪めながら昨日の彼女を思い出していた。
「優しい娘、なんだね」
誰かの為に泣ける。
誰かの事を真剣に考えて辛くなって泣いてしまう。それは彼女の情の深さを現していた。
「やったことに後悔はねえ。
俺が全部ひっかぶって助け出すことが間違いだとは思わねえ。
でもよ」
ガリガリと頭を掻き出す勝己さん。今の心境を言葉に変えるのは彼と言えど難しいのだろう。
「俺もだ。
立場よりもクラスメイトを優先したことは間違いだとは思わない。
そんなことより大切なもんがあると思う」
彼女の言葉を理解はできた。
でも納得はできなかった。
だからこそ轟君は切島君と共に躊躇わず病院の玄関で待っていた。
「それでも・・・・・・だ」
「あの涙を見るのは辛かった」
蛙吹さんの考え。
ルールを持ち出して救出作戦を止めようとした行動。感情に任せて違法と知りつつも救出を実行しようとする彼らを止めようとしたこと。
それが叶わず、さらに合法にされてしまったことにどれだけ傷ついたのだろうか。
「無理にその考えにシロクロ付ける必要はないんじゃないか?」
彼女の涙に勝己さんと轟君は納得しきれずにどうすれば良かったのかと悩んでいた。
「シロクロつける必要はない、か」
「そ」
相手が親しくない、さらには内通者であった青山優雅だから俺は救出作戦に参加しなかった。
けれどこれがもし同じクラスの誰か、例えば物間君だったら(個性と性格と日頃の行いから選出)、俺は躊躇わずに助け出しに行っただろう。
ゆえに心情的には勝己さん達と同感なのだ。
でももし彼女の、蛙吹さんの想いを汲もうとするならば。
「ただ彼女の自分達の身を案じてくれた想いを受け止めておけば良いと思う。
行動は変えられなくても、胸にその想いが刻まれていれば別の道が見えてくるかもしれないしさ」
今は無理でもいつかは素直に受け入れることができるようになるかもしれないのだから。
「そう・・・・・・だな」
「想いを受け止める」
勝己さんと轟君はそっと自身の胸をに手を当てて考えこむのであった。
「さーってレッスンも終わったし、寮でシャワー浴びて朝食かな?」
「朝からいい汗かいたっス」
「日課になりそうだな」
「悪くねえ」
俺達は『乳をもげ♡』のダンスレッスンを終えて寮へと戻るのであった。
「シリアスな話をしながらなんでそんな踊りをできるの君達」
そんな俺達を兄さんは宇宙人を見るかのような眼差しで見ていたとか。
逆にシリアスなままだと口にすらできない内容だと思うけど。
昨夜の内に、救出作戦に参加したメンバーと蛙吹さんは和解出来たみたいなんだし。
なおこの早朝『乳をもげ♡』ダンスは峰田君上鳴君と参加者は徐々に増えていき、いつの間にか1年ヒーロー科生大半が参加するようになったとか。
そしてスタイル良い女子勢があの胸を持ち上げるようなダンスをしてしまい男子生徒一部が鼻血を勢いよく吹き出してしまったり、スタイルの良くない女子があの胸を持ち上げるようなダンスをしてしまい精神的ダメージから血反吐をまき散らしながら倒れ伏すことになってしまうのであった。
大丈夫かな?耳郎さん。
新たな日課が加わりながら俺達の雄英高校生活は始まってゆく。
補足、説明。
今話は侵入者達と成二達の朝の一幕です。
流石にセキュリティが不味いのでナゾナゾ博士に助力してもらいました。
なお成二のトラップは弓系でした。
侵入者二人はしっかり刺さりました。
矢は刺さったけど急所は外れているので問題ありません。ヒロアカにも存在するギャグ補正効果もかなり影響していますが。
梅雨ちゃんイベントは実際に行わずに、爆豪君と轟君の後悔話という形で終えました。
大体原作のままですが、
クラスメイトの身を案じて止めたのに聞いて貰えず、さりに合法化されたことに梅雨ちゃんは傷ついてしまいました。
けれどそれでも、爆豪君と轟君は同じ状況なら躊躇わず飛び出す自身の性に、申し訳なさとまた傷つけるのかと悩んでいました。
どちらが正しいか答えのない問題。
ルールか、感情か。
ヒーローは職業なのか行動なのか。
それは置いといて、心配してくれた梅雨ちゃんの想いを受け取るべきだと作者は考えました。
まあこんな話を『乳をもげ♡』ダンスしながらしているわけですが(批判が怖い)。
成二からしたら梅雨ちゃんとの件は決着ついていたし、爆豪君達がどう受け止めるかですから。
そしてこの『乳をもげ♡』ダンスレッスンは1年に広まってしまいます。
ヒロアカ女子がやったら素晴らしい光景ですね、耳郎さんは倒れましたが。