TS学郎(学子ちゃん?)を
がしゃどくろと契約させたかっただけの妄想です。
続きは、がしゃさんと、やりとりさせる方法を考えたら書きます。
世界中で――もちろん日本でも――流行り病が猛威を振るったせいで、
私の「高校生としての一歩」は遅れに遅れ、気づけばもう六月。
そんな流行り病も落ち着いてきたと判断され、
ようやく私の入学する北高でも、ついに入学式が催されることになった。
昨晩の大雨のせいで、通学路にはまだ湿気が立ち込めている。
じっとりとした空気の中、試着以降、久々に袖を通した制服を気にしつつ、私は歩き出した。
ここを歩くのは、今日が初めて。
少しだけ、わくわくしてしまう。
中学校では、正直ちょっとアレだったけど――
高校こそはうまくやりたい。
そんなことを思いながら歩いていると、ふと、前方に倒れている人影が目に入った。
小柄なお婆さんが、道端に蹲っている。
外出制限が解かれたばかりだからか、あたりには誰の姿も見えなかった。
私はすぐさま駆け寄り、声をかけた。
「大丈夫ですか!?」
水たまりに膝をつき、スカートが濡れるのも構わず、身をかがめる。
顔を上げたお婆さんは、苦悶の表情を浮かべていた。
「お婆さん……大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」
――救急車、呼ばなきゃ!
私は慌ててスマホを取り出し、震える指で「1、1、9」と打ち込む。
数秒の呼び出し音のあと、受話口の向こうから、落ち着いた女性の声が聞こえてきた。
「こちら、119番消防です。火事ですか? 救急ですか?」
「きゅ、救急です! その、お婆さんが倒れてて……!」
掠れるような声だったけど、頑張って状況を伝える。
場所、意識の有無、呼吸の様子――次々に投げかけられる質問に、必死で答え続けた。
通話を終え、スマホをしまうと、お婆さんの手をそっと握った。
「もうすぐ来ますからね……大丈夫ですから、がんばって……!」
遠くに聞こえる、サイレンの音がどんどん大きくなっていく。
救急車が到着すると、隊員たちが駆け寄ってきた。
「通報者の方ですね。ありがとうございます。様子は?」
「胸を押さえてました。意識はあるみたいなんですけど、喋れないみたいで……!」
手短に説明を終えると、
隊員に促され、そのまま救急車へと乗り込んだ。
ただ、お婆さんの手を握りしめて、無事を祈ることしかできなかった。
数分後、救急車が病院に辿り着いた。
「ご協力ありがとうございました。」
担架が遠ざかり、お婆さんの姿は白衣の間に飲み込まれていった。
水に濡れてずっしり重たくなった制服の裾を揺らしながら、
スマホを取り出して、画面を点けて、時間を確認――ため息が漏れた。
時刻は既に10時を過ぎていて、
病院から学校まで歩いたとしたら、12時なんて、とっくに過ぎちゃう。
……初日からこれって、高校生活終わっちゃったかも。
さすがに出席しないのもマズいから、
病院を出て学校へ向けて、とぼとぼと歩いていると、
駐車場に泣いている男の子の姿。
今日はよく困っている人に出会ってしまう日みたい。
そっとそばにしゃがみ込み、目線を合わせながら、『僕、大丈夫?』と声をかける。
涙を拭いながら、震えた声で、ぽつぽつと話してくれた。
男の子は、おじいちゃんと一緒に病院に来たけれど、
ふと目を離した隙に、はぐれてしまったのだという。
「お姉ちゃん、手伝うから。一緒に探そ?」
そう優しく声をかけると、彼は不安げながらも、こくんと頷いてくれた。
もう、遅刻は確定してる。
なら――これくらい、いいよね。
私は彼の小さな手を取って、並んで、再び病院の中へと入っていく。
ロビーを見渡して、『おじいちゃん、いる?』と聞いてみる。
けれど、彼は首を横に振った。
他のとこに居るのかな?
彼の歩幅に合わせながら、ゆっくり歩く。
「名前、なんていうの?」
「……ゆうご。優しくて、悟るって書くの。」
「“悟る”なんて、難しい漢字、よく知ってるね。すごいなぁ。」
「お母さんが、こう言えって。」
「優しいお母さんだね。それにカッコいい名前だね。」
そう言うと、彼は照れたようにうつむいて、小さく笑った。
さっきまで泣いていた顔に、ほんの少しだけ元気が戻る。
おじいちゃん、どこにいるんだろう……。
別の階にでもいるのかな
うーん、エレベーターってどこだろ?
周囲を見渡しても、案内板が見当たらない。
運よく、白衣を着た人が角から現れる――お医者さん、かもしれない。
「あ、あの。」
とっさに声をかけ、彼に近寄る。
しっかりと上を向かないと見えないその顔には、角ばったフレームの眼鏡がかかっていた。
体つきもがっしりしていて、何か格闘技でもやっているのかな、なんて。
そんな彼の白衣には、“輪道”と書かれたネームプレートがついていた。
“わみち”?“わどう”?どっちだろう。不思議な苗字。
「どうかされましたか?」
「そ、その、上の階に行きたくて。」
「でしたら、ここの通路の先、十字路を右手に進んでください。」
「ありがとうございます。」
そう言い残すと、彼は静かに背を向け、音もなく去っていった。
教えてもらった通りに通路を進み、エレベーターの前に着く。
だけど、扉には点検中の文字。どうやら、エレベーターは使えないみたいだ。
周囲を見渡すと、少し遠くの突き当りに、階段が見えた。
優悟君の手を引いて、手を繋いだまま、
彼に合わせて、一段、また一段と上っていく。
上って、上って、上って……。
降りて、降りて、降りて……。
……。
あれ……?
なんで、私たち、降りてるの……?
気づけば階段は反転していて、
私たちは、いつの間にか下へ、下へと進んでいた。
おかしい。おかしい。……おかしい。
背筋が凍る。
視界がぼやけてきて、涙がこぼれそうになる。
足を止めた私を不思議がるように、優悟君が「お姉ちゃん、どうかしたの?」って。
こんなにおかしいのに、どうしてか優悟君は気づいていない。
「だ、大丈夫。行こ?」
袖で顔をぬぐって、震える声を押し殺しながら、
一段、そして、一段と降りていく。
ようやく見えてきたフロアにたどり着き、そっと足を下ろした。
小さく膝が震えていて、「落ち着け、落ち着け」と心の中で何度も唱える。
ふと、気になって後ろを振り返る。
――さっきまで延々と降りていたはずの階段が、そこには無かった。
ひっ……。
悲鳴が出そうになるのを、なんとかこらえる。
私の動揺が伝わったのか、優悟くんも不安そうに後ろを振り向こうとした。
「ダメ!」
とっさに彼の肩に手を置いて、止める。
怖がらせちゃいけない。私の方が、お姉ちゃんなんだから。
また泣きそうな表情を浮かべていた優悟君の近くに、そっと顔を寄せ、額を重ねる。
「泣いちゃ駄目。男の子なんだから。」
声を震わせないように優しく、気丈にふるまってみせた。
「……うん。」
涙をぐいっと拭いながら、勇ましく頷く彼。
その姿がいじらしくて、私は思わず彼の頭を撫でて、そっと褒めてあげた。
ゆっくり歩き出すと、周囲に不思議な構造物が見えてくる。
黒い円柱が、幾重にも重なり合うように、斜めにびっしりと並んでいた。
柱の隙間を縫うように歩く。
やっぱり――気のせいなんかじゃなかった。
周囲に感じる幻妖の気配がひしひしと強くなっている。
幻妖―――大嫌いで恐ろしくて、そして、お父さんを殺した不可視の化け物。
死にたくない。どこでもいいから、逃げて、隠れて。
そんな考えが頭をよぎった。
だけど、掌に伝わってくる小さな暖かさによって解かれていく。
今はまだその姿は見えない。……だけど、一刻も早くここから離れなきゃ。
震える身体に鞭を打って、優悟君を背負って、走る。
背中には、子どもの重みとぬくもりが確かに伝わってくる。
「優悟君、目をつぶってて。」
見えないあいつらが、もし彼に見えてしまわないように。
走る。走る。
だけど風景は変わらない。周りには黒い柱が、ひしめき合っている。
それでも、幻妖の気配は弱まっていた。少しは離れられたのかもしれない。
……だけど。
幻妖よりも、遥かに強く、恐ろしい“何か”の気配が、私たちを包み込んでいた。
「大丈夫だから。お姉ちゃんに任せて。」
背中で小さく震える優悟くんを、そうやって励まそうとした、そのとき――
「小娘、どうやって此処へ入ってきた。」
私と優悟くんだけしかいない空間に、男の声が響き渡った。
瞬間、醜悪な重圧がのしかかってきて、私はその場に倒れ込んだ。
嗚咽が走る。
真っ青な顔で、浅い息を繰り返している優悟くんを、
私は必死で、この腕に抱え込んだ。
涙が止まらない。
……続く言葉はまだ聞こえてこない。
どうやって……?
答えなきゃ――殺される。
「あ、ある、いて。い、つのまに、か、ここに。」
詰まる息を押し出して、途切れ途切れながらもどうにか言葉を繋ぐ。
「歩いて、だと?この墓所は封印されているはず……。」
目の前の存在が、何かを呟いている。
ぼしょ……?
ふういん…?
――う゛っ……。
喉の奥が焼けつくように熱くなり、逆流する酸が口の中に広がる。
身体の芯からせり上がるものを止められなかった。
「おえっ……! おえ゛ぇっ、ぅえっ……! うぅ゛っ……!」
腹の底をぐしゃぐしゃに掴まれるような感覚の中、
胃液と未消化のものが、喉を焼きながら何度もこみ上げてくる。
潤んだ視界の中、鼻水と涎、涙が混ざり合って、顎を伝って垂れていく。
喉の奥から、止めようのない嗚咽が漏れ出す。
「おっ……う、ぅ゛っ……! も、う……や、……お゛え゛ぇっ!」
黄色く濁った吐瀉物が、ぐちゃ、と鈍く濡れた音を立てて何度も地面に広がる。
跳ねた液体が、抱きかかえた優悟くんの服にまでかかってしまう。
ごめん……ごめんね……。
意識を失った彼は、ぐったりとした様子で、小さく呼吸を繰り返してた。
「ん?あー、悪かったな。来客なんて久しぶりだったからな。」
その言葉とともに、まとわりついていた重圧がふっと消える。
だけど、まだ心臓は警鐘を鳴らし続けている。
少しずつ呼吸を整え、ゆっくりと顔を上げる。
そこに、“男”がいた。
まるで出迎えるでも、威嚇するでもない態度で、無造作に椅子へと腰かけている。
彼と目を合った瞬間、背筋が凍りついた。
あ、この人……幻妖だ。
しかも、初めて見る“人型”の――。
死人のように白い肌。
冷たく澄んだ両目。あまりにも無機質で人の感情というものを一切感じない。
鋭くつり上がった瞳に晒されるだけで、自分という存在が解体されていくような錯覚に陥る。
無表情のまま僅かに開かれたその唇の奥には、うっすらと牙のような歯列が覗かせていた。
無数の鋭く逆立った毛髪が、どこか猛禽類のような威圧感を放っていた。
そして――
周囲には、まるで意思を持って浮遊するように、無数の骨の腕が漂っていた。
ひとつひとつが意思を持っているかのように動いている。
彼はこの空間の「主」であり、支配者だった。
「お前、まさか、依代か?」
じっとこちらを見つめていた彼は、何かに気づいたのか、ぴくりと瞼を揺らす。
そして低く、何かを呟きながら――椅子を離れ、私へと歩み寄ってきた。
頭が彼の大きな手でガシっと掴み上げてられる。
よ……依代?
なに、それ……。何のこと……?
震え、今にも壊れそうな身体を必死に抑える。
殺されるかもしれない。
だけど。
せめて、腕の中の優悟君だけでも、護ろうと、
威嚇するように、彼を睨みつけた。
「貴様……ふっ、くくっ、ははは。お前、あぁ……いい目だ。折角の機会、物は試しだ。」
彼の手に力が入って頭が締め付けられる。
そして――
激痛とともに、熱く濁った“何か”が、身体の奥へと一気に流れ込んできた。
どく、どく……と、空の器を埋めていくように。
全身の隅々まで、熱が満ちていく――作り変えられていく。
「あぁ!なんて人間だ。この俺と契約して、未だに姿を保っている!紛う事なき極上の依代だ!」
歓喜に満ちた彼の叫びを聞きながら――
私の意識は、ふっと闇に沈んでいった。
「折角の依代に死なれては困る。……、陰陽師共が来ているな。丁度良い、あいつらに回収させるか。」
どうやって、封印墓所外の学子ちゃんと、やりとりさせよう。
しゅごきゃらシステム以外思いつかない。
えっちして貰いたいから、コミュニケーションはしっかり取らせたい。