ガタンッ
「シロコちゃん、急にどうしたのさー。」
「いつまでしらをきるつもり?」
「…?!」
教室から大きな物音がして、ノノミは音が鳴った教室に行ってみた。
「おじさんにはなんのことかよくわからないよー?」
「…嘘をつかないで。」
「ホシノ先輩、シロコちゃん、何があったのですか?!」
ノノミがバンッとドアを開けるとシロコがホシノを問い詰めている様子が目に入る。
「…ええと。」
シロコが口籠っているとホシノが口をひらく。
「いやー、おじさんが昼寝してるのがバレてさー。いつも寝過ぎーって怒られちゃったんだよ。」
「…う、うん。」
ホシノが言ったことにとりあえず合わせるシロコ。その様子は明らかに何かを隠していた。しかし、ノノミはそれ以上追求しなかった。
「…そうですか。ホシノ先輩ももう少しきちんとするようにしてくださいね?シロコちゃんはそこまで強く言わなくて良いと思いますよ。」
「ん…ごめん。」
「良いって良いってー。おじさんもそろそろちゃんとするからさ。よし、先生も待ってるからそろそろいこー。」
ホシノとシロコはスタスタと会議室に戻って行った。
(本当に何があったんでしょうか…。)
「よう、遅かったな…って、どうしたんだ?」
サンズはセリカとアヤネと一緒にクロスワードを解いている最中で、シロコとホシノに挨拶をする。しかし、どうやら雰囲気が違い、少し戸惑う。
「な、なんか気まずくない?2人ともなんかあったの?」
「「何もない(よ〜)」」
口を揃えていう二人。その様子に何かを感じたサンズは聞き出そうとするが、今は一旦置いておくことにした。
「そうか。何かあったら言ってくれよ?さて、全員揃ったな?オイラからみんなに話したいことがある。」
サンズの真剣な表情*1に対策委員会は頷く。
「まず、この場所の名前はアビドス高等学校だな?」
「当たり前じゃん。」
セリカは常識でしょと言わんばかりの顔でいう。
「じゃあ、あの住宅街とかの場所は?」
「アビドス自治区ですね。」
アヤネも当たり前だというように言う。
しかし、サンズの言葉に対策委員会は衝撃を受ける。
「それが違うんだ。」
「ええ!?どういうことですか?!」
「まさか、あの土地はアビドスのものではない、と…?」
アヤネが少し気づいたように言う。
「そのまさかだ。風紀委員会と便利屋が争っていたあの場所も、柴関ラーメンの場所も、ここの校舎以外の場所はアビドス自治区ではなくなっていた。この「地籍図」を見ればわかる。」
サンズは地籍図、土地の所有者がわかる地図を机に広げ、みんなに見せる。そこにある所有者の名前は"カイザーコンストラクション"と書かれていた。
「しかし、なぜこんなことになってしまったのですか?学校の自治区の土地を取引だなんて、誰が…」
「アビドスの生徒会でしょ。」
ホシノが少し遠い目をしながら話す。
「そういえば、ホシノはアビドスの生徒会に入っていたと聞いたな。そこでなにかあったのか?」
サンズが思い出したようにホシノに問いかけ、ホシノは少し昔の話をする。
2年前、アビドス高等学校には生徒会があった。といっても、ほとんどの生徒会はやめてしまい、会長と副会長の2名だけの生徒会だったが。在校生は2桁と少なく、授業なんてものはほとんどない。生徒会長も校内随一の馬鹿だったようで、いつもホシノとやらかしていたらしい。
「いや〜あの時は馬鹿二人であちこち行ってたんだよー。」
「何も知らないまま、馬鹿みたいに…ね。」
ホシノが一瞬暗い表情をしたのをサンズは見てしまった。普段ふわっとしていて、自分と少し似ている部分があるホシノ。滑稽なピエロを演じる者には、必ず裏がある。それをサンズは嫌と言うほど理解しているからこそ、ホシノに少し不安を抱いた。シャーレの先生として、サンズという一つの"モンスター"として。
「…ホシノ先輩が気にすることじゃない。」
シロコは真っ直ぐホシノを見ていて言った。
「確かにホシノ先輩はおちゃらけていて、昼寝をしてはぐらかすこともあるけど、大事な時には私たちを助けてくれる。」
アヤネも思い返すように言う。
「そうですね。セリカちゃんがいなくなった時も一番に先生に助けを求めましたし。」
「そうだっけ?あんまり覚えてないなぁ…」
「ええそうだったの?!知らなかった…!」
「なになに?!みんなして急に褒めないでよ、おじさんこういうの苦手なんだからさー。」
「たまにはいいんじゃないか?オイラもホシノの動きには一目置いてるんだ。もっと自信持っていいんだぜ。」
サンズにも褒められ、耳の辺りを真っ赤にするホシノ。それを見て、アビドスの4人はホシノを褒めまくることにした。そこに明確な理由はない。でも、そうしなきゃ、後悔する。みんなはそれを直感的に感じていた。
「も、もうやめてよー…。おじさんはもう大丈夫だからさー。」
ホシノに懇願され、ようやく褒めるのをやめた4人。その光景を見てサンズは"青春"を感じていた。
「しかし、なぜカイザーコーポレーションに土地を売ったのでしょうか?」
「これは憶測だけど、学校のことを考えてのことだと思うよ。借金を返そうとして、ね。」
「おそらくそうだろう。当時の借金はかなり膨れ上がっていたらしいしな。」
「ですが、土地を売っても返しきれず、また土地を売る…。」
「ずっと土地を売る悪循環になってしまうわけですね。」
アビドスの借金、なくなっていく土地、学校への異常な執着。
サンズはある結論に辿り着いた。
「アビドスは、悪質な罠に嵌められたのかもしれないな。」
サンズの言葉に対策委員会はそのことに気づいた。
「そっか。そういうこと、か。」
その手口とは、こうだ。
まず、アビドスに返しきれないほどの借金を利子と共に貸す。
そして、返すために使わない土地を売ろうなどと甘言を言う。その提案に断る理由もなく、売ってしまう。
あとはそれを繰り返す。そうすることで、アビドスはゆっくりとカイザーのものになっていくのだ。
「アビドスにお金を貸した時から作戦は始まっていたのかもしれないね。それこそ、何十年も前から…。」
「すべては、アビドスの土地のため…。」
その事実はまだ定かではないが、自分たちは想像以上に大きなものと戦っていたのだと気付かされた。セリカは、弄ばれていたことに怒りが止まらなくなっていた。
「何よそれ!生徒会のやつらは気づかなかったの?!まんまと騙されているだけじゃない…!」
「セリカ、落ち着くんだ。」
サンズの声でセリカは少し落ち着く。
「昔の生徒会に怒ったってなんの意味もないさ。生徒会なりに学校を守ろうとしたんだから、怒りの矛先はそこじゃないんだ。そうだろ?」
「わ、分かってる!騙す方が悪いってことぐらい…でも、それでも、悔しい…。なんで、アビドスにこんなことをするの…!」
セリカは心の底から悔しそうな顔をして、涙目になる。学校を大切に思っているから、手のひらのうえで遊ばれていることが何よりも悔しい。その気持ちは他のメンバーもよく感じていた。
「守りたいのに守れない。そんな気持ち、オイラにはすごく分かるぜ。」
「え?」
サンズの言葉に、対策委員会は耳を傾ける。
「少し、オイラの話をするとしよう。誰にも言ってない、オイラの秘密を…な。」
「オイラがいた世界では、モンスターと言う種族とニンゲンという種族がいたんだ。その2つの種族は戦争をした。そうして、ニンゲンが勝利した。そして、モンスターは地底世界に閉じ込められたんだ。バリアーで出口を封鎖されてな。」
「そうして平和だった世界に、ニンゲンが落ちてくることがあったんだ。ニンゲンのタマシイを7つ取り込めば、外へ出れるから、地底世界の王はニンゲンを殺し、タマシイを保管しておいた。」
「そうして、7人目のニンゲンがおちてきた。でも、そいつは…天使のようで、悪魔だったんだ。」
「天使のようで悪魔…?それは一体…。」
「そいつは、世界をセーブしたりロードできたりするんだ。まさしく、ゲームだな。そうして、そのニンゲンは全てのモンスターと友達になり、王をも説得し、神をも救い、地上へ出た。"ケツイ"の力を使ってな。」
「ハッピーエンドだね。モンスターとニンゲンの架け橋になったって感じ?」
「そうだ。そうして、世界は平和になる。それで終わり…のはずだった。」
サンズは目からハイライトを消し、忌々しい記憶を呼び覚ますように話す。
「やつは、世界をリセットした。全てを元通りにし、記憶をも消したんだ。」
「世界をリセット?!そんなことが可能なの…?!」
「やつには可能だった。"ケツイ"の力があったからな。そうして、世界をリセットしたやつは…モンスターを虐殺したんだ。笑える話だろ?モンスターと友達になったと思ったら、記憶を消して、皆殺しにしたんだ。俺の、弟をも…な。」
その場にいる誰も、声が出なかった。想像を絶する過去。普段のおちゃらけている彼からは考えられないものだった。
「ね、ねえ、聞いていいのかわかんないけど、先生もそいつに…?」
セリカはおずおずとサンズに聞く。
「…オイラは、最後までアイツに変わって欲しかった。やつと戦う中、何度も忠告した。もうやめろ、まだ間に合うから…ってな。でも、やつは止まらなかった。なんどやつを殺しても、ケツイの力で生き返る。そいつに、オイラは何回も殺されたんだ。」
「すべてを破壊し尽くしたあと、またやつはリセットをした。でも、オイラはなぜか記憶を持っていたんだ。そいつに殺された記憶を…な。そして、案の定またやつはオイラたちを殺した。何度も、何度も…。」
「オイラはまたやつと戦っていた。殺されるのはうんざりだ。そう思っていたら、変化が生じたんだ、原因は不明だが、その変化のおかげでオイラはここに辿り着いた。そうして、先生をやってるってわけだな。」
サンズは長いこと話しており、気づいたら時間が結構経っていた。だが、その時間中、アビドスのみんなは真剣に話を聞いていた。あまりにも残酷すぎる世界。アビドスの問題が霞んでしまうほど、サンズの過去は少女たちに重く響いた、
「暗い話をして悪かったな。じゃあ、借金の話に戻るとする…」
サンズがそう言った瞬間、ノノミは立ち歩き、サンズを後ろから抱きしめる。サンズはあまりに唐突すぎて驚くが、抵抗はしない。この安らぎを、サンズはどこかで感じたような気がした、だが、それは深い記憶の底に沈んでいてわからないが、そんなことは今のサンズにはどうでも良かったのだ。
「辛かったんですね…。サンズ先生。」
ノノミは涙目になりながらサンズの頭を撫でる。
「何度も殺される…その経験がどれほどのものなのか、私には分かりません。でも、こうやって寄り添うことはできます。だから…抱え込まないでください。」
ノノミに続き、セリカとアヤネもサンズの手を包み込む。
「ノノミ先輩の言うとおり。先生には私たちがついてるから、少しは一緒に背負わせてよ。トラウマになっているなら、手伝うから…さ。」
「先生に問題を押し付けて、私たちは先生のことを何も知ろうとしませんでした。だから、先生を全力でサポートしますから…!」
シロコとホシノもサンズの目の前に立つ。
「先生。無理はしないで。何かあったら私たちが絶対に助けるから。先生は一人じゃない。」
「みんなに全部言われちゃったけど…サンズ先生。私は大人は嫌いだけど、あなただけは信用してる。冗談もいって、話してると楽しい、そんな大人。そんな先生に、改めてお願いしたいんだ。『アビドスを、私たちを助けてくれる?』」
対策委員会として、一人一人の少女として、彼女たちはサンズに真剣に語りかける。そんな姿勢を見て、サンズは思わず涙を出しそうになった。
「へへ、こんなオイラでいいのか?前の世界では何も守れなかったんだぜ?」
「先生だから頼みたいの。いや、先生としてではなく、一人の大人として頼みたいんだよ。」
その言葉を聞き、サンズは答えた。
「任せろ。絶対、お前さんたちを救ってみせる。」
なんか一気に書き進めたのでちょっとおかしいかもしれないので、ご了承ください。ちょっと補足を。
・Undertaleの世界は何百回と世界が繰り返されており、その最後の世界が1話です。
・Undertaleの世界は完全に消滅しているため、ニンゲンはもう来ない(予定)です。でも、サンズはそのことを知らないので、実はずっと警戒してたりします。
なんか勢いで進めてるから物語の進行が上手くいくかが心配です…
感想や誤字報告どんどんまってます!!