サンズが抱きしめられから5分以上がたち、流石のサンズも恥ずかしくなってきていた。
「なあ、みんな。そろそろ離れたらどうだ?オイラはもう十分だからよ。」
サンズの言葉にようやくアビドスのみんなは離れていった。
「わかりました。でも、抱え込んじゃダメですからね?その時は私たちがまた慰めますから。」
「そうだよ〜無理したらおじさんでも怒っちゃうからね?」
ホシノとノノミに詰められ、仕方なく頷くサンズ。
「分かったよ。生徒に抱え込ませるつもりはなかったんだが、仕方ないか。」
つい言いすぎてしまったことを少し後悔するが、それでもサンズの気持ちは晴れ晴れとしていた。今まで独りで抱え込んできた過去を、誰かに聞いてもらったことで心が軽くなった気がした。(骨だから元々軽いけどな)
「さて、話は戻るが、風気委員長から聞いた話だと、アビドス砂漠でカイザーが何かを企んでるようだ。どうやら基地を作っているようだが…怪しいと思わないか?」
「完全に怪しい。そこにいって何があるかを確認すべき。」
真っ先に声を上げたのはシロコ。だが、考えは他の4人も同じだった。
「おそらく、今回の敵は今までとは比べ物にならないほど手強いぜ。それでもやるか?」
目のハイライトを消し、深刻に尋ねるサンズ。それを見ても一才の迷いなんて今の対策委員会にはなかった。
「当たり前じゃない!これまでの借り、返させてもらうんだから!」
「借金と掛けたのか?なかなかセンスがあるじゃないか。」
「そんなつもりないし!!」
サンズはいつものダジャレモードに戻ったようだ。
そうして、対策委員会はカイザーとの戦いを始めようとしていた。
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サンズたちはカイザーの基地へと足を運んでいた。地面は砂まみれで歩きにくいので(歩くのに疲れたので)、サンズはブラスターに運んでもらっていた。
「便利だね〜その…生き物?は。」
「これもオイラの魔法みたいなもんだ。使い方はいろいろだが、やっぱり移動で使うのが一番楽だな。」
「ん、先生も運動しないと体力つかないよ?」
「へへ、無い耳が痛いぜ。」
そんな雑談を交わしているとアヤネが通信で呼びかけてきた。
「前方に何かが見えます!周囲に警戒を!』
砂埃が晴れると、大規模な基地が姿を現した。
「工場…?のようですが、一体なんでしょうか?」
「こんなの、昔はなかったはず…」
ホシノたちがこの施設について考えていると銃弾がこちらに飛んできた。
ダダダダダッ
「うわっ!?」
銃弾が飛んできた方向を振り返ると機械の兵士がぞろぞろと出てきていた。
「侵入者だ!」
「捕らえろ!建物から逃すな!」
「さて…歓迎の挨拶らしいな。よし、対策委員会。挨拶には挨拶を返してやれ。」
サンズの言葉に頷き、ホシノが指示をだす。
「派手に行くよー!」
「よし、これで最後ね。」
「おつかれさん。にしても、ヘルメット団とは違う感じだったな。軍隊のような強さだった。」
サンズの言う通り、この機械兵士たちはかなりの実力を備えていた。一人一人はそこまででも、お互いがお互いをカバーし合い、統率のとれている、今までとは違う強さがあった。
「下手したら風紀委員会より強いかも…」
「にしてもこんなところで何をしているんでしょうか…?」
「みなさん!このマークって…!」
そうこうしているうちにアヤネが何かを発見した。
「何か見つけたの?」
「はい。この建物は『カイザーPMC』の軍事施設のようです。」
「はあ、どこにいってもカイザーカイザーって!頭がどうかしそうだわ!」
セリカはカイザーの名前をもう聞きたく無いようだ。
「それに『PMC』ということは…。」
「え?なんかやばい言葉なの?」
「PMCとは
「だから動きがあそこまで違ったんだ。なるほどな。」
サンズが合点がいった、と言わんばかりに頷いた瞬間、警報が鳴り響く。
ヴィイイーーン!!
「な、何!?」
上空を見ると軍事ヘリが何台も飛んでおり、戦車は大地を揺らしながらこちらへ近づ‘いていた。
サンズたちは完全に包囲されていた。
「大規模な戦力がこちらへ接近中!まずは急いでその場から脱出を試みてください!」
「よし、オイラも援護する。急いで逃げるぞ。」
サンズはブラスターを召喚し飛び乗る。
ホシノたちも銃に弾を込め、構える。
ダダダダダッ!!
ドカーン!!!
「はぁ、はぁ、まだ来るの!?」
「そろそろまずいですね…!」
どれだけ倒してもやってくる兵士たち。戦車や軍事ヘリなど、兵力差でも数でも負けているサンズたちはだんだんと追い込まれ、逃げ場をなくしていた。
(まずいな。砂嵐の影響か、魔力の流れが感じにくい。ショートカットや重力操作はおろか、ブラスターも2たいまでが限界だ。クソッ、こんな時に…!)
『…生!…え……すか!包囲………抜け……!」
「どうする?先生。このままだと…!」
アヤネとの通信も途絶えてしまい、弾薬も底をつきかけている状態。そんなことを話している間にも、オートマタ兵士たちに囲まれてしまった。
「…絶体絶命?」
「完全に包囲されちまったな。」
「はぁ、侵入者と聞いて来てみれば、アビドスだったとは…」
奥から兵士ではない機械の人物がこちらに歩いてきていた。
兵士たちはその人物の通り道をさっと開ける。明らかに位が違う様子に警戒するサンズたち。
「わざわざこちらに来るとは…まあいい。にしてもずいぶん派手にやってくれたじゃないか。勝手に人の私有地に入り暴れた被害額は、君たちの借金に加えてもいいのだが、まあ額はそこまで変わらないだろう。」
サンズはいつもの笑みで、でもその中には少しの怒りを込めて問う。
「お前さんはだれだ?」
「ほう、私の名前を知らないとは。ちょうどいい。自己紹介をするとしようか。」
「私はカイザーコーポレーションの理事を務めている者だ。そして、君たちアビドス高等学校が借金をしている相手でもある。」
その言葉を聞いた瞬間アビドスの4人は銃を構える。
銃を構えられても一切の焦りを見せることなく、カイザー理事は鼻で笑う。
「そう焦る必要はない。銃を下ろせ。さもないと、どうなるかはわかっているはずだ。」
銃を撃ったら間違いなく全方位から蜂の巣にされるのがオチだ。いくらキヴォトス人とはいえ何発も撃たれたら軽傷じゃ済まない。それを理解した4人は銃を下ろす。
「賢い判断だ。さて、シャーレの先生もいることだし、古くからの借金について話し合いをするとしようか。」
「話し合いなんてする必要ない。要はあなたがアビドスを騙して、搾取した張本人ってことで良い?」
シロコはカイザー理事を正面から睨みつけて言う。それに便乗して、セリカも怒りを露わにする。
「そうよ!私たちを苦しめた犯人があんたってことでしょ!あんたのせいでアビドスは…!!」
それを聞いてカイザー理事はやれやれとでも言うようにため息をつく。
「最初に開く口がそれか。勝手に私有地に不法侵入しながら、職員を攻撃し、施設をここまで壊しておいて…まあいいだろう。だが、口の利き方には気をつけた方が良い。まず君たちは私有地に不法侵入しているという自覚を持つべきだ。」
それは間違いなく正論だった。何も言い返せなくなったシロコとセリカを見てカイザー理事は話を進める。
「話をもどそうか。アビドス自治区の土地を買った、それは事実だ。しかし、それの何が悪いのだ?全ては合法的な取引で、記録も証拠もちゃんと存在している。まるで、私たちが不法行為をしているかのような言い方はやめてもらおうか。君たちのそれはただの戯言にすぎないのだから。」
「ここに来たのは私たちが何をしているのか気になったからか?ならば教えてやろう。私たちはアビドスのどこかに埋められているという“宝物”を探しているのだよ。」
「なら、この大規模な兵力はなんだ?宝物を探すのにこんな兵力はいらないはずだ。…これはアビドスを兵力で占領するためのものではないのか?」
サンズの言葉にカイザー理事は少し考え、また話し始める。
「何百台もの戦車、訓練された兵士。数百トンもの火薬に弾薬。…たかが5人の学校にこの兵力を用意すると?冗談ではない。ただ…」
「シャーレの先生。あなたにはもしかすると必要かもしれませんがね。」
それを聞き、サンズは目を青く光らせ、鼻で笑い飛ばす。
「まさか。銃弾1発で死ぬようなやつを買い被りすぎだ。ずいぶんと心配性なんだな?」
サンズの挑発を軽く受け流し、カイザー理事はホシノたちに向き直る。
「ただ、アビドス高等学校。君たちはいつでも、どうとでもできるのだよ。…例えば。」
カイザー理事はそう言って携帯を取り出し、どこかに連絡する。
「急に電話…?だれにかけてるの…?」
電話をきったカイザー理事の顔は不敵に笑っていた。
「残念なお知らせだ。君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだ。」
〜アビドス高等学校〜
プルルルー
「…ん?電話?こんな時に誰でしょう。…はい。アビドス高等学校です。」
『こちらカイザーローンです。現時点をもちまして、アビドスの信用ランクを”最低ランク“に引き下げてさせていただきます。」
「え!?」
『変動金利を3000%に上昇させ、来月以降の利子は9130万円でございます。』
「な、なんで急に…!?」
「9000万円!?そんな額…!」
その様子を見てカイザーはほくそ笑む。
「くっくっくっ。これでわかったかな?君たちの首にかけられた紐が、誰の手にあるのかを。」
「ほ、本当に言ってるの!?」
「もちろん本当だとも。だが、これでは面白みに欠けるな。…借金を君たちがちゃんと返す証明をしてもらおうか。一週間以内に、カイザーローンに3億円を渡してもらおう。渡せないのなら、諦めて学校を去るがいい。別に君たちが諦めても、責める人など誰一人いない。私たちも、借りた人がいなくなったとなれば諦めるしかないのだからな。」
カイザー理事は優しい声音でアビドスに囁く。常識的に考えて、この額の借金を返せるはずがない。だから諦めて逃げてしまえと。…悪魔の囁きに等しかった。
「…そんなことはしません!」
…学校を去る?冗談じゃない。自分たちの思い出、自分たちの居場所。大切なものを簡単に諦めてたまるか。
「そうよ!私たちの大事な学校なんだから!」
「そうか。ならどうする?何か良い手でもあるのか?」
「…みんな。一旦帰ろう。ここで言い争っていてもいいことはないよ。」
ホシノが口を開く。
「やはり副会長、君は賢いようだね。ああ、思い出したよ。君と一緒にいた全くもってバカな生徒会長のこともな。」
その瞬間、ホシノの目つきが変わる。瞳孔が開かれ、少し過呼吸気味になりながら声を出す。
「黙れ。」
「…我々も撤収するとしよう。借金の返済、頑張ってくれたまえ。」
そう言ってカイザー理事たちは施設に戻って行った。
ホシノは何事もなかったように歩き始める。
「帰ろっかー。」
「…うん。」
ゆっくりと学校に戻り始めるホシノたち。もう砂嵐は止んでおり、太陽が砂漠を照らしていた。
サンズは去り際に立ち止まり、理事に話す。
「なあ、最後に一つ質問だ。」
「なんだ?交渉でもする気か?」
「いいや、違う。…お前はヘルメット団を雇ってアビドスを襲わせてたな。いつだったか、アイツらは明らかに"命を奪う"目的で作られた爆弾を持っていた。…それはお前たちの差し金か?」
セリカを庇ったあの日。アビドスに行った初日のときにみたあの爆弾。見た目は同じでも明らかに性質が違うのを見た時、感じた"死"。
「…殺す目的?貴様のいうそれはただの手榴弾というわけではなさそうだが……一つ言えるのは私はそんなものを知らないし所持もしていない。キヴォトスの生徒を一撃で殺すなんて芸当はまず不可能だ。そこまでの技術は"カイザーにはない"のでな?」
「…そうかい。分かった、礼を言うぜ。」
サンズがその場を去ろうとすると今度はカイザーがサンズを呼び止める。
「シャーレの先生よ。一つ親切心から忠告するが…"アビドスからは手を引くべきだ"。命が惜しければ、な?」
「そうかい。ご忠告どうも。なら、オイラからも言葉を贈ろう。」
どこまでも深い漆黒の目でサンズは吐き捨てる。
「くたばれ。アビドスを苦しめるクソッタレが。」
そうしてサンズは跡形もなくその場から消えた。
そろそろアビドスも終わりに近づいてますね…!
もう受験生なのでなかなか書き進められてませんが気長にお待ちください!!
感想誤字報告などどんどん待ってます!