カイザーの基地から帰ってきたサンズたちは会議を始めていた。
「“宝物”を探していると言っていましたが、一体何なのでしょうか?」
「あの砂漠に何かがあるとは思えません。おそらくデタラメかと…」
そんなことを話している場合じゃない、と言わんばかりにセリカが声を上げる。
「今は借金についてでしょ!あの額を一体どうしろと…!」
「そうですね、3億を一週間以内に用意しろ、と言われましたし…。」
サンズは少し考えていた。
(シャーレの権限を使い、あのカードで借金を無くすことは可能だ。だが、奴らの狙いは金ではなく、アビドスそのものだろう。借金をなくしたところで何とかなるもんなのか…?)
借金をなくしたところでカイザーは諦めたりはしないだろう。それに、いくらシャーレの権限があるとはいえ便利屋にもかなりの額を使ってしまった。これ以上連邦生徒会に迷惑をかけるのも気が引けるので、サンズはカードを使うことは控えることにした。
そんなことを考えているとシロコが口を開いた。
「行ってくる。あの施設で何をしているのかを調べないと。」
そう言って席を立ち、銃を担いで部屋から出ようと瞬間、サンズの目が青く光る。
「駄目だ。」
「もう、借金は真っ当な方法で返せなくなった。なにか他の方法を…!」
声を低く、でもその奥には優しさを込めてサンズは話す。
「相手はプロの集団だ。お前さんの実力は高いが、一人でいったところで何もできずに終わっちまう。それに、オイラは生徒が傷つくのを黙って見てられる立場じゃないんでな。」
サンズにそう言われ、反論できなくなったシロコは押し黙る。
しかし、セリカはシロコに賛成と言った。
「学校がなくなりそうなのに、なりふり言ってられないでしょ!どんな方法を使っても…!」
「だめです!セリカちゃん!あの時ホシノ先輩が止めてくれたのに、自分から犯罪者になるつもりなの…!?」
「い、いやそう言う意味じゃないけど、でも…!」
学校を救いたい、という気持ちは全員同じ。そのはずなのに、すれ違いが起きてしまう。このままでは、学校どころの話ではない。
そんな時、ヒートアップしていた話し合いは一つの声によって遮られた。
「まあまあ、みんな落ち着いて〜。頭から湯気が出ちゃってるよ〜?」
ホシノの一声でみんなは少し落ち着き、互いに謝る。サンズは両手を組んで伸びをする。
「ホシノの言う通りだな。たまには
「相変わらずだね〜。さて、先生のダジャレで場も和んだことだし、今日はここら辺にしとこう。」
場が和んだのかはわからないが、気持ちが落ち着いたのは事実。また明日話し合いをすることにした。
だが、まだ話し合いは終わっていない。
セリカとノノミとアヤネは帰ったが、シロコとホシノは残った。
「あれ?シロコちゃんはまだ何かするのー?」
「ん、先輩に話がある。」
「オイラからもある。」
2人に話しかけられ、ホシノはうへ〜と言った。
「先生もあるの?おじさんモテモテだな〜。でも、今日はもう遅いし、また明日話そうよ。大体わかってるし。」
ホシノにそう言われ、サンズはシロコに頷く。それを見たシロコはじゃあ、と言って家に帰って行った。
シロコがいなくなったのを確認したサンズはホシノに向き直る。
「さて、ホシノ。2者面談の時間だぜ。」
「うへ〜、何か悪いことでもしたかな〜。」
「こいつはなんだ?」
サンズはホシノの名前が書かれた退部届をポケットから丁寧に取り出す。
「あ、あれ!?いつの間に…!シロコちゃんが取ったんだよね?」
「そうだぜ。」
『先生、ちょっといい?』
『ん?どうした、シロコ。』
サンズたちがカイザー基地に向かう直前、シロコはサンズに話しかけていた。
『ちょっと、見て欲しいものがあるんだけど。』
『見て欲しいもの?』
『うん。これなんだけど…。』
シロコから渡された封筒の中には退部届が入っていた。
『…誰のだ?』
『…ホシノ先輩のバッグに入ってた。』
『そうか…ありがとなシロコ。話し合ってみる。だが、勝手に人のカバンを見ちゃゃだめなんだぞ。」
『ごめんなさい。でも、見ちゃって、どうしても気になって…』
『へへ、まあそんな落ち込むなって。ほら、そろそろ電車が来るぞ。』
「まったく、先輩のカバンを漁っちゃ駄目でしょ。先生、しっかりシロコちゃんを叱っといてよ〜?」
「大丈夫だ。ちゃんと説教はしといたからよ。だが、今はこの紙について話がしたい。話してくれるか?」
サンズに怒っている様子は一切見られず、その目にあるのは生徒を救いたいという優しさだけだった。
ホシノは言い逃れはできないと判断したのか、観念したように口を開いた。
「分かった。ねえ、先生。ちょっと散歩しながら話さない?」
「いいな。ついでに校舎を紹介してくれよ。おいらはこの教室ぐらいしかきたことがないんだ。」
サンズとホシノはゆっくりと歩きながらいろんな話をした。ホシノがこの場所で起きたことを話し、サンズがそれに反応し、笑う。この時間がずっと続けば良いのにと、ホシノは思っていた。
「ホシノは、この学校がほんとに好きなんだな。」
「そうかな〜?」
「お前さんが思い出を紹介するとき、めっちゃ楽しそうだったからよ。聞いてるこっちも楽しかったぜ。」
ホシノは懐かしむような顔をしながら話をする。
「おじさんが入学したアビドスの本館はもう砂の中にあるし、砂嵐には巻き込まれるしで高校生活はずーっと砂まみれだよ。でも、砂まみれな高校生活もおじさんにとっては大切なものなんだよね。」
ホシノは決心したようにサンズに向き直る。
「正直に話すね。私は2年前から変な奴らから提案を受けていた。」
「提案?」
「まあ、提案というかスカウトみたいな感じかな。何度も何度も、入学してからずっときてるんだよね。」
その内容は、”アビドス高校を退学し、ゲマトリアに所属する。その代わり、アビドス高校が背負っている借金を9割負担する“というものだった。
「正直、最高の条件だった。私一人が犠牲になるだけで学校を救えるって考えたらね。でも、私がいなくなったらアビドスを守る人がいなくなるって思ってたから、断ってたんだよね。」
「なるほどな…そいつは一体何者だ?」
「私も知らない。でも、私は『黒服』って呼んでる。怪しいやつだけど、問題を起こしてるわけじゃないみたい。カイザーの理事も、黒服には恐れているようだけど…」
「じゃあ、この退部届は…」
サンズは手に持っていた封筒に目を向ける。その時、ホシノはサンズにに近づき、封筒を手にとる。
「まあ、気の迷いみたいなもんだよ。学校を助けたい気持ちもあったし。でも、もう捨てるよ。」
そういってホシノは躊躇なく退部届を破り捨てた。
「すっきりした〜。先生ごめんね。みんなに言っても混乱するだけだろうから黙ってたんだ。でも、隠し事は良くないよね。だから、明日ちゃんとみんなに伝えるよ。」
「その提案を受ける以外に、解決する方法はあるはずだ。だからホシノ、お前さん一人で抱え込む必要なんてないんだぜ?オイラが過去を話したときに言ってくれたんだ。まさか自分は例外っていうわけじゃないよな?」
「うへ〜、そういえばそんなことを言ったような言ってないような…。」
サンズはへへ、と笑い、続ける。
「なあ、ホシノ。一つ聞きたいことがあるんだ。どんなに救いようのない悪党でも努力すれば変われると思うか?」
あいつに何度もした質問。だが、あいつから答えが帰ってくることはなかった。
沈黙は肯定って良く言われるが、それならなぜずっと沈黙だった
「うーん、救いようのない悪党、か。でも、どんな人間も、生きている限りは変われると思うな。変わることができる生き物が、“人間”って生き物なんだと思うよ。」
「へえ、面白い意見だな。変わることが出来る生き物が、人間、か。お前さんがそう言うなら、きっと変われるんだろうな。」
「えぇ?結局何が言いたいのさ〜?」
困惑しているホシノを見てサンズは笑う。あぁ、昔のアイツはこんな感じだったな、と思い返しながら。
「深い意味なんてないぜ。ただ、後悔しないように生きろよ。人生は“一度きり”だからな。」
「後悔しないように…ね。…うん、分かったよ。いろいろ話せて楽しかった。ありがとね、先生。さよなら。」
「ああ、またな、ホシノ。」
どんなに救いようのない悪党でも努力すれば変われるのか。ホシノは人間なら誰でも変われるといった。
サンズは長年の疑問に終止符を打つことにした。
最後の部分はちょっとわかりにくいかもしれないので、補足説明を少し。
・Gルートは最後の回廊に辿り着くまで(コアまでのモンスターを全て倒すまで)はいつでも止めることができる。よって、変わることが出来る=まだ人間である。
・Gルートを歩んだプレイヤーは最後にアズゴアに「君はどういう“モンスター”かな…?」と言われており、ニンゲンと認識されていない。
・ホシノはサンズからの疑問に対して「変わることが出来る生き物が”人間“」と返した。
これらを踏まえ、サンズは長年の疑問に対する回答(本文の最後)を出したという感じです。
まあ本編にめっちゃ関係があるかといわれたら微妙ですけど、ホシノの答えは結構重要になりますし、Gルートという世界を表すために書いたって感じです。
感想などどんどん待ってます!