このタグつけとけってやつあったら教えてください
「はっ!」
木刀を振るう
「しっ!」
それなりに力は込めている、まともに当たれば骨の一本や二本は覚悟しなければならないような威力を纏っているはずの木刀は、尽くが受けられている
「ふっ!」
右上段袈裟、左脇を本命と見せてその実肩口を狙う
小手先のフェイントなどお見通しとばかりに、アイツは正確な手首の捻りで一瞬こちらの刀身に沿わせたと思えば、いつの間にか攻撃がいなされている
「ゼェ!」
切り返して左一文字、若干逆袈裟気味に入れる、当てる気はあまりない、とにかく防御を崩すのが目的
刀身を下に、肩を入れた姿勢で正面から受けられる
「今っ!」
ウェイトはこちらに分がある、正面から組んだこの姿勢なら、優位はこちら側
一歩踏み込み、防御ごと力で押し込む、不気味なほど素直に押されてくれたが、刀身が下を向いていて若干体勢も崩れている今なら、大上段からの打ち込みに有効な防御は無いはず
「っっ!」
渾身の勝負手、受ければ力で潰せる、無理に避ければ更なる体勢の悪化は避けられない、こちらに主導権がある二者択一
『勝てる』
そう思ったのも束の間
スゥ…
空気に消え入りそうな、短い呼吸
陽光に照らされる美しい黒髪は、その漆黒を輝かせる
腰に添えた木刀をこちらに隠すように身を捩り、凛とした緋色の双眸は、真っ直ぐこちらを見つめていた
その体勢、そもそも防御する気ないなオメー??
(え、そっから居合って出せるもんなんですか?そんなことある?)
ズパァンッ!!!
頭の中で???が大増殖する最中、空気が張り裂けたようなものすごい音が聞こえて
(やっぱ環境ぶっ壊してるよコイツ、教えはどうなってんだ教えは、こんなの世間は許してくれませんよ)
俺の意識は闇に落ちた
目を覚ませば、いつも通りアイツが俺を膝枕していた
何故かは知らんが、コイツはこの時間やけに上機嫌であることが多い
たまに鼻歌なんか歌ってるし
あー、でもこいつの膝枕って結構心地いいんだよな
もっとバキバキの筋肉モリモリマッチョウーマンのHE ☆ N ☆ TA ☆ I ☆ DA
ってんならまだあんな強いのも納得いくのに、意外と柔らかいというか…
まぁ目を覚ました以上、その感覚に身を任せてばかりではいられない訳で…
うん、今回は腹か
激痛「来ちゃった♡」
「いっだだだだ…、くぅぅぅ…、痛いよぉ〜〜〜」
「喧しいぞ、男なら喚くな」
「誰のせいだと…」
「鍛錬に誘ったのはお前だろう」
「くぅぅぅ…」
そうなんだよなぁ、頼んだの俺なんだよなぁ
なーんでこんなぶっ壊れOPチート人外様に勝とうと頑張ってるのかね俺は
俺もある程度は戦える側の人間として認められてるって言っても、相手が虚狩りとなるとアリンコ同然だ
人間、どうしようもない「壁」ってもんがあるのはわかってるし、俺が必死に強くなろうとしたって限界ってものが…
やっぱり身の丈にあった目標を立ててそれなりの立ち位置を……
そこまで考えて、思い出す
この世の終わりみたいな、炎の海、瓦礫の山、そこらに飛び散る絶望、理不尽、血、命
人の希望など、そこに在ることすら許されない、絶望の中心で、アイツは刀一本掲げて、血の涙を流しながら、啖呵を切ったんだ
『これ以上、誰も死なせない』
ボロボロの衣と虚勢を纏い、それでも小さな背中は理不尽に逆らおうとしていた
俺は、その姿を見て、居ても立っても居られなくて…
「……」
「急に静かになったな」
あれから結構経つ、コイツに追いつこうと必死にもがいてもがいて、多少は強くなった自覚があるんだが
…あーちくしょう、遠いなぁ
こんな近くにいるはずなんだが、どうしても遠い
俺は、どうすれば…
「ふん」
「むごっ」
急に両側から顔を圧迫される
覗き込んできた瞳は、心配の色をしていて
「はにしやはる」
「思慮深いのは良きことだ、なれど、それに溺れるのは駄目だ」
「……」
あぁ、またコイツにこんな顔させてしまった
やっぱり…
「俺も、まだまだ修行が足りないってことだな」
「…どうした?今日は頭には打ってないぞ」
「うるせえ」
急に俺が殊勝なことを言い始めせいか、目を丸くして驚いた表情をしているアイツに悪態を尽きながら体を起こす
「もう一本、お願いできますかね?当主様?」
「…その呼び方は」
「あぁすまん、ついな…、もう一本お願いしたい、―――」
「承知した、次はできるだけ腹は狙わないでおこう」
「お優しいことで」
いつもこんな調子で雑魚の俺が鍛錬を挑んでも、不思議とコイツは断らない
俺の鍛錬に付き合って、コイツにメリットあるのか?
そんな疑問が浮かぶし、実際前にコイツに聞いたことがあったのだが
曰く、「私の修行の相手は私が決める」とのこと
その時はなんかすげぇ不機嫌になってたので、以来このことについては聞かないように気をつけてるんだが
うーん、やっぱり…
「はっ!!」
「お前腹は狙わないって痛っだあぁぁぁ!?!?」
アイツの修行になってるのか、これ…?
@@@
いつもの定期任務のはずだった
いつも通りホロウに入って、いつも通りビーコンを巡って、いつも通りエーテリアスを倒しつつ、調査を進めていく
いつも通りじゃなかったのは、”大規模な群れを形成した大型エーテリアス”と接触したこと
同行していた非戦闘員の避難を最優先とし、この緊急事態を知った”彼女”が現着するまで、犠牲者を出さないまま耐える
それが私の仕事であり、責務
自身の得物を再度構え直し、疲労と緊張で震えだした体に喝を入れる
「私は、私の責務を全うします」
切っ先をエーテリアスに向け、一歩前に出る
再度交戦状態に入ろうと構えようとしたその時
「え…?」
”何か”が、通り過ぎる
「え!?なになに!?」
「…!蒼角!こっちに!」
目の前にいたデッドエンド・ブッチャーが、突然膝を付いたと思えば、次の瞬間には真っ二つに寸断され霧散していく
エーテリアス達は”何か”を捉えようと各々動き出すが、近づいた個体から切り裂かれていく
何が起きているのか、理解が追い付かない
ただただ、”何か”がエーテリアス達の間を通り過ぎる度、一体、また一体と霧散していく
「何が…」
違う、”何か”が何であるかは今は重要じゃない
エーテリアス達の注意は”何か”に向いている
今のうちに態勢を立て直さねば
思考を切り替え、新たな指示を出そうとして
”何か”と目が合った
「あ…の、人は…」
「?ナギねぇ?どうしたの?」
人間の、男性だった
一瞬しか顔立ちは見れなかったが、私の記憶が正しければ、彼は…!
「虚狩り…」
今まで続いていた狂乱の如き殺戮は鳴りを潜め、エーテリアスの姿が見えなくなったそこに
「…」
漆黒の外套を纏う、伝説の体現者が佇んでいた
@@@
何か歩いてたらやばそうな人たち見つけた
エーテリアス共のデスマーチに運悪く遭遇しちゃったみたいで、明らかに非戦闘員な人間もいたし、ホロウ内部の調査だろうな
1も2もなく突っ込んで、エーテリアス共をぶち殺しまくりながらあの集団の指揮官であろう眼鏡を掛けた女性の安全をまず確保しようとして
(うぉ、でっっっっ!!!!)
いかんいかん、違うところに目がいきそうになった…
大丈夫大丈夫、今の俺滅茶苦茶速く動いてるから、バレテナイバレテナイ
そんなこんなで戦いながら、チラチラあっちの状況も確認していたんだけど
…今、目合ったな
いや別に「でっっっ」を見てたわけじゃない、マジでマジマジ、大マジで
それにしても戦闘中の俺と目が合わせられるのか、「事務方です」、みたいな雰囲気して中々やるみたいだねあのでっかいおっ……お姉さん
あと蒼い鬼の子とも目が合った、最初はすげぇ呆気に取られたようだったけど、途中から腕振って応援してくれてた、嬉しい
よーし、粗方片付いたかな?
あの人たちも、戦いの傷はあれど死者、重傷者はいないようだし、なんとかなったみたいだね
「だい…「やっと」…?」
大丈夫ですか?と聞こうとして、声を遮られる
え?どこ?今どこから話しかけられた?
ってうぉ!?すぐ目の前やんけ!
何も聞こえんかったし何より速い!アイツより…は言い過ぎかもしれんけどアイツ並みに速い!
一体どこの誰で………って、あぁー、成程ね、そうか
凛とした緋色の双眸、漆黒の髪
いや、まさかここで会うとはね…
それならその速さも納得
「……雅」
「やっと、会えた」
星見家現当主、星見雅
当代の虚狩りと、旧虚狩り(笑)の俺
後ろの人たちがポカーンとした表情でこちらを見つめている中、彼女は全身をワナワナと震わせていた
「やっと…会えたっ!」
「…久しぶりだな、雅ィィ痛っだあぁぁぁ!?!?」
感極まったような表情が見えたと思った刹那
俺の胸に、大谷〇平の最速ストレートを優に超える速度で狐耳の頭が突っ込んできた
とても痛かったです(小並感
@@@
私は、一人でよかった
"右上段、狙いは…肩か"
一人でも十分戦えた
その程度には、強かった
"切り返し、有効箇所には当たらないが…、誘いを見せてみようか"
でも、一人ではどうしようもないこともあった
その程度には、弱かった
だけど
"好機と見ての押し込み、これは…"
この人は私よりも弱かった
なのに、この人は、私を一人にしたくないと言った
その程度には、この人は強くて
"スゥ…"
それに甘えてしまうほど
それが心から嬉しいと思えてしまうほど
私は、どうしようもなく弱かった
「ぐはっ!!」
「む」
この人は、弱い
「気を失ったか」
私よりも、弱い
「……」
でも、この人が傍にいると思うと、不思議と力が湧く
「相も変わらず硬い髪の毛だ」
膝枕をしてやりながら、髪の毛を指先で弄ぶ
私は、この時間が嫌いではない
「よしよし…、怖くないぞ」
時折魘されているような表情をしても、そのときは頭を撫でてやれば安らかな表情に戻る
恐らく私だけが知っている、この人のこと
「あ、ホクロ…」
たった今、髪の毛を弄っていたらつむじのすぐ近くにホクロがあるのを発見した
「お前自身も知らんだろうな、これは、ふふふ…」
また一つ、この人について詳しくなったことに、何とも言えない温かみを胸の奥に感じながら、目覚めを待つ
「~~♪」
春の訪れを告げるような優しい風と、暖かな陽光の下
つい、鼻歌を歌ってしまう程度には、私は上機嫌だった