虚狩り(笑)   作:オレだよオレオレオだよオレ

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ホロウの中では時空も歪むことは知っているな?


あの日の出会い

彼と最初に出会ったのは、私がまだ母の思いにも気づかず、無邪気に英雄に憧れていた頃だった

定期的に催されている、星見に纏わる人間の集まり

次期当主という肩書きもあり、私もその場に出席していたが、数時間と拘束され、知らない大人たちから代わる代わる挨拶されるだけの場所

修行不足な幼子であった私は、そこから抜け出した

修行であればどんな苦行もこなしたが、どうしても、その時のその場は私にとって、何某かの修行ができる場であるとは思えなかったのだ

幼い頃より私は母上の言いつけを破ったことがほとんどない

これは、その数少ない言いつけを破った出来事の一つだ

会場を抜け出し、一歩外に出れば、そこは知らないもので一杯だった

道ゆく人、点高く聳える建造物、目が痛いほどに輝く照明

どれも、子供の私には新鮮な刺激を齎した

この時のことは何でもハッキリと覚えている

しかし、何よりも一番、鮮烈に覚えている出来事は

 

”ホロウに迷い込んだ”ことだ

 

その瞬間は、幼い私でも明確な”違和感”を感じた

私の日常になかった非日常を浴びて心を踊らせていたそれまでとは全く違う、”異常”だった

幼いとて星見の人間、ホロウに関する知識は最低限でも教わっていた

迷い込んでしまった時の対処法も、当然知っていた

その上で、私は「これも修行だ」と驕った

今でも、この時の驕りを顧みることがある

二度と、同じ過ちを繰り返さないように

だが、そのおかげで、というのもおかしな話だが

それがきっかけで、彼と出会ったんだ

 

 

 

@@@

 

 

 

「大丈夫か?」

「……」

 

 

 

ホロウの中で幼女と出会った

とびっきり美人な幼女だ

いや違うんですおまわりさん、俺は違いますそういうんじゃないんですいやマジで

……ホントに美人だな

それに、アイツにそっくりだ

いや、まさかな…?

 

「お父さんとお母さんは?どこにいるかわかる?」

「…わからない、です」

 

うぇ、敬語

俺がこんくらいのガキんときゃ正しく言葉を理解していたかすら怪しいぞ

しっかりした家のお子さんなのかな

…いやいや、まっさかぁ

アイツにそっくりだからってそんなこと、ねぇ?

 

「俺の名前は……、ミサゴ、ミサゴだ、お嬢さんは?」

「私は…」

 

そんな偶然おこりゃしないって

ほら、世界には自分と瓜二つの顔を持つ人間が2人はいたって時代がこの世界にも昔あったらしいじゃん?

その時の名残的なやつっていうか

 

「星見…雅」

「……マジかよ」

 

おい、見てるか?

俺、出会っちまったぞ、星見の人間に

 

 

…あー、ちっくしょう

そっくりだなぁ、マジで

 

 

 

@@@

 

 

 

彼は、私をホロウから助けてくれた

 

「ミヤビチャン、トリアエズココカラデヨウネ」

 

名前を聞かれて答えた直後は、何だか言葉遣いがぎこちなかったような気がするが

 

「コッチダヨ」

 

手と足が同時に出ていたりもしていたな

 

「…危ないから、少し下がっててね」

「はい」

 

そして、彼は強かった

 

「…もう大丈夫。……ソレジャ、サキニイコウカ」

「…?」

 

戦う時は、正に武人の鏡

その太刀筋には淀みも迷いもなく、正確無比

その足運びは、山と積み上げた鍛錬、その足跡を辿るように流麗で、一瀉千里

 

「ちなみに今の星見家って……、イヤ、ヤッパイイッス」

「……」

 

彼ほどの武士が、なぜこんな小娘を前にこんなにも態度を変えるのか、不思議でならなかった

 

「着いたよ、ここを真っ直ぐ行けば、外に出られる」

 

だが、その時の私にとって、そんなことは些細な疑問だった

 

「ミサゴ様、一つ、お願いがあるのですが」

「え”…?ナ、ナンデショウ?」

 

ひたすらに、英雄を目指していた私は、強者を探していた

自分を英雄にまで鍛え上げてくれるような、そんな強者を

故に

 

「私の、師となって欲しいのです」

「……………は?」

 

私は、その時握った彼の服の袖を、救急搬送される車内でも、決して離さなかった

 

 

それからややしばらく……

 

 

「はい!病院つきました!ここまで!ここまでだよ!お医者さんたち困ってるからね!ほら、離して!」

「私の師となってくれますか?」

「なりません!もう何回目!?ならないったらならないよ!」

「どうかお願いします」

「ごめんねぇ、本当にならないからね、ごめんねぇ、ほら離して?」

「そこを何とか、私の師となってくれませんか?」

「うえぇ〜〜ん、この子師になってくれbotになっちゃった〜〜!」

「どうかお願いします」

「むぅぅぅりいぃぃぃ!!」

 

そんな感じで、当時の私はひたすら彼に自分の師となって欲しいと頼み続けていた

今となっては、少し面映いな

 

「雅!?」

「母上!」

 

そんな折、母上が来て

 

「ホロウに入ったと聞いて心配したんですよ、どこか怪我……は」

「大丈夫です母上、この通り、雅は傷ひとつございません」

 

病室に入ってきた母は、まず私に駆け寄ってきて

私の隣にいた彼の顔を見て、目を見開いていた

 

「貴方……様は…まさか」

「母様、ご紹介します、ミサゴ様です」

「ちょ、雅さん…?」

「ミサゴ…」

「この度、雅はこの方に助けて頂きました、とてもお強いんですよ!」

「……」

 

今思えば、母上はその時点で気づいていたのだろう

 

「ま、まぁその件はいいとして、雅ちゃんのお母さんからも説得していただけませんか?この子、さっきから私に師になって欲しいの一点張りで…、この手を離してくれないんです」

「とてもお強かったので、雅はこの方に修行をつけて頂きたく存じます、母上、どうか」

「雅の師に…?」

 

エリー都建創報告に記された虚狩り、それが8人いるのは知っているだろう

中でも、歴代虚狩りの一人が星見家三代目当主であったことは、未だ我が一族の誇りだ

現状、虚狩りと言えばこの私を示す言葉となっているが、先代のアーチ教授や、”導き手”ジョイアス殿等、生死不明となっている御仁もおられる

その内の一人、「”時渡り” ミサゴ」

それが、私が袖を掴んで離さなかった彼の称号だ

歴史を紐解けば、至る所に彼は現れる

ダークウォール強襲戦、ハイヴ・ロードの戦い、パパゴ作戦、そして……讃頌会事件

異なる時代、異なる虚狩りの隣に、彼の姿はあった

異常だ、あり得ないことだ、人間の寿命で可能な芸当ではない、あまりに時間を跨ぎすぎている

故に”時渡り”、時代も舞台も選ばず、常に彼がホロウと闘っていたという記録は確かに存在している、誰にも否定できない

そんな彼を、娘が袖を掴んで連れてきたのだ、母様は大層驚いたことだろう

 

「い、いやぁ、こんな先程会ったばかりの人間にそんな大役務まりませんよねー?ささ、そろそろお手を離していただけるかなお嬢さんって力つよっ!?その歳でこの出力ってウッソだろおい!?」

「どうか、私の師になって頂けませんか?」

「いや、だからですね?お嬢さんに教えられるほどの技も力も私は持っていないので…」

 

 

星見家では半ば伝説となっている、『三代目の伴い人』

讃頌会事件においても三代目と共に大いに活躍したそうだ

 

「ミサゴ様」

「あぁ、お母さんからも説得をお願いしたく…」

「どうか、雅の師となって頂けませんか?」

「ですよね?ほら雅ちゃん、お母さんもこう言ってることだしちょっと待ってください何て仰いましたお母様????」

「娘を、雅を…師として導いて欲しいと、私からもお願い致します」

「???????????」

 

母様はそんな彼に、私を託したいと思ったのだろう

母様自身、一騎当千の武人であり、英雄

その母様をして、娘である私を託そうと思わせる

”時渡り”の名前は、それだけの重みがあるのだ

 

「「どうか、(雅の)(私の)師となって頂けませんか?」」

「……えぇ……………???」

 

これが、私と彼…、ミサゴ兄様の出会いから、私の師となるまでの顛末だ

いや、こうして語ってみるとなると……、何とも運命的な何かを感じるな

ふふ、そうだ、ミサゴ兄様は私の目指すべき極致の1人

心から尊敬し、敬愛している、”私の”師匠だ

 

 

 

 

 

 

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