世界の旅人   作:神の子、与希

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気がついたら長くなってた。


旅の始まった日

また人を殺してしまった。

またローブが血で赤くなった。

川を探しながら歩き始めた。周りで斬り合ってる男たちを完全に無視して。

 

?「おめえさん、どこのもんや?変な格好してんな」

 

横からかけられた声。フレンドリーな口調と笑顔をもったおじさんだった。

この世界の人間と関係を持つことは悪くないと思い、その人にこの場を脱出する方法でも聞いてみることにした。

 

「俺はこの戦闘に関係はないんだ。今すぐに出て行きたいんだが」

 

?「おぉ、そうか。じゃあちと、ついてきぃや」

 

想像を絶するほどにあっさりとオッケーしてくれた。

その優しさに多少不審感さえ抱いたが、そこは突っ込まないでいた。

 

?「そうだ。おめえさんのなめぇは、なんちゅうんや?あ、わしゃ秀吉っちゅうもんや」

 

秀吉…?どっかで聞いたことがあるような、ないような…俺の生きていた時代の少し前にそんな武将がいた気がする。

 

「俺は朱鳥だ。朱鳥と書いてアスカと読む」

 

秀吉「ほぇー漢字を言われたって、わからんけぇーな!」

 

お互いの自己紹介を終え、再び戦場の中をかける。

今更だが、自己紹介をしたのは何年ぶりだろうか。あの世界に俺以外の奴が来ることは滅多にないものだから、自己紹介をしたことはあまりなかった。その懐かしさで少し嬉しい気持ちになる。

世界を移動してよかった。

 

秀吉「ここをまっすぐ行けば抜けられ…」

 

なぜか秀吉の言葉が途中で止まった。何かと思い、横にいる秀吉をみる。

見事に矢が体を貫いていた。

倒れ込む秀吉の体を支え、俺はどうにか助けられないか考える。

 

「秀吉?!大丈夫か?!」

 

秀吉「へへぇ…わしゃあ、もうダメみたい…だぁ…」

 

目から光が消えかけている。

 

「大丈夫だ!きっと大丈夫だ!」

 

久々に言葉を交わした者を失いたくない。あの時のように、何もできないのはもう嫌だ。

 

秀吉「最後、にぃ…わしの願いを、おめえさんにぃ…託すっ、ぞぉ…」

 

「わかった。わかったからもう喋るな!」

 

秀吉「な、泣くなぁっ!男だろぉ…?男ならよぉ…わしの夢である、はーれむっちゅうやつをぉ…作るんじゃぁ…」

 

力尽きたかのように秀吉から力がなくなる。関係のない奴が死んでも、何も感じない、何も感じれない冷血な男だと自称していたのに、関係のないはずの秀吉という男が死んだことをとても悔やんでいる。

だが、俺も男だ。秀吉の最後の言葉を胸に刻み、秀吉の亡骸を地面に置いて俺は走った。ただがむしゃらに走った。

だんだん人気が少ない場所になってきた。

ガギンッ

ものすごい力で鉄が弾かれる音。おそらく、片方が折れたのであろうと思った瞬間、俺の目の前に刀の先端が地面に刺さる。

飛んできた方向、つまり右手側を見る。

そこには甲冑をを纏った女の子が刃先の折れた刀を持って座り込んでいる。そしてそのこの前には屈強な男が三人、それぞれ甲冑を着ている。

 

男a「織田信奈、覚悟ぉ!」

 

男の一人がそう言い、刀を振り上げる。俺はとっさに折れた刃先を地面から抜き取り、男の首めがけて投げる。

 

男a「グゥァアっ?!」

 

見事に喉輪を斬った。

 

男b「だ、誰だ?!」

 

男二人と女の子がこちらを見る。物凄い形相でこちらを睨むのはきっとこの格好のせいだろう。

黒と赤(血)のローブをその身に纏い、下は黒い制服のようなものを、上はローブの下に白いワイシャツ。ローブ以外は先ほどまでいた極楽浄土で先客に貰ったものだ。この2つはなぜか汚れない。

 

「そんなおっさん三人対可愛い女の子一人なんて不利すぎるでしょ?だからちょっと手助けをね」

 

男c「邪魔をする奴に情などかけぬぞ」

 

「俺に勝てるとでも思うなら、相手になってやるよ」

 

男b「なめた真似を!」

 

見事に挑発に乗ってきたアホな男は、自分に有利な間合い取りで刀を振り下ろす。

だが、そこには誰もいない。

 

「遅い…遅すぎる…」

 

俺は男の右側に立ち、刀を持つ手に左手で手刀を振りかざす。

そこに乱入する男c。見え透いた行動を取ってくれるなど…と失笑しつつ、俺は振りかざした左手を男b喉に突きを入れ、そのあと男bの腕の甲冑で男cの刀を受け止めた。

途中まで斬れかかった腕を手放した。

想定どうりに男cは味方の腕を斬るわけには、と言わんばかりに刀を途中で止める。

だが、それは男cにとっては最悪の選択だ。刀を止めたら、大きな隙ができる。そこを見過ごさずに俺は手刀で首裏を思いっきり叩く。

男cは死んだように倒れた。

俺は一応女の子が無事か確かめてから走り去ろうと思ったのだが、向かおうとした方向に騎馬隊が待ち受けていた。

 

「嘘だろぉ…」

 

さすがに俺でも部が悪い。力を使えば抜けられるかもしれないが、俺は自分の力をよく知らない。むやみやたらと力を使って、あたり一面焼け野原とかごめんですし。

騎馬隊の先頭の馬に乗った女の子がピンチだった女の子に話しかける。

 

騎馬隊の女の子「信奈様。ご無事ですか?」

 

ピンチだった女の子「私は平気よ。このまま今川を追い出しなさい」

 

ほ、ほー彼女はお偉いさんなのね〜

お偉いさんならなおのこと、早くここを去りたいと思ってしまう。

すーっとこの場を去ろうとした。

 

騎馬隊の女の子「おいそこの足軽!」

 

足軽と同列に扱われたのが気に食わなくて、言い返したくなった。

 

「俺は足軽じゃねえよ!えーっと、通りすがりの村人だな」

 

騎馬隊の女の子「そうか。だが、信奈様を守ったのは大儀であった。その心を忘れず、これからも励むが良い」

 

えらく威張って言われたもんだから、一つだけ勘違いしてるようだから注意しといた。

 

「俺はどこの軍勢のものでもないわ。足軽でもないし武士でもなんでもない。本当に通りすがりの人間だ。あと、聞きたいんだが、これはどことどこの戦だ?」

 

ピンチだった女の子「このあたしと今川の戦よ」

 

…あ、この子武将かなんかなのか?総大将的な?こんな若くて弱そうな子が?

 

「ほー信奈ってのが名前か?」

 

騎馬隊の女の子「貴様!信奈様に無礼極まりない口を利くでない!」

 

信奈「いいのよ。今は。ねぇあんた、あたしの近衛兵として雇われる気ない?」

 

近衛兵って、だるそうな仕事…いや待てよ…考えろ俺!

 

騎馬隊の女の子「正気ですか?!身分も身元も実力もしれぬ男を近衛兵なんて…」

 

信奈「実力は確かよ。敵兵三人に不意打ちながらも無傷よ。それも素手で」

 

うさんくさーっと言わんばかりの顔をされたのには多少ムカッときた。戦闘能力においては自信があるんだがな。

近衛兵か…おっさんの言ってたハーレムも作れる可能性があるな。そして衣食住も保証される可能性がある。近衛兵ともなれば、そこまで前線で戦うことはないだろう。

 

「よし、近衛兵とやらを受けてやる」

 

信奈「ふん、当たり前よね。このあたし、織田信奈様直々のお願いを断れるわけないわ」

 

「ただし、条件がある」

 

信奈が何かを言っていたが無視して言葉を続ける。

 

「衣食住の保証、そして俺は近衛兵として信奈の側にいさせてもらう。あと一つ、多少は自由に動かさせてもらう」

 

信奈「そのくらい当然よ。で、あんた、名前は?」

 

「朱鳥だ。朱い鳥と書いてあすかと読む」

 

信奈「朱鳥?変な名前ね。じゃあ早速、あたしの護衛をしてちょうだい」

 

その前に服を洗いたいと言いたかったが、面倒なことになりそうなのでやめた。

 

「さっきからそこの木にいる小さい忍者らしき女の子は俺と同じ、信奈の護衛か?」

 

全員が少し驚いたように木を見る。はたから見たら誰もいないであろう木をだ。

 

信奈「誰もいないけど?」

 

仕方ない、と言って俺は石を投げる。すると木の枝が揺れた。

 

⁇「危ないでごじゃるよ!」

 

地面に何かが落ちる音がした。落ちたであろう場所には、小さな女の子が忍者の服をまとって立っている。

 

「ほら、いたでしょ?」

 

俺とロリ忍者以外全員が唖然としている。彼らがそんなに驚くことがあったことに俺は驚く。何か変なもの付いているのだろうか?

 

信奈「あ、あんたなんでわかったの?その子がいるって…」

 

「え?だってバリバリ存在感あったじゃん?カモフラージュ感満載だっただろ」

 

騎馬隊の女の子「それより、忍者が何用でここに?」

 

あ、そうそうこの子はなんのためにここにいたんだ?もしかして…俺のファ(ry

それより騎馬隊の女の子の名前を知りたいのだが。

 

五右衛門「拙者、羽柴殿の右腕、五右衛門でごぢゃる。羽柴氏の亡くなった今、夢を継いだ者であるあちゅかどののみぎうぢぇとなりまちゅる」

 

「かみっかみだな。羽柴って、秀吉のことだよな…」

 

うっわぁ…さっさとこの世界から去ろうと思ってたのにそうもいかなさそうだな…

 

そんなこんな、時は流れて信奈に城へ案内された。途中で聞いた話、騎馬隊の女の子が柴田勝家だということが判明した。あ、あと、今更感があるけど、信奈の家臣は姫武将が妙に多い。今ここにいるだけで丹羽長秀と犬千代を合わせて四人だ。あれ?犬千代って武将なんだったかな?話をよく聞いてなかった。

そしてこの世界について考えていて、わかったことが一つだけある。

 

「俺はこの世界と似たような世界を知っている。姫武将とかはいなかったが」

 

信奈「ちょっと何言ってるのかわかるように説明しなさいよ」

 

「じゃあとってもわかりやすく説明するぞ。俺はこの世界の人間ではない。こことは違う他の世界で寿命を全うし、極楽浄土からこの世界へと飛んできた。わかったか?」

 

柴田「貴様の言葉はわかるが、信用できるかと聞かれたらできないな」

 

デスヨネー信じないよねー

南蛮人とか言ったほうがまだよかったか…?いや、正直に言っといたほうが後々楽だろうからいっか。

 

信奈「証拠かなんかはないの?他の世界から来たって証拠」

 

証拠と言われても、この世界にないものを俺が持ってるわけがない。何かないかと考えた結果、俺の力、もう魔法でいいや。魔法を見せることにした。

 

「じゃあ魔法と呼ばれるものをやろうかな」

 

信奈、勝家、長秀「「「魔法?!」」」

 

驚愕された。そんなに驚くことか?いや、驚くことだな。この世界に魔法はなさそうだし。ま、どうでもいっか。

そして俺が披露した魔法はemblemと呼ばれる魔法だ。意味は象徴とか言ったかな。これは極楽浄土で拾った本に書いてあった。なぜか読める本だ。

その魔法の効果は俺の象徴、血濡れた鳥の紋様の投影。壁とかに投影せずともいいので便利。

 

「これで信じたかな」

 

犬千代「これは?」

 

この場にいる中で、最も若いってか幼い犬千代は動揺せずに言った。

若いころって、疎いもんねーなんて思いに浸りつつ、質問に答える。

 

「これは俺の象徴。血塗られた鳥。又の名をbloody bird」

 

長秀「ブラッディーバード…とは?」

 

「南蛮語で血の鳥、俺の名前にぴったりだって言われてた」

 

勝家「なぜそんなあだ名が?」

 

「俺は人斬りをやってたんだ」

 

嘘をつくつもりはないので正直に答えた。この答えでクビにされても仕方がないとも多少思っている。金のためだけに人を斬る野郎だったからだ。

 

勝家「人斬り?!なんて外道な!」

 

信奈「人斬りって、武士と何が違うのよ。同じようなものじゃないの?」

 

長秀「人斬りは金のためだけにたくさんの人を斬り殺し、頼まれれば誰だろうと斬り捨てる世にゆう殺し屋です」

 

「あぁ。まったくその通りだ。俺は金のために人を殺して生きてきた。それについて言い訳するつもりも弁明するつもりもない」

 

勝家と犬千代の手が武器へ近づく。

素手でこの二人とやりあえるほど、俺は強くない。勝家一人ならギリギリだが、勝家と誰かならば素手では無理だろう。武器があれば余裕だが。

 

信奈「なんでそんな仕事をしてたの?」

 

少し言葉に怒りが見える。武士として、同じ人を殺す身として怒りが湧き上がってきたのだろう。

 

「大切な村のみんなを守るためだ」

 

長秀「それなら人斬り以外にも守る方法はあったはずです」

 

「世界はそんなに優しくできていなかったんだよ」

 

この世界がどうかは知らないけど。

 

犬千代「それはどういう意味?」

 

「俺の父親は侍だった。その父に戦う術を学んだ。だが、あの世界にはもう侍は必要なかった。職のない父は無情にも元侍という理由で処刑された。人を殺しかねないと言われてだ」

 

信奈「あんたの世界って、複雑ね…」

 

どんよりした空気になってしまった。だが、俺は話を続ける。

 

「父はそれを受け入れた。そして切腹した。俺にも処刑命令がきた。俺も父を見習い、それを受け入れて死ぬつもりだったのだが、そうもいかなくなった」

 

いつの間にか五右衛門も座っている。今までどこにいたのだろう。

 

「俺のいた村はとても貧乏なのに土は良く、近くに大きな川がある。とてもいい立地だった。だからそこら辺の金持ちがこの土地を譲れと言い寄ってきた。それも多額の富と交換で。そして仕事も与えるといった」

 

信奈「すごくいい人じゃない」

 

「あくまでその言葉は建前だ。本音はこの土地を耕したりするやすい人材が欲しかった、それだけだ。それに気づいたのは俺だけだった。気づかない村長たちを止めるにはそれ以上の大金で俺がその土地を買って、安全を提供してやるしかなかった」

 

長秀「それで人斬りを?」

 

「いや。それだけではない。とある政治家に俺の妹を人質に殺しの依頼をされたからだ」

 

より一層暗い雰囲気になってしまった。

俺はこういう雰囲気が好きじゃない。どうにかしたいと思ったけどできる気がしない。

 

「まあ、そんなこんなで人斬りを始めちゃって、恨みを買って殺されたってわけ」

 

勝家「なのに極楽浄土へ行けたのですか?」

 

「それはよくわからないんだ。死んで気がついたらそこにいたって感じだからな」

 

信奈「じゃああんたはあくまでも、人斬りを好きで始めたわけじゃないのね?」

 

「誰が好きで始めるもんか!」

 

笑いを含みながら言った。

 

犬千代「朱鳥、よく笑えるな。辛くないのか?」

 

「もう100年以上前の話しだぜ?今更クヨクヨしてらんねえよ」

 

ちょっと寂しげな犬千代の顔が可愛らしくて少しキュンときた。が、俺はまだ変態になってはないのだ!…たぶん…

 

信奈「まあ昔のことはどうでもいいのよ!今さらこいつが人斬りを再開するわけないでしょうし」

 

勝家「しかし姫様、こいつはいささか信用」

 

信奈「あたしがいいって言ったらいいのよ。直感を信じるの」

 

家臣二人からため息が漏れてる。

こんなんでよくやってこれたな…なんて感心してる場合ではないな。

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