貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜   作:水卜みう

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第13話 すべての責任を負った朝陽に対し、カラオケ店員、西目屋雛世が言い渡した口止めの条件とは……

 結局俺と凛々亜は、あのあとは気まずくなってしまい、そそくさとカラオケ店をあとにした。

 

 翌日、学校にこのことをチクられていたら最悪だなと思い、気が重くなりながら登校したが、何も起こらないまま昼休みを迎えた。

 

 ……いやいや、普通はあんなことやらかしたらお叱りの一つや二つ入るでしょ?

 授業中にチラチラと凛々亜がこちらを見てくることが幾度かあったが、どうやら彼女も何も言われていないらしい。

 

 まさか誰もチクらなかったのか……?

 そんな優しいことって、ありえる……?

 

「……ごちそうさま」

「どうしたの朝陽、具合でも悪い? 大好物のから揚げ残ってるじゃん」

「いや、まあ……ちょっと考え事しすぎて……」

「悩みなら聞くよ? ずっと抱え込むと辛くなっちゃうし」

「だ、大丈夫大丈夫、晴人が気にするようなことじゃないから……ははは」

「本当かなあ?」

 

 いつもの通り、晴人と弁当を食べていたのだが、昨日のことが気になってから揚げどころではない。

 こんなにもから揚げが進まない日は珍しい。

 

 あれだけやらかしておいて何もないというのが不自然すぎるのだ。

 だから俺はこのあと何かヤバいことが起こるのではないかと、内心ビクビクしている。

 

 昼休み中も時折凛々亜と目が合うが、彼女も気が気じゃないのか全く目が笑っていない。

 こんな状況じゃなければ傑作だと言わんばかりに面白い顔なのだが、いかんせん俺には笑い飛ばす余裕はない。

 

 貞操逆転世界だから、ああいう事件があると真っ先に責められるのは女子の方なのだろう。

 もし凛々亜が生徒指導とか学年主任に呼ばれたら、俺も素直に頭を下げに行かなければ。傷は浅いほうがいいので。

 

 

 なにもイベントが発生しないまま、放課後を迎えてしまった。

 

 このまましらばっくれても大丈夫そうな雰囲気まで出てきている。

 何なら凛々亜のやつ、今日はイツメンでファミレスに行って駄弁るからとか抜かして帰ってしまった。

 俺もこのまま帰ることにしよう。

 

 そう思って立ち上がった瞬間、隣の席に座る女子生徒から声をかけられる。

 

「ひ、ひひ、平川……くん、ち、ちょっといい……かな?」

西目屋(にしめや)さん……? どうしたの?」

 

 話しかけてきたのは俺の右隣の席にいる西目屋さん。

 

 あまり目立たない地味な雰囲気の女子で、黒くて長い髪には全く飾り気などなく、前髪が長いので瞳がよく見えない。

 おまけにレンズの大きなウェリントン型のメガネをかけていて、表情が全くわからないのだ。

 

 俺が言うのもなんだけど(いん)のオーラが出ている人。

 まともに喋っているの、初めて見たかもしれない。

 

「あ、ああ、あの……おり、おりおり、折り入ってお話……が、あり……」

「大丈夫? 西目屋さん、顔真っ赤だよ? 熱でもあるんじゃ……」

「だどだだ、大丈夫です……」

「いやいや、かなりヤバい感じでしょ。呂律回ってないし。とにかく保健室行こう。俺、一応保健委員だし」

 

 俺は西目屋さんを保健室へと連れて行くことにした。

 あいにく養護教諭の先生は不在で、とりあえず西目屋さんを空いているベッドに寝かせる。

 

「ごめんね西目屋さん、そんなに体調悪そうだったのに俺全然気づいてなくて……」

 

 昨日のことと凛々亜の一挙手一投足に気を取られていて、あからさまに熱を出している隣の席の西目屋さんに全く気が回らなかった。

 保健委員としたことが、何たる職務怠慢。

 

 すぐに体温計を渡して熱を測らせる。

 ピピピと言う音とともに測定結果が表示されるが、それほど高い数字は出ていなかった。

 

「うーん、思ったより熱はないかもだね。それでもこれから上がってくる可能性があるから、とにかく今は休んでいたほうがいいよ。親御さんに連絡はつくかな?」

「だ、大丈夫なので……そ、それより……その、話……」

「ああ、そういえばなんか話したげだったね。無理のない範囲で話してくれればいいから」

「あ、あの……平川くん、き、昨日……」

 

 俺は西目屋さんの言い放った『昨日』というワードに、まるで死神に心臓を掴まれたようにドキッとしてしまった。

 

 昨日……?

 俺、昨日西目屋さんと何か話したっけ……?

 

 頭の中で昨日の記憶を掘り返す。

 授業中や昼休みに話してはいないので、西目屋さんと関わりがあったとすれば放課後だ。

 

 凛々亜とカラオケに行って、あいつの歌をいくつか聴いて、それでドリンクバーのメロンソーダを一緒に飲んで……それから、なんかおっ始まっちゃって……

 

 そうそう、店員さんがフライドポテトを持ってきたんだ。

 そして俺と凛々亜が昂ぶってきていたところに出くわして……

 

 ……あれ?

 

 あのときの店員さん、なんか陰の雰囲気があって、なおかつメガネをかけていたような……

 そんな人、身近に一人いたようないないような……

 

 改めて俺は西目屋さんの顔を見る。

 

 溢れ出る陰のオーラ、ウェリントン型のメガネ、長い前髪――

 

 間違いない、昨日フライドポテトを運んできたカラオケ店の店員さんは、西目屋さんだ。

 

 まずいぞ、この子は凛々亜との一部始終を知っている。

 しかも店員となれば監視カメラの映像なんかを学校に提出するなんて造作もないこと。

 

 俺の生殺与奪の権利を、目の前の陰キャラ女子は握っているということだ。

 

 なんだこれ、ピンチか?

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