貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜 作:水卜みう
「き、昨日……カラオケで、そ、その……ヤってましたよね?」
西目屋さんの口から一番言われたくない言葉が出てきてしまった。
終わった……絶対にチクられる。これで停学確定だ。
こうなれば変に抵抗してもカッコ悪いだけ。素直に謝ろう。
「ごめんなさい、つい出来心で……」
「ややや、やっぱりそそそうですよね!」
「あんな場所でするのはダメだってわかっているのに止められなかった俺が悪い。逃げも隠れもせずちゃんと処分は受けるから、西目屋さんは学校に報告してくれていいよ」
「……へっ?」
すると、なぜか西目屋さんは拍子抜けしてしまったようだった。
俺がめちゃくちゃ抵抗してくると思ったのだろうか。拳で。
「そ、そそ、そういうわけではなくて、あの……が、学校には言わないので……その……」
「えっ、もしかして見逃してくれるってこと?」
「は、はい……だ、だからその代わりに……」
赤かった顔を更に赤くする西目屋さん。比喩でなく、顔でお茶が沸かせるくらいだ。
そこまで言いにくいこと、もしくは言うのが憚られる恥ずかしいこと。
さすがの俺でも彼女から何を言われるのかある程度想像がついた。
「わ、私にも同じことシてください!!!」
「声がでかいよ西目屋さん!」
「す、すすすみません……」
西目屋さんはシュンとして縮こまってしまう。
多分本当は、カラオケでの一件をダシにして僕に揺さぶりをかけたかったのだろう。
言うなれば、「ヤらせてくれなきゃチクるぞ」という脅迫。
だが元の世界の住人である俺からしたら、そんな選択肢など考えるに値しない。ヤる一択。
せっかくヤらせてくれると言うのだから、抱かなければ損というものである。
ただ、あまりノリノリで行くと不審がられるだろうから、「あくまで渋々やっている……けれども身体は反応しちゃう……! ビクンビクン!」のテンション感で行きたい。
そうすることで俺は貞操逆転世界をエンジョイしている気分になれてなんだか楽しいし、女子たちは女子たちで俺の反応を見て喜んでくれる……はず。
「わ……わかったよ西目屋さん。チクられちゃったら停学食らうかもだし……そしたら色々内申とかに響くだろうし……西目屋さんの好きにしていいよ?」
「えっ、ええっ……!? ほ、本当ですか?」
「うん、自分が招いたトラブルだから、ちゃんとけじめはつけないとね」
「はわわわわわわわ……」
西目屋さんはついに思考回路がショートしてしまった。
プシューという擬音が聴こえてきそうなくらい、また彼女は顔を真っ赤にしている。
……大丈夫かなこの子、男に対する免疫がなさすぎるのでは?
「あっ、で、でも、平川くんは外ヶ浜さんと付き合っているのでは……」
「いや? 付き合ってないけど」
「ええええ!!! じゃあお二人は……その、
「声がでかいよ西目屋さん!」
「す、すすすすみません……」
「まあでも、その通りと言われればその通りなのかな……? 一応、毎朝電車で痴女から守ってもらってるし……ちょっと違うといえば違うような……?」
俺と凛々亜との関係性というのは確かに少しふわっとしているというか、これだ! と決まったようなものではない。
この関係性に名前をつけるとなると、なんと呼べばいいのか……?
うーん、微妙なところだな。
「す、すすすると平川くんは、外ヶ浜さんとはあくまで取引関係のような感じ……なんですね?」
「そういう感じかも。別に恋人ではないよ」
「(ということは……私にもチャンスが……?)」
「……ん? 西目屋さん、なにか言った?」
「い、いや、ななななんでもないです」
「そう? なにもないならいいんだけど」
「そそそ、それより、本当にヤらせてくれるんですね!?」
「うん、いいよ」
「わ、私こんな陰キャブスですけど、本当に……?」
そう言われて俺は西目屋さんの顔を見る。
陰キャラなのは全く否定できないが、ブスかと言われると多分違う。
おもむろに彼女の前髪をかき上げてみる。
その前髪は鼻の頭くらいまで長くて、まるで視線を隠すアイマスクのよう。
もしかしたら目つきにコンプレックスでもあるのかなと思った。
しかし前髪をかき上げて
切れ長の目で、ちょっと睨みつけられたら怯んでしまいそうな眼力がある。
かわいい系ではないが、モデルさんなんかにはこういうタイプの顔の人がいると思う。インドアなのか肌も白いし、小顔だし無駄な肉もない。
和服を着たらめちゃくちゃ似合いそう。
はっきり言わせてもらうと、西目屋さんは凛とした感じの美人だ。
姿勢と陰キャラオーラと視線と喋り方をなんとかすれば、大化けに化けること間違いなし。
……それらをなんとかするのが非常に難しいわけなのだが。
「西目屋さん、全然ブスじゃないじゃん。綺麗だと思うよ」
「お、おおおおお世辞はやめてください! そんな褒められるとなんだか怖いです……」
「お世辞ではないんだけどなあ」
「む、昔から、目つきが怖いって、言われまくっていじめられたりもしたんです。綺麗なわけないじゃないですか」
なるほど、過去に色々言われたのか。
こりゃ重症かもしれない。
女子のイジメって怖いらしいからなあ、そりゃ心に傷も負うよね。
自信がつけば西目屋さんはもっとポジティブになって変われる気がする。
そのためには、とりあえず俺で男慣れしておけばいいと思う。
絶対に成功させような、西目屋さん。