貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜 作:水卜みう
俺はとりあえず気になった漫画を数冊持ってきて、ブースの中で読むことにした。
ペアブースなのでもちろん凛々亜と一緒。
俺が漫画を持って戻ってきたときには、すでにこいつは靴下を脱いでくつろいでいた。ほぼ家やん。
座椅子に腰を掛けて漫画を読み始めようとしたが、一旦思いとどまる。
……やっぱりこのブースはちょっと暑いな。制服のブレザーは脱いだほうが良さそうだ。
俺はブースに置かれているハンガーに脱いだブレザーを掛け、更にはネクタイも緩めた。
ワイシャツのボタンも開けて、ベルトもちょっと緩めておこう。
俺は締めつけ感の強い服がどうも苦手で、あまり制服を長時間着ていたくないタイプだ。
家ではもっぱらスウェットで過ごすことが多いし、私服もゆったり目が多い。
こうやって締め付け力から解放されたほうが、漫画を読むことに集中できる。
なんとなくで選んだ漫画はなかなか面白かった。
流行りの異世界転生もので、バトルアクションではなくのんびりと農村暮らしを楽しむような作品。
絵柄も可愛くてなんだかほんわかする。
……まあ、主人公がアラサーの女性で、ヒロイン(?)がショタばっかりなのは気になったが。
可愛いので良しとしておこう。うん。
一巻を読み終わったので次の巻を取りに行こうとしたとき、隣で凛々亜がだらしない格好をしているのが目に入った。
「……おいおい、パンツ見えてんぞ」
「いいじゃんこれくらい。減るもんじゃないし」
凛々亜はうつ伏せに寝転がりながらバスケ漫画を読んでいた。
俺が生まれる前にバスケブームを起こした往年の名作漫画。今でも根強い人気がある作品だ。
その漫画を十冊ほど持ち込んで凛々亜は一気読みしていた。
よほどリラックスしているのか、生脚をバタバタさせながら鼻歌まで歌っている。
そのせいでスカートはめくれてしまっていて、先日とは違うピンクのサテン生地に黒のレースがついたパンツが丸見えだ。
やはりとは思っていたけれど、この世界の女子はパンツが見えてしまうことにあまり抵抗がないみたいだ。
まあ確かに元の世界の野郎どもも多少パンツが見えたところで動揺する奴はいなかった。
それと同じだと思えば納得はいくが……俺にとっては目の毒というか、視線のやりどころに困るのだ。
「減らないけどさ……ちょ、ちょっとだらしなく見えるじゃんか」
「だってここはダラダラする空間だよ? だらしない格好をしてなにか悪い?」
「そ、そうだな……別に悪くないな」
そう言われてしまってはこう返すしかない。
女子のパンツごときに動揺してしまっては、変なやつと思われてしまう。
いい加減俺は貞操逆転世界に馴染まないと。
「っていうか、そう言う平川くんもなかなかだと思うけど?」
「え? そうか?」
「そうだよ。制服のブレザーを脱いで、ベルト緩めて、ワイシャツのボタンまで開けて……」
「暑いから仕方がないだろ。それに俺、あんまり締めつけ感が強いの好きじゃなくてさ」
「で、でも、女子と二人きりだからってそこまでガード緩いと……さ、さすがにその気になっちゃうよ?」
その気というのはもちろんヤる気のことだ。「やる気」でも「ヤル気」でもなく、「ヤる気」
あまり俺にはピンときていないが、どうやらこの格好は凛々亜にとって少々煽情的らしい。
「こんな場所でその気になられても困るっての。大体ここはネットカフェだぞ? 俺達は漫画を読みにだな――」
「ねえ平川くん、ここのネットカフェの店名知ってる?」
俺の言葉に割り込むように凛々亜はそう言う。
確かこの店の名前は……
「か……『快楽CLUB』、だな」
「そう。界隈ではね、お店の名前の通り快楽を
「そ、それはつまりどういう……」
「えー? そんなこと言わなきゃわからないかなあ?」
凛々亜は少し挑発的な瞳で俺を見る。
……なんとなくこいつの言いたいことはわかるんだ。
外からは見えない密室空間。人間二人が横になれるスペース、柔らかいクッション性のある床、衣服をかけられるハンガー、おもむろに置かれたティッシュの箱――
これはもう、『必要最小限の愛の城』といっても過言ではない。
「こんな密室で二人きりになることくらい簡単に想像できたのに、平川くんはあっさりついてくるんだもん」
「それは……外ヶ浜さんが漫画を読みたいって言うから」
「私も最初はそうだったよ? バラバラで部屋を取るよりペアブースのほうが割安だし、平川くんならおすすめの漫画とか知ってるかなって思ったから。でも、そんなふうに誘われちゃったら……ねえ?」
鼻息が荒い。完全に発情しているぞ、この女。
なんだヤるのかこの野郎。
凛々亜がその気なら俺だって全然いける。舐めんな俺の性欲。
だがしかし、この世界に生きる男になってしまったからには、あまりノリノリに応じてしまうのは良くない。
あくまで俺は、地味で平凡な普通の男子生徒。
そういう暮らしが身の丈にあっているということは、俺自身が一番よく知っているのだ。
だから気分的にはウハウハでも、少し『演技』を交えていく必要がある。
具体的に言えば、「女の子からの押しに負けて仕方がなく……」といった、もっともらしい理由付け。
「だ、ダメだろ。一応ここ、公共の場だし、この間のカラオケみたいに店員さんにバレたら……」
「バレないよ。だってここ、外から見えないし。フードも注文してないから店員さんが来ることもないし。それに、内側から鍵をかけられるし……」
凛々亜はブースのドアノブへ手を伸ばして、カチっと鍵のツマミをひねった。
「ねえ、いいでしょ平川くん? ちゃんとゴムつけるからさ」
それ、女子のほうが言うセリフなんだ……と思いながら俺は、されるがままにワイシャツを脱がされ始めていた。