貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜   作:水卜みう

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第21話 うち、漫画あるんですよね……読んでイきませんか?

 翌日。

 お昼休みになって、いつもの通り晴人と昼飯を食う。

 

 今日も今日とて俺の弁当のおかずは唐揚げだ。

 これが一番美味いんだよな。

 

 やや大きめの唐揚げにかぶりつく。揚げたてではないのでサクッとした食感はないものの、しっかり肉に下味がついていてご飯がすすむ。やはり唐揚げは正義である。

 

 一方で俺よりも二倍近くあるサイズの弁当箱を開けてニコニコしているのは、親友である藤崎晴人。

 

 身長百八十五センチ、バスケ部の次期エース的存在である彼は、その身体と運動量に見合った量を食わないといけない。

 毎朝弁当を作っているであろう晴人のお母さん(もしくはお父さん?)は、さぞかし大変であろう。

 

 そんな彼が弁当の四分の一程度を平らげたところで、なにか思いついたかのようにこんなことを言う。

 

「そうそう、そういえばちょっと良いことあったんだ」

「良いこと?」

「うん。実はね、次の試合で背番号『8』をつけることになったんだ」

「おおー、やるじゃん。……って、背番号『8』ってなんかすごいの?」

「バスケの背番号『8』はね、パワーフォワードっていうポジションのレギュラーなんだ」

「ぱわーふぉわーど?」

 

 なんだか強そうな名前だ。

 

「フォワード」はサッカーで攻撃主体のポジションってイメージがあるからなんとなくわかる。

 それに「パワー」がつくってことは、フィジカルでゴリゴリ攻めていく感じのポジションかな……?

 

 そんなの晴人にピッタリじゃないか。ニコニコしながら相手選手を体当たりで吹っ飛ばしていく姿が容易に想像できる。簡単に得点できそうだ。

 

 ……まあ俺、バスケのことあまり知らないけど。

 

「とにかくレギュラー勝ち取ったってことだろ? すごいじゃんか」

「えへへ、とは言ってもインターハイ予選じゃなくて隣の市の招待試合だから、お試しでレギュラーにされたんだと思うんだけど」

「いやいや晴人、これはアピールチャンスだぞ? スター選手ってのはこういうチャンスを絶対に逃さないからな。ここで活躍してレギュラーの座を固めないと」

「そうだね。そういうわけで朝陽、試合見に来ない? 今度の土曜日なんだけど」

 

 晴人は微笑みかけてくる。

 こいつの笑顔は悪意のかけらも感じない程純粋無垢なものなので、早急にユネスコあたりに保護してもらったほうがいいと思う。

 

「もちろん良いんだけど、俺あんまバスケ知らないよ?」

「ゴールにボールを多く入れたほうのチームが勝ちだから大丈夫だよ」

「いくらなんでもさすがにそれは知ってるぞ……まあ、せっかくレギュラーとったわけだし、応援に行くよ。俺の応援が役に立つとは思えないけど」

「ありがとう朝陽! でも朝陽一人だとなんか危なっかしいから、誰かと一緒のがいいよね」

「えっ、俺そんなに危なっかしい?」

「うん、だってこの間も痴女被害にあってたし」

「そ、それは確かにそうだけど……」

「最近特にそう感じるんだよね。朝陽、なんかあった?」

 

 なんかあったと聞かれたら、色々ありすぎてどこから説明したらいいのかわからないくらいだよ。とは言えず、俺は適当に愛想笑いしてはぐらかす。

 

 自覚は全くないのだけれども、晴人いわく俺はガードが緩くて危なっかしく見えるらしい。

 悪い女性を引きつけるオーラがあるとかないとか。

 ……本当かな?

 

「やっぱり誰かと一緒に来てくれたほうがいい気がする」

「誰かって……誰だよ」

「そうだなあ……ねえ、西目屋(にしめや)さんは興味ない?」

 

 晴人は急に俺の隣にいる雛世に声をかけた。

 

 彼女はイヤホンで耳を塞ぎ、うさぎのようにモソモソとサンドイッチを咀嚼(そしゃく)していた。

 草食動物感が半端ない。

 

「……おーい、西目屋さーん?」

 

 晴人が手を降ったり呼びかけ直したりすると、やっと雛世はそれに気がつく。

 

「は、はい、ななな、なんでしょう?」

「よかったー気づいてくれて。あのね、今週末の土曜日にバスケの試合があるんだけど、よかったら見に来ない?」

「へっ!? わ、私がですか!?」

「そうそう、朝陽と一緒に」

「平川くんと!?」

「うん。朝陽ってなんか危なっかしいところがあるからさ、西目屋さんと一緒に行ったほうがいいかなーって」

 

 雛世はあからさまに挙動不審になっていた。

 それもそうか。この間まで誰かと喋っているところさえ見たことがなかったんだ。陰キャラ女子が突然話しかけられたらこんなふうになるに決まっている。

 

 それにしたって晴人のやつ、思い切ったな。

 席が近いとはいえ、周囲との関わりを遮断している状態の雛世にわざわざ声をかけなくてもよかったのに。

 

 ……そうか! なるほど、わかったぞ。

 

 晴人の魂胆は言っていることと真逆ってことだ。

 

 俺が危なっかしいから雛世と一緒に来てと言うが、それは口実。

 晴人が本当に来てほしいのは雛世のほうということだ。

 

 この間彼女が前髪を切ってきたときに晴人はえらく反応していた。間違いなく気になっている。

 直接は誘いにくいから俺を緩衝材にして呼ぼうという作成なのだ。

 

 なかなか策士だな、晴人め。

 

「その……行っていいんですか?」

「もちろんだよ」

「じゃあ、私で良ければ……」

「本当!? 西目屋さんが来てくれるの、嬉しいなあ」

 

 晴人はにっこりと笑みを浮かべる。

 

 彼は愛想が良いタイプで、誰にでも笑顔を見せる人懐っこい感じだ。

 女子からしてみたら、たかがクラスメイトに向けられた笑顔がこれだというのなら恐ろしいなと思うのだろう。あっさり勘違いしてしまいそうだ。

 

 でも俺にはわかる。晴人が割と本気で西目屋さんを誘ったということに。

 その証拠に、その後晴人が弁当を平らげるペースが異常に早かった。

 

 食ったら食ったですぐに体育館に行ってしまった。嬉しくていても立ってもいられないのだろう。

 好きな人のために頑張っちゃう晴人、めっちゃ乙女だ。

 

 晴人がどこか行ってしまったので、俺はゆっくり弁当を食べる。

 彼と違って食べるペースはそれほど早くないので、まだ半分くらい弁当箱にはご飯が残っていた。

 

 ふと隣の雛世を見ると、サンドイッチを食べ終えて何やらアニメを見ていた。

 ちょっと覗いてみると、それは昨日俺が読んだ漫画と同じ作品だった。

 

「西目屋さん、そのアニメ――」

「ふぁっ!? ななな、なんですか平川くん!」

「ああ、驚かせてごめん。そのアニメ、昨日偶然読んだ漫画と同じやつだなーと思ってさ」

「平川くん、『あらショタ』を知ってるんですか!?」

 

 先程晴人からバスケの試合に誘われたときよりも雛世は驚いていた。

 昨日読んだ漫画、『あらショタ』っていうんだ……初めて知った。

 

「『あらショタ』――正確には『転生したアラサーOLのショタに囲まれた農村暮らし』という作品で、ウェブ小説でものすごい人気を誇っていたんですよ。コミカライズでその人気がさらに大きくなって、ついに今期アニメ放映されることになったんですから! シリーズ累計もついに五百万部に――」

「す、すごく知ってるね……」

「はっ……! すみません、私つい喋りすぎることがあって……」

「ううん、いいのいいの。面白いから続きを読みたいなとおもってたんだけど、漫画のタイトルが覚えられなくてね……やっとわかったから助かったよ」

 

 雛世はどういたしましてと恥ずかしそうに言う。

 しかしその後すぐ、何かに気がついたのか急に表情を変えた。

 

「平川くん、良かったら『あらショタ』の続き読みませんか? 私、全巻持ってるので……」

「本当? じゃあ放課後貸してもらおうかな。西目屋さんち、行ってもいい?」

「はっ……はい……!」

 

 そういうわけで放課後の予定ができた。

 あの漫画の続きが読めるのは楽しみだ。

 

 ……これが陰キャラ女子の作戦とも知らずに。

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