貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜 作:水卜みう
放課後、俺は漫画を借りるために雛世の家に行くことになった。
案内されたのは、学校から徒歩五分そこらの場所にあるメゾネットタイプの賃貸マンション。
築浅できれいな建物だ。
「……ここ、うちです」
「へえー、西目屋さんち、めっちゃ学校から近いね」
「そ、そうですね。朝もギリギリまで粘れるので……遅刻はしたことないです」
「いいなあ。俺は電車で何駅か揺られないといられないから割と朝早いんだよね。痴女被害にもあったこともあるし」
「ち、痴女被害ですかっ!? なんて卑劣な……」
「まあ、なんともなかったから大丈夫だよ。そのときは外ヶ浜さんに助けてもらったしね」
すると、雛世の表情が少し陰る。
もしかすると、凛々亜の名前を出すのは良くないのか……?
ありえる。
かたや一軍女子、かたや陰キャラオブ陰キャラ。
凛々亜が雛世のことをどう思っているかは知らないが、雛世が凛々亜のことを苦手としている可能性は十分ある。
かく言う俺も、クラスの陽キャラ男子とは上手くやれそうにない。それと同じだ。
雛世の前で凛々亜の名前を出すのは控えておこう。
あくまで俺は平凡で目立たない(けれど経験人数が急に二人になった)男子生徒。
みんなにとって都合のいい男でいたほうが幸せなのだ。
「そ、そんなことより、漫画を……」
「あっ……そ、そそそうでしたね。家の中に入ってください。どうぞ」
俺は雛世に促されて家の中に入る。
中はシーンとしている。家の人は出かけているらしい。
「うち、両親共働きで、昼間は家に誰もいないんです」
「そうなんだ。じゃあいわゆる『鍵っ子』ってやつ?」
「そうですね。きょうだいもいないので、帰ったらいつもこんな感じです」
ちょっと寂しい感じがした。
この歳になると親の存在がうざったく感じることが増えてくる。
しかし逆にいないとなると寂しいものだとも思う。思春期というのは面倒くさい性格をしているなと、俺は常々考えさせられる。考えるだけだけど。
「か、階段を上がって突き当りが私の部屋です。そそ、そこで待っていてください。お、お茶をいれるので……」
「いや、そんなに気を使わなくてもいいよ?」
「い、いいんです、お客さんはきちんともてなしなさいって言いつけられて来たので」
「きっちりしてるなぁ、すごいね」
「そ、そんなことないです。と、とりあえず冷たいお茶しかないんですけど、いいですかね?」
「うん、ありがとう」
俺は階段をのぼり、雛世の部屋へ入る。
勉強机や寝床はきちんと整理整頓、掃除されていて、ちょっと生活感が薄い。雛世のキャラクター同様、一般的な女子高生としては地味な部屋である。
……ただ、圧倒的な蔵書数を誇る漫画や小説の本棚があること以外は。
すごいなこの本棚。何冊あるんだ……?
しばらくしてお茶の載ったトレーを持った雛世が部屋にやってきた。
冷たいお茶には、ご丁寧にストローまでささっていた。やっぱりきっちりしている。
「すごいねこの本の数。全部西目屋さんの?」
「はい……小説とか漫画とか、とにかく本を読むのが好きなので、買い集めているうちに……こんな感じになってしまって……」
「すごい金額つぎ込んだんじゃない……?」
「ま、まあまあかかったかもです。でも私、本を買う以外にお金を使うことがあまりないので。親が共働きの一人っ子だからお小遣いは他の人より多いと思いますし、バイトもしていますから」
なるほどなと俺は頷く。
それにしたってすごい量だ。読んでも読んでも尽きないだろう。
「ちょ、ちょっと座ってお茶でも飲んでいてください。その間に『あらショタ』を用意するので」
「うん、じゃあお言葉に甘えて」
俺は床に敷かれたカーペットの上に座り、用意されたお茶を飲む。
なんだか独特な香りがするお茶だ。普通の麦茶とかではなさそう。
「西目屋さん?」
「は、はいぃ!」
「このお茶、何のお茶? 飲んだことない味がするんだけど」
いきなり俺が話しかけてしまったからか、雛世の身体はビクンと反応する。
それにしたって、やや挙動不審な感じがするが。
……まあでも、雛世はいつもこんな感じか。
「そそそ、そのお茶はですね、母がハマっているらしくて……あはは……お、美味しくなかったですか?」
「ううん、そうじゃなくて、純粋にどんなお茶なのかなって気になっちゃって」
「そ、そそそそうなんですよね。母がよく作り置きしているんです……」
色々なものをブレンドしたのであれば、こういう独特の香りにもなるだろう。
雛世のお母さんが作り置きしているなら、ハーブティーか何かなんだろうな。
「あ、ありました。とりあえずこれが『あらショタ』の最新刊までです」
「ありがとう。思ったよりも長いシリーズなんだね」
「そうですね。最新刊は十八巻ですから、小説からコミカライズされている作品としてはかなり長いかなと思います」
「なるほど。一気に借りていこうとおもったけど、二十冊近くなると持っていくのが大変だなあ」
「そ、それなら……うちで読んで行きませんか?」
雛世はもじもじしながらそんなことを言う。
俺としてはここで読んでいって良いのならばありがたい。
たくさんの漫画を持って電車に揺られながら帰るのは、結構な重労働だから。
「いいの? 俺、お邪魔じゃない?」
「だだだ大丈夫です! うち、今日も両親が帰ってくるの遅いので……ゆっくりしてもらっても……」
「本当? ありがとう、じゃあちょっと読んでいこうかな」
すると雛世はホッと安堵のため息をつく。
なんで俺が彼女の部屋で漫画を読んでいくことに対して安心しているのかよくわからなかった。
漫画を読み進めて行くと、なにか違和感を覚えた。
なんだか身体の奥底が熱くなってきている。
火照っているという感覚が正しいかもしれない。
なぜだ? この部屋は別に暖房を入れているわけではない。もちろん西日が差し込んで暑いわけでもないし、床暖房なんかあるわけがない。
さっきのお茶になんか入っていたか……?
なんかヤバいものでも盛られたかも???
もう身体が熱くて漫画どころではなくなってしまった。
気がつくと俺はブレザーを脱いでワイシャツのボタンに手をかけていた。
どうしちゃったんだ? 俺の身体?