貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜   作:水卜みう

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第24話(雛世視点)じこはおこるさ

◆(雛世)

 

 ある日の朝早く、まだ平川くんが登校する前のこと。

 私は朝練終わりの藤崎くんから話しかけられた。

 

「西目屋さんって、朝陽のことが気になってる感じ?」

「ふぁっ!? なっ……そ、それは……」

 

 びっくりした。

 いきなり心臓を掴まれたかと思った。

 そんなにわかりやすく態度に出ていたかなぁ……参ったなあ。

 

「ええっと……あの……その……」

「違ったかな? 勘違いだったらごめんね」

「い、いや……勘違いじゃ……ないです……」

「やっぱりそうなんだ! 僕の勘って当たるんだよねー。男の勘ってやつ?」

「あ、あの……平川くんには言わないでくださいね」

「大丈夫大丈夫。いくら朝陽が親友とはいえ、バラしたりなんかしないよ」

「はぅ……」

 

 藤崎くんはにこやかで嬉しそうだ。

 私が平川くんに想いを寄せていることが、それほど嬉しいのだろうか。

 

「朝陽ってなんだか危なっかしいでしょ? だから朝陽に彼女ができるなら、西目屋さんみたいにしっかりした人のほうがいいなって思ってたんだ」

「そ、そんな、しっかりなんてしてないですよ……」

「そう思ってるの、西目屋さんだけだと思うよ?」

「はぅ……」

「僕ね、すっごくお似合いな二人だと思ってるから、西目屋さんのことめっちゃ応援したいんだよね」

「はぅぅ……」

「それでちょっといいこと思いついたんだけど――」

 

 どうやら藤崎くんは私と平川くんの恋路をアシストしてくれるようだった。

 恋していることがバレたのは恥ずかしいけれども、恋愛経験値ゼロである陰キャの背中を押してくれるのはありがたい。

 

 今度開催されるバスケの試合に私と平川くんを招待してくれるということになった。

 絶対にこのチャンスを逃さないようにしないと。

 

 

 ――と、思っていたら、予想外の展開が起きた。

 

 藤崎くんとのアシストイベントが起こる前に、平川くんが漫画を借りに我が家にやって来ることになってしまった。

 

 まずいまずいどうしよう、そんな予想外のイベントなんてテンパっちゃうよ。

 

 お、お客さんにはまずお茶を出さなきゃだよね……

 

 自宅の冷蔵庫に作り置かれていた、うちの母親ご自慢の()()()()()とされるハーブティー。

 いつも欠かさないように作りおきしている。

 

 ……ごめんね平川くん、私は悪い子かもしれません。

 

 このハーブティーを飲むとムラムラしてきちゃうと言うことは知っていたし、実は普通の麦茶もありました。

 

 ハーブティーを平川くんに飲ませたのは、わざとです。魔が差しました。

 

 この間の初体験(アレ)があまりにも良すぎて、欲に負けた私はあわよくばもう一回チャンスが来ないかななんて思ってた。

 けれども、陰キャブスの私にはそんな機会に恵まれるわけもなく……

 

 だから実力行使してしまいました。

 (みそぎ)として私もグイッと飲んだので、おあいこだよね。

 

 というか、コップ半分でそんなに効果出るの、才能あるんじゃないかな……?

 うちの両親、毎日飲んでるけどそんな感じになってる気配ないし……

 

 ……私?

 私は飲む前から興奮してましたごめんなさい。

 

 

 でもね、平川くんも平川くんだよ。

 普通に考えて、漫画が読める程度のことで女子の家にホイホイとついてくるほうが悪いと思う。

 

 藤崎くんが平川くんのことを危なっかしいっていうのがよくわかった。

 ガードが緩くて、普通の男の子なら引っかからないことでも簡単に引っかかる。

 その軽さというのは、私から見てもちょっと心配になってしまうくらいだ。

 

 でもそのおかげで、またこうやってチャンスがやってきた。嬉しいなあ。

 

「西目屋さん、準備……できたよ」

「は、はい……そ、それじゃあ、いきますね……」

 

 たまんないなぁ……

 めちゃくちゃキュンキュンする……病みつきになっちゃうよ。

 

 おまけに、陰キャでリードできない私に対して、主導権をとってくれるのもありがたい。

 こんなしょうもない私なのに興奮してくれるのが、とっても愛おしい。

 平川くんと私は相性ピッタリなんだろうな。

 

「ご、ごめん西目屋さん、そろそろ……」

 

 このときの平川くんの顔は、こうなんというか……女心に突き刺さると言うか、これ嫌いな女いないでしょ、という感じの表情だ。

 最後まで見ていたかったけど、いよいよの瞬間は唇を塞がれてしまった。

 

 最初は好きな人で……と決めていたので、平川くんが相手で良かった。理想的なファーストキスの捧げ方だ。

 

 小休止。

 

「ご、ごめん……がっついちゃって」

「い、いいんですよ、全部私のせいですし、それに……なんだか平川くん、幸せそうだったので……」

「うん……すっごく良かった。でも、勝手にキスまでしちゃって申し訳ない……」

「ととと、とんでもないです! 私のファーストキスなんてハードオフでも買い取ってくれない特級呪物なので……そんなものをもらってくれるなんて……」

「もう、西目屋さんはそんなに卑下しなくていいよ。今回は俺も初めてのキスだったってことで、おあいこだね」

 

 ――!?

 

 ひ、平川くんのファーストキス、私が貰ったってこと!?

 

 ちょっと待って、だって彼は外ヶ浜凛々亜と関係を持っているのに……どうして?

 まさか平川くんも、ファーストキスは好きな人のために取っておいている……とか?

 

 だとしたらそれって……りょ、両想い……?

 

「よ、良かったんですか? 私がファーストキスの相手で……?」

「まあ、それこそ誰ももらってくれないようなものだと思うし」

「あの……その……」

「ん? どうしたの?」

 

 この勢いで「平川くんってもしかして私のこと好きなんですか?」と聞いてしまいたかった。

 でもヘタレな私は思いとどまる。

 

 そんな告白まがいの質問を投げかけて、もし振られてしまったらどうなるだろう。

 

 こんな甘くて淫靡で儚い関係性は、すぐに消えてなくなる。

 そしたらもう、平川くんと一緒になることはない。

 

 これが外ヶ浜凛々亜みたいな男をとっかえひっかえしてそうな陽キャだったら痛手になんてならない。

 

 でも私はそうじゃない。

 

 重いと言われそうだが、私には平川くんしかいないのだ。

 これを逃してしまったら、もう生きている価値なんてないに等しい。

 

 石橋は叩いて渡るべき。

 

 ここでいきなり告白するような真似は避けなければ。もっと関係性を深めて、お互いを信頼できるようになってからでも遅くない。

 

 落ち着け落ち着け、今は告白ではなく、この関係を維持することを考えろ……

 

「ななな、なんでもないです。それより、汗かいてませんか……? 良かったらシャワーを浴びていってください」

「本当? ありがとう、すごく助かるよ」

 

 私は平川くんを浴室へ案内する。

 脱衣場で服を脱いだ彼はすりガラスの扉を開けて、浴室内へ入っていった。

 

 いつも聞いている水の音。でもなぜか扉越しに聞くその音にはドキドキ感がある。

 ……いや、またムラムラしているとか、はしたな過ぎるよ私。

 

「西目屋さん、ボディソープって借りていい?」

「は、はい、どうぞ」

「……ごめん、ボディソープのボトルが空になってて出てこないや」

「い、今、詰替えしますね……!」

「なんかごめんね、突然借りておいてボディソープを詰替えさせるとか」

「全然いいんですよそんなこと。詰替えパック、ここに置いときますね」

「ああうん、ありがとう」

 

 私はすりガラスの扉の前にボディソープの詰替えパックを置いて立ち去ろうとする。

 しかし、私が詰替えパックを置いた瞬間、すりガラスの扉が開いた。

 

 現れたのはもちろん、一糸纏わぬ姿の平川くん。 

 シャワーを浴びている最中だったので、『水も滴るいい男』の言葉通り、その姿は五億倍男前に見えた。

 

 ……うん、それは反則。

 

 衝動を抑えられなかった私は、無意識のうちに浴室の中に入っていた。

 

 小休止。

 

「……平川くんはガードが緩すぎで心配になります」

「西目屋さんなら……大丈夫かなと思って」

「女は狼なんですから油断しちゃだめです! 私みたいな陰キャブスでも、こんな風になるんですから……」

「西目屋さんは陰キャブスじゃないよ。だから自分に自信を持って」

「はぅ……」

 

 もう! 本当に女たらしだよこの人は!

 言われて嬉しくないわけないでしょう! このこの!

 

 平川くんはニッコリ笑う。

 その笑顔の意味はなんだろう。

 失いたくないな、この笑顔。

 

 

 もうこんなやり方はやめよう。

 もっと真っ当に平川くんと関係を築けるように自分を磨かなくては。

 

 

 風呂上がり、暗くなってきたので私は平川くんに『あらショタ』の六巻までを持たせて駅まで送った。

 

 ……ということは、返してもらったり、また借りに来たりしたらチャンスがあるはず。

 

 今度は普通に……なれるといいな。

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