貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜   作:水卜みう

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第25話 恋のキューピッドに、俺はなる!(なお、なれない模様)

 週末。

 俺は晴人の試合を見に行くために隣町の市民体育館へ出向いた。

 

 いつも学校に行くのとは逆方向の電車に乗る。

 すると事前の打ち合わせ通り、車両には雛世が乗っていた。

 

「お、おはようございます平川くん」

「おはよう西目屋さん。わざわざ同じ電車に乗ってくれてありがとうね」

「い、いえいえ、これくらいどうってことないです……!」

 

 雛世は高校の近くに住んでいる。当然、彼女の最寄り駅は俺がいつも通学の時に降りる駅だ。

 

 今回は逆方向の電車なので、待ち合わせのために先に乗っていた雛世と予め何両目のどこに乗っているか連絡をとっていたというわけである。

 

 なぜかというと、晴人から「朝陽はガードが緩くて危なっかしい」と言われてしまったから。

 俺が元の世界の住人であるからということもあるが、どうやらそれ以外にも俺自身が女性に狙われやすい雰囲気を醸し出しているらしい。

 

 ……本当かな?

 俺ただの地味陰キャラ男子なんだけど……

 まあいいか。

 

「私、体育の授業以外でバスケの試合なんて初めて見るかもです」

「あー、そう言われると俺もそうかも。晴人とは中学のときからの仲だけど、試合に行ったことなかったな」

「藤崎くんは、中学のときからレギュラーだったんですか?」

「うん。あいつ身長あるし身体鍛えてるし、暇があればバスケの練習してるくらい好きだからね。当たり前のように上手くなって中学二年の頃にはいつの間にかレギュラーになってたよ」

「すごいですね……漫画の主人公みたい」

「確かに。無自覚に無双していくタイプのやつだね」

 

 流行りのウェブ小説だとよくある感じの主人公。

 のほほんとしていながら、気づかないうちにスキルアップして、いつの間にか強大な存在になっている。

 

 まさに晴人はバスケ部でそんな感じなのだろう。

 あれでいて人当たりも良くて、笑顔が眩しくて、誰にでも優しい。

 高身長細マッチョは女子ウケばっちり。

 

 モテるよなあ晴人。

 

 真似しようにも真似できないモテ要素がありすぎる。

 きっと西目屋さんも今日の試合を観てすぐに晴人の虜になるに違いない。

 

「そういえば私、こっち側の電車に乗るの初めてです」

「そっか、そうだよね。隣町の市民体育館なんてまず行くことないし、大きな街に出るなら逆方向だもんね」

「な、なんだか見慣れない土地って、ドキドキしますよね」

「うん、わかるわかる。降りる駅を間違えないようにしないとだね」

 

 そうこうしているうちに、目的の駅についた。

 他愛のない会話をしながら市民体育館にたどり着くと、雛世はホッとした表情を浮かべる。

 

 知らない土地は迷ってしまわないか心配になるもんね。わかるわかる。

 

 そういえば雛世、俺と話すときはあんまり緊張しなくなった気がする。

 

 もっと自分に自信が持てるようになれば、誰とでも話せるようになるはずだ。これはその第一歩。とてもいい傾向だと思う。

 

 市民体育館のコンコースを歩いていると、ウォームアップをしているうちの高校のバスケ部に出くわした。

 

 その中に一際目立つ晴人の姿があった。

 

「おーい晴人ー」

「あっ、朝陽に西目屋さん! 来てくれたんだ」

「おうおう、親友の晴れ舞台を観に来てやったぞ。今日は何点取るんだ?」

「うーん、五十点くらいは取りたいなあ。なんてね」

 

 俺はバスケのことをあまり知らないのでそのときは「へぇー」と腑抜けた返しをしてしまったが、後で調べたところ国内プロリーグの一試合での個人得点記録が四十五点らしい。

 プロ行く気かこいつは。

 

「西目屋さんも来てくれてありがとう」

「い、いえ、私は別に何も……」

「なかなかバスケの試合を観に来てくれる人っていないからさ、来てくれただけでとっても嬉しいな」

「そ、そんな大したことじゃ……」

「僕、めちゃくちゃ頑張るから応援してね。そんじゃ練習の続きするから、また後で」

 

 晴人はウォームアップをするバスケ部の集団に戻っていった。

 

 なんだよあいつ。雛世に対する態度がもう「好きな人を相手にしたとき」のそれじゃないか。

 絶対雛世のこと好きじゃん晴人。付き合いが長いからわかるぞ、俺は。

 

 雛世と俺は色々あったけど……まあでもあれは事故だし……仕方がない。

 これからはちゃんと雛世と晴人がくっつくよう、アシストに専念しよう。うん。

 

 

 

 体育館の客席に俺と雛世は腰掛ける。

 

 試合開始まではまだ時間があるようで、フロアでは他校のバスケ部がボールを使って練習していたり、アホみたいな速さで床をモップがけしてしていたりと賑やかだ。

 

「ひ、平川くん、のど渇きませんか?」

「あーちょっと渇いたかも。この体育館空調が効いて乾燥してるよね」

「わ、私、何か買ってきますね……!」

「えっ、そんな気にしなくていいよ? ってか、西目屋さんが飲み物を買ってくるのはなんだか嫌な予感が……」

 

 俺はこの間のハーブティーを思い出す。

 まあでも、さすがに自販機で買うだろうからあんなことにはならないか。

 

「あ、ああ、あれはほら、じ……事故なので……」

「そ、そうだね、事故だね……あれは」

「そそ、そういうわけで買ってきます!」

 

 雛世はまるで邪念を振り切るかのように自販機のある場所へと駆け出して行った。

 何も飲みたい物の希望を伝えていないけれど大丈夫だろうか。

 

 俺はなんでも飲めるからそれほど心配してないけど、コーンポタージュとかおしるこはちょっと勘弁してほしいなとぼんやり考える。

 

 ふと、コートを挟んで向こう側の客席を見た。

 そこには見覚えのある人影があったのだ。

 

 やけに目立つアッシュブラウンの髪、ちょっとギャルっぽい服、そして何故かその人影は双眼鏡を持ってフロアにいるバスケ選手たちを眺めている。

 

「……あれ? あそこにいるの、外ヶ浜さんじゃない?」

 

 そう、何故か凛々亜もバスケの試合を観に来ていたのだった。

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