貞操逆転世界での俺、気軽にヤれるビッチ♂だと盛りのついた女子たちの間で噂になっていく 〜お前らみんな、俺で処女捨てたくせに……〜 作:水卜みう
「――晴人ー! 頑張れー!」
バスケの試合は佳境を迎える。
客席から試合を見ている俺は、柄にもなく大きな声を出して晴人を応援していた。
晴人のやつ、めちゃくちゃシュート決めるじゃないか。
フィジカルで相手校を圧倒してるぞ。さすが中学のときからエースを張っているだけある。
「す、すごいですね藤崎くん。面白いようにシュートが入ります……!」
「だよねだよね、俺もあんなに晴人がすごいと思わなかったよ」
「今、私の手元で藤崎くんのシュートの数をカウントしていたんですけど……二十点を超えました」
「試合前に言ってたこと、あながち冗談じゃなくなりそうだな……」
うちの高校のスコアボードには本当にバスケなのか? と思うくらいの得点が入っている。
晴人だけではなく、周りのメンバーもなかなかレベルが高い。
こんなに強かったのかうちの高校のバスケ部。
試合は進み、終盤の第四クォーターに入った。
圧倒的な点差がついてしまったので、晴人はベンチに下がり、代わりに一年生と見られる初々しい選手が出てきた。
晴人と同じくらいの身長で、まだ身体が鍛えられていないのかやや細く感じる。モデル体型と言ってしまえば確かにそうかもしれない。
これまた凛々亜が好きそうなルックスだなあとぼんやり考えていると、やはり向こう側の客席にいる彼女は双眼鏡で件の彼の姿を追っていた。
……双眼鏡いる? この距離で。
試合終了間際。
俺は晴人の出番が終わったので、なんとなく試合の様子を眺めていた。
すると、隣にいる雛世が何かに気づいたようだった。
「平川くん……ちょっといいですか?」
「ん? どうしたの?」
「い、いえ、気のせいかなとは思うんですけど、向こう側の客席にいるあの人……怪しくないですか?」
「外ヶ浜さんのこと?」
「そ、外ヶ浜さんも十分に怪しいですけど……そうではなくてですね、彼女よりもっと左側で三脚を立てている人です」
俺は雛世に言われた通り、凛々亜よりさらに左にいる人物を見た。
屋内なのにサングラスをかけ、マスクも着用している。ニット帽をかぶって髪型をわかりづらくしていて、服装はネイビーブルーのパーカーにジーンズ。
特徴を無くそうとしているのに、かえって特徴が出てしまったそんな感じだ。
ちなみに当たり前のように女性である。
ジーンズを履いていても脚とか腰回りでわかってしまうものだ。
あからさまに顔を隠そうとしているその人は、三脚を立ててずっとコートにカメラを向けていた。
「撮影って、基本的に禁止ですよね……?」
「そうだね。相手チームの研究とかで撮影するかもだけど、それなら客席からじゃなくてフロアに降りるだろうし、どこかのチームの関係者ならあんなに姿を隠そうとする格好なんてする必要ないし」
「もしかして本物の盗撮魔……ですか?」
「……あり得るよ。ヤバい人かもしれない」
俺はゴクリと生唾を飲んだ。
親友が盗撮されてネットの海で慰みものにされる可能性がある。せっかく得点を稼ぎまくったヒーローにその仕打ちはないだろ。
それならば先手を打って捕まえるしかない。
俺は向こう側の客席にいる凛々亜に向けて手を振って合図を送った。
彼女はそれに気づいた様子で、不思議そうな表情で手を振って応答してきた。
例のヤバい人を指差すと、凛々亜は俺の意図を理解してくれたようだった。
「……よし、多分伝わった」
「あれで伝わるんですね……」
「そりゃ、外ヶ浜さんも同じことを考えてるからね」
「な、なるほど……?」
「じゃあ俺らも行くよ」
「えっ!? 私達も行くんですか!?」
「うん。多分外ヶ浜さんに小突かれて逃げるだろうから、反対から回り込んで挟み撃ちにするんだよ」
「そういうことですね……!」
程なくして凛々亜はそのヤバい人に近づいて問い詰め始めた。
すると一気にヤバい人は挙動不審になる。
図星だ、これは盗撮魔で間違いない。
俺と雛世は凛々亜とは反対側からヤバい人に近づく。
凛々亜の問い詰めに耐えられなくなったヤバい人は、俺らの方向に向かって逃げ出した。
――よし、作戦通りだ!
ヤバい人はこっちに向かって走ってくる。
俺は逃げ道を塞ごうとヤバい人の前に立ちはだかるが、逃げるスピードを全然落とそうとしない。
「ちょっ、ちょっと待て! 止まれ! ぶつかるぞっ!」
「いやああああ!」
悲鳴を上げながらヤバい人は俺にぶつかってきた。
ぶつかる瞬間、俺はふと思った。
このヤバい人、女性なのは間違いない。
しかし、女性にしてはやたら身長が高いということに気がついたのだ。
遠目じゃよくわからなかった。失敗したな。
えっ? 身長が高いとどうなるかって?
説明しよう。
俺は今、走ってくる女性の行く手を阻むために、少し中腰気味に待ち構えている。
彼女は背が高いので、中腰になった俺の顔面と彼女のおっぱいがちょうど同じ高さになるのだ。
つまり、俺の顔面めがけて猛スピードのでっかいおっぱいが迫って来ることになる。
ぽよ〜ん。
……おっぱいの反発係数、意外と高いんだな。
でっかいおっぱい、with猛スピード――運動エネルギーは速度の二乗に比例し、質量にも比例する。
クソデカ運動エネルギーに圧倒された俺は、簡単に吹っ飛んでしまった。
走馬灯のように今までの思い出が頭をよぎる。
はは……こういう死に方も悪くはないのかな。
そんな馬鹿なことを考えていると、どこかで聞いたことのある声で話しかけられた。
「あ、あれ……? 朝陽くん……?」
ちょっとおっとりした声。
俺はその声でなんとか三途の川を渡らずに
起き上がってそのヤバい人の姿を改めて見る。
高い身長、晴人の出ている試合の撮影、おっとりした大人っぽい声、そしてでかいおっぱい。
俺の頭の中でジグソーパズルのようにピースが繋がっていく。
「あー! やっぱり朝陽くんだ! 久しぶりー!」
「あっ……あやめさん!?」
その『ヤバい人』の正体は、俺が知っている人だった。
何を隠そう彼女は、晴人の姉である