機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE   作:meitoken

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ゴールデンウィークの休みだったから、少しペース早めで行きます。


PHASE-10 父の呪いと友

アスランは迷っていた。デュランダル議長に会おうとカガリの特使としてプラントに向かった彼であったが、待たされた果てに聞いたのは連合による強引な開戦と核攻撃である。辛うじて迎撃に成功したものの、ユニウスセブンの被災者が報復を叫んだように今度はプラントの人々が報復を叫んでいる。そして、この連鎖の元凶は父の、パトリック・ザラの亡霊だ。

 

俺は、永遠に父の呪縛からは逃れられない……

 

迷っている自分にデュランダルは道を示してくれた。先程工廠で見せられた新型の機体ZGMF-X23Sセイバーを自分に託すと彼は言ってきた。それはつまりザフトに戻るという道であった。確かに現状で、アレックス・ディノの自分が出来ることはない。

 

『ザラ議長とて、最初からあのような人だったわけではあるまい?』

 

『だが、君に出来ること、君のすべき事……それは君自身が一番よく判っていることではないかな?』

 

デュランダルの言葉がよみがえる。父を最初から、あのような悪だと息子の自分さえ見ているのに…政治的には対立陣営のデュランダルが父を擁護した。しかし、まだ彼を信じることは出来ない。会談が終わった後に出会い、会談時に映像で見た怒れる市民を鎮めた議長のラクス・クライン、ミーア・キャンベルの存在もある。そして、今地球にいるカガリやキラのことだ。

 

 

 

「くそっ!」

 

閣議が一息つきフブキは自分の執務室で忌々しげに机をたたきつける。その彼をリュウ・アスカは労るように見つめている。只でさえ今オーブは大西洋連邦と同盟を結ぶ道を歩みつつある。それに加えて先日の開戦と核攻撃でウナトらはより強く同盟を主張し、中立を貫くというカガリの主張は今にも消えようとしている。しかし、現状を維持しようとすれば国は再び連合に焼かれるだろう。そうなれば火の粉を被るのはかつてと同じく国民だ。自分とカガリに首長達を押さえる力はない。必要なのはウズミの力なのだ。自分たちではない。

 

このままでは父上が託した灯は消えてしまう……しかし、どうすれば。

 

フブキは閣議に出ることは適う物の、正当なアスハ家の人間でないことを理由にセイランからは邪魔者扱いされ、彼の発言権は無いに等しい。つまり、お飾りだ。しかし、それでも自分はセイラン一派にとって価値があった。ウズミの子であり、前大戦の経緯でカガリと共に国民から英雄視されている自分に娘を嫁がせる。そうすればアスハ家の親戚と言うことで実権を握ることが出来る。つい昨日セイラン派の首長家の娘が夜分に彼を訪ねてきた。その日は侍女のマーナのおかげでお引き取り願うことは出来たが、これからもこういったことは続くだろう。実際、これも相まってフブキもカガリほどではないがかなり疲弊していた。

 

「あの人達の頭には実権を握ること以外のことはないのかしら…」

 

リュウの苛立ちも露わな疑念をフブキは肯定する。

 

「無いんだよ、実際に。カガリの結婚話も急速に進んでいる。今に俺を大西洋連邦の高官の家に婿入りさせるくらい言い出すだろうよ。」

 

そうなれば、フブキはオーブにいられない。アスランがいないのを良いことに、ユウナはカガリに今まで以上に言い寄っている。

 

そう、現状でセイランが欲しいのはオーブの実権と保身だ。国と世界のことなど二の次である。フブキは今ここにMSがあればセイラン一派を踏みつぶしてやりたい気分になった。

 

「ミネルバも危うくなるのだろうか?」

 

声をかけたのはかつてフブキやカガリがともに戦った地球軍艦アークエンジェルの副長だったナタル・バジルールだ。彼女は現在、偽名でアスハ家お抱えのSPとして活動している。元軍人で規律に厳しい彼女はSP達をよくまとめ上げていた。かつてはオーブを連合に着くべきと考えていた彼女も、かつての戦争の教訓で今は中立派になっている。その彼女でさえ、憤っている。

 

「……ああ。」

 

 

 

アスランはさっきからしつこいノックに苛立ちながらドアを開けると、そこにはよく見知った顔が三つ立っていた。

 

「イザーク…?」

 

「きっさまぁぁ!!」

 

アスランが呆然と呟くと萌葱色のスーツを着たイザーク・ジュールが怒鳴り掴みかかってきた。その後ろでは「もう、うんざりだ…」という調子で黒いジャケットを羽織ったディアッカ・エルスマンと「また始まった」と言わんばかりに紺のスーツを着たニコル・アマルフィが入ってきた。

 

「何だ、いきなり!」

 

アスランはイザークを突き放すと荒口調で問う。

 

「それはこっちの台詞だ、アスラン!」

 

「まあまあ、イザーク落ち着いて…」

 

ニコルが押さえようとするが、昔のようにイザークは「五月蠅い!」と一蹴し、アスランに向き直る。

 

「俺たちは今無茶苦茶忙しいっていうのに、いきなり評議会から呼び出されてきてみれば貴様の護衛監視だと!?」

 

「外出希望してるんだろう?お前。」

 

ディアッカがいつもの口調で確認を取り、ようやくアスランはイザークが不機嫌な理由を察した。

 

「護衛……監視?お前達が…?」

 

呆然と呟くアスランにニコルが声変わりした声で答える。

 

「ええ、まあ……事情を知っているどこかの誰かさんが僕たちを寄越したんでしょう?」

 

アスランの頭にデュランダル議長の顔が浮かんだ。しかし、イザークは現在隊長職に就いているはずだ。これで隊長が務まるかと不安を覚えるが、その辺は付き合いの長いディアッカとニコルが何とかフォローしているのだろう。

 

「で、どこに行きたい?」

 

「これで買い物とか言い出したら俺はゆるさんぞ!」

 

アスランは三人の変わらない様子を嬉しく想いながらも含みのある口調で答えた。

 

「そんなんじゃないさ。ただ、ちょっと……キール達の墓に。」

 

 

 

四人は墓地へと辿り着き、三つの墓に花を添えて敬礼する。キール・フロック、ミゲル・アイマン、ラスティ・マッケンジー。彼らと同じクルーゼ隊の隊員で今はもういない若者達だ。ラスティとミゲルは今の自分たちの始まりと言うべきオーブのコロニー、ヘリオポリスで命を落とした。そして、キールは地球で自分が撃破し、ネビュラ勲章を受領したMSストライクに討たれた。そしてそのパイロットは他でもないキラ・ヤマトだ。

 

「積極的自衛権の行使……」

 

ザフトの動向を聞いたアスランはやはり、といった具合に呟く。

 

「仕方なかろう、宣戦布告までされた上に核まで撃たれたとなっては……」

 

イザークが痛いところをつかれたように答え、ディアッカが続ける。

 

「第一陣の時には俺たちも迎撃に出たけど、奴ら間違いなくあれでプラントを壊滅させる気だったぜ。」

 

「何で、同じ事を延々と繰り返すんでしょうね…」

 

以前は自分とイザークの間を取りなしていたニコルの声も暗い。彼の言うとおり、戦えばミゲル達のような犠牲は必ず出る。何故人は同じ事を繰り返し続けるのか?そして、以前キラに聞いた自分が本当に戦う物の答えも未だ見つからない。

 

「で、貴様は?オーブはどう動く?」

 

イザークが試すように問いかけるが、アスランは答えられない。カガリとフブキが賢明に首長会を抑えているが、果たして……

 

次にイザークが詰め寄るように語りかけてくる。

 

「……戻ってこい、アスラン。」

 

アスランは驚いてイザークを見やる。

 

「事情はいろいろとあるだろうが、俺が何とかしてやる!だからプラントに戻ってこい!」

 

「イザーク…」

 

「本当なら俺もこいつらも、とっくに死んでいたはずの身だ。」

 

ディアッカは前大戦でザフトを離れて自分たちと共に行動し、イザークも故意に民間のシャトルを撃墜している。ニコルはスパイを手引きした嫌疑をかけられた。いずれも銃殺を免れない罪状だ。

 

「だが、戦後の法廷でデュランダル議長は……」

 

『大人達の都合で始めた戦争で若者を送って死なせ、今またそこで誤ったのを罪といって裁いてしまっては、誰がプラントの明日を担うというのです。私は、辛い経験をした彼らだからこそプラントの未来を担って貰いたいと思います。』

 

「だから俺は今も軍服を着ている…それしか、出来ることもない。だから、お前も何かしろ。それほどの力、只無駄にするつもりなのか?」

 

確かに、一介の護衛アレックス・ディノである今の自分にはMSや銃の扱いに長けた能力を発揮することは出来ない。しかし、アスラン・ザラとしての自分ならば……

 

ヤキン・ドゥーエでの出撃前にカガリが口にした言葉が甦る。

 

『出来ること。すべき事。望むこと。みんな、同じだろ?』

 

俺に出来ること、俺がすべき事、俺の望むこと、それは……

 

 

 

カガリは閣議が終わるとフブキと共に足早にミネルバへと向かった。ザフトが積極的自衛権の行使として連合との交戦状態に入ったのだ。そして、オーブはこれを機に大西洋連邦との同盟を締結することになってしまったのだ。自分たちは命がけで地球を救ってくれた彼らを裏切った。せめて、一言詫びを入れたいと思い、ミネルバへと向かった。案内の兵に伴われ、ブリッジに向かっているところでシンに出会った。後ろにはレイやルナマリアもいる。

 

「何のようだ……?」

 

思った通り、シンは敵意をあらわにした口調だ。後ろの少年達も軽蔑の眼差しを向けている。

 

「国を滅ぼした連合と今度は同盟か……どこまでいい加減で身勝手なんだ!アンタ達は…!」

 

カガリは言葉を返せなかった。どんなに言い訳をしてももう自分たちは敵同士なのだ。

 

「敵になるんなら、今度は俺が滅ぼしてやる……こんな国!」

 

シンは吐き捨てて立ち去ろうとしたが、唐突にフブキが口を開いた。

 

「滅ぼすのは良いが……その意味を判って言っているのか?」

 

「何!?」

 

シンが掴みかかったが、フブキは動じずににらみつける。

 

「他人のせいにできないことをするんだぞ?」

 

「!このぉ……」

 

シンが殴りかかったが、間に入ったシオンがその拳を正面から受け止める。

 

「やめろ、言っていることは正しい。」

 

シオンの言葉にシンは舌打ちをして先輩の手を振り払い、そのまま立ち去った。レイとルゥは律儀に敬礼し、カインとアリスは軽く頭を下げてそのままシンの後を追った。最後にすれ違ったルナマリアを見送り、シオンがたしなめるように言う。

 

「今のあいつには何を言っても無駄だ……」

 

一言だけ言い残し、シオンとミサキも通路を曲がった。

 

 

 

 




この後、シンは覚醒します。

尚、ネタバレでこの後からシオンはだんだんアスランより早くミネルバで孤立します。シオンの場合は、ミネルバの連中を見限るに近いです。
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