機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE   作:meitoken

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オーブ沖の戦闘です。


PHASE-11 血に染まる海

追い出される形でオーブを出航したミネルバの脇にはオーブの偵察ヘリが飛んでいた。個人的な感謝ということでフブキ・クラ・アスハが領海線まで見送ると半ば強引に同行しているのだ。

 

タリアはカガリの詫びだけでも充分と思ったのだが、フブキの場合は少々度が過ぎていると思った。あの兄妹の態度から同盟は二人の意志ではないのだろう。それこそあのタヌキ、ウナト・エマに説き伏せられたと言ったところだろう。ヘリはもう領海を出るというのにまだミネルバに寄り添っている。いい加減に戻ってもらおう、そう考えていたところでバートが上ずった声で報告する。

 

「十一時の方向に地球軍艦隊!数およそ20!内、空母四隻を確認!更に領海線上にオーブ軍艦隊!」

 

何だと?オーブの領海を出た途端に連合の艦隊に出くわし領海線上にもオーブだと!偶然にしても地球軍側は空母四隻とは数が多すぎる。タリアは事態を悟った。同時にヘリのフブキからも通信が入った。

 

〈グラディス艦長!〉

 

フブキも焦っていて見えた。彼とカガリがこの待ち伏せに関与していたかは判らないが、タリアは事態を説明する。

 

「ご覧の通り、本艦は地球軍艦隊に待ち伏せされており、そちらの領海にも戻れません。」

 

〈誤解しないでいただきたい。私は勿論ですが、妹もこうなるとは思っていなかったのです。いえ、犯人に見当はつきますが。〉

 

芝居にしては見え透いている。彼女は論外だ。タリアの主観だが、おそらく二人はこれに関しては白だろう。しかし……

 

「戦闘になるのは時間の問題です。すぐに領海に引き返してください。」

 

〈しかし!〉

 

フブキは心外な顔になる。が、タリアは厳しい口調で言い放つ。

 

「これ以上、本艦に同行する場合はそちらを敵機として撃墜することになります!もう一度言います。領海へ引き返してください。」

 

モニターのフブキは断念し、敬礼をした。

 

〈了解……無事、カーペンタリアへ着くことを祈ります。シオンとミサキにも伝えてください。〉

 

「こちらこそ、ここまでのご同道に感謝します。」

 

タリアも少しほほえみながら敬礼を返し、モニターを切った。

 

 

 

空母四隻を含む二十隻の艦隊に対してミネルバは空を飛べるインパルスとアナー、ホバー移動の可能なグラウンドと、シオンのオーダーで艦内で組み立てたホバーユニットを装備したルゥ機にサポートに回した。ぶっつけ本番だったが、元が推力の高いジンハイマニューバのスラスターから組み立てたためにうまく行っている。残りの四機のザクは艦上からの迎撃する戦術に出た。

 

「いけーーーー!!」

 

シンは雄叫びを上げ、ウィンダムの群れに突っ込んだ。ビームがコクピットに吸い込まれ、爆発するが、すぐにまた別のウィンダムが撃ってくる。シンはその射線を呼んでかわし、ビームサーベルで両断する。アナーはその機動力でウィンダムを翻弄し、ライフルで数機を落とす。グラウンドがビーム砲とカリドゥス改を、ルゥのザクもウィザードに装備されていたリニアキャノンでウインダムを狙い撃つが、空母から次から次へと出てきてまるで減ったような気がしない。

 

「こんなところで、やられてたまるかぁーー!!」

 

アスハ家の兄妹への怒りなどとうに飛んでしまい、シンはひたすらに敵の群れへと飛び込んでいった。

 

オーブが俺たちの死を望んでいるのなら、生き延びてやる!

 

しかし、多勢に無勢。空母が四隻もいる艦隊に対して宇宙艦一隻とMS八機では必然的に追い込まれていく。ザクがとりつこうとしているMSやミサイルを必死に撃ち落とすが、撃ち漏らしたミサイルは直撃し、装甲をえぐる。

 

 

 

フブキはヘリで滞空しながら戦況を見守っていた。

 

「くそっ、多勢に無勢だ!セイラン……!」

 

まだ条約締結でないというのに、万が一これが悪手になったらどうする気なのだ!

 

「シオン…ミサキ……!」

 

 

 

「なるほど、確かによく粘る艦だな。ザムザザーはどうなっているか?」

 

「は、準備でき次第発進させます。」

 

艦長は単独で粘るミネルバの戦闘力を賞賛しながらも、上から回された新型MAのテストも実行に移した。

 

「身贔屓かもしれんが、私はこれからの主力はああした新型のMAだと思っている。ザフトの真似をした蚊蜻蛉のようなMSではなくてな。」

 

そして、母艦から一機の大型MAが発進した。YMAF-X6BDザムザザー……連合が開発した新型のMAだ。かつてのMAは宇宙空間の戦闘機として運用されていたためにジンに手も足も出なかった。だが、その反省を活かして上ではMAの運用方法それ自体を大幅に見直した。

 

ヤキン・ドゥーエ戦で連合の核攻撃を阻止したというMSと追加装備。連合ではアレを一機のMAとして運用する方法を考えた。これによって、連合のMAは従来の戦闘機の延長ではなくMSとは用途も大きく異なる大火力兵器として発展した。

 

ザフトの最新鋭艦と最新鋭のMSはそのテストの相手としても最適だった。

 

 

 

カインはグラウンドのホバー能力をフル活用し、後方のウィンダムに向けて背面のビーム砲を撃つ。息を切らしながらゲージを見ると、エネルギーがかなり減っていた。これ以上エネルギーを無駄には出来ない。カインは機体をMS形態に戻し、バーニアを全開にして上空の敵機に斬りかかる。飛行用のジェットストライカーの翼を切り、体勢を崩した機体を足場にMAに変型、ビームホーンで別の機体に突っ込んでコクピットを貫く。そこから更に後ろの機体に飛びかかる。さながら狼のような動きをしていた。

 

そこにセンサーがUNKNOWNを捉えていた。不明機を確認するとアリスがその形状に驚きの声を上げる。

 

〈な、なんなのあれ!?〉

 

〈MAか?〉

 

「にしても大きすぎる!」

 

シオンの冷静な分析にカインは狼狽するが、ミサキは更に悪い状況を告げる。

 

〈あんなのが取り付いたらおしまいだわ。〉

 

そうだ!あんなのに取り付かれたら終わりだ!

 

彼が焦っている間にミネルバがタンホイザーを新型の巨大MAに向けて発射した。陽電子の奔流が左前方の護衛艦を焼き払うが、肝心のMAは無傷であった。この展開には冷静なレイやルゥも唖然としていた。

 

〈タンホイザーが効かないだと?〉

 

〈厄介だな…〉

 

「厄介どころじゃないぞ!どうする!?」

 

〈落ち着け!俺たちは艦の守りに専念しろ!MAにはシンが向かっている!〉

 

シオンの言葉を聞いてインパルスの位置を確認すると確かにインパルスは先ほどのMAと交戦している。しかし、MAは見かけによらず素早い上に巨大なクローも装備している。あれでは接近できない上に今もインパルスのビームをリフレクターではじいた。さっきのタンホイザーもあれで弾いたのだろう。

 

 

 

アリスはウィンダムの相手に再度集中した。アナーの機動力はジェットストライカーを装備したウィンダムより上だ。ビームライフルで一機撃墜し、そのままMAに変型して背中に装備したリニアキャノンで護衛艦を一隻ブリッジを潰す。だが、焼け石に水。ウィンダムはアナーを取り囲むが、MA形態の機動力で何とかライフルの攻撃を躱す。

 

「くっ、このままじゃあ!」

 

このまま死にたくない!まだシオンのことを諦められない!

 

その一年でアリスは粘り続けていた。

 

 

 

了解に陣取った護衛艦群で司令官のトダカ一佐は孤軍奮闘するミネルバを見つめていた。

 

「以前国を焼いた軍に味方し、懸命に地球を救ってくれた艦を撃てか。」

 

しかも、国家元首を送り届けてくれた以上はオーブにとっても恩人だ。つい先ほどまで同道していたフブキのヘリに至っては領海内ギリギリで滞空し続けている。

 

「こういうの、恩知らずって言うんじゃないかと思うんだよな…俺は。政治の世界にはない言葉かもしれんが。」

 

内心、セイラン派のやり口にトダカは憤りを隠せなかった。だが、命令には逆らえない。ならば、自分なりのやり方でセイランに刃向かってやろう。

 

「警告開始、砲はミネルバの艦首前方に向けろ。絶対に当てるなよ?」

 

「司令、それでは命令に…」

 

「知るか、俺は政治家じゃないんでな。」

 

セイランは沈めても良いと言っているが、要は領海に入れなければ良いのだ。最低限の義理立ては出来る。

 

「ザフト軍艦ミネルバに告げる。貴艦はオーブ連合首長国の領海に接近中である。速やかに転進せよ。」

 

 

 

オーブ艦隊が転進を促す警告をしてきた。しかし、今転進すればミネルバは確実に沈んでしまう。ミネルバは進路をそのまま領海ギリギリまで進んでいたが、オーブ艦隊は威嚇射撃を行ってきた。

 

ミサキはそれを聞き、歯ぎしりした。

 

「くっ、やっぱりこうなるわよね!」

 

ウズミがいない今、カガリとフブキでは首長家を抑える力がない。大西洋連邦との同盟を推し進める一派によって軍も牛耳られているのが分かった。

 

その時、メイリンの叫びが聞こえた。

 

インパルスがMAに捕まり、PSが落ちたのだ。 敵のクローにより片足を失ったインパルスはそのまま落下していった。

 

 

 

シンは落下していく中でこれまでのことを思い返していた。オーブで家族を殺され、力が欲しくてプラントへ渡った。しかし、敵にMSを奪われ、仲間は殺された。そして、自分も今死のうとしていた。

 

いやだ……俺はこんなところで終わりたくない!こんな事で、こんな事で俺は……!

 

頭が急にクリアになった。シンはインパルスの体制を立て直し、飛行を続けていた。

 

「ミネルバ、メイリン!デュートリオンビームを!それから、レッグフライヤーとソードシルエットの射出準備を!!」

 

インパルスはMAを振り切り、ミネルバから照射されたビームを受けた。これがインパルスを初めとしたセカンドシリーズの最大の特徴であり、このシステムを用いることでほぼ無限に活動を行うことが出来るのだ。PSが回復したインパルスはMAのビームをかいくぐり、ビームサーベルを突き刺した。直接攻撃にはリフレクターも役には立たず、MAは海中に沈み、爆散した。

 

「シルエット射出!」

 

〈は、はい!〉

 

シンは自分でも驚くくらいの的確な指示と操作で換装を終了し、艦隊に突っ込んだ。

 

「うおぉぉぉぉぉお!!」

 

凄まじい雄叫びと共にエクスカリバーを振るって戦艦を切り刻み、次の標的へと移った。何隻沈めたか判らなくなった頃、地球軍艦隊は撤退していた。

 

〈インパルス、シン!帰投してください!〉

 

メイリンの言葉でシンは我に返り、機体をミネルバに向けた。

 

俺はもう、あの頃の無力だった自分じゃない……

 

 

 

「あの、戦い方…」

 

シオンは思わず圧倒された。今までと、まるで違う。まるで鬼のような戦いぶり。

 

〈アスランも…キラとユリもあんな時があったわよね?〉

 

「ああ……」

 

ミサキが言うとおりだ。共に戦うようになってから、キラとアスランとユリの三人は時折あのような凄まじい戦いを見せていた。それだけではない。リュウもあのメンデルの初陣で近い動きをしていた。あの時のリュウの動きはとても素人の物ではなかった。

 

シンのアレもそれと同じだ。

 

 

 

フブキは領海内で戦闘を見守っていたが、インパルスの戦いぶりに唖然としていた。MAに捕まった後、突然動きが変わり、新型を撃破し、空母二隻込み六隻の戦艦を沈めた。その戦いぶりにはヤキン・ドゥーエで見たキラやリュウの戦いと重なる物があった。

 

シン・アスカ……リュウの弟で現在はザフトのMSパイロット。彼は、一体……

 

 




トダカ一佐のあのやり方、あそこで惚れ込みました。
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