機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
「またおうちなくなっちゃった。」
「俺たちの部屋、どこだ?」
襲撃者を退けた翌日……怯えていた子供たちは元気を取り戻して廃墟を歩き回り、カリダがたしなめていた。
一方、格納庫ではバルトフェルドから連絡を受けたユリ、シュウ、イリア、レナも合流して昨日の話をしていた。
「アッシュ?」
「ああ、データでしか知らんがね。まだ正規軍にしか回されてないはずの機体だ。」
「それがラクスさんを狙ってきた。ということは…」
ザフト正規軍に配備されたばかりの最新鋭MSを持つ特殊部隊が襲ってきた。マリューの分析する通りなら、そんなものを手配してまだ友好国のオーブに派遣するなどという危ない橋を渡る真似をするなどと………
「なあ、これでプラントに引っ越すのはやめた方がいいんじゃないか?」
イリアの言うとおりだ。もし、ここにいる全員が考えている通りだとするならば、今度はプラント行きのシャトルが撃ち落されるなどということになりかねない。
八方ふさがりという表現が相応しい事態に黙り込んだ一同の元に、一台のリムジンがやってきた。そこから降りてきたのはよく知る顔であった。
「おい、なんだ!この有様は!?」
「一体、何があったの?」
フブキとリュウだ。二人の後ろにはユリも知っているカガリの侍女のマーナがいた。更に後ろにはナタル・バジルールもいた。
「ラミアス艦長、バルトフェルド隊長、ご無事でしたか。」
ナタルが軍人時代の癖で敬礼し、二人もうなずいた。
「ナタル、あなたまで…何かあったの?」
それに対し、マーナが一枚の手紙を出した。
「これを…カガリお嬢様が、キラ様にと。」
「カガリさん……もう外出できないからマーナさんが預かったって。」
マーナとリュウが暗い口調で話す。二人の不穏な様子にユリはただならぬ物を感じる。
「何かあったの?急病か、怪我?」
「その方がまだ良いよ!」
フブキが投げやりな口調で吐き捨てる。普段クールな彼を知る者にとって、この様子は明らかに異常だ。その答えはリュウが暗い口調で教える。
「結婚するの……ユウナ・ロマと…」
「ええ!?」
全員が驚きの声を上げた。
「カガリさん、公務以外はもうセイランの屋敷に入れられて……どうなっているのかちっともわからないわ。」
「おい、兄貴さえ会わせてくれないのか?」
イリアの問いにマーナが答えた。
「ええ、そうなんです!このマーナにもどうなるのか見当もつきません!それは、ユウナ様とのことはご幼少のころから決まっていたことですし、カガリ様さえよろしければと思っておりました!」
カガリを幼少のころから見守っていたマーナは母親が子供を心配するような口ぶりだが、次第にエスカレートしてくる。
「でも、この度のセイランのやりようと言ったら何かにつけてご両親がいらっしゃらないからこちらでとばかりで!!」
マリューとバルトフェルドに文句を言い続けているマーナを余所にキラが手紙を読み上げている。ラクスやユリも脇からその手紙をのぞき込んでくる。そして、手紙の一文に目がとまった。
『同封してある指輪はアスランから渡された物だ。お前から返しておいて欲しい。』
「俺は式への出席も許されなかったよ!大体、あんな腑抜けを絵に描いたようなのがカガリの婿だって事自体俺は納得できないんだ!あんなのが婿ならばナダガ家のワイドかリンゼイ家のファンフェルトの方がまだましだ!ホクハ家のガルドやサカト家のホースキンならもう文句はないさ!イーリヤ家のサースでもあれに比べれば遙かに良いと思うんだぞ、俺は!!」
「わ、判った。判ったから。」
「とにかく少し落ち着けって。」
イリアがフブキの愚痴の連射攻撃に押されており、シュウが必死に宥めている。だが、そこにマーナが介入する。
「それだけではございませんのよ!フブキ様をこれから同盟を結ぶ大西洋連邦の方へ婿養子に出される話まで勝手に薦めて、お嬢様を一人っきりにしようとしているのです!挙句にリュウ様をプラントへ行かせる手配まで進めようとしておりまして!!」
「そ、それはまた随分と急な…」
「セイランはカガリさんを孤立させる気なのよ!でなければ、急にフブキの大西洋連邦への婿入りなんて言うわけないでしょう!」
リュウまで乱入してバルトフェルドをも巻き込んで三人は凄まじい文句を言っている。
「……SPとして私も警護として入ろうとしたが、許してもらえなかった。」
ナタルの申し訳なさそうな口調にレナが唖然とする。
「そんな、ナタルさんはアスハ家のSPなのに。」
徹底している。本当に、セイランはカガリを知り合いと一切会わせようとしていない。
キラは沈痛な面持ちで指輪を握りしめていた。弟が怒りを抱いているのがユリには手に取るように判った。そして、ユリも感じた。
間違ってるわ、カガリの選択……オーブの道も……
ユリから見ても異常だ。フブキでさえカガリと会うことを許さず、結婚式への出席さえさせようとしない。どう考えても、カガリを孤立させる魂胆が見え透いている。二人もそれに逆らうことができない。
結婚式の当日……この日のためのウェディングドレスを着たカガリはどことなく自分のことのようには思えなかった。セイランに入ってからというもの、清楚な淑女らしい教育をユウナの母から受け続けていた。キラやユリが駄目なら、せめてフブキに会わせてほしいと願ってもだめだった。
大戦のとき、あの艦の副長だったナタルもSPとして屋敷に入ることを希望したがセイランのSPに阻まれてしまった。
まるで、籠の中の鳥だ。
カガリの頭の中にはアスランと出会った頃の記憶がよみがえる。あの無人島で出会って夜明かしをし、次にキラを殺して憔悴したアスランと再会し、ハウメアの守り石を渡した。交換のように渡された指輪はマーナに託した。取り上げられるよりはキラに託したかった。
せめて、自分じゃない誰かにはめてほしい。勝手な言い分だろう。
アスハ家の地下ドックでキラとマリューはある場所へ移動していた。ユリとレナもいる。
「本当にそれでいいのかしらね。」
「ていうか、もうそうするしかないから。」
ユリも同調する。
「何が正しくて間違っているか……私達もわかりません。」
「ええ、でもだからと言って何もしないなんて………それじゃあ、多分ヘリオポリスにいたころの私たちに逆戻りだと思います。」
あの頃、彼らはヘリオポリスで平和を謳歌していた。外の世界で起きている戦争は自分に関係のないことだと思っていた。だが、あの日それが間違いだと思い知らされた。何も知らなかったことだと。
あきらめるわけにはいかない。わかっているのに何もしないのも……その結果を、彼らは身をもって知っている。
そのために行かなければならない。ここにある、彼らにとって思い出深い白い艦……これは、そのためにある。ずっと、ここに眠らせてあげればよかったかもしれないが……
LCAM-01XAアークエンジェル……かつて、地球軍がヘリオポリスで開発させ、ザフトから『足つき』と恐れられた艦……戦後はオーブへひそかに匿われ、修繕されていた。出航せずに済めばよかったこの艦が再び飛ぶ時が来てしまった。
カガリは窓の外に移る国民たちに手を振っていたが、その目からは涙がこぼれていた。化粧が崩れてしまうのではないかと。
ウズミが託した灯を捨ててしまった。理念を選んだ末に家族を喪ったシン・アスカ……彼のような子供を作らないために、カガリは理念を捨てた。
あのヤキン・ドゥーエ前での重ねたアスランとの唇も……全て、裏切った。もうアスランだけではない。生き別れた姉弟だったキラとユリにも、フブキ、リュウ、レナにも会えない。もう今までのカガリ・ユラ・アスハには戻れない。これから自分は髪を伸ばし、好きでもない男のしとやかな妻を演じる。
でも、それでこの人たちが幸せになれるなら………
式場に着いた時、ユウナが訪ねてきた。
「うれし泣きだろうね。当然、その涙は。」
あからさまな優越感が込められた目をカガリはにらみ、顔をそむけた。
「機関定格起動中、コンジット及びAPUオンライン。パワーフロー正常。」
操舵席に座るアーノルド・ノイマンが二年ぶりに艦を起動させる。ラクスもまた以前とは違う陣羽織でダリダ・ローラハ・チャンドラ二世と共に管制席に座っている。マリューを始めとしたほかのクルーは全員、オーブ軍の制服を着ている。
「さてと、外装衝撃ダンパー出力30%でホールド、気密隔壁及び水密隔壁全閉鎖を確認。生命維持装置正常に機能中。」
システムの調整を進めるバルトフェルドにマリューが声をかける。
「あの…バルトフェルド隊長。やっぱり、こちらの席にお座りになりません?」
マリューが艦長席を推薦するがバルトフェルドは「いえいえ。」と言って断る。
「もとより、人手不足のこの艦だ。状況次第で僕は出ちゃうんだし。」
バルトフェルドは指揮官としてもマリューよりずっと優秀だ。彼がやった方がいいと思ったが、断られた。確かに彼はパイロットもやらなければならず、彼用に調整されたオーブの最新鋭可変量産型MSMVF-11Cムラサメを密かに運び込んでいる。
「それじゃあ、ナタルは…」
ならば、ともう一人いる自分以上に指揮能力の高いCICのナタル・バジルールを推薦しようとするが…
「お言葉ですが、私は先の大戦から本艦では副長の任に付いております。任官した者がおられる以上、艦長職に就くのは規律上問題です。」
以前と変わらない、事務的な理由で断った。しかし、その言葉の裏にある物をマリューは感じた。
「そこはやっぱり貴女の席でしょう、ラミアス艦長?」
後ろの席にいるラクスとチャンドラも笑いかけている。それを確認したマリューは頷き、二年ぶりに艦長席に座った。
「主動力コンタクト。システムオールグリーン。アークエンジェル全ステーションオンライン。」
キラとユリは母と、レナも両親との別れを交わしていた。
「ごめんね、母さん……また。」
「良いのよ。」
またこうして彼らは親の元を離れて戦いへ赴く。だが、ヘリオポリスの時に比べればまだ良い…あの時は別れすら交わせなかったのだ。
「でも一つだけ忘れないでね…貴方達の家はここよ。私は何時でもここにいて…そして、貴方達を愛しているわ。」
母の言葉が二人はひたすらに嬉しかった……一時期、コーディネイターとして産んだことに恨みすら抱いた。だが、例え血の繋がりがなくともこの人は自分達姉弟の母だ。
「父さん、母さん…」
「いや、良いんだ。お前がMSに乗るきっかけを作ったのは私達だ。」
「でも、忘れないでね……貴女もシオンも…私達の大事な子供だから……イリア君やミサキさんと一緒に帰ってきて。」
「…うん。」
ドックでフブキとリュウはマーナと別れを交わしていた。
「じゃあ、行ってくるよ。マーナ。」
「ええ…リュウ様も。お身体にはお気をつけて。」
「はい…」
「お嬢様のこと、お願いいたします。」
深く頭を下げ、フブキもうなずいた。
「注水始め。」
「ラミネート装甲、全プレート通電確認。融助剤ジェルインジェクター圧力正常。APUコンジット、分離を確認。」
続けてチャンドラが発進シークエンスを薦める。
「150,180,常圧弁30、FCS及び全兵装バンクレビテーターオンライン。」
ドックに水が流れ込み、船体が完全に水に沈む。
「フルゲージ。」
「メインゲート、解放。」
メインゲートが開放され、アークエンジェルをつなぎ止めていた拘束アームが解除される。
「機関20%、前進微速。」
ノイマンとバルトフェルドが艦を動かし、アークエンジェルはマルキオ導師とカリダ、子供達に見送られてドックの外へ出る。
「水路離脱後、上昇角30。機関最大!」
マリューの指示に従い、アークエンジェルはゆっくりと海面へ向かう。
「各部チェック完了!全ステーション正常!」
「海面まであと10秒、現在推力最大!」
チャンドラが艦のシステムを報告し、ノイマンが海面への時間を伝える。そして、海の中からかつてザフトに足つきと呼ばれた白い艦が現れる。
「離水!アークエンジェル、発進!」
「X-10Aフリーダム、発進スタンバイ!」
マリューとナタルが艦とMSの発進を指示する。
〈ま、お前さんのことだから心配はしてねえけどよ。気をつけてな。〉
大戦時代からのメカニックでキラにとっても信頼できる下士官のコジロー・マードックが信頼とエールを送り、今回は副操舵をバルトフェルドに譲ったシュウも本職としてこちらにいて、通信を送る。
〈ユリとレナも艦の守りにつくから、安心していってきてくれ。〉
「うん。」
〈俺も行きたいんだがな。〉
MBF-03デュエルペイルのコクピットでフブキがぼやくが、GAT-X303イージスのコクピットでリュウが窘める。
〈貴方が出たら話がややこしくなるでしょ?〉
「アンノウン接近中、アンノウン接近中。スクランブル。」
「第二護衛艦群、出港準備!」
アンノウン接近の報を受けて護衛艦群が出撃する。この時期を狙ったテロリストと思われたが、オペレーターはデータベースを見て困惑する。
「アンノウンって……これはアークエンジェルだよな?」
「ああ、それにフリーダムだ。……ブレイブとアフェクションも?」
式場の祭壇を上り終えたカガリは司祭の言葉を聞きながらもアスランのことを思っていた。彼女も昔はこうして誰かと結婚式を挙げたいと思っていた。しかし、その誰かは間違いなく隣にいる男ではない。司祭が誓いの確認をとるが、カガリは黙りこくっていた。
嫌だ。私が本当に永久の愛を誓いたいのは……
その時、突然下が騒がしくなった。なにやら「軍本部」や「迎撃」という単語が飛び交っていた。
敵?こんな時に?
命令を受けたM1がライフルを構えるが、突然のビームで武装を破壊される。そして、そのビームを撃った主は祭壇の目の前まで近づいてきた。フリーダムだ。ということは……
「キラ!?」
なぜキラがここに!?
ユウナは逃げだし、混乱するカガリをよそにフリーダムは繊細な手つきで彼女を包み込み、そのまま飛び立っていった。敵襲の混乱で倒されたケージから飛び出した鳩がフリーダムと共に飛び立ち、現実離れした幻想性を抱かせた。
「何をする!?キラ!!」
「な、何をしている!撃て、馬鹿者!早く!!カガリが、カガリが!!」
「し、しかし!下手に撃てばカガリ様に当たります!!」
ユウナはフリーダムに連れて行かれたカガリを見て、みっともなくうめく。
全て、うまく行くはずだったのに。カガリを手に入れて、アスハの血筋と権力を得て……邪魔なあの姉弟と男も、フブキも排除したのに!人生の最高潮で!!
鳩たちがまだ共に飛んでいるフリーダムの手の中でカガリは暴れていた。
「下ろせ、馬鹿!こら、キラ!!」
〈カガリ、ちょっとごめん。〉
フリーダムの手が胸のコクピットブロックまで行って、キラが手を伸ばしてきたので反射的にカガリも手を取って中に入った。
「うわ…凄いね、このドレス。」
「お前…!」
「ちょっと黙ってて!つかまっててよ!!」
モニターを見ると、そこにはMA形態のムラサメが二機接近していた。
〈こちらはオーブ軍だ!フリーダム、直ちに着陸せよ!フリーダム、直ちに着陸せよ!〉
「ごめんね。」
キラはその一言だけ入れて、ビームサーベルでムラサメの翼を切り落とした。
急激なGに揺さぶられ、そのまま海に向かったところにカガリのよく知る艦がいた。
「アークエンジェル…!」
オーブ領海に現れたアークエンジェルを迎撃するために出撃した第二護衛艦群の旗艦でトダカ一佐はそれを黙って見つめていた。甲板にはブレイブとアフェクションがいるが、撃ってくる様子はなく護衛艦群も判断に困っていた。
何のつもりなのだ?アークエンジェル……
「本部より入電、フリーダムは式場よりカガリ様を拉致!対応は慎重を要する!」
「ああ?」
国家元首を拉致?一体、何を考えている?
「包囲して押さえ込み、カガリ様の救出を第一に考えよとのことです。」
否、トダカは気づいた。オーブが世界安全保障条約機構に参加すると言うことは理念を放棄するということ。おそらく、セイランがカガリとフブキを押し切ったのだろう。セイランに限らず、現在の五大氏族は連合の権力にすり寄るしか考えていない。
それで国民を守れるならいいが、連中はそんなもの眼中にない。
目の前に現れたフリーダムを収容したアークエンジェルは潜航し始めた。ブレイブとアフェクションも先に潜行する。
「トダカ一佐!アークエンジェル、潜行します!」
「これでは逃げられます!攻撃を!」
「対応は慎重を要するんだろう?」
その言葉に副官は黙り込んでしまった。トダカはそれをちらりと見た後、背筋を伸ばし、敬礼をした。アークエンジェルが完全に海に沈むまでの間、他の艦からも一切の砲撃はなかった。
まだ、終わりではない。ウズミが託した灯があそこには残っている。結婚式から数日前……フブキはアスハ家の邸宅からも姿を消したという……アークエンジェルにフリーダム、ブレイブ、アフェクション。かつての連合の侵攻でジャスティス、トゥルースと共にオーブを守るべく奮戦した者達。恐らく、フブキも一緒なのだろう。
頼むぞ、アークエンジェル………カガリ様とフブキ様を…この世界の末を。
SEEDで一番好きなアークエンジェルの復活で、少し力を入れすぎました。ちょっとアークエンジェルとミネルバで温度差が出過ぎてしまい、申し訳ございません。
実は掲示板時代でコードギアスもオリジナル主人公を書いており、そっちもやりたいから少し駆け足気味で行きます。
種は自由まで行くので。
後、Δアストレイにいた下級氏族の五人も名前だけ出しました。