機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
ミネルバからは先んじてインパルスが発進した。だが、ドッキングはせずにコアスプレンダーが上半身のチェストフライヤー、下半身のレッグフライヤーをビーコンで誘導する形で飛んでいる。
「あれか!」
コニールからもたらされた情報は地元民でさえ殆ど知らない古い坑道があるとのこと。狭いためにMSで通り抜けることは出来ない。しかし、砲台のすぐ近くへ出てくる上に岩盤も脆いから内側から爆破すれば砲台へ向けて奇襲が出来る。
〈MSでは無理だが、インパルスなら可能だ。〉
〈ドッキングせずにお前は坑道を突破。我々が砲台とMA、及びMS隊を引きつける。早すぎればお前は袋だたき、遅すぎれば俺達がやられる。〉
アスランとシオンから自分が作戦の肝だと言われ、コニールからは前の失敗で住民達の蜂起も鎮圧され、大勢殺された。今度こそ、ここを止めなければならない。
それを聞いたシンも坑道に飛び込んだ。だが…
「って、なんだコレ!真っ暗!?くそっ、本当にデータだけが頼りか!」
視界が悪いにも程がある!一歩間違えば岩盤にぶつかってあの世だ!
「何がお前なら出来るだ、あのやろう!自分がやりたくなかっただけじゃないのか!?」
コレで死んだら、絶対に化けて出てやる!!
インパルスが発進した後、ミネルバからセイバーとザクが発進した。今回はルゥも当初と同じブレイズウィザードで発進している。
「タンホイザー機動、発射の際には射線軸後方に留意。街を吹き飛ばさないでよ?」
ローエングリンの付近からダガーLの部隊と問題のMAゲルズゲーが出てきた。
カインはデータにあったMAゲルズゲーを確認した。
「あれが問題のMA……」
上半身は前大戦の主力量産機ストライクダガーのボディがそのまま使われているようだが、下半身はまるで蜘蛛。古い神話に出てくる蜘蛛の怪物アルケニーのようだ。
〈蜘蛛の化け物ね。〉
アリスが言うとおりだ。オーブにいたMA…ザムザザーが蟹のような甲殻類かと思えば今度は蜘蛛の化け物。連合はどうも今度は大型のMA開発に力を入れているようだ。
ユニウス条約で連合もザフトも数に制限がかかっている。ザフトがザクの換装システムを重視するのに対し、数で勝る連合はダガーに加えて火力と防御力の高いMAを重要視するようになったのが見て取れる。
「どう攻略します?」
アスランに問うと、すぐに指示が来る。
〈MAは俺が。アリスは援護をしてくれ。他は全て陸上からMS隊を引きつけろ。〉
〈了解。〉
ゲルズゲーが前に出てきて、ミネルバのタンホイザーを防いだ。陽電子同士の反発で凄まじい風が巻き起こり、ラドル隊のバクゥは吹き飛ばされて体勢を崩す。グラウンドも吹き飛ばされそうになるが、シオンとミサキのザクが支える。
〈しっかりして!〉
「は、はい!」
〈MAが後方に下がる、俺達はアスランを後ろから撃たせるな。〉
今度は相手のローエングリンがミネルバを狙い、ミネルバは急降下して回避する。敵の指揮官はゲルズゲーを後方に下がらせ、セイバーがそれを追撃する。
〈アスランがMAを叩く!アリスはダガー隊をアスランに近づけるな!〉
アリスはゲルズゲーへ向かうセイバーを後ろから撃とうとするダガーLをビームライフルで撃墜し、更にもう一機をサーベルで両断する。地上からセイバーとアナーを狙うダガーをグラウンドがビーム砲で撃ち落とし、ジェットストライカーのミサイルはレイとルゥのザクがミサイルで迎撃する。
ラドル隊のMSも後ろから支援砲撃を行い、レセップス級とピートリー級もミネルバに取り付こうとするダガー隊を砲撃する。だが、敵の指揮官も相手が盾と槍を同時に叩こうとしているザフトの意図を読んでうまくダガー隊をセイバーにも回している。
「シン、早く!」
場所が狭く、ここではアナーもセイバーを変型させても機動力を十全に発揮できない。あのままゲルズゲーが砲台近くまで下がったら、インパルスは的になってしまう。
シンは視界が殆ど効かない坑道を進んで、データを確認し続ける。
「ゴール!?距離は500!……行けよぉ!?」
コアスプレンダーのミサイルを岩盤へ向けて発射した。ここでダメならもう激突してあの世だ。だが、情報通りだった。岩盤をミサイルが破壊し、その爆発からコアスプレンダーはフライヤーと共に飛び出した。
確かに、近くに砲台があった。シンはインパルスをドッキングさせ、地上に降り立ってダガー隊と迎撃の砲撃を撃つ。
〈雑魚に構うな!お前は砲台を叩け!〉
シオンのザクがケルベロスウィザードのビーム砲で空中から引き返すダガーLの武器を破壊し、撤退に追いやる。フォースシルエットがないから、インパルスはジャンプしながら砲台を目指す。腰のフォールディングレイザー対装甲用ナイフを抜き、ダガーLの一機のコクピットを貫く。
そして、砲台を目指すが徐々に砲台が収容されていく。
間に合え!!
砲台近くのダガーLにもう一本のナイフを突き刺し、収容する蓋が閉じようとする瞬間、シンはダガーLを投げ込み、バルカンもたたき込む。制御を喪ったダガーは蓋の中に押し込まれ、ローエングリンごと爆発。連鎖的に基地の施設を巻き込んだ。
ゲルズゲーもセイバーによって戦闘不能にされ、残ったダガー隊は撤退する。作戦は成功した。
ローエングリンが破壊されたことで市民達は一斉に蜂起、連合が接収した建物に雪崩れ込んで駐留する部隊を襲った。基地を喪った兵士達は市民達の波に押され、ジープで撤退していく。
インパルスとセイバーが街に降り立ち、砲台を破壊したシンは賞賛されていた。だが……逃げ遅れた連合の兵士達が市民の報復で次々と殺されていた。
アリスは不快な気分になるが、すぐにいい気味だと思った。しかし……
「もう良いでしょう?後は我々が捕虜として連行します。」
シオンがMSのコクピットから降りて、市民達の報復を止めに入った。
「なんだよ、邪魔すんな!」
「こいつらのせいで、町の人が大勢殺されたんだ!あんた、聞いてたでしょ!?」
コニールもシオンにかみつく。だが、シオンは冷静に対応する。
「ええ、聞いていました。ですが、もう戦闘は終わっているし彼らは抵抗できない。」
「だから、やめろ?あんただってザフトのエースでしょ!だったら、連合を皆殺しにしろよ!」
「戦えない相手を一方的に殺すのは只の虐殺だ……」
「こいつらは一方的にここに来たんだ!」
「だからやって良いと?」
「なんだよ、さっきから。あんたどっちの味方だ!?」
シンもかみついてきた。
「軍人として、やってはいけないことを伝えている。お前がインド洋でやったことと同じだ。」
あの時のことは、アリスは間違ってはいないと思う。だが、シオンもアスランもミサキも認めない。戦えない相手を一方的に殺したからだ。
三人とも、あそこの民間人を強制労働させていたからやって良いことにはならない、という旨を言っているのは理解できた。
「なんだよ、連合は無理矢理戦争を始めたんだ!だったら、良いじゃないか!!」
コニールに対し、シオンがにらみつけた。
「ひ!!」
「……つまり、ユニウスセブンの被災で連合を支持する人々も、オーブや赤道連合のように無理矢理加盟させられた国も滅ぼせ?」
「て、敵を倒せば戦争は終わるだろう!?」
「お互いそう叫び続けた結末を俺達は見た……あれをもう見たくない。」
敵を倒せば、戦争は終わる。アリスもそう思う。だが……シオンもアスランもそこが決定的に違う。そう感じた。
「シオン、もうよせ。申し訳ない。ただ…彼の言うとおり、逃げ遅れた連合の兵士は我々が捕虜として連行します。」
アスランが仲裁に入って、住民も渋々納得して生き残った連合の兵士を引き渡した。
「…コーディネイターに借りなんか作りたくないわ!」
今、シオンが結果として助けた女の兵士が反論するがミサキが間に入る。
「じゃあ、殺された方が良かったんですか?」
コーディネイターでも、同じ女に睨まれ相手は黙った。
少々の水は差されてしまったが、ガルナハンの住民はミネルバを讃えていた。クルー達はその光景に充実を覚えていた。しかし………
「なんで止めたんだよ、良いじゃないか。」
「だよな。連合のやってることは知ってるくせに。」
「シンと違って、オーブ気分が抜けてないんだろう?」
ヨウランやヴィーノもシオンを罵倒した。が、カインはそう思わない。
いや、違うんだろう。俺にもまだ、よく分からない。だが…シオンはインド洋でシンがやったようなことをアスランと同じく認めていない。
一体、どういう意味で……
敵を倒せば、戦争は終わるとカインも考える。だが……軍でも語り草になる彼らの活躍。自分が止めたような光景を見たくない、といっていた。
「伝説のエースが二人いるんだから、ああいうことにならないだろう。」
また、伝説のエース。ミネルバに来たとき…いや、それより前からシオンはかなり荒れていたと聞いたことがある。もしかして、それとも関係が?
連合がガルナハンを弾圧したから、捕虜として扱わなくて良い。それが間違いだと言っている。それだけは理解できた。
ローエングリンは攻略しましたが、アスランさえ止めなかった報復をシオンは止めました。
ただし、それが原因でシオンはここから孤立し始めてしまいました。