機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
オリジナル同士の絡み行きます。誰と誰かはお楽しみ
国会沿岸都市ディオキアに入港したミネルバ。ここは親プラントの立場を取る国家で、海に隣接したこともあってか観光地もかねている。古い時代の建物が並び立っており、さながらその時代に来た気分にさせてくれる。
そう思ったとき……タリアは基地が妙に賑わっているのを見つけた。そして、妙に高い音楽が聞こえると……
「みなさぁーん、ラクス・クラインでぇーす!!」
空からディンとオレンジの新型機……ザクによく似た飛行MSに支えられたピンクにカラーリングされたザクが降り立った。余りの派手さに一瞬、タリアは目を疑うがその手の上にはプラントの歌姫ラクス・クラインがいた。
アスランはそれを見て唖然とした。知っている。彼女はミーア・キャンベル………デュランダルがラクスの代役を頼んだ少女で、一度プラントで会っている。自分自身が必要とされないながらもラクスは必要とされており、自分がその代役で平和に役立てるならと代役の申し出を引き受けたという。
「おい、アスラン……あれ、誰だ?」
シオンが小声で聞きながら、にらみつけてきた。ミサキも同じ顔だ。
「あ、あれは…」
「ここじゃあ、なんだわ。」
レクルームでは何かと目立つ。場所を変え、アスランに当てられた士官室でシオンが壁に手をたたきつける。
「誰だ、アレは?ラクス・クラインなんて言わないよな?」
あの頃に一緒に戦ったシオンとミサキはキラやカガリほど接する機会はなくとも、何度か話していた。誤魔化せるわけがない。
「あ、あれは…その……」
「贋者なんでしょ?」
ミサキにも詰め寄られた。無理だ…とても、隠し通せない。
「ミ、ミーア・キャンベル……議長の、ラクスだ。」
「なんで代役なんだ?お前とイリアがオーブにいたのを知っていたならラクスだって知っていたはずだろう?」
「そ、それは…」
シオンがため息をついた。
「まあ、良い。それは追々問い詰めるよ。」
基地ではラクスのテーマソングとも言うベき『静かな夜に』のアップテンポバージョンを歌っていた。以前と180°変わった歌だ。基地の兵士達ははしゃいで、ヨウランとヴィーノも飛び出している。が、カインはため息をついた。
「カイン、どうしたんだ?」
「嫌いだ…今のラクス・クラインは。」
「私も。」
シンの問いにカインは淡泊に答え、アリスも頷いた。
「そ、そうなのか?」
「あれじゃあ、どこにでもいる普通のアイドルだぞ。」
「ええ……イメチェンにしたって、ちょっとね。」
ここまで極端だと、カインは疑ってしまう。まさか、あっちが本物で今までのは代役?なんて、あるわけがない。どこのスパイ映画だというのだ?
基地の外で、二台の車が走っていた。ファントムペインのパイロット達だ。
「ったく、せっかくだから見たかったのに。」
「あんた、コーディネイターの歌姫様の歌なんかに興味あったの?」
「教官達が聞いたら、なんて言うか。」
「分かってねえな……あのナイスバディと衣装が良いんだ。」
ソウジはラクス・クラインのライブを…否、彼女のスタイルや衣装の方を絶賛していた。チームを組んで長いこの二人でも呆れ果てるくらいに欲望に忠実で、逆に尊敬するくらいだ。
「けどま…街の連中もコーディネイターをあっさり受け入れて、どういう神経してるんだか?」
「口がうまいのだろうよ。」
ハンドルを握るグレンがあっさりと言い切った。全くもって、嘆かわしい。こんなにあっさりとコーディネイターの軍隊を受け入れて、兵士達と一緒に馬鹿騒ぎをしている。
バックミラー越しに後ろを見ると、ステラは海を眺めてはしゃいでいた。
「ザフトの連中、随分とお気楽ね。」
イリーナが半ば呆れ、アウルも頷く。
「ほんとに。で、俺らまたあの艦追うの?」
「ネオはそのつもりだがな。」
スティングが淡泊に答える。
「黒星続きだとでも?負けてないわよ。」
イリーナが食いつくが、スティングは窘める。
「違うぜ、やれなきゃ負けなんだよ。」
「…ああ。」
アウルもばつが悪そうに頷く。彼らはずっと、そう教えられて育ってきた。
「分かってんだろう、ファントムペインに負けは許されねえんだ。」
三人がそう教えられてきたことを再認識している間も、ステラだけは海を眺めてはしゃぎ続けていた。
二台の車から少し後ろのもう一台、それを運転するのは黒髪の女性………エリス・ティーゲルだ。ネオがスティング達を街に出したので、その見守りだ。
「最適化で記憶操作をされるとは言え、やっぱりこういうのはさせておいて損はないもの。」
上の連中はあの子達を生きたMSの部品程度としか見なしていないが、エリスは彼らを人間として扱っている。グレン達のことも同様だ。彼らはブルーコスモスの施設という檻の中で、連中に都合の良いことしか教えられていない。
身体は相応でも、中身は事実上幼児と同じだ。
「宇宙の化け物と、地上の化け物の食い合いね。」
上の連中を蔑みながら、エリスは先ほどチラリと見たライブを思い出す。どう考えても、怪しい。アレが本当にラクス・クラインなのだろうか?
車を止め、喫茶店でテイクアウトの冷たいドリンクを買ったエリスはサングラスを取り、軍の広報モニターのリピート放送で派手に踊るラクスを見る。
「キャラが違いすぎるわよ。」
軍が拠点とするホテルにミネルバのパイロット達全員が招かれた。オレンジの新型機……ZGMF-X2000グフイグナイテッドのFAITH隊員が見守る中、パイロット達とタリアはデュランダルと情勢を話し合う。
「宇宙の方は、どうなっているのでしょうか?」
シオンの問いにデュランダルは首を横に振る。
「いや、小規模な戦闘は行われているが…それだけだね。」
「地上は?ここやガルナハンのように、連合の強引な開戦に反対してザフトに助けを求める……敵の敵は味方というような風潮を見てきました。」
ミサキの軍人らしからぬ言い方にシンは睨む。
「何言ってるんですか、悪いのは連合なんだから!」
「だからって、私達が絶対正しいなんて理由にはならないでしょ?」
「何!?」
「シン、よせ。議長の前だぞ。」
レイに窘められ、立ち上がったシンは渋々座った。
「ミサキの言うことも一理あるね……戦争とは、結局のところ正義と正義のぶつかり合いだ。アスランやシオンの方が、それは私よりもよく分かっているとは思う。敵を滅ぼせば、終わる…コレはある意味、戦争の終わり方の一つだ。」
「……しかし、そうやって相手を悪だと言って…敵を滅ぼせば戦争は終わると叫び続けて行けばどうなるか………以前、オーブの代表がおっしゃったように私もその考えは変わりません。彼女達も含め、私達が前の戦争で学んだことです。」
ミサキにシンが反論するように言葉を出す。
「でも、敵の脅威があるときは仕方ありません。戦うべき時には戦わないと何一つ……自分達自身さえ守れません。」
「しかし………殺されたから殺して、殺したから殺されて……それで本当に最後は平和になるのか?と以前、言われたことがあります。私はその時、答えることが出来ませんでした。その答えもないまま、私は今も戦場にいます。」
あの時、カガリに言われた答えはアスランも出せずにいる。そして、今またザフトに戻っている。
「………私も、殺し続けて…その過程で肉親や友人を殺し、それで得た平和がよいのかと言われました。少なくとも、ならばどういう平和が良いのか。私もまた、今も答えを探しており……今は、別の敵を感じ取っています。」
シオンの言葉にアスランは息をのんだ。あの時、アスランがカガリに言われたようにシオンもまたフブキに言われた。今のアスランにとっては、キラとカガリがその中に入っている。
だが、別の敵とは…
「……いつの時代も、同じですね。誰かの持ち物が欲しい、自分達とは違う、怖い、間違っている。今のこの時代ならば、正に遺伝子操作でしょう。人類が宇宙へ進出する以前の時代は、宗教や国家…言語や肌の色で相手を違うから敵だと叫び、支配する。そうした戦争ばかりです。」
ルゥがいつもより、饒舌にしゃべる。
「ええ、結局のところ人は何一つ変わっていません。肌の色や宗教が、遺伝子操作に変わっただけです。」
レイもルゥに同調した。
そう、結局父の叫んでいたこともそれだ。遺伝子操作によって新たな境地に達したコーディネイターとナチュラルは違う。自分達は優れていると叫んだ。
「今でも、自分達はナチュラルより優れている。野蛮じゃないって言う人は多いけど…違うってこと?」
アリスの問いにレイは頷く。
「ああ、今ルゥが言ったように本質は同じだ。肌の色が遺伝子操作の有無に変わっただけ、そう考えられないか?」
「極端だが、私やレイはそう考えている。」
二人のある種核心とも言える言葉に全員が沈黙する。数秒後、デュランダルが言葉を紡ぐ。
「そうだな……だが、もしもそれをコントロールしている者達がいたとしたらどうだね?それを口実にして、戦争そのものを産業として扱う者がいるとしたら?」
「…産業って、プラントのMMIやオーブのモルゲンレーテだって軍需産業という意味では同じじゃないですか?連合のアクタイオンだって。」
カインがわかりやすい企業を口にし、シオンも入り込む。
「軍需産業それ自体は悪と断じることは出来ません。軍隊は政府と国民、そしてその国民が作る武器で維持されます。その武器が国防体制にも繋がります。産業とするのは、飛躍しすぎでは?」
「そう、軍の最高責任者として私もそれ事態は悪とは思わない。問題は、その運用だ。アレは危険だ、戦おう。撃たれた。許せない、戦おう。そうして、戦争を煽る者達にとっては戦争はこの上なく、儲かる事だろう。」
「お金のためだけに、戦争を起こすんですか?」
アリスは愕然とした。シンも同じだ。それなら、オーブ時代ニュースでも見た連合の圧力を経て国防のためにMSを造ったオーブなどまだマシな方ではないか?
「ああ……今度の戦争の裏にも、間違いなく彼らロゴスがいる。」
「ロゴス?」
「歴史の裏にはびこる死の商人達……彼らこそが、ブルーコスモスの母体でもあるのだよ。」
ブルーコスモスの母体!?死の商人、ロゴス………!?
その内容にシンは言葉を失う。ブルーコスモスが何故、連合を牛耳れるほどの力を持っているのか。そんな連中がバックにいたのならば、確かに戦争は起こし放題だ。
そんな奴らが設けるためだけに、マユもリュウも殺されたのか!?
シオンはバルコニーでミサキと一緒に涼んでいた。
二人の話している内容は先ほどのアスランとデュランダルだ。あの後、アスランとデュランダルは何かを話しており、シオンとミサキも離れた場所で聞き耳を立てていた。
コーディネイター故に優れた聴覚もある二人が聞いたのはデュランダルがアークエンジェルの行方を調査していること。そして、本物のラクス・クラインについてだった。会話の内容を察するに、デュランダルは彼女に戻ってきて欲しいそうだ。
「どうも妙だな…」
「ええ、あの子がいるのなら本人に戻ってきてもらう必要なんかないはず。」
ラクスがアークエンジェルにいるのはほぼ間違いない。カガリを連れ出すのに、ラクスを残せば厄介なことになる。なら、アークエンジェルにいた方が安全だ。
「大体、本物が戻ってきたらあの子はどうなる?」
普通ならば、代役ご苦労ということで軍と政府から極秘に家族と共にプラントで悠々自適な生活を保障してくれるかそれだけの金額を報酬としてもらう。ということになる。
「それに……評議会や軍令部があの子が贋者だと知っているのか?」
「あ…言われれば!」
ミサキはシオンの言っていることの意味が分かった。そして、漠然とした妙な不安感を抱いた。もし、彼女の起用がデュランダルとその直属員以外の誰も知らないことだとしたら?
もし、そうなら本物を探してどうするのだ?
デュランダルとのロゴスについての談義は省きながらも、自分なりに少し入れました。
シオンとミサキは早速、デュランダルを疑い始めました。