機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE   作:meitoken

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ダーダネルス海峡です。


PHASE-18 蒼天の剣

ジブリールは大西洋連邦大統領コープランドと言い争っていた。最初の攻撃が失敗して以来、連合は世論の支持を瞬く間に失ってしまった。

 

「コーディネイターを倒せ、滅ぼせ、やっつけろ」と燃やした火はもはや弱々しいボヤにもならない。

 

元々組み立てていたプランが出来上がっていない段階でユニウスセブンの落下で地上は壊滅的な被害を受け、それでも強引に開戦して全ての中立国を連合の旗に引き込んでも、まだユニウス条約締結から一年程度しか経っていないのだ。厭戦気分が残っていた上に強引な開戦に強引な同盟………そんなことをすればユーラシア西部が反発するし、他の地域でも未だに連合は災害救助を優先し、その周辺地域に限れば連合とザフトで暗黙の非戦闘区域だ。

 

コープランドに言わせれば、「プラントを撃てば終わり」という行き当たりばったりで計画性のないジブリールの思いつきが躓けばどうなるかなど自明の理だとのこと。ジブリールはそれらは大統領のせいだと非難する。

 

「ユーラシア西側のような現状を何時までも許しておくから、あちこちで跳ねっ返りが出るんです!!」

 

〈だが我らとて、手一杯なのだ!大体君のファントムペインだって碌な戦果は挙げられてないじゃないか!〉

 

コープランドの言い分にジブリールは今度こそ詰まってしまう。アーモリーワンの強奪こそ成功したが、それ以外はファントムペインも駄目だ。

 

キルギスプラントのザフト脱走兵による襲撃事件とコーディネイターの難民キャンプ襲撃以外にどの部隊も手詰まりに等しい。開戦前に地球圏にやってきた火星移住者マーシャンの一団は一度地上でファントムペインと交戦、その後もオーブ沖で交戦したが結果として取り逃している。

 

ネオ・ロアノークとエリス・ティーゲルの部隊もミネルバ相手に負け越している。特にあの二人…ネオはジブリールのとっておきで、相方のエリスもジブリールは気づいていたが泳がせることにした。だが、ネオはせっかくの嘴を活かせないし、エリスに至っては何時また飛び立つか分からないという。

 

「そうだ…オーブですよ。」

 

ここに来て、ジブリールは役に立ってくれそうな駒を見つけた。何故、もっと早く気づかなかったんだ。

 

スカンジナビア王国の軍需産業はこちらが抑え、赤道連合はユニウスセブンの落下の被害でまともに動けない。だが、オーブは違う。あちらは被害を受けていない。その上、その戦力は連合もザフトも不用意に手が出せない。逆を言えば、それだけ強力だということだ。

 

幸い、あの国は中立を主張するカガリ・ユラ・アスハとフブキ・クラ・アスハが行方をくらました。代表のカガリを誘拐したのは今も連合が脱走艦として行方を追っているアークエンジェルだ。

 

だが、例えあちらが政治的な理由でオーブの正当政権を主張しようが代表がいない今、あの国を仕切っているのはジブリールとパイプがあるセイラン家。充分に動いてもらえる。

 

 

 

ジョーンズのメンテナンスルーム、いつものように調整を受けようとしたステラが騒いでいた。足を怪我していたために応急処置のハンカチを取ろうとしたら、突然騒ぎ出したのだ。よほど、大事な物なのかネオが持ったまま眠って良いとさとし、ようやくメンテナンスが始められた。

 

「珍しいわね……いつも大人しいというか、幼い感じの子があんなに喚くなんて。」

 

エリスの言葉に研究員も頷く。

 

「そうですね…ちょっと強く印象に残っているみたいですが、まあなんとか消えるでしょう。」

 

「彼らにはむしろその方が良いでしょう。効率も悪くなる。」

 

研究員達の言い方に、エリスは遂に抑えていた物を出した。

 

「時折、ザフトよりも上の連中に風穴を開けたくなるわ。」

 

「中佐、よせ。」

 

「自己嫌悪ですよ……こいつらに加担している、私自身へのね。」

 

研究員達をにらみつけ、ネオの窘めも今回ばかりはエリスも聞かない。

 

「情を移されると、辛いですよ?」

 

「パーツじゃなくて、人間でしょ。コーディネイターが宇宙の化け物なら、やっぱり私らは地上の化け物ね。」

 

「化け物同士の食い合いがお気に召しませんか?」

 

「じゃなきゃ、こんなこと言わないわよ。何時の時代も…こういう発想をする奴らがいるんだから。」

 

南米のフォルタレザで起こったコーディネイターの子供達によるテロ。連合は子供達をコーディネイターだから悪魔だと叫ぶ。本当の悪魔は同じコーディネイターの子供達を使い捨ての道具にして、テロをやらせたコーディネイターの大人達だ。

 

そして、ナチュラルの大人である自分達も子供達をこんな風にMSの部品にしている。次に目が覚めたとき、ステラはあのハンカチをくれた人のことを忘れている。

 

それが、MSの部品としてのステラの機能を損なわせるからだ。

 

「中佐…死ぬのを怖がるあの子が死なないためにはどうするべきか、分かるだろう?」

 

「自分は死なない上の奴らのために?」

 

軍隊という組織であればやむを得ないが、あの子達は志願兵ではない。足が着かない孤児だ。現場の兵士の自分達より尚悪い。アラスカの件を知っているエリスにしてみれば、今の連合が異常なのが分かる。あの後……密かに出て行ったのを後悔すべきなのか、そうではないのか。

 

 

 

ミネルバでは気さくなハイネが加わり、パイロット達が互いにファーストネームで呼び合うようなところから始まった。まるで、かつてクルーゼ隊の先輩だったミゲル・アイマンを思わせる雰囲気から少しだけ、パイロット達の距離が縮まった。が……

 

「増援がオーブ、か。」

 

「やっぱり戦いたくないか、オーブとは。」

 

「…ハイネ。」

 

アスランとシオン、ミサキはハイネとデッキで会っていた。黒海奪還のために派遣された連合の増援はオーブだった。更にインド洋で遭遇した連合のGの発展型とアーモリーワンの機体を使っている空母もいる。この上なく、厄介な組み合わせだ。

 

が、スエズへの増援は阻止したいのがザフト司令部の見解。そして、元々ミネルバはスエズの駐留軍支援を目的にしている。そのためにもミネルバは黒海奪還阻止を目的にマルマラ海の入り口、ダーダネルス海峡へ向かうことになった。恐らく、敵が来るとしたらそこだ。

 

話はまとまっても、三人の心は晴れない。

 

「じゃあお前ら、どことなら戦いたい?」

 

どことなら……

 

「何とどう戦えば良いのか、そんな簡単に答えが出れば苦労はない。だが…」

 

「だが?」

 

「誰、なら応えられる。看板を盾にして、俺達に『出来ないことをやれ』と決めつける奴らだ。」

 

アスランはその言い方に内心で凍り付いた。それはつまり……

 

「それ、あのヒヨッコ共か?」

 

「…他に誰がいる?言っておくが、宇宙にいる奴らも入ってるぞ。」

 

ハイネがそれを軽く笑った。

 

「厳しいにも程があるぜ、お前。」

 

「連合もザフトも上が馬鹿の集まりだから、俺達みたいなのが尻拭いやらされて…今度はあれをしろこれをしろだ。」

 

「だが、それが…」

 

軍人という物だとアスランは言おうとする。

 

「軍人でも限度があるんだよ。根拠のない万能論の次は『伝説のエース』だ、『大戦の英雄』と来た物だ。」

 

「アスラン…シオンは戻ってから、ずっとそう言われてきたの。ミネルバに配属された時もプロパガンダの記者が沢山取材に来て、断るのも大変だったんだから。」

 

ミサキがフォローし、流石のハイネもばつが悪い顔になる。

 

「俺達は便利屋じゃないし、万能じゃない。根拠のないコーディネイター万能論を振りかざす馬鹿共全部に風穴開けてやりたいよ。」

 

「そりゃそうだ……万能なら、風穴空いたって死なないからな。」

 

「ハイネ…ちょっと、言い過ぎよ。」

 

「ああ、分かってる。けど…お前ら三人、割り切れよ?でないと、死ぬぞ。」

 

「それはシンにも言えることだ。」

 

そう、アスランはシンも気がかりだった。どことなく…シンが蔑むのは理念を守れる力はあるのに、家族を守れなかったオーブだ。しかし………

 

シオンは艦内に戻ろうとすると、ハイネが呼び止める。

 

「シオン、いずれあのヒヨッコ共も分かるさ。」

 

「でなきゃ困る。分からなければ、地獄に送ってやるよ。」

 

ハイネのおかげである程度沈静化しているが、シオンはまだ深刻だ。アスランと違い、シオンは一旦オーブに帰ってもそれからはずっとプラントだ。その間、アスランにも着いていた「伝説のエース」の看板に振り回されてきたという。

 

そう考えると、アスランはシオンに申し訳ない気分になった。そして、国という重圧に苦しむカガリとフブキが重なってしまった。

 

 

 

「よぉーし、始めようか!ダルダノスの暁作戦!」

 

「……ギリシャ神話?」

 

「そ、格好いいだろう?」

 

赤茶色のショートヘアが特徴の女性士官……下級氏族の娘、マツリ・ルリ・アセビ二尉は旧知のユウナに問う。彼女は他の下級氏族同様に家の地位向上のために軍に在籍しており、セイランが下級氏族だった頃から交流があった。が、マツリ自身は自己陶酔の激しいこの男を嫌っていた。父達もオーブの理念や法よりも自分が潤うことしか頭にないセイラン派をよく思っていないが、今のアセビ家では潰されてしまうから従うしかなかった。

 

だが、指揮官として己を磨いてきた自負があるマツリはユウナを内心で軽蔑していた。連合の指揮官ネオ・ロアノーク大佐の仮面には驚いた。副官のエリス・ティーゲル中佐もだが、二人共どこかの戦場で傷を負ったのか顔を隠している異様な風貌だ。

 

だが、その前に大佐はこいつをまんまとその気にさせて、オーブ軍に先陣を切らせた。自分達の兵力を温存するため、要はオーブ軍は盾だ。

 

だというのに、こいつはその意図がまるで分からずあの仮面男に煽てられた挙げ句に作戦名の方が大事。日頃から、戦略ゲームを嗜んでいるがこいつに実戦経験はない。大体、ここに来る間も船酔いに参っていた。分かってない………ゲームの上の駒が消えるのではない。人間が死ぬことを。

 

………理念も法もへったくれもない…私達、みんな死にに来たような物かしら?

 

いや、それでも連合への義理立てをすれば同盟国の責務を果たしていない。と言われる心配はなくなる。せめて、それだけは通さないと。

 

「トダカ一佐、アマギ一尉。」

 

マツリの進言を受けてトダカは頷いた。ムラサメと飛行ユニットシュライクを装備したM1部隊が旗艦タケミカズチから発進する。

 

 

 

ミネルバからはインパルス、セイバー、アナー、グラウンドが発進した。その中で、ネオはグラウンドに気づいた。

 

「あの中の一機、グラウンドを拡大できるか?」

 

「は。」

 

オペレーターが指示に従い、カメラをズームにしてグラウンドを確認する。背中に新型の空中用MS、AMA-953バビによく似た装備をつけていた。

 

「陸上特化の機体に随分と強引な外付け装備をしましたね。」

 

「試験型だからな……とはいえ、飛べるとなれば油断できない相手だ。オーブの皆さんにもその辺はどう映るのかな?」

 

「あのおめでたい司令官以外は警戒するでしょうね。リンカーンの三人は?」

 

「は、既に発進準備完了しております。」

 

「後は大佐の指示待ちね……出来るだけ、弱らせて欲しいですね。その分、オーブの損害も減る。」

 

「思い入れでもあるのか、中佐。」

 

「少し…」

 

どうもネオはこの部下に対して、ステラ達とは違う意味で思い入れている。彼女と会うのはファントムペインに来てからお互いに初めてだったはずなのに。どうも、その違和感が未だに拭えない。

 

まあ、気にしても仕方ないか。

 

 

 

リンカーンで待機しているブランフレイムのコクピットでグレンは先日会ったコーディネイター……アリスのことを思い出した。

 

なんだろう、このモヤモヤした感情は。コーディネイターなんて何百と殺してきたのに。

 

あの艦に彼女がいないで欲しい。そんな艦上が渦巻いていた。

 

 

 

クレマンスはいつものようにのんびり待てなかった。むしろ、あの艦がさっさとどこかへ逃げて欲しいとさえ思っていた。

 

あの子、本当に悪いコーディネイターなのかしら?

 

先日会ったあのコーディネイターが頭から離れない。あの艦に乗っていたら、自分は一生後悔するのでは?今まで、考えたこともない事が芽生えていた。

 

 

 

ソウジは先日、ディオキアでオフを楽しんでからの仲間二人の様子がおかしいことに気づいていた。いや、二人から持ちかけられたのだ。二人共それぞれ質問の内容は同じ。『コーディネイターは本当に悪魔なのか?』

 

なんで、今更な事を聞くんだ?この間、会ったって言うけどどう考えたって芝居だろうが。

 

ソウジは二人の考えを一笑に付した。コーディネイターに会って、何か変な暗示でもかけられたのか?それなら、あの艦を沈めれば少しは気が晴れるだろうに。

 

 

 

グラウンドのコクピットでカインは追加飛行ユニットベレロポーンの稼働率を確認した。

 

「稼働率92%、充分行けるな。」

 

ガイアのグリフォンビームブレイドのユニット及びディン、バビの飛行ユニットにを外付けしたこの装備はディオキアに立ち寄った際に回された物だ。多分、デュランダルが根回しした物だろう。

 

重量は少し増えるが、その分パワーがある上にホバーユニットとしての機能もあるのでこれによりグラウンドは空中戦だけでなく本来のホバー移動による戦闘力も飛躍的に向上している。

 

「少なくとも、あのアストレイタイプとムラサメ相手にはありか。」

 

ムラサメ、M1を合わせて二十機、一人五機でかかればなんとかなるだろう。

 

インパルスが早速M隊を次々と撃墜する。元々の推力が高いと言っても、プロペラでは空中戦に特化した三機相手には翻弄される。

 

〈カイン、君は海上からの支援砲撃と奇襲攻撃を取れ!〉

 

「はい!」

 

アスランの指示は的確だ。元々グラウンドはそちらが得意分野だ。うまく行けば、護衛艦を砲撃できる。

 

早速護衛艦を撃とうとするが、上空からムラサメが阻止しようとミサイルを撃ってきた。

 

「ちっ!」

 

背中のバラエーナでミサイルを撃ち落とすが、ムラサメ隊を取り逃がす。M1が同じ土俵で勝負しようとするが、裏目に出た。グラウンドの推力で上空に逃れ、そのままMAに変型してM1を踏み台にする。さながらその様は飛行ユニットの名前通り神話の動物のようであった。

 

 

 

セイバーとアナーは同じタイプのムラサメ隊を翻弄し続け、インパルスはオーブ沖での戦いを示すかのように数で圧倒的に劣る状況を前に粘り続ける。

 

「何をしている!敵のMS隊はたったの四機だ!どんどん、追い込め!MS隊、全機発進!!」

 

「いや、それは!」

 

トダカが意見をするが、ユウナは聞く耳を持たない。

 

「一機ずつ取り囲んで落とすんだよ!そうすれば、いくらあれだって落ちる!これは命令だ!」

 

トダカは歯ぎしりした。要するに、この総司令官は結婚式をアークエンジェルとフリーダムに潰された失点の埋め合わせがしたいだけだ。恐らく、ミネルバに華麗に勝利するオーブ軍とその司令官にして現在のオーブの指導者というアピールがしたいだけなのだろう。

 

理念と法を遵守し、それが国を、民を守ることに繋がると考えるトダカとユウナの考えは明らかに噛み合わない。だが、総司令官はこの男。逆らえなかった。

 

命令に従い、全てのM1とムラサメが出る。確かに数で押すのは間違っていないが、まだ戦闘は始まったばかり。実戦を知らないこの総司令官はミネルバが地球を救ったということも、オーブ沖で空母四隻を含む大艦隊を退けたことも既に忘れ去っているのが分かった。

 

「敵艦、陽電子砲発射態勢!」

 

「回避、面舵20!」

 

トダカはすぐに命令するが、大型空母のタケミカズチでは間に合わない。

 

「MS隊を退避させて!」

 

マツリも指示を出す。確かに、これでまだ発進していないMSだけでなく発進したMS隊も巻き込まれればすぐに全滅。間に合わないと思われたとき……

 

突然、ミネルバのタンホイザーが撃ち抜かれた。

 

 

 

〈なんだ、どこから!?〉

 

〈伏兵がいた!?〉

 

〈それも空から!?〉

 

シン、カイン、アリスの三人も上空から受けた奇襲に混乱する。アスランだけはすぐに気づき、上空から飛来する物に気づいた。青い翼を広げた天使、更に緑の翼を広げたうり二つのもう一人の天使に二本の剣を背負った剣士。

 

まさか……!?

 

いや、見間違えるはずがない。それは………

 

「フリーダム…キラ!?」

 

キラが、何故ここに!?ミネルバを撃った!?

 

いや、キラが来たということはまさか!

 

その後ろからミネルバに似通った形状の白い艦が現れた。

 

 

 

シオンはブリッジに外の様子を映させてもらった。そこにはシオンのよく知る機体…フリーダムがいた。そして、セイバーと逆に後ろへ伸びた大型アンテナと二本の剣を背負ったさながら剣士というMS。

 

「ブレイブ……レナ!」

 

〈アフェクション…と言うことはユリ!?〉

 

ミサキの言うとおりだ。あの三機を乗りこなせるパイロットなど他にいない。そして、その後ろからは……

 

〈アークエンジェル…!〉

 

 

 




下級氏族のマツリ・ルリ・アセビ、実は掲示板ではΔにいた連中の身内にしてたけどやめて他の首長家にしました。

ユウナ・ロマとは旧知ですが、基本的に嫌ってます。有り体に言えば、女としての生理的な嫌悪感かもしれません。髪を伸ばさないのもそれでしょう
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