機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
ステラの容態は突然悪化しだした。医師の話によると一定期間内に特定の処置を施さなければ身体機能を維持することができないらしい。
俺は、この子を守ると言ったのに、何もできないなんて…
シンは自分の無力さを呪わずにはいられなかった。
ルナマリアはタリアから聞いたことを考えていた。アスラン、シオン、ミサキの三人が以前乗艦したイリアと共に前大戦終盤でザフトを脱走し、同じように連合を脱走したアークエンジェルと共に両軍と戦い、戦争を止めたのは既に知られている話で、本人達もそれを隠していない。それも承知でデュランダルはアスランをFAITHにしたが、今回の任務では三人に何かの嫌疑が掛けられていると思ったが、タリアはそれを違うと言った。三人はあくまでアークエンジェルの事を知りたいと思ったと…彼らはまだオーブとあの艦を信じている。それは判るが…
『じゃあ、あのラクス・クラインは?今、プラントにいるあのラクスはなんなの?』
あの時聞いたフリーダムのパイロットの言葉が脳裏をよぎる。
『そして何故、本物の彼女がコーディネイターに殺されそうになるの?』
彼の言葉がアスランを惑わすために言った単なる出任せとは思えない。もし、それが本当だとしたらディオキアでアスランの部屋に入り込んでいたあの少女は誰だ?
アリスはルナマリアと入れ違いでタリアに報告した。
「あ、あの…」
「何?」
「その……会話の内容で分かったのですが………クルーのプライバシーにも関わることで。」
「……言ってみなさい。」
「ブレイブのパイロットと思しき人物がいたのですが、その人物はシオン・クールズの妹と思われるのです。」
「え?」
あの時、シオンを「兄さん」と呼んでいた同世代の少女…ブレイブという単語も出てきていたことから間違いなくブレイブのパイロットだ。それが、シオンの妹。
「本当だとしたら、何故彼女はこちらに来ないのでしょう?」
コーディネイターの可能性は高い。大体、シオンの妹ならなんでオーブに。
「本当にプライベートな話ね。でも、はっきり言えるのは本当にブレイブのパイロットがシオンの兄妹であったとしても、私達にザフトへの入隊を強制する権利はないわ。それこそ、徴兵よ。」
「ですが、シオン・クールズのためにも。」
「プラントへ入国を強制する権利もないわ……まして、先日のあれがあるわ。」
ダーダネルスの一件だ。あれがアークエンジェルのクルー達への印象悪化の一因になっている。
「理由は分からないけれど、シオンに限らずアスランもミサキも彼らを信じている。兄妹なら尚のことね。」
兄妹……だが、それ故にアリスの中ではブレイブのパイロットへの嫉妬が芽生え始めた。
私が知らないシオンの事を知っている。妹なのを良い事に………
こんなに、シオンのことが好きなのに。
エリスはジョーンズの甲板でバスケをしているスティングとアウルを見ていた。あの時、眠りにつく前にはスティングは飛び出してしまったステラのことを心配していた。ネオとエリスで戻ったら連絡すると言って眠りにつかせた。だが、目が覚めた今はあの三人からステラの記憶は無くなっている。
グレン達三人にはステラのことを言及しないように言い含めているが、本当に良かったのか?
せめて、ステラが捕虜になってしまったという風に記憶を書き換えてしまった方がまだ良かったのではないか?それこそ、ミネルバにいると言うことにして取り返そうと三人のモチベーションを高める事も出来たはずなのに。
「次、シュートした方が私と代わってね。」
「だってさ、スティング。」
「代わるのはお前だろうが?」
三人は以前と変わらない仲の良さを見せている。だが、それを遠巻きに見てネオやエリスもとバスケに誘ったステラはもういない。
あの艦にいた同じ年頃の子供達は、死んだ仲間を想い傷ついていた。あの子達はその時だけ、それが果たしてあの子達のためになるのか、ならないのか。エリスはどうしてもあの子達のためになるとは想えなかった。
せめて、弔い合戦をさせてあげたいけど。
アスランはシオンとミサキとキラ達と会ったことを話していた。
「どうだった?」
「……デュランダル議長を疑っていた。オーブのこともだが、今プラントを信用できないと言っていた。」
案の定だ。レナやフブキまでが疑っているとは。
「でも、当然よ。タイミングが良すぎるもの。」
ミサキが同じようなことを言っているのを知り、アスランは耳を疑った。何を言っている?
「お前達まで…キラ達の言うことを鵜呑みにするのか!?」
その時、シオンの表情が険しく…否、タリアに直訴したときよりも侮蔑するような目をしていた。
「お前…本気でそんなこと思っているのか?キラ達が嘘を言っているとでも?」
「そうじゃない…!ラクスが狙われたことは本当だろう。だが、議長が主導したとは限らない。ユニウスセブンの犯人達のように一部の人間が勝手にやったことかもしれないだろう!」
そうに決まっているのに、なんでシオンとミサキまで分からないんだ?
「……貴方、いつからそんなに頭が悪くなったの?本物が殺されかけたタイミングと前後してあの贋者が出てくる。まして、トップを支持しているなら誰だって議長…少なくとも司令部や評議会に疑いの目を向けるのが普通じゃない。」
ミサキから露骨に侮蔑され、アスランは思わず怯んでしまった。
「お前達まで…あの研究所を見たくせに議長を信じないだと!議長はあれを主導しているブルーコスモスの母体、ロゴスにまで目を向けている!オーブが片棒を担がされてからじゃ遅いんだぞ!大体、それだって父の支持者の仕業に決まっているだろう!!」
「なんで言い切れる……で、オーブに戻ったとして国家元首誘拐でキラに殺されろと?だから、俺は戻れとは言わなかった。」
「カガリとフブキがいるから、そんなことになるものか!!」
「それだけ信じているくせに……お前、復隊の方便にカガリさんを使ってないか?」
「な!?」
「肝心なときに何もしてあげられなかった俺達に同盟どころか、あれまで非難する権利があるとは思えない。多分、また出てくるだろう。その時…俺は出来る範囲で手伝いたいよ。」
そんな…!何故、議長を疑う!?父と真逆のことをしているんだぞ!あの時のような戦争をザフトはしていないのに!!
「………所詮、お前もプラントの人間か?」
シオンから汚い物を見るような目で見られ、今度こそアスランは言葉を失ってしまう。
「見損なったよ、アスラン。」
「…貴方って勉強は出来るけど頭が悪いタイプだったのね。優等生過ぎるわ…イザークがあの頃、突っかかってたのがよく分かった。」
かつて、父にも同じ事を言われた。それを仲間にも言われ、アスランはあの時のように言い返すことが出来なかった。
タケミカズチでは再び訪れてきたネオとエリスを交えてブリーフィングを行っていた。
「と言うように、策としてはいたってシンプルです。」
ネオのあげた策にトダカが確認を取る。
「しかし、それで本当にうまく行きますか?そもそも、その情報の信頼度はどれくらいなのです?網を張るにしても、ミネルバがもしも…」
トダカの懸念をユウナが笑い飛ばす。
「おいおい、ここまで来てそれは困るな。当てずっぽうで軍を動かすようなまねを誰がするか。ミネルバは間違いなく、このルートを通ってジブラルタルに向かうさ。出航も、もう間もなくだ。」
明らかな優越感と嘲笑を込めてユウナは歌いあげる。
「そういうことは、大佐と僕でもう確認済みなんだから、君達はここから先のことだけを考えてくれれば良いんだよ。」
「ユウナ様は的確ですな。決断もお早い。オーブはこのような指導者をもたれて。いや、実に幸いだ。」
「いえいえ、これくらいのことは。」
ネオにおだてられたユウナはまたしても天狗になっている。エリスがボードを見つめ、ミネルバを指さし、厳しい口調で言う。
「厳しい作戦ではありますが、やらねばなりません。」
「そして、我がオーブ軍ならできる!」
調子に乗るユウナをマツリは敵意を込めて睨む。ダーダネルスでカガリを贋者と断じて撃ったくせに。国のためというのならまだしも、あの時のユウナにあったのは自らの保身だけだったのをマツリは既に見抜いている。
全く、何でこんなのがオーブの最高司令官なのか…
次にアークエンジェルが出てきてもユウナは保身のために同じ事を言うに違いない。それはマツリにとって既に確定事項に等しかった。
アークエンジェルにミリアリアが合流した。メイは引き続き、ザフトの支援を受けている地域を取材しながら情報収集を行うメッセンジャーとして別行動を取ることになっている。
「元気そうだな、ハウ二等兵。」
「お久しぶりです。」
ナタルが軍人らしい敬礼で挨拶し、ミリアリアも久しぶりの敬礼で返す。
「久しぶり、ディアッカとはどう?」
「振っちゃった。」
「え?」
レナの問いにあっさりと出てきた返事に質問したレナが凍り付いた。
「悲惨な奴…」
バルトフェルドが宇宙へ上がった事にあわせて、かつて彼女の恋人のトール・ケーニヒが座っていた副操舵席に座ったシュウがディアッカに同情する。その時、ターミナルから電文が届いた。計器の操作に慣れないカガリの横からミリアリアが二年ぶりながら、慣れた手つきで操作する。
「メイからの暗号電文です。ミネルバはマルマラ海より出港、南下。」
彼らは確信した。既にオーブ軍がクレタに展開しているという情報がある。
「決まりですね…ジブラルタルへ行く以上はそれが最適なルートだ。」
マルマラ海からダーダネルスを抜けて、現在はエーゲ海。黒海と繋がる地理上、連合としてもミネルバをそこで沈めたいだろう。
アスランの言葉がキラの脳裏に蘇る。確かに、彼の言うとおり自分達がすべきことは連合との同盟の撤回だ。しかし、それは今目の前にいる国民を見殺しにしろという事だ。大局を見据えれば、やむを得ないことではあるが、それではアラスカをやった連合の上層部と何も変わらないし、カガリが見捨てる決断をできない人間であることをキラは理解していた。
「行くか?」
フブキが問う。
「うん、ラクスも言ってたから。」
「まず決める、そしてやり通す……そうね。」
ユリも同意の意思を示す。
「だから、どいて。ここには私が座るから。」
ミリアリアがカガリからインカムを取り、微笑む。
「ミリアリア……」
カガリが呆然と呟き、マリューとナタルが確認を取る。
「貴女がそこに座ってくれるのは心強いけど…」
「良いのか?せっかく、戦争から離れられたのだぞ?」
「ええ、写真も世界も今は危ないから。だから私も護るの。」
キラは心に慰めを感じた。アスランが去った。しかし、ミリアリアが戻ってきた。だから、きっと……
今はそう信じ、ロッカーへ向かった。
アリスはレナに対しての嫉妬が芽生え始めています。ただし、ルナマリアのアスランへの終盤みたいにシンほどではないが、かなり自分勝手になっていきます。
そして、そのシオンはアスランと揉めて、アスランの孤立も早まりました。この頃の私のアスランに対する認識は『肝心なときにいなかったくせに』です。
小説版でもキラに言われたのをシオンにも言われる始末。
正にこの頃のアスランは愚かだった。