機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE   作:meitoken

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クレタ戦、ここからどんどん死にますね。


PHASE-23 残る命、散る命…後編

クレタ沖で遭遇したミネルバはオーブ軍による自己鍛造弾のシャワーを受け、更に正面と左からオーブ艦に挟まれた。しかも、進路を変えようとしてもクレタ島が邪魔になってしまい、下がる事もできない。ミネルバに遺された選択肢はこの布陣を突破する事だけだ。セカンドシリーズを四機発進させ、セイバーはカオス、ブラストを装備したインパルスはアビス、アナーはブラン、グラウンドはミントと交戦し、シオンとミサキのザクはグゥルでシアンを相手にしていた。

 

ルゥのザクはホバーで出撃し、レイとルナマリアが艦上からの迎撃。今や総力戦だ。

 

シンはアビスを見て、あの日ディオキアで会った三人を思い出した。あの時、ステラの身内と思って引き取ってもらったがあの三人もエクステンデットか?あの中の一人が、アビスの?

 

 

 

カインはグラウンドの飛行ユニットでオワゾに乗ったミントと撃ち合っていた。ミントの突撃銃を躱して、ビーム砲を撃つも相手も左肩のシールドで受け止めた。今度は相手がビームライフルを撃ち、それを躱す。

 

「っ、まさかあれのパイロットも!?」

 

あの研究所で教育されたエクステンデットだとでも言うのか?

 

ミントのビームサーベルを躱し、肉薄して迷いを振り払うようにビームサーベルでコクピットハッチを斬りさいた。

 

浅かった!だが…

 

一瞬だけ、パイロットの顔が見えた。

 

「え?」

 

 

 

アリスはブランのビームアックスをシールドで受け止める。

 

「これのパイロット……やっぱりエクステンデット?」

 

連合の非道によって教育された被害者達…それが、アリスの手を僅かに鈍らせていた。

 

ビームアックスで押し切られるが、のけぞるような姿勢でビームライフルを撃つ。だが、ビームはコクピットを貫くことなく、ハッチを焼いた。

 

距離を取ったとき…パイロットの顔をカメラが捉えた。

 

「…グレン?」

 

 

 

ネオはインパルスやセイバーと戦う強奪機体を見てステラを思い出していた。ガイアの無断発進後、ジブリールからステラの件は損失と扱うように言われ、スティング達からもステラの記憶を消した。しかし、今になって思うとそれが正しい判断だったのか疑ってしまう。思い出せばエリスは三人からステラの記憶を消すときも反対していた。

 

正しかったのは、彼女だったのか?

 

彼の問いに答える者はいなかった。

 

 

 

オーブ軍のムラサメ隊がミネルバへ攻撃を仕掛けた。艦上のザクが迎撃するが、飛行能力を持つムラサメを捉える事は難しく、CIWSの迎撃も追いつかない。12機のムラサメのビームとミサイルがミネルバの装甲をえぐり、レイのザクが左腕を失った。かろうじて無事だったルナマリアが砲撃をするが、ムラサメの機動力の前には連射の効かない砲撃は相性が悪く、再びムラサメ隊が突撃する。インパルスとアナー、セイバーが何機か墜とし、シオンも一機の翼を撃ち抜くが、迎撃をかいくぐった先頭の機体がミネルバのブリッジに取り付いた。

 

やられる!!

 

誰もがそう思った瞬間、ムラサメのライフルをどこからか撃たれたビームが貫いた。そして、二機のムラサメの翼を斬り、上空に舞い降りた。フリーダムだ。

 

 

 

〈オーブ軍、直ちに戦闘を停止して軍を引け!〉

 

ストライクルージュとデュエルペイルが現れ、カガリが再び叫ぶ。それに呼応するようにアークエンジェルが主砲でオーブ艦隊の進路を塞ぐ。

 

〈あいつら、また!〉

 

シンが苛立ちをあらわにする。それをアリスは唖然と見つめていた。

 

また、現れた?何故?シオンが忠告したのに…

 

〈オーブはこんな戦いをしてはいけない!〉

 

再び両軍はカガリの演説に聴き入り、戦闘を停止する。

 

〈これでは何も守れはしない!地球軍の言いなりになるな!オーブの理念を思い出せ!それなくして、なんのための軍か!!〉

 

 

 

「なんで、あんたは…!」

 

都合の良いときにオーブの理念を口にして!何も判っていない女が!!俺の家族を殺した人殺し兄妹が!!

 

「そんな綺麗事を……」

 

シンの中でカガリとフブキへの怒りがふつふつと蘇り、そして…

 

「何時までもーーー!!」

 

〈シン!〉

 

〈フブキ、よけろ!〉

 

ブラストシルエットのミサイルをルージュとペイルに向けて発射した。アスランが制する声とシオンがフブキを呼ぶ声が聞こえたが、関係なかった。二機に届くと思われたところでミサイルは全てフリーダムが機関砲で撃ち落とし、ビームサーベルを抜いて斬りかかってきた。

 

「お前も……ふざけるなーーーー!!」

 

ステラを使って、ハイネを殺した悪魔が!!

 

インパルスは背面ホバーという通常ではあり得ない体制で回避し、そのまま海面を移動してビームジャベリンを振るう。しかし、フリーダムはその規則外の攻撃すらかわしてしまう。忌々しげにフリーダムを睨むシンに再び警告音が響く。X303イージス、連合が最初に開発したMSの一機だ。

 

「旧式の分際で!!」

 

斬りかかってきたイージスをケルベロスで撃つが、フリーダムと同等の反射神経を持つパイロットが乗っているためか、機体をひねる形で躱された。

 

こんな旧式なんかにコケにされてたまるか!!

 

イージスのサーベルをシールドで受け止めた瞬間、イージスのパイロットから通信が来た。

 

〈シン!やめなさい!〉

 

モニターに映ったパイロットの顔と聞こえた声にシンは目と耳を疑った。

 

「ね…姉さん?」

 

イージスのパイロットはオーブで死んだはずの姉、リュウ・アスカだった。

 

〈そうよ…〉

 

間違いない。姉のリュウだ。生きていた…あの時、死んだと思われていた姉が生きていた。あのとき、慰霊碑で擦れ違ったのは正真正銘の姉だった。しかし…

 

「何で……何でアスハと一緒にいるんだ!!」

 

父さんと母さんを!マユを殺したアスハの兄妹とこんな馬鹿げた事を!!

 

イージスのサーベルを押しのけ、薙ごうと振るったジャベリンをイージスは左腕のシールドで受け止める。

 

〈私が自分で考えて選んだのよ!〉

 

自分で考えた?そんなはずがあるか!アスハめ!俺の家族を殺しただけでなく姉さんを騙して利用して!!

 

 

 

「やめろキラ!」

 

〈アスラン!〉

 

リュウのイージスがインパルスとせめぎ合うのを見つめるキラの前にアスランの機体が現れた。

 

〈こんな事はやめろと!オーブへ戻れと言ったはずだ!!〉

 

サーベルを躱しながら後退するフリーダムをセイバーが追い、その間にもアスランが呼びかける。

 

〈さがれ、キラ!お前の力はただ戦場を混乱させるだけだ!!〉

 

既にアスランは一方でしか戦いを見られなくなっている。敵か味方かと分けるその見方が取り返しのつかない悲劇に繋がる。それを学んだ彼が!キラの胸にあの頃に戻ってしまった友への悲しみがこみ上げてきた。そこへ割り込むように両者の間をビームが駆け抜けた。連合がザフトから強奪した機体の一機、カオスだ。

 

両機はカオスのビームを回避し、そのままキラはカオスの目の前に接近する。そして、息をつかせる間もなく複雑な一閃でカオスの腕とバックパックをまとめて切り落とした。飛行能力を失ったカオスは海に落下していくが、かろうじて体制を立て直し、母艦へと向かった。

 

 

 

キラがカオスを撃退したのにも気付かないリュウは目の前にいるシンのインパルスを睨む。イリアとフブキから聞いてから、リュウは決めた。もし、何か道を踏み外そうとしているならばシンを説得しよう。カガリやフブキの言葉は届かなくても、もしかしたら姉弟である自分ならば、と。

 

〈あいつらが何をしたのか、姉さんは忘れたのか!?〉

 

しかし、シンは既にカガリとフブキへの憎悪に支配されていた。そうして憎み続ける先には何もないのをまだあの子は知らない。

 

そこで響いた警告音がリュウを現実に戻した。アビスが水中から飛び出してシールドのビーム砲を撃ってきた。リュウはインパルスを蹴飛ばし、アビスの射線からどけた。そのままイージスはビームをかいくぐって接近し、サーベルでアビスの両腕を切り落とし、とどめにと足のサーベルでアビスの首をはねた。

 

損傷したアビスは撤退し、インパルスの方を見ると、フライトユニットでインパルスに接近したシアンがザクを無視してインパルスの背後から対艦刀で斬りかかった。振り下ろされた剣をインパルスは背中の武装をパージして回避し、そのまま反転して手に持ったビームジャベリンを投げつけた。ジャベリンは真っ直ぐに飛び、青い機体を貫いた。

 

 

 

ソウジはインパルスがジャベリンを自分に向けて投げつけるのが見えた。そして、そこから先に起こった事も認識した。

 

ああ…俺、死んじまうのか。

 

ソウジの脳裏に別の部隊にいるスウェン達の顔がよぎる。

 

わりぃ、先に逝くわ。できるだけ遅く来てくれや……

 

そして、ソウジの意識は海に消えた。

 

 

 

〈シアンウインド…ソウジ・ナカモト、シグナルロスト!〉

 

ハッチを破壊されても尚戦い続けていたグレンは耳を疑った。ソウジが死んだ?女好きで、エクステンデットの少女達にもアプローチを掛けていたあの男が?やったのはインパルスだ。つまり、コーディネイター…

 

「コーディネイターーーー!!」

 

仲間を奪われた怒りにまかせ、グレンはブランをインパルスへ向ける。しかし、注意がそれた。ブレイブだ。ブレイブがビームライフルでストライカーパックを撃ち抜き、翼を失ったブランは墜落した。

 

コーディネイターめ!!ブランを受け止めたウィンダムに運ばれながらグレンはアフェクションとインパルスをにらみ続けていた。

 

 

 

「え、嘘……」

 

グラウンドにハッチを傷つけられ、距離を取ったクレムはジョーンズから来たソウジ撃墜の報告が信じられなかった。ミューディーや自分に言い寄って、シャムスとビリヤードをしていた彼の死が……

 

あまりの事態にクレムは機体の操作を忘れてしまった。そして、その隙を逃さずにアフェクションがフライトユニットとライフルを撃ち、飛行手段を失ったミントは落下していき、オーブのムラサメに受け止められた。

 

 

 

しばし戦闘を停止していたオーブ軍のムラサメが再びミネルバへ攻撃を掛けようとしたが、カガリはルージュを駆りその前に立ちふさがった。

 

「あの艦を撃つ理由が、オーブのどこにある!」

 

ムラサメのパイロットが言葉に詰まった。

 

「撃ってはならない!自身の敵ではない者をオーブは撃ってはならない!」

 

しかし、ムラサメが拳を握りパイロットが叫ぶ。

 

〈そこをどけ!これは命令なのだ!今の我が国の指導者ユウナ・ロマ・セイランの!その道、いかに違おうとも堅くとも、我らオーブの兵はそれだけは守らねばならぬ!お分かりか!!〉

 

パイロットの気迫にカガリは圧された。そう、彼らは軍人だ。自分がサインしてしまった同盟の決定にも従うしかない。それは分かる。

 

「だが!」

 

カガリは食い下がるが、パイロットの決意は揺るがない。

 

〈お下がりください!国を出た折より、我らここが死に場所と既に覚悟は出来ております!〉

 

「それは…!」

 

〈下がらぬと言うなら、力を持って排除させて頂く!!〉

 

言葉の終わりと同時にムラサメがルージュの腕を掴み、アークエンジェルの方へ投げた。カガリが体勢を立て直すよりも早く、先程の隊長機が叫ぶ。

 

〈我らの涙と意地、とくとご覧あれ!〉

 

「お前達!!」

 

 

 

カガリの叫びが聞こえたフブキはペイルを向かわせるが、その前にホバー装備のザクがリニアキャノンで阻む。その間にムラサメ小隊はミネルバに特攻を掛け、彼らの攻撃は赤いザクウォーリアを戦闘不能に追い込んでいた。しかし、対空砲とインパルスの迎撃によって一機、また一機と撃墜されていく。

 

「くそ!!」

 

フブキがデュエルペイルを突っ込ませるが、連合のウィンダムが狙ってきた。ビームを躱し、ライフルを撃ってカメラを撃ち抜く。だが、別のウィンダムが二機同時に撃ってきた。その間に、イリアから聞いていたシオンのザクがビーム砲で二機のウィンダムの腕と頭を撃ち抜いて戦闘不能にした。

 

「シオン!?」

 

〈フブキ、下がれ!俺がやる!〉

 

シオンがミサキと共にムラサメを牽制するが、別のM1隊が二機を攻撃した。ミサキのザクは両足をビームサーベルで両断され、更にライフルで頭を撃ち抜かれる。シオンもまた、別のムラサメが数機がかりでミサイルを撃ち、ウィザードのビーム砲とライフルで迎撃するが、弾幕が足りなかった。追撃のミサイルと機関砲でグゥルごと右足と左腕を失ってしまった。

 

その間も、キラ達もザフトと連合に阻まれ、行く事は出来ない。そして、最後に残った隊長機がMSと艦の迎撃を受け、煙を噴きながらミネルバの副砲へ突っ込み、砲諸共粉々に砕け散った。

 

「そ、そんな…」

 

ムラサメの特攻に気を取られたフブキは下にいるザクから注意がそれた。ザクのビームライフルがこちらを狙っていたが、ブレイブが先に割って入り、シールドでビームを防ぐ。続けざまにビームライフルでザクの頭部と右腕を破壊した。

 

〈フブキ、兄さんは!?〉

 

レナに言われ、モニターを見ると、損傷しながらもなんとか浮いてきていた。恐らく、非常用シャッターも動いているだろう。

 

 

 

ムラサメが特攻を仕掛けた直後、インパルスが装備を換装してオーブ艦隊へ直接攻撃を開始した。止めようと向かうフリーダムをまたもセイバーが阻んだ。

 

「アスラン!!」

 

キラは対峙する共に向かって、叫ぶ。それにアスランも叫び返す。

 

〈仕掛けてきているのは地球軍だ!じゃあ、お前達はミネルバに沈めと言うのか!?〉

 

「どうして君は!」

 

〈だから戻れと言った!撃ちたくないと言いながら何だ、お前は!〉

 

キラの呻きに遂にアスランが罵ってきた。そして眼下ではインパルスが対艦刀を振るってオーブ艦を次々と切り刻んでいき、カガリがそれを止めようとまたも艦隊へと向かう。

 

「カガリ!」

 

〈キラ!〉

 

カガリを救おうとするキラをアスランもまた追う。

 

「判るけど…君の言う事も判るけど!でも…カガリは、今泣いているんだ!!」

 

アスランが言葉に詰まるのが聞こえたが、キラの耳には届かない。

 

「こんな事になるのが嫌で、今泣いているんだぞ!何故君はそれが判らない!フブキも自分の間違いを止めようとしているんだ!なのに………この戦闘も、この犠牲も仕方がない事だって、全てオーブの、カガリとフブキのせいだって、そう言って君は撃つのか!今カガリが護ろうとしている者を!!」

 

〈キラ…!〉

 

アスランはなおも食い下がろうとする。キラは遂に覚悟を決めた。

 

「なら、僕は……君を撃つ!!」

 

フリーダムはシールドを投げ捨てて全速でセイバーに突進し、セイバーがサーベルで応戦する。しかし、キラの力任せの剣はセイバーのサーベルを弾き、左腕でもう一本のサーベルを抜いてセイバーの右腕を斬り飛ばす。フリーダムの複雑ながらも鮮やかな剣はセイバーを切り刻み、只のスクラップへと変えた。PSが落ち、海に落下していくセイバーを一瞥した後、キラはオーブ艦隊へ向かった。

 

 

 

「調子に乗ってんじゃないわよ!!」

 

イリーナは自分を無視して艦隊へ攻撃するインパルスへの怒りを込めてビームサーベルを抜いて切りかかる。既にミネルバを沈めるという任務は頭から抜けていた。ライフルでは艦を沈めてしまう以上はサーベルしかない。それでも完全にインパルスの死角を取った攻撃であった。

 

いただき!アンタもこれで終わりね!!

 

この位置取りならば反撃は出来まい。イリーナは勝利を確信していた。が、インパルスが取り付いていた護衛艦から飛んで斬撃を躱した。

 

「な…!どこ!?」

 

敵を探すイリーナの耳に警告音が響き、敵の位置を知らせる。

 

後ろ!?振り向いた時、インパルスの振るった対艦刀によってイリーナはレイジと共に真っ二つにされた。

 

 

 

タケミカズチはミサイルを撃ちながら前進していた。本来ならば空母は後方からのミサイル攻撃が主だ。それが砲火に晒されるのを承知で前に出ているということはつまり……

ミネルバの砲撃と残ったブレイズザクファントム、アナーとグラウンドが接近を阻もうとするが、タケミカズチは止まらない。

 

「お前…!お前!何をやっているんだ、トダカ!これでは……!!」

 

「ユウナ様はどうぞ脱出を!」

 

掴みかかるユウナをトダカは睨んでさらりと言い放ち、アマギの方を見る。

 

「総員退艦!」

 

彼の命令を受けた士官が艦内に呼びかける。

 

「総員退艦!繰り返す!総員退艦!!」

 

 

 

ミネルバへの攻撃を続けるタケミカズチへと向かうカガリの顔は既に涙でくしゃくしゃになり、必死で叫び続ける。

 

「タケミカズチ、やめろ-!」

 

同じようにタケミカズチへ向かおうとするペイルをブレイブが押さえるが、パイロットの声は聞こえてきた。

 

〈もう良い!もう良いからさがるんだ!!〉

 

通信越しでも判るフブキの涙混じりの叫びも届かず、タケミカズチはミネルバの砲撃で傾いていく。そのタケミカズチへ向かうカガリをインパルスが狙っていた。銃口がルージュへと向けられた瞬間、一機のムラサメが間に入りビームを受けた。

 

〈カガリ様!どうかお下がり…〉

 

パイロットの声は最後まで聞こえることなく、爆発に呑まれた。

 

何故?私なんかを庇って…?私のせいで、みんな…死んで………

 

 

 

「ミネルバを墜とせとのご命令は最後まで私が守ります!艦及び将兵を失った責任も全て私が!」

 

ユウナが唖然と「ええ!?」と声を上げ、マツリが「まさか…」と何かを察した。

 

「これで、オーブの勇猛も世界中に轟く事でありましょう!!」

 

本来ならば殴りたいドラ息子の胸倉を掴み、入り口へと投げる。誰もそれを受け止めることなく、さりげなく避けた。

 

「総司令官殿をお送りしろ!貴様らも総員退艦!!」

 

ユウナを冷めた目で見下ろしていた皆が彼の顔に見入る。

 

「これは命令だ!ユウナ・ロマではない……国を護るために!!」

 

マツリを始め、皆が背筋を伸ばし、「ハイ!」と敬礼をする。しかし、アマギはそれに従わなかった。

 

「私は残らせていただきます!」

 

「ダメだ。」

 

アマギは「聞けません!」と返す。それに対しトダカも「ダメだ!」と更に強く返す。艦内が大きく揺れる。

 

「早くこの馬鹿を連れて逃げるわよ!!」

 

マツリが急かし、二人以外はブリッジの外に出た。艦の外ではフリーダムがタケミカズチを救おうとミネルバとザクを撃ち、ブレイブとアフェクションはタケミカズチへ向かおうとするペイルとイージスを止めるのが精一杯で迎撃を続けるアナーとグラウンドを止められない。

 

「これまでの責めは私が負う!貴様はこの後だ!!」

 

しかし、アマギはなおも「いいえ!」と食い下がる。

 

「既に無い命と思うのなら、思いを同じくする者を集めてアークエンジェルへ行け!!」

その命令にアマギが目を見開き、トダカは彼を掴みあげる。

 

「それがいつかきっと、道を開く!!」

 

「トダカ一佐…」

 

「頼む。私と、今日無念に散った者達のためにも……行け!!」

 

そうだ、きっとまだ間に合う。あそこにはカガリとフブキが…ウズミの遺志を継いだ者達がいる。彼らと共に次の道を…!

 

アマギは苦しそうな表情をして、ブリッジを出た。傾いた艦の中で一人ブリッジに残ったトダカは取り付いたインパルスを見つめる。

 

そして、インパルスが対艦刀を振り下ろす。その剣が艦橋を切り裂く瞬間、トダカはあの連合の侵攻で家族を失った少年の事を思い出す。自分の薦めでプラントへと渡ったあの少年はどうしただろう?彼の安否を知る事ができなかったのがトダカにとっては心残りであった。

 

 

 

タケミカズチを切り裂いたシンは三度ミネルバを呼ぶ。

 

「メイリン!もう一度フォースシルエットを!!」

 

〈は、はい!〉

 

メイリンが答え、シンは再びインパルスを中距離戦仕様に切り替える。そして、機体をルージュとペイルに向ける。

 

「次はお前たちだぁぁぁぁ!!」

 

ビームサーベルを抜き、一番近くにいたルージュに接近するが、赤い機体がシールドを構えてまた立ちふさがった。リュウのイージスだ。

 

「何で姉さんは邪魔をするんだ!!あいつらに騙されているって、何で判らないんだ!!」

 

〈何で貴方は私が自分で考えたというのが判らないの!!〉

 

イージスがサーベルを振り、インパルスがシールドで防ぐ。

 

「あいつらが父さんと母さんを!マユを殺したんだ!あいつらは人殺し兄妹だ!!」

 

〈フブキとカガリさんが人殺し兄妹なら、私達だって人殺し姉弟よ!〉

 

俺と姉さんが人殺し姉弟?何を言っている!全部、オーブと連合のせいだ!俺は被害者だ!俺は撃たされているんだ!!

 

〈ウズミ様の決断が原因で父さん達が死んだのは確かに事実よ!でも、それならどうすればよかったの!?連合に従えば良かったと!?〉

 

連合に従うべき。

 

「そうだよ!そうすれば…」

 

〈それで今度はザフトが攻めてきて、私達以外の誰かが死ねば良かったとでも言う気!?〉

 

「そんなのアスハが悪いんだ!」

 

姉さんは何も判っていない!連合がしている事も議長の考えも!だから甘い言葉で踊らされてMSに乗せられている!そうだ!そうに違いない!!

 

イージスのシールドを押し切り、後退したルージュへ迫るが、再びイージスがサーベルでそれを阻む。シンは怒りにまかせて叫ぶ。

 

「俺が姉さんの目を覚まさせてやる!あいつらを討てば、何も判っていない事が判るだろう!」

 

〈私はあの後、彼らに助けられて…私が自分で考えて彼らと行くと、ヤキン・ドゥーエで戦う選択をしたの!!〉

 

戦った?あの激戦を?つまり、リュウはあの大戦からアークエンジェルと共にいた?いや!それすらも甘い言葉で騙されているんだ!

 

シンの目にはもはや姉が騙されて戦っているとしか映らなくなっていた。戦いの中でイージスの蹴りがインパルスのシールドを吹っ飛ばす。シンは左腕でナイフを抜いて力任せにイージスのシールドを弾き、ナイフが折れる。二機は距離を置いて右手にライフルを持ち、左手にサーベルを構える。

 

〈じゃあ聞くけど、カガリさんが何で連合との同盟を承諾したか判っているの!?〉

 

「何!?」

 

〈オーブがまた焼かれるのを防ぐためよ!私たちのような子供を作らないためにカガリさんはどんな気持ちで理念を捨てたと思っているの!!ウズミ様が託された灯を!!〉

 

それがなんだというんだ!現実を見ていないお姫様の決断など!!互いの斬撃が右腕のライフルを切り裂く。

 

〈それが間違いだと知って、それを正そうとして戦場に出て泣いて!貴方はそれも綺麗事と片付ける気!?それを貴方は……いつまでも被害者を気取って、自分が今日殺したオーブの人達も『カガリさんとフブキがやらせたから自分は悪くない』と言って知らん顔をするの!?ザフトが連合のしていることを止めようとするから正しい戦争だというの!?それで殺した人達の家族や友達が貴方を憎まないと思ってるの!?〉

 

何を言っている?連合が何をしているのか判っていない奴らの言葉を真に受けて!それを止めようとデュランダル議長は尽力している!それを否定するだと!?

 

また、現実の見えていない世迷い言を口にする姉にシンは遂に本音を口にした。

 

「同盟を結んだアスハがこんな事をさせているからあいつらが悪いんだ!何で俺が悪いと思わなきゃいけない!!議長は連合のしている事を止めようとしているんだぞ!!だから俺は何も悪くないし、これは正しい戦争だ!!だからそれを邪魔するあいつらを討つんだ!」

 

開いた右腕でサーベルを持ち、二刀流を用いるがイージスは両腕のサーベルで受け止め、二機は押し合う。

 

〈そう……じゃあ、それでフブキを殺すのね。なら…私も貴方を殺すわ。〉

 

殺す?姉さんが誰を?姉さんが、俺を殺す?

 

余りに落ち着いていて、さらりと出た姉の言葉にシンの刃が鈍った。イージスはインパルスのサーベルを弾き、右足のサーベルでインパルスの左腕を切る。インパルスが残った右腕で振りかぶるがそれよりも早くイージスが左腕のサーベルで頭と右腕を奪う。そして、イージスがとどめの一撃を構えるのが見えた。

 

やられる!

 

シンはコアスプレンダーを離脱させてミネルバへ向かった。そして、コクピットを貫こうとしたイージスのサーベルは残ったレッグフライヤーを貫いた。

 

後一歩遅ければ、自分は殺されていた。実の姉の手によって。そして、姉をそういうふうにしたのは誰だ?決まっている。あいつらだ。

 

姉さん、俺が必ず姉さんを助けてみせる!

 

そうだ。あの優しい姉さんが俺を殺すなんて言うはずがない!全てあの兄妹が、それこそフブキ・クラ・アスハが甘い言葉で姉さんを誑かしたに決まっている!

 

アスランとシオンだってカガリのいい加減ぶりに愛想が尽きたからこそこちらに来たんだ。だから、いずれリュウも来る!!

 

 

 

〈リュウ、大丈夫か?〉

 

ペイルのフブキが気遣うように声を掛けてくる。リュウは「大丈夫。」と言ってヘルメットを脱ぎ、頬を伝う涙をぬぐった。

 

シン、貴方が言葉を聞かずに引き金を引く意味を判らないまま、ただ闇雲に力を振り回すようならば……私は貴方を。

 

そして、それをやるのはキラではなく、自分の役目だ。

 




今日はたっぷりしました。

リュウとシンの戦いは大昔の掲示板でも見たのを参考にしてました。こっちのイージスはルージュ同様にOSやスラスターが強化されて飛ぶことは出来るが基本は前のままです。

盲目になっているシンと目を開いているリュウの精神的、経験の差が勝敗を分けました。

そして、インパルスもパーツの交換がきくとはいえセイバー同様にバラバラになりました。



そして、イリーナとソウジが死にました。アウルはもう少し長生きします。
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