機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE   作:meitoken

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ステラの返還……ですが、その後のシオンを重視。そして、スターゲイザー組出てきます。


PHASE-24 ファントムペイン

クレタでの戦闘を切り抜けたミネルバではあったものの、被害は甚大であった。火器は殆ど使えなくなった上にMSはセイバーが撃墜、ザクも全滅。もはや修理が不可能なレベルだ。現在、残ったのは当初から運用を想定していたインパルス、アナー、グラウンドの三機のみ。そしてインパルスさえもパーツ一式を失ってしまった。

 

「これ、直せってのは無理だな。」

 

「フリーダムだって、やったの?」

 

「流石のFAITHもあれには勝てないか…」

 

ヨウランとヴィーノが完全に破壊されたセイバーを見て、諦めていた。これはもはや、廃棄処分だ。

 

「にしても、まさかインパルスもパーツをまるごとやられるとはな。」

 

「やったのって、イージスって言うんだろ?確か、連合が最初に造ったMSの一機。」

 

「二年前の旧式にスーパーエースとFAITHがボロ負けとは……どんな化け物が乗ってるんだか。」

 

ザフトの最新鋭機が二機とも、前大戦時の旧式MSに惨敗した。それがクルー達の間でも小さくない衝撃になっていた。

 

 

 

「アスラン…」

 

シオンはレクルームで腕を組んでうなっていた。

 

まさか、アスランがやられるとは思わなかった。だが、相手がキラでは仕方ない。通信は聞こえなかったが、大方カガリのことでキラに何か言われて怯んだのだろう。

 

シオンにとっては自業自得だった。何も言わずに勝手に復隊して、一番カガリの気持ちを理解してあげるべきアスランが理解しようとしなかったのだ。実際、シオンもキラ達から聞いたことを父親のシンパの仕業と決めつけたあの言い草には本気で失望した。

 

と、そこにシンがやってきたが…

 

「あんまり強くないよね、あの人。」

 

いつも通りレクルームに集まった面々の中でシンはさらりと言いはなった。その侮辱にシオンは「何?」と食いつく。

 

「何であんなのがFAITHなんだか。昔は強かったって奴?」

 

あまりの暴言にシオンはシンの胸倉を掴み、睨み付ける。

 

「貴様!格下の機体に敗退した貴様がアスランを侮辱するのか!?」

 

今の言動は上官侮辱罪にも当たる言動だが、シオンにとっては自身の敗退を棚に上げてアスランを罵るシンへの怒りの方が勝っていた。しかし、シンは手を払い、何も言わずに退室していった。

 

「何よ、あの態度!!」

 

シンの姿が見えなくなった途端にメイリンが憤慨した声を上げ、カインも「ああ。」と同意する。

 

「自分だって負けたのに棚に上げて……天狗になってるんじゃないの?」

 

アリスも不快感を露わにしていた。その言う通りだとすれば、それは良くない。このままではシンは増長し、艦内の風紀にも影響が出る。そして、あそこまでふんぞり返った態度の原因はもう一つあるだろう。シオンは先ほど様子を見たエクステンデットの少女ステラの事を思い出す。彼女はもう虫の息という状態であった。あのままではジブラルタルへ着く前に死んでしまうかもしれない。

 

 

 

アークエンジェルでは……タケミカズチから艦長トダカ一佐の副官アマギ一尉を筆頭に大勢の士官とムラサメのパイロット達がアークエンジェルに合流していた。

 

アマギは士官達を代表し、命令に背いたことを詫びるが…

 

「アマギ一尉……それを言えば、私と代表こそ詫びなければならない。セイランに言いくるめられ、国民のためにと理念を諦め、結局は余所で国民を死なせてしまった。」

 

「フブキ…!」

 

リュウが腕を握って「そんなことを言わないで」と目で言うが、フブキは首を横に振る。

 

「仇を討つためとか、戦いたいから等という理由で我らはここに来たのではありません。」

 

「我らはオーブの理念を辛抱したからこそ、軍に身を置いたオーブの軍人です。」

 

「ならば、その真実のオーブのためにこそ戦いたい!難しいことは承知しております。だが、だからこそ!我らはカガリ様とフブキ様と、この艦と共に。」

 

彼らはクレタのオーブ軍を救うことは適わなかった。だが……それでも指揮官トダカ一佐の意志を受け、オーブの理念を守る軍人としての責務を果たす事を望んだ彼らがやってきた。

 

決して、無駄なことではなかった。多くの兵士を救うことが出来なかったが、それでも少ないながら自分達を信じて共に来てくれる者達を得た。

 

 

 

シンの増長した態度に苛立ちながら、カインはクレタでチラリと見たのを思い出す。遠くてズームでも分からなかったが……あの顔はクレマンスのような気がした。

 

「ジャーナリストって言ってたのに…連合だったのか?」

 

もし、本当に彼女だとしたら…この先、あのボギーワンの部隊がいるって事は彼女と?

 

「い、いや……そんなわけないだろう。」

 

あの状況だ。見間違えただけだろう。そう、言い聞かせた。

 

だが、もしそうならば……アークエンジェルが現れたときのアスラン達もこんな気持ちだったのか?

 

 

 

「グレン…だった。」

 

アリスは言えない。言い出せなかった。ディオキアで正体を隠した連合のパイロットに出くわしたなど。まして、それがあのブランフレイムのパイロットだなんて。

 

「どうして……傭兵って言ってたのに。」

 

当然だ。ザフト兵を前に連合だなんて言えるわけがない。もし、あれが本当に彼だったら?

 

 

 

「イリーナが死んだって!いい加減なこと言うな!」

 

「あいつが簡単に死ぬわけないだろう!?」

 

スティングとアウルが研究員達に食ってかかった。

 

「まだ、あのあたりにいるかもしれねえ!行くぞ、アウル!」

 

「おう!」

 

研究員達を押しのけて、飛び出そうとしたスティング達の前にネオは立ち塞がった。

 

「どけよ、ネオ!」

 

「駄目だ。お前達は検査を受けろ。」

 

「イリーナはどうなるんだよ!?」

 

エリスが肩を置いて、アウルを諭す。

 

「貴方達まで死んで欲しくないのよ…私も大佐も。」

 

「エリス…けど!」

 

「今は休んで……休んだ後、捜索に出て。それなら良いでしょ?」

 

聞き分けのない子供に言い聞かせるような口調でエリスはアウルを宥め、ネオもスティングの肩を叩く。

 

「ほら、イリーナを探すためにもまずは身体を休めろ。暫くはここにいる。」

 

「…分かったよ。」

 

そして、二人は眠りについた。だが……

 

「消すんですか、イリーナの記憶まで?」

 

「ああ…」

 

「大佐……はっきり言います。」

 

「良いぞ。」

 

「……私は今、ザフトよりも大佐とこいつらを殺したいです。」

 

研究員がぎょっとして…

 

「記憶、残しておきましょうか?」

 

恐る恐る問う。

 

「いや、消しておいてくれ。死んだことでショックを受けるより、いないことにした方が良い。」

 

「そんな!」

 

 

 

シンはタリア達の話を聞いて、決意した。ステラはもうこのままでは死んでしまうのが明白。だが、例え生きてジブラルタルへ連れて行ったとしても評議会は実験動物としか見なさない。

 

この子は、一生あの研究所のような場所に閉じ込められてしまう。自分に守ることは出来ない。ならば……

 

シンはナースを殴り倒し、ステラを運んだ。そこへ、保安兵に見つかった。

 

撃ち殺されるのも覚悟したところで、レイとルゥが保安兵を殴り倒した。

 

「返すのか?」

 

「このままじゃ死んでしまう!その後も、実験動物みたいに……俺はそんなの!」

 

シンはステラのベッドを運んで、エレベーターを閉めようとするとルゥが問う。

 

「連合に投降するわけじゃないんだな?」

 

「…ああ!」

 

「なら、急げ。私とレイがゲートを開ける。」

 

何?規律の塊みたいなこの二人が、なんで?

 

「……似たような経験があるからな。」

 

「え?」

 

「行け。」

 

 

 

シンがエクステンデットのステラを連れ出した件はレイとルゥの協力があっての事であった。あの生真面目でそれこそ歩くマニュアルとも言えるあの二人がシンの前代未聞の軍紀違反に荷担した。それは誰にとっても衝撃的であった。

 

アスランが三人と面会を終えた後、シオンはシンの様子を見に来た。その顔は誰の目から見ても自分は悪くないと書いたような物であった。シオンは慎重に言葉を選び、シンに話す。

 

「シン、お前が彼女をどうにかしたいと思った気持ちは否定しない…だが、もしも彼女がまた戦場に出てきたらお前は討てるのか?」

 

「そんなことはない!あの人はステラを戦場には出さないと約束してくれた!!」

 

あの人とはおそらくステラを帰すために接触した連合の兵士だろう。

 

「仮にその人物にその意志があっても、連合の一兵士だ…ブルーコスモスに逆らえるだけの力はない!」

 

「じゃあ、放っておけと!?」

 

「そうじゃない!あの子の状態は俺も聞いた。例え上官にその気があっても、あの子は連合の元で調整を受けないと死んでしまう!逃がしたって、結局元の木阿弥だぞ!!」

 

「なにを!?」

 

シンはまだ自分の行動の最悪のケースが分かっていない。いや、理解しようとさえしていない。その場しのぎにすぎないというのに。

 

「シン、よく考えるんだ。彼女を生かしてジブラルタルへ連れて行けば、彼女は精密な検査を受ける。そうすればどのような肉体改造を施されて、どんな処置をすればいいか判り、助かる望みもあっただろう。」

 

「そんな保証がどこにある!みんなステラの事を実験動物としか見ていないんだ!」

 

実験動物としか見ていない……シオンとて、そういう見方はしないししたくない。

 

「…お前もあの研究所を見たなら分かるだろう?彼女のようにコーディネイターを殺すことだけ教えられている子供が他にも大勢、どこかの研究所で薬漬けや記憶操作を受けていることを。」

 

「何が言いたいんですか?」

 

「あの子を調べて、世界に連合の非道を訴えれば同じような研究施設で改造されている子供達を只その場だけ救うんじゃない。ブルーコスモスに反発する連合やオーブのように加盟させられた中立国も参加して治療法を探せる。普通の人として生きられるように治療する望みがある。あの子だけ助かれば、お前は他の子供達は死ぬまでMSの部品みたいにされて良いのか?」

 

「そ…それは…!」

 

「もうやめろ、シン。シオンも、言いたいことは分かります。貴方の言うことが正しいのも。」

 

ルゥが窘め、シオンはため息をつく。

 

「お前にとって、最悪な結果になったらその責任は全てお前が背負う。分かっているのか?」

 

「そんなことあるか!!」

 

 

 

ロシア平原……荒れ狂う吹雪の雪原を1つの巨大な影が進んでいた。地球軍のハンニバル級陸上戦艦ボナパルトだ。現在ボナパルトはネオ・ロアノークの部隊にある物を届けるべくこの雪原を移動していたが、その最中にザフトに発見された。それの迎撃に出ていたのは護衛として同行していたスウェン・カル・バヤンが所属する部隊だ。

 

バクゥがボナパルトに追いつき、レールガンを発射する。しかし、その機体を艦上のヴェルデバスターがライフルで狙撃し、艦から降りたブルデュエルがボナパルトを追うガナーザクウォーリアをビームガンで攻撃する。

 

「ああ、もう!こいつらったらしつこくてやんなっちゃう!」

 

〈みんな、ミューディーとよろしくやりてえんじゃねえの?〉

 

ザクを撃破したミューディーの愚痴にシャムスが茶々を入れ、ライフルで二機のザクを葬る。

 

冗談じゃない!誰がコーディネイターなんか!

 

茶々を入れたシャムスを睨み、ミューディーは接近する二機のバクゥに左肩のスティレットを投げる。貫入弾が突き刺さったバクゥが爆散するが、その後ろのバクゥがレールガンを撃つ。

 

その程度でこのあたしをやれると思うの?

 

ミューディーはシールドで砲撃を受け止めるが、警告音が響いた。ブルの足が止まった隙を突いて別のバクゥが背後からビームサーベルで突進してきた。ミューディーは振り返り、ビームサーベルで迎撃するが僅かに遅かった。サーベルを持ったブルの右腕が右肩のシールドとレールガンごと切られた。

 

〈ミューディー!〉

 

シャムスが警告するがそれも遅く、後ろからのビームが左足を奪いブルは完全に動くことができなくなってしまった。

 

「っ、やばいかも…!」

 

何とか機体を動かそうとするミューディーの視界にバクゥの後継機バクゥハウンドが三機、一斉にブルに群がった。

 

「ちょっと…待って!!」

 

 

 

スウェンはビームライフルショーティーで二機のザクを撃破した時、ミューディーの異変に気付いた。手足を失ったブルが三機のバクゥハウンドに群がられ、コクピットを滅多刺しにされていた。僅かにミューディーの絶叫が聞こえたがすぐにノイズに飲まれた。

 

コーディネイター共!俺の両親に続いてミューディーを!!

 

コーディネイターに殺された両親……洗脳教育によってそうすり込まれたスウェンはコーディネイターへの怒りを募らせてノワールを突進させる。既にコクピットがグシャグシャになっているにも関わらず獲物を貪る肉食獣のように攻撃を続けるバクゥハウンドがノワールに気付き、背中のビーム砲を撃ちながら突っ込む。スウェンはノワールをジャンプさせて突進するバクゥハウンドのルートにフラガラッハビームブレイドを投げた。突き刺さった対艦刀を避けきれず、一機が両断され残った二機が着地したノワールを追うが、スウェンは手に内蔵されたアンカーを突き刺し、二機の背後に飛び勢いに任せてそのワイヤーを引っ張る。ノワールのパワーと元々着いていたスピードによって二機のバクゥハウンドはワイヤーに引かれて激突し、粉々になった。

 

スウェンは二機のバクゥハウンドの爆発を最後まで見ず、視線を移す。その先にはPSが落ち、獣に食い破られた人間の腹みたいになったコクピットに抵抗の名残か左腕を上げたまま動かない無惨な姿のブルがいた。その時にボナパルトからやってきたヴェルデのコクピットからシャムスが飛び出してきた。

 

〈なんだよ、これはよぉ!〉

 

シャムスは食い尽くされたブルのコクピットに駆け寄った。

 

〈ふざけんなよ!おい、ミューディー!嘘だろ?ミューディーーー!!〉

 

もう、ミューディーの身体は人の形ではないだろう。スウェンはそれを何も言わず、只見つめていた。

 

 

 

ロシアで待機していた陸上戦艦ボナパルトに着いた一行はステラを連れてメディカルルームに向かう。エクステンデット達は以前とさほど変わってはいない様子だが、既に昔の彼らではない。

 

クレタでソウジとイリーナは死に、スティングとアウルは彼らのことを最適化により忘れ去られている。そして、今ベッドで運ばれている少女のことも。それを思うとグレンは過去を忘れた二人と二人の記憶から消された者達に同情せずにはいられなかった。

 

ステラを連れてメディカルルームに向かう途中、グレンは向かいからやってくる馴染みの顔を見つけた。スウェン・カル・バヤンだ。通路脇からシャムス・コーザも現れ、ネオの一行を見届ける。

 

「なんだ、ありゃ?」

 

シャムスの質問にクレムが答える。

 

「エクステンデット……ザフトの物好きが返したの。」

 

「なんだそりゃ?」

 

シャムスが理解できない顔になる。実際、クレムも理解できない。コーディネイターが敵兵を返すなど。大体、返したところで彼女は研究チームの調整を受けなければ生き続けられない。だが…

 

「もう長くはないな。」

 

スウェンの言うとおりだ。どのみち、ステラはもう長い時間を生きられない。と、そこでスウェン達にも一人欠けていることに気付いた。

 

「スウェン、ミューディーはどうした?」

 

常に彼らと共にいる女性が欠けていることについて問うと、途端にシャムスが唇を噛み締める。彼の沈黙を理解したクレメンスが恐る恐る問う。

 

「まさか……」

 

クレムの問いにシャムスが吐き捨てる。

 

「ああ、ここに来る途中に殺されちまったよ!コーディネイターに寄って集ってな!」

 

やはり。彼女がここにいない時点で既に予想できたことだろう。そして、今度はスウェンが問う。

 

「ソウジは…?」

 

彼の問いにクレムが応える。

 

「クレタであの最新鋭艦…ミネルバとかって奴の新型にやられた!」

 

彼らは場所を移し、今後の任務を語る。クレムは自分達に科せられた任務を話す。

 

「私達はこの後、さっきの子達と一緒にザフト地上軍の殲滅だって。ザフトに肩入れしている都市もまとめて。」

 

シャムスはまだ苛立った調子で答える。

 

「俺達は宇宙だ。」

 

「宇宙?」

 

スウェンがシャムスに疑問を投げかける。クレメンスも同感だ。何故わざわざ宇宙に行くのだ?いったい何の為に?

 

「DSSDが宇宙ステーションで開発しているMSを盗めって。関係者は皆殺しにしても構わないそうだ。」

 

「そうか…」

 

スウェンの答えは相変わらず淡泊だ。グレンが苛立ちを露わに食ってかかる。

 

「何とも思わないのか…?」

 

「悔やんで何になる?ミューディーもソウジも戻らない…」

 

グレンの問いに対してもスウェンの解答は淡泊だ。あまりの淡泊さにクレムは遂に堪忍袋の緒が切れ、スウェンに掴みかかる。

 

「あんた!コーディネイターに殺されたのよ!!」

 

「ああ…だから仇を討つんだろう?」

 

まだ冷淡なスウェンに怒りを抱きつつもクレムはコーディネイターに怒りを募らせる。

 

そうよ!二人とあのエクステンデットの子達の仇を取るにはコーディネイターをたくさん殺せばいいんだわ!肩入れする奴もみんな!それしか私達がしてあげることはないんだから…!

 

 




シンにはアスランはハイネを持ち出したけど、シオンはシンに対して連れて行けばまだ望みはあったということ、そしてステラだけ助かれば同じような子供達は良いのか?という問いにしました。

そして、ミューディーのあの死に方。流石に文章には出来なかったけど、中の様子をなんとかかきました。
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