機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
艦隊司令部から命を受けたミネルバもベルリンに到達した。最初にモニターに映った光景にタリアを初めとした一同は言葉を失った。ベルリンは西暦の時代からの歴史ある都市だ。それが今となっては、只の瓦礫の山。周辺には迎撃に出ていたザフトのMSや陸上艦の残骸が散乱しており、パイロットや搭乗員と思われる死体が焼け焦げるか瓦礫に潰されるかしている映像もある。
辛うじて、生き延びたザフト兵達は市民の避難及び負傷兵の救助でとデモではないが動ける状況ではない。
しかし、バートの報告に別の衝撃を受ける。
「熱門による状況確認!これは…フリーダム!ブレイブ!アフェクション!」
アーサーが息を呑み、バートが更に状況を報告する。
「地球軍…カオス、アビス、ウィンダム、ブランフレイム、ミントシューター。オーブ軍ムラサメ、ストライクルージュ、デュエルペイル、イージス。そして、アークエンジェルです!」
アークエンジェルもここに来ている。しかも、セカンドシリーズがいるという事は、地球軍はボギーワンの部隊だろう。
「さすがは正義の味方の大天使ね。助けを求める声あらばって事かしら?」
パイロット達が搭乗機に向かおうとした時、ブリッジのタリアから通信が入り、シンが応じる。
「なんでしょうか?」
シンの態度がカインは腹が立った。いくらあの件で不問になったといっても、シンは一パイロット。タリアとアスランは上官だ。なのに、シンの態度は
『たかが艦長ごときが司令部に認められる俺様になんのようだ?』
と言っているように見えた。
〈情勢は思ったより混乱しているわ。既に前線の友軍とは連絡が取れず、現在敵軍とはアークエンジェルが戦っているわ。〉
「え、アークエンジェル?」
その状況にシンだけでなくカインとアリスも唖然とし、アスランが呟く。
「キラが…」
「そんな、彼らが何故!?」
「オーブと関係ないことじゃないですか、これは!」
アリスも同じ気持ちだが、シオンがタリアより先に応える。
「これを見すごす程薄情じゃない。」
〈……シオンの意見はまあ、胸に留めて……敵を間違えないでね。特にシン、司令部は貴方に期待しているわ。〉
ネオはさっきからしつこくデストロイに接近しようとするフリーダムを牽制していた。しかし、それも何時まで保つか分からない。フリーダムはNジャマーキャンセラーを搭載しているためにそのエネルギーは無限に等しい。それに対し、こちらの機体はデストロイを除けば全てがバッテリー式の機体だ。いずれエネルギーが尽きてしまうので一度ボナパルトで補給を受ける必要がある。そうなればデストロイは無防備になり、あの三機が相手では瞬く間に撃破されてしまう。任務など関係ない。ステラを護らなければ!そこへ更にボナパルトからミネルバが現れたとの連絡が入る。
ミネルバだと!ということは、あの坊主も!?
モニターには確かにインパルスが映る。インパルスはデストロイへ突っ込み、アナーとグラウンドはミネルバの近くに待機している。
ステラを戦いのない世界に返してくれと懇願した少年の瞳が蘇る。その少年がステラを殺す為に現れた。止めなければ!
結局、彼との約束を果たすことは出来なかった。ステラはエクステンデットとして調整を受けなければ生きられない。戦いのない暖かい世界に返してあげたいという彼の願いを叶える力など、ネオもエリスもない。
約束を違えた罪悪感と同時に、彼にステラを殺させるわけには行かない。ネオはその責任感だけで動いていた。
しかし、ネオが動くよりも早くインパルスがデストロイの砲撃を潜り抜け、腹部をビームサーベルで切り裂いた。
「ステラ!!」
切り込みが甘かったためステラは無事だったが、今のでステラは強い刺激を受けてしまい、滅茶苦茶に大砲を撃つ。もはや自分達も敵もお構いなしだ。その巻き添えを受けてブランが両腕と左足を、ミントが両足を失った。
〈グレン!クレム!〉
エリスが二人を呼んだ。大きなダメージを受けた二機は落下していき、更にエリスもアフェクションによってジェットストライカーを切り裂かれ、墜落した。
「中佐!!」
エリスからの応答はない。墜落のショックで気を失ったのかも知れない。三人の身を案じる暇もなく、再びインパルスがデストロイへと突撃する。ネオは通信をオンにして叫ぶ。
「やめろー、坊主!!」
〈クソ!何を!?〉
接触回線であの少年の声が聞こえ、ネオは事実を伝える。
「あれに乗っているのは、ステラだぞ!!」
体当たりを仕掛けてきたのはインド洋で戦い、クレタでステラを返すときに来た赤紫のウィンダム…ステラが慕っているネオ。ネオ・ロアノークだ。
ステラを返したときに顔を合わせた仮面の男……彼女が慕っているネオの言葉にシンは耳を疑った。慌ててカメラを操作し、ズームする。確かに、さっき自分が切り裂いたその中には自分が救いたいと願ったステラの姿があった。
ステラ?何で、ステラがこんなところに…?
シンは機体の操作を忘れてしまい、無防備になった。それを巨大MSが逃すはずもなく砲を構えるが、それよりも先にブレイブがビームライフルでコクピットの周辺を撃った。
〈何をやっている!的になりたいのか!?〉
〈死にたくないのなら、動きなさい!!〉
フリーダムとアフェクションから叱責の声がするが、シンの耳には何も届いていない。その間、ステラを守ろうとしたネオのウィンダムがフリーダムによって両腕とジェットストライカーを撃ち抜かれ、落下していった。
ネオのウィンダムが地面にたたきつけられるのを目の当たりにしたステラは完全に恐怖に支配された。
『でないと、怖い物が来て私たちを殺す。』
ネオの言葉が再び脳裏で蘇る。そして、目の前でカオスがムラサメの攻撃で撃墜され、アビスがイージスとデュエルペイルのビームで撃ち抜かれ、墜落していった。
ネオがいない。死んだ……アウルとスティングも?イリーナはいない?エリスも……みんな、死んだ?怖い…
「ダメ、怖い……いやぁーーーーー!!」
ステラは泣き叫び、デタラメにビームやミサイルを撃ち、都市を焼き払っていく。もはや、ステラの人格は完全に崩壊し、恐怖だけが彼女を支配していた。
〈ステラ!ステラ!俺だ!シンだよ!〉
誰かが呼んだ。誰?
〈大丈夫だ!君は死なない!俺が守るから!!〉
守ると言った。誰だろう?ネオ?違う…じゃあ、誰?ああ、思い出した…シン…
ステラの心に安心という概念が訪れた。シンが抱きしめてくれる感覚がした……怖くない。シンが守ってくれる……私は、死なない。そう思った瞬間、一つの機影が眼に入った。
フリーダム、敵。怖い物。私を殺す。
「ステラ?ステラー!」
停止したと思われたMSが突然再起動した。
「やめるんだ、ステラ!ステラーー!!」
〈シン、何やってる!〉
〈動いて、シン!〉
後ろからアナーとグラウンドが飛んでくるが、シンには聞こえない。
「ステラ!やめろ!」
シンの声が届かず、胸部と頭部のビーム砲のエネルギーが収束されていく。間違いなく、こちらを狙っているがシンはそれに気付かず呼び続ける。そして、砲のエネルギーが臨界に達しようとした瞬間、フリーダムが間に入り、ビームサーベルを突き刺した。発射寸前になっていたビーム砲が暴発し、機体を爆発させ、MSはその巨体を後ろへと倒れさせた。
「あ、ああ……ステラーーーーー!!」
連合が切り札として投入した巨大MSデストロイは雪が降る都市に沈んだ。
一方、マリューはキラが撃墜したウィンダムの不時着地点に降りていた。キラが突然、頼むといってウィンダムを不時着できるように撃墜し、コクピットから放り出された仮面の男。放り出されたショックで仮面が脱げてしまい、その素顔が露わになった。
それを見て、マリューは我が目を疑った。
「…ムウ?」
その顔は、かつてマリューやキラと共にアークエンジェルで戦い、ヤキン・ドゥーエでアークエンジェルを庇い命を落とした『エンデュミオンの鷹』ムウ・ラ・フラガだった。
同じように、ナタルもユリに頼まれて青紫のウィンダムの不時着地点にいた。パイロットは連合の黒い制服を着た若い女だ。
「動くな!」
女はバイザーをかけていたようだが、それが落ちており、前髪が顔を覆ってその顔は見えない。だが……
「………久しぶりね。」
「な……!……レイラ…ウォン大尉?」
女は『新星の隼』と呼ばれる連合のエースパイロットで、あのヘリオポリスから共にアークエンジェルで戦い続け、ヤキン・ドゥーエ後にオーブへ渡ったかと思えば突然行方をくらましたレイラ・ウォンだった。
ユリはブランフレイムを見つけた。大型MSの攻撃で損傷しているが、コクピットは無傷だ。ハッチは開いていない。
「ノイマンさん、ブランフレイムを回収します。」
かつての自分の搭乗機がこんな形で姿を変えてまた現れるのは妙な気分だ。だが、連合のパイロットなら何か聞き出せることがあるかもしれない。
レナは兄が搭乗した機体の改修型ミントシューターをアークエンジェルへ運び、コクピットを開いた。
パイロットは気絶しているようだ。ゆっくりと引きずり出し、ヘルメットを取る。そこから覗いたのはユリと同世代の若い女性だ。
「こんな、若い人が…」
シンの願いもむなしく、ステラはやはり命を落としました。
そして、多分読者の方には予想していた方もいたでしょうがエリス・ティーゲルはアークエンジェルでキラ達と一緒に戦った『新星の隼』レイラ・ウォンでした。
ここまで駆け足になってしまいましたが……この先はいよいよあの演説。更に…放送時、シンのアンチが爆発的に増えたであろうアレです。